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朝鮮という

私たちの国があったのだ

日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会|

発 刊 登 録 番 号
11-B553448-000006-01

日帝強制動員被害者支援財団 翻訳叢書  2   口述記録集

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朝鮮という

私たちの国があったのだ

日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会|

発 刊 登 録 番 号
11-B553448-000006-01

日帝強制動員被害者支援財団 翻訳叢書  2   口述記録集

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日帝強制動員被害者支援財団 翻訳叢書  2  口述記録集

朝鮮という私たちの国があったのだ 

 

初版 1刷 印刷

初版 1刷 発行

編   著

翻   訳

最終監修

発行人

発行処

発刊登録番号 

デザイン・編集 

2019年 12月 13日

2019年 12月 16日

国務総理室所属・日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会

日本語翻訳協力委員会

崔永鎬(霊山大学 教授)

金容德

日帝強制動員被害者支援財団

ソウル特別市鐘路区鍾路1ギル42 利馬Bldg. 6F

http://www.ilje.or.kr

11-B553448-000006-01

21世紀教育社(Design21)

本書の全部または一部を無断で複写複製(コピー)することは、
著作権法上での例外を除き、禁じられています。

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表題説明

“朝鮮という私たちの国があったのだ”は、日帝強占期に生まれた人
々の場合、日本が母国とばかり思っていたが、解放を迎えはじめて

自分の国が朝鮮であることに気付いたことが表れたものである。

凡例

- 口述内容中に録音の聞き取りが不可能な単語は***で表示
- 補助口述者の口述は、内容の前に★表記をし、口述者と補助口

    述者が同時に話した場合は便宜上、口述者は◎、補助口述者は
    ★表記

- 簡単な説明や文章をなめらかに連結するために任意で補われた

   単語や文章は中間に(  )表記

本文写真と文献の出処

本文中に挿入した写真は、本委員会へ寄贈されたものや証拠資料

として提出された写真の中から口述者の内容と関連するものが選ば

れた。本文中に挿入した文献は、国家記録院所蔵の記録で、本委員
会に調査のために使用を許可された記録であり、被害者本人の同
意のもとに掲載した。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

発刊の辞(日本語版)

財団法人日帝強制動員被害者支援財団は、

2004年から2015年まで活動した「対日抗争期
強制動員被害調査及び国外強制動員犠牲者等支
援委員会」(委員会)の事業を承継しました。し
たがって、弊財団は日帝強制動員被害者と遺族
のための追悼及び支援事業、強制動員被害に関
する学術研究・調査及び文化事業、国立日帝強
制動員歴史館の運営などを主管しております。

このうち、「委員会」解散後中断されていた冊子の翻訳・発刊事業につき
まして、今年から日帝強制動員出版事業に拡大・改編し、発刊を迎えるこ
ととなり、心より感謝を申し上げます。

今年、弊財団から日帝強制動員出版事業として発刊される冊子は全5種

あります。まず、「委員会」当時日本の種々の市民団体、関連研究者及び
個人の方々にご助力いただいて翻訳された「委員会」真相調査報告書2種

(日本語版)と口述記録集2種(日本語版)、そして、今年弊財団が関係遺

族から原本記録の寄贈を受け、検討・監修を行って発刊することとなった
強制動員手記集1種(韓国語版)であります。

発刊される「委員会」真相調査報告書2種は、『朝鮮人BC級戦犯に対す

る真相調査)』と『ハワイ捕虜収容所における韓人捕虜に関する調査)』
であり、口述記録集2種は、『ポンポン船に乗って帰る途中、海の幽霊にな
るところだったよ)』と『朝鮮という私たちの国があったのだ)』でありま
す。強制動員手記集1種は、日帝によって強制動員され、日本沖縄県の座

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日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会日帝強制動員被害者支援財団

間味島で米軍の捕虜になった後、帰還された故チャン・ユンマンさんの話
です。弟さんのチャン・ジェダルさんが筆写した原本記録「大東亜戦争実
記集」を遺族のチャン・ヒョンジャさんからお受けし、『太平洋戦争実記
集』という題で発刊するに至りました。

このような意味のある事業を弊財団が再開できるよう、多くのご尽力を

いただきました韓国と日本の発刊委員と監修者の皆様方に深謝申し上げま
す。また、本事業が「委員会」当時発刊された主要書籍の単なる翻訳・発
刊にとどまることなく、日帝強制動員全般に対する出版事業として一層拡
大され、その意義を受け継いでいけるように口火を切ってくださった故チ
ャン・ユンマンさんの遺族、チャン・ヒョンジャさんにも心より感謝申し上
げます。 

弊財団は2019年を皮切りに、中断されていた「委員会」発刊冊子の翻訳

事業を再開するとともに、日帝強制動員全般に対する多様な学術資料や
教育資料の発刊などを今後とも続けられるよう努めてまいります。皆様に
おかれましては、一層のご愛顧、ご助力を賜りますようお願い申し上げま
す。この度発刊される冊子が強制動員分野において微力ながら小さな踏み
台となり、国内外の多くの研究者と市民の方々にとって真実と記憶の歴史

としてその役目を果たすことをお祈りいたしまして、発刊のご挨拶とさせ

ていただきます。

2019年12月16日

財団法人  日帝強制動員被害者支援財団

理事長  金 容 德 

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朝鮮という私たちの国があったのだ

2004年11月に発足し、2006年11月10日に2年を迎える日帝強占下強制

動員被害真相糾明委員会は、強制動員被害の真相を糾明し、歴史的真実
を明らかにしようと様々な活動を行っています。今回、委員会の発足2周年
を迎え、『強制動員口述記録集3 - ポンポン船に乗って帰る途中、海の幽霊
になるところだったよ』と『強制動員口述記録集4 - 逃げるって?憲兵が銃
で見張っているのに』を発刊することになりました。

委員会は去年から今年6月まで、2回にわたって22万件に達する被害申

告を受け付け、5件の真相調査を完了し、関連データの収集と資料集の発
行など、具体的な成果をあげています。特に去年末には 『強制動員口述記
録集1 – タンコだって?』を発行し、去る8月15日には 『強制動員口述記録
集2 - 黒い大陸に連れ去られた朝鮮人たち』を 発行しました。この2冊の口
述記録集は、委員会の被害届の調査と真相調査の業務の中で、最も大きな
比重を占めている生存者への調査の成果を編集したものです。

『タンコだって?』は2005年の1年間の労務動員生存者の調査成果をも

とに作成されましたが、政府によるはじめての口述記録集であるというこ
とに大きな意味があります。『黒い大陸に連れ去られた朝鮮人たち』はサ

ハリン強制動員の口述記録をはじめ、強制動員被害当事者の記録である

『山中半月記』、新聞記事のリスト、年表、解題など様々な情報を提供す

る総合的な性格の口述記録集として企画されました。

今回発行する『強制動員口述記録3 –ポンポン船に乗って帰る途中、海

の幽霊になるところだったよ』と『強制動員口述記録4 - 逃げるって?憲兵

発刊の辞(韓国語版)

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日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会日帝強制動員被害者支援財団

が見張っているのに』は、去年と今年の2回にわたって行なった忠清道地
域の生存者の調査成果を構成して作成した強制動員口述記録集の忠清道
編です。この本では口述内容の修正や編集を最小限にし、より充実した口
述記録集になるようにしました。特に忠清道地域出身の生存者たちの豊か
で多様な口述内容を取りいれるために、九州地域とその他の日本の地域に
分けて2巻で発行することにしました。このように国内地域別の特徴を盛り
込んだ口述記録集は、今後も着実に発行されるでしょう。

この本が出版されるまで多くの人々の努力がありました。二度にわたっ

て忠清道地域を訪問し、お年寄りから貴重なお話を採録し、編集作業を行
った調査1課職員の多くの努力があります。また委員会の調査作業を支援

してくださった地方の実務委員会の担当者と支援部署の職員にも感謝いた
します。しかし何よりも、この本ができるまでの最大の功労者は24人の口

述者のお年寄りです。

口述者が大切な思い出を喜んで口述し、貴重な個人データを提供され

たことから、この本が誕生しました。委員会の調査活動に積極的にご協力

くださり、口述記録集の出版を許諾してくださった口述者のお年寄りたち

に、心から感謝を申しあげます。

最後に、委員会の真相糾明作業への変わらぬご協力とご支援をお願い申

しあげるとともに、これから出版される口述記録集をはじめとする各種発

行資料や調査活動への激励と叱正をお願いします。

2006年10月31日

日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会

委員長 全基浩

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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目次

発刊の辞(日本語版) ·······························································································································4
発刊の辞(韓国語版)·······························································································································6

日本|11

孫永權  ●  若いから日本に行かせれば使えるだろう、と送ったのです ················13

金永元  ●  軍人として召集されたら月給もらうのに軍属としていきなり… 
                これは詐欺だよ、詐欺 ·····································································································27

金元逸  ●  真っ暗な夜に車に乗せられ、ひきおろされて(乗ってクサガ(草加)
                 で降りて)··································································································································41

柳鍾雲  ●  人にするような扱いではなかった ·········································································55

薛仁奎  ●  人間差別されたうえ飯も少しだけくれて ·························································71

朴魯英  ●  検閲を受けて引っ掛かれば手紙も出せない ···················································93

李長民  ●  長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして ·······················113

張昌權  ●  級長が行かなくては、ついて行かないのだ ····················································137

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日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会日帝強制動員被害者支援財団

11 

中国及び東南アジア|159

朴成春  ●  ともかく行こう、と連れて行かれた ·····································································161

金濟斗  ●  倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて ·······························································177

裵英虎  ●  ちょっと身動きしても殴られるから ····································································199

金壬用  ●  韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと·····································225

黄鍾大  ●  逃亡もできない、四方は海だから… ····································································247

金顯沂  ●  直ちに行け、といわれたら行くのです ·······························································265

金甲天  ●  あまりの空腹で髪がどんどん抜けて ···································································291

解題 ·································································································································································325
翻訳 • 最終監修者 ···································································································································341

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孫永權若いから日本に行かせれば使えるだろう、と送ったのです

15 

  孫永權

創氏名

平河宇助

1924.3.2

出生

1942.秋   名古屋 陸軍造兵廠熱田製作所工員として動員
1945.

解放後帰国

若いから日本に行かせれば使えるだろう、

と送ったのです

どうして徴用で行くことになりましたか?
ソウルで京畿中学校の小使いとして働いていましたが、世間でいう何も聞くな
という甲子年生まれで日本の第一次徴兵がありました。それで徴兵検査で第一

補充兵判定を受けました。ですが京畿中学校長に島田という校長がいて私を日
本に送ってくれました。それで日本に行って名古屋陸軍造兵廠で働いていると
解放になったので帰って来ました。

身体検査は受けましたか?
第一次徴兵にひっかかり身体検査を受けました。第一補充兵の判定だったの
で軍隊に行かないで、日本人校長が私を日本に送ってくれました。ですから徴

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朝鮮という私たちの国があったのだ

16 

兵で日本に行ったではなく、その当時は若者が必要だったから日本の奴が私を
連れて行ったというか、なんというか選出して送ったのです。

そうすると島田校長が、ご老人を選出して日本へ送ったのですか?
そうです。私を特別に選んで送ったのでなく、若いから日本に行かせれば使え
るだろう、と日本へ送ったのです。陸軍造兵廠、軍事施設に送りました。それ
でそこへ行き仕事をしていると解放になったので帰って来ました。

何歳のとき、徴用されましたか?
私が23歳のとき解放になり帰って来ました。だから行ったのは17歳から18歳に
なった年に行きましたが、19歳になって陸軍造兵廠に行って働きました。

訓練を受けて陸軍造兵廠に行かれましたか?
いいえ。そこへ行って訓練を受ける必要はなく、そのままそこへ直接行きました。

京畿中学で勤務していて徴用はひとり行きましたか?
そうです。そこでは私一人が行きました。ですが他の場所から来た人と合わせ
れば数百人いたようでした。軍隊式に小隊程度に集まって1分隊、2分隊と決め
て、私たちは陸軍造兵廠弾工場という、いわば弾工場は飛行機のプロペラ(プ
ロベラ)を造るところです。打って鍛えて造る弾工場です。ですが原子爆弾が落
ち、空襲がとても激しくなってギフケンセキブンコウジョウ、韓国語で岐阜県
関分工場へ疎開しました。つまり避難したのです。避難してニッポントウ、日
本刀をつくり解放になって帰って来ました。

行ってどんな仕事をすると教えてくれましたか?
それは知りませんでした。軍隊の秘密かも知りませんが、私は何の説明も聞か
されず行きました。だからそこに行って名古屋陸軍造兵廠に配置されました。

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孫永權若いから日本に行かせれば使えるだろう、と送ったのです

17 

そして小隊別に組んで工場別に配置されました。銃弾を製造する場所にも行
き、鉄を溶かし練磨する工場に行くなど、数箇所に分かれて行きました。

校長が行けと言って、何日後に行かれましたか?
そうですね。数日して行きました。

釜山港に集合し出発式や歓送式はなかったですか?
その時は日本が負けるか勝つかのときで、そんなのはしませんでした。

行く前に訓練のようなものを受けませんでしたか?

そういうのは徴兵検査前にソウル芳山初等学校でたくさん受けました。その時は
司令官の指示通りに訓練も受け精神教育も受けて徴用に(で)行く準備もしました。

京畿中学校小使いとして仕事されていたのに毎日、受けたのですか?
周期的に1ヵ月数回受けました。そしてその時は京畿中学校にいた時でなく、
鍾路3街にある他の職場で仕事をしていた時分です。

日本語も学ばれましたか?
日本語は、私自身がまるで日本人のようだったから上手でした。100%できると

いって良いほどでしたが、もう60年経ったのでほぼ忘れてしまい簡単な言葉だ
け聞き取れます。

釜山港から日本に行く前に軍服のようなものをくれましたか? 

ここからはそのままパジ(下衣)で行き、日本に着いて着替えました。

誰かが引率して行きましたか?

日本の奴らはその時、本格的に前に出ないで手下というか韓国人関係者らが引

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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率して行ったようでした。

銃や剣をつけた軍人や憲兵はいなかったですか?
そういうひとはいなかったです。

釜山港から連絡船に乗船してすぐに着きましたか?
ええ。たぶん10時間もかからず下関、つまりシモノセキに到着しました。

行くとき不便なことはありましたか? 脅しで気合を入れるというようなこ

と?
そんなことはありませんでした。

釜山から(に)行く時、知人はいなかったですか?
故郷も以北で、知っている人はいな
いといえます。

シモノセキに到着し名古屋までど
のように行きましたか?
汽車で行きました。

名古屋陸軍造兵廠は市内でした
か? 郊外でしたか?
市内といえます。アツタセイコショ
ウ、つまり熱田製作所といってすご

く大きな工場で、バスでしばらく(少
し)回らないと見られません。

1940年 陸軍造兵廠 時期

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孫永權若いから日本に行かせれば使えるだろう、と送ったのです

19 

ではその周辺に他の部隊とか企業はありませんでしたか?
たくさんありました。アイツトケイ1) など大きな工場がいくつかありました。そ

してアイツトケイが爆撃され数千人が死んだ、私たちが臨時で消防車に乗って

駆けつけ、頭部が裂けたひと、頭部がばさっと剥がれたひと、手足がもぎれた
ひとを大勢救助しました。

アイツトケイの漢字はどんな字ですか?
ミツビシ。だから三菱といいます。三菱工場が空襲警報のサイレンを空襲解除

と思って、人々が入って仕事をしていて約3千人が死にました。

そうすると熱田製造所のそばに愛知時計や三菱工場がありましたか?
三菱は少し離れていたが、何にせよ名古屋市内にさまざまな工場がありました。

その一帯は工場団地みたいですか?
韓国でいうと仁川、水原、盆唐のような郊外に工場があるので、その工場へ消
防車で人々を救助しに何回も行き来しました。

陸軍造兵廠には分隊が何個ありましたか?
そうですね。数はよく分かりませんが韓国人は宿舎に数10人いっしょにいました。

では宿舎では数10人いっしょに生活したのですか?
一番親しく仕事したひとはヒノという水原のひとですが、そのひとしか名前を
知りません。ふたりは仲良くて避難もいっしょでした。

1) 愛知県人古屋市熱田所在、愛知時計電機船方工場を指すものと見られる。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

20 

弾工場では、飛行機のプロペラだけ造りましたか?
いろいろと造りました。プロペラだけ造ったのではありません。私たちは軍隊
の秘密は(で)よく分からず飛行機の材料になると思いながら、正確な名前も知

らないで鉄を溶かして型だけ造りました。完全な製品を造るではなく型だけ造
って、横の工場ではそれを再度削ってまた造るので。そして飛行機の部品だけ

を造るのではなくて数十種類の型を組んで造りました。

一日の生活を少しお話しください。
朝7時半か8時から仕事がはじまり、夕刻6時半か7時半に退勤し、宿所にもどっ
て入浴しました。工場でも入浴できましたが。

食事は3食すべて提供されましたか?
工場では食事したことはなく、宿舎にもどって食べました。とても昔のことな
のでよく覚えていませんが、昼食も宿舎で食べたようでした。また宿舎は遠く
ありません。工場の横からバスに乗って停留所を数箇所往来したので距離的に

も遠くありません。

工場はとても大きかったようですね?

とっても大きいです。例えれば現在の永登浦市内より大きいといえば大きい、

小さくはありません。車に乗らないと、徒歩では行けません。もとから距離は
遠いです。広い野原です。

土曜日、日曜日も仕事されましたか?
土曜日まで働き日曜日は休んだのか休まなかったのか。忙しいところだったの
で日曜日も仕事のときは仕事をし、休みの時は休んだが、とても時間が経った
のでよく覚えていません。

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孫永權若いから日本に行かせれば使えるだろう、と送ったのです

21 

土曜日も働きましたか?
土曜日は働きました。その時は毎日のようにB29が爆撃を数百個ずつ落とし夕
刻4時頃出撃し朝方4時頃にすんで去りました。

あなた(ご老人)がいた工場も爆撃にあいましたか?
アイゴ、いっぱい爆撃されました。夜に爆撃があるとポプラの木をしっかり抱
いて、こっちに落ちればあっちへ行き、あちらに落ちればそちらへ、ほとんど
一晩中ポプラに抱きつき、逃げ回って死の瀬戸際にあいました。

空襲は夜間に頻繁にあったのですね?
夕刻4時頃出撃し朝方4時頃になるとやみます。連続で約20機ずつ投下、投下

して8時間ほど連続して空爆します。爆弾を投下すると自分のそばに落ちてこ

ないかと気が気でなく全身がぶるぶるふるえてぐったりします、ぐったりだ。
そしてその爆弾が落ちる“サアアー”の音がはっきりと耳にこだまします。そして
その時は耳を塞いで目を閉じて口を開いていなくてはいけない。口を閉じてい
ると口が裂けてしまうというので、そうして一晩中数年間を過しました。米国
が沖縄上陸後も継続して破壊したのは1、2年あったか。そして結局、広島に原
子爆弾が落ちて30万人が亡くなり、長崎に原子爆弾が落ちて15万人が亡くな

り、そうしているうちに日本の奴は降伏しました。天皇が。

上官は日本人でしたか?

日本人は内鮮一体、内鮮一体といって上官というより私たちで班長、分隊長を決
めました。彼らが大将になったことはなく、一番上に日本人がいるにはいました。

班長、分隊長は朝鮮人でしたか?
そうです。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

22 

〈写真〉胸につけたマークが陸

軍造兵廠マーク

班長や分隊長はどのような形で選びまし
たか?
その人たちも私たちと同様です。その人た
ちがなにか特別に日本人の手先になったの
ではありません。

階級はありましたか、工員とかの?
そうした階級はありません。工場式の階級
はありました。写真のこの丸いのが階級と同

じです。長年勤続したひとはこの色がちが

います。青色、黄色です。

賃金を貰いましたか? 賃金はくれませんでしたか?
賃金を貰わなければ暮らせないでしょ。賃金がなくては小遣いがないでしょ。

1ヵ月約200ウォン2) ずつだったか? 180ウォン、150ウォンずつ貰って、たぶん

解放になって帰る頃は250ウォンか200ウォン貰いました。その時の250ウォン
は大金です。当時は布地一反80ウォン、100ウォンでした。今なら布地一反は
数十万ウォンするでしょう。だから250ウォンだと布地三反の品代になる。だ
から少ない金ではありません。

毎月、支払われましたか?

そうです。日本の奴はこういうことは徹底しています。徹底してもしなくても、くれ
なければ私達が我慢できなかったでしょう。私達に小遣いをくれるから、電車賃に

して食べたいものも買って食べられた、小遣いもくれず強制すれば餓死してしま

い工場に通えますか? つまり工場に通える能力をくれたということです。

2) ウォン→円

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孫永權若いから日本に行かせれば使えるだろう、と送ったのです

23 

もしや貯蓄を名目に一部だけを支給するとか、全額が支給されましたか?
毎月、日本の奴は月給のようにくれました。

賃金はおもにどのように使いましたか?
市内へ遊びに行くとき車に乗って、菓子など食べたいものを買って食べるには
金が必要なのでそれに使いました。だからほとんど小遣いですよ。彼らは月給

といいましたが小遣いにしろとくれたものです。

殴打は無かったですか?
それは無いです。その時は私たち韓国青年を利用しなければ持ち堪えられま
せんでした。青年全員が私たち韓国青年だけでしたから。韓国人全員が若者で
20歳前後、そんなひとだけ呼んで使用し、日本人達はみんな軍隊に行って青年
はいませんでした。

非人間的な待遇を受けた人はいませんでしたか?
陸軍造兵廠で虐待した人はいません、私たちは指図どおり真面目に仕事をちゃ
んとしましたから。

岐阜県に避難したのはいつですか?

B29の爆撃で名古屋全域が廃墟のようになり人々が続々に死んで、名古屋市

内からいくらか離れた場所へ工場が移りそこで働いて帰ってきたのです。解放
になって。

そこも工場でしたか?
はい、そうです。工場。彼らは刀を好みます。軍人も誰もがみんな刀をつくる
のが専門だから。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

24 

名古屋で働いていた全員がそこへ移りましたか?
いろいろな場所へ分散しました。

誰かがそこへ行くようにといって行ったのですか?
軍隊で部(軍)隊の転出と同様です。数人ずつ配置されて行きました。

岐阜県に避難したのは、解放と同じ年に行かれましたか?
そうです。解放になるまで働いて、天皇が降伏したから私たちは韓国に帰らな

くてはいけないでしょ。まあ、そこで結婚して生活するひともいたが、私たちは

両親に会いたくて、韓国が懐かしく韓国に帰りたかったのです、そこで結婚す
る考えはしませんでした。

何ヵ月ほど働かれましたか?
ひと月以上です。2、3ヵ月だったか…あまりに昔のことで何ヵ月だったか覚え
ていません。ともかく数ヵ月いました。

名古屋や岐阜県に慰安所はありませんでしたか?
慰安所は名古屋にありました。韓国人は少なく日本女性たち。言わば娼婦た
ち。慰安婦ではなくて娼婦と同じです。国から票をもらって遊びにいくところ
ではなく、私たちでいえば遊郭というか?

逃亡したひとはいませんでしたか?
鉱山のようなところでは逃亡したという話は聞きましたが、私たちは逃亡した

ことはなく、ただ熱心に仕事だけしました。その時は内鮮一体、内鮮一体とい
って日本の奴にしようとしたからそんなのは無かったです。ですが炭坑では逃

亡がすごくあるという噂はよく聞きました。

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孫永權若いから日本に行かせれば使えるだろう、と送ったのです

25 

手紙は送りませんでしたか?
それはしませんでした。

家では日本に来ていることはご存知でしたか?
知りません。どこにいるのか、死んだのか生きているのか知りません。母は4歳
のときに他界されたから知らず、父は私が解放になって帰って来たので我が息
子が生きて帰ってきたそれだけ分かってそのほかのことは知りません。

解放になったことはどのように知りましたか? 放送で知りましたか?
そうです。日本天皇が降伏して放送にすべて出(ですべてし)ました。私たちは
仕事のため放送を聞かれず、後で再放送を聞いて、日本の女性も男性も地面を
叩いて泣き叫んでいたので負けたのだと分かりました。私たちは柿くれ梨くれ
などと偉そうな真似はできなかったが韓国人、愛国者たちは倉庫を打ち壊して
物品を持ち出したひともたくさんいました。

帰国できるよう交通の便宜は図ってくれましたか?
帰ってくるとき船に乗り途中で台風にあい死ぬ目にあって助かりました。台風
が収まるまで対馬島で数日留まり釜山に渡りました。木船に乗って。解放にな
った時、人々があまりに多くてそのまま木船に乗って帰って来ました。行くとき
は連絡船に乗ったが帰ってくるときは木船。

解放になってすぐさま朝鮮へ出発されたのですか?
出発? そのとき日本にいた韓国人は210万人だったといいます。これほどおお
ぜいのひと全員が帰国するのではないが、ほとんどのひとがみんな帰国しよう

としたので、下関港が大混乱になりました。大声で叫びながらそれぞれが帰ろ
う、帰ろうとして、それで数日して木船に乗って帰ってきました。数日いるつも
りだったからではなく、船も無いし何も無くて、いたのです。団体で乗船しよう

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朝鮮という私たちの国があったのだ

26 

とすごく大勢の人が乗船したので転覆しそうになったほどです。

船賃はそれまで稼いだものから出しましたか?
いま思うと金を渡したみたいです。少しずつ集めて船長に金を渡して出てきたから。

工場で帰国の便宜を図ってくれませんでしたか?
今からみると退職金というのか? 退職金を計算してすべてくれたし、帰り道に
食べなさいとリンゴ、餅などを配給してくれました。

国が滅んだのに、すべて準備してくれたのですか?
食べようが食べるまいが、帰ろうが帰るまいがそういう扱いはしませんでし
た。準備できるものはすべてしてくれて退職金もすべてくれたのです。

名古屋や岐阜県に外国人捕虜はいませんでしたか?
いませんでした。

働く前に何年間働くとどのぐらい貰えるという契約をしましたか?

日本の奴が契約するということはありません。自分たちの思うどおり死ぬまで

働かせ死ねば死に死なぬなら死なないまでで、そういうことでしょう。よく分
かりませんが日本人達は死ぬまで働かせるつもりでいたでしょう。

お父さんは、生きて帰られたから大層喜ばれたでしょう。
ひとり息子でしたからとても喜びました。

家の暮らしはどうでしたか?
食べていくのに(食事や暮らしは)別に心配は無かったです。父は大工だったの
で稼ぎが良かったです。

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孫永權若いから日本に行かせれば使えるだろう、と送ったのです

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許面談者_オム・ジヘ調査官
録取者_オム・ジヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

仕事のときに負傷したことはありませんか?
そのようなことはありません。

現在はひとり暮らしですか?
子供達はみな嫁いで妻は23年前に他界し私ひとりです。現在は国家有功者で
す。ですから国に食べさせていただいています。

6.25にも参戦されましたか?
はい、6.25参戦勇士です。これは有功者バッジです。

70年代に補償は受けられませんでしたね?
私たちの世代は金鍾泌は好きではありません。朴大統領時期に補償として受け取

り政府が全額使いました。私たちは一銭も受け取れなかった、ほんの数10万ウォ

ンでも、これはその時の補償で受け取ったものだと少し分けてくれていれば有り難

いと思うけれど、私たちはその当時、時節を知らずに暮らしました。いま思えば金
鍾泌は、日本の奴から補償を受け取りそのまま政府が全額を使ったのだから私た
ちの世代は積極的に批判します。ですから金鍾泌は悪者だと思っています。また
私たちは知ることも出来なかったし、つい最近になって知ったのです。

日本側に未払い賃金があるかどうかご存知ですか?

そんなのはありません。いっさいありません。退職金は全額計算してもらって
帰ってきたのですから私たちは。

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金永元軍人として召集されたら月給もらうのに軍属としていきなり… これは詐欺だよ、詐欺

29 

  金永元

創氏名

金井永元

1923.12.27  忠南 舒川郡 舒川面 郡司里 生まれ
1944.  

面事務所 嘱託職員 勤務 

1945.2    軍属動員令状を受け、日本大阪軍需工場へ動員
1945.3    汝矣島 飛行場空軍部隊 哨所警備兵として軍人動員 
1945.8.30     帰還

軍人として召集されたら月給もらうのに
軍属としていきなり… これは詐欺だよ、詐欺

いつ、行かれましたか?
そこに書いたとおりです。それは考えて書いたんだが…

あなた(ご老人)の書いた日時は1945年2月1日です。

うん、2月1日頃に行ったはずだ、そこへ。

どのようにして行くことになりましたか?

軍属召集令がきました。徴用令じゃなく。私は当然軍人としてくるものと待っ

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朝鮮という私たちの国があったのだ

30 

ていたんだ、徴兵、徴兵召集令だけくるものと待っていたのに当時、面事務所で
食糧配給の仕事、嘱託職員でした。私は採用されていたのに、軍人として召集
令状がくるとばかり思ぅて待っていたのにいきなり第乙種。軍人のもとに行けな
い人達。徴兵で行けない人達は、第甲種か第乙種になった人達は、軍人になる
前に軍属として全員動員されたんだ全員。仕方なく軍属として動員されて行か
ないわけにもいかず。それまでは軍属はたいてい志願でした、軍属は。軍属は志
願してさびしく行った。次に、徴用は召集状がくれば行き、その後は無条件に捕
まえて行きました。徴兵は無条件捕まえて行った。軍属の第甲種以下、第乙種の
段階は軍属として行かねばならない、いきなり来ました。それは職場があっても
行かなくてはならないというのだ。徴兵は職場があるなら行かなくてもよかった
のに、その当時、面職員は徴兵がきたら行くし、軍人は無条件行ったし、軍属な

どは自分で志願すれば行くし志願しなければ行かなかったです。それなのにいき

なり徴兵がきました。聞いたことも見たこともない動員令が。

その時、軍属は志願して行くのに、志願しなかったのに来たということですか?
そうです。それで後で分かっただが、まだ行っていない人達は今回軍属として
全員が動員された。軍からそんな指示があったので、職場があっても軍属は召
集令状がきたら行かなくてはいけない。だから行かなくてはと思いました。と
ころで私ははじめに面の嘱託職員に発令されたときは社員でした、郡の。

嘱託の発令があったのはいつでしたか?
嘱託だったのは44年だったか。1、2年勤務したが軍人召集がくるとばかり思
い待っていたのに、軍人召集はこないでいきなり1945年2月1日に行ったけれ

ど、1月15日頃か中旬に召集状がきました。

あなた(ご老人)、軍人として召集されることを何故待ったのですか、別途
に申請されたのですか?
いいや、どっちみちくるのだから軍人として、徴兵検査を受けたひとは軍人に

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金永元軍人として召集されたら月給もらうのに軍属としていきなり… これは詐欺だよ、詐欺

31 

行かないではすまないから。第乙種、丙種以下は2(この)種までは軍人として行
かなくてはいけない。丙種は行かない。甲種第1種、2(この)種まではその時、
軍人として行くことをみんな知っていました。

身体検査を受けられましたか?

もちろん、身体検査をする間もどれほど訓練を受けたことか。その訓練を受け
る前も訓練受けました、それ以前にも。職場にいてもその日が訓練で出て来る
ように、いわれれば訓練を受けて。

どのような訓練でしたか?

普通の軍人訓練、軍人に行ってもすることだから、竹棒を銃のかわりにして訓
練して、毎日そんな訓練だった集結して、毎日そんな練習して。

そういう訓練は、誰が受けるのですか?
それは年齢に該当する人が受けるのです。私も年齢が1ヵ月か数ヵ月遅く生ま
れていれば、その年に徴兵検査を受けずにすんだのに。父母が出生申告を間違
えたため。1923年生まれは大正なん年なのか…。

徴兵検査は…?
徴兵検査は、1週間ほど受けました。

それは誰の管理でしましたか?
それは誰が管理したかというと、該当者の中から教員したとか学校出身の上級
の人をその中から推薦して、兵事係がそのひとを推薦しておまえがちょっと受
け持てと。例えば中川面だったら中川面をおまえが少し訓練させろと。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

32 

徴兵検査はどういうのをしましたか?
それも郡単位でします。学校で。それも学校で一斉に全員できないから、きょ

うは西川面で何人と、それが12面か13面あるので一斉に全員できません。1日
に2,3面と決めておこないます。それも私には正確に分かりません、そうして

受けたようです。私はそうだったように記憶しているが。1日に3面ずつを1日し
て、約3日間受けたようだった。国民学校に集結して。

検査はどういうのをしましたか?
検査は、まあパジャマを着てその時、体重検査、病気があるかを聞き、今のよ

うにX線などはなくそのまま簡単にちょっと見て身体強健なら甲種をもらって。

その時のことを思うと体重をはかり目の検査、耳の検査とそんなふうに素早く
カマスの検査をするみたいだった。そして最後に誰それは甲種、誰それは第乙
種、誰それは丙種、第一丙種としてからその名前だけ読み上げて。第1種だっ
たから私は分かります。

面からどのように行きましたか?
馬西面から軍属令状で私一人きました。舒川面からは2人きて。私は戸籍では
舒川面だから。それも舒川面で2人きたのに行くときには私ひとりが行ったの
で。

引率者はいませんでしたか?
兵事係。朝鮮人。その人はかなりの年だった。そのときここから出発したとき
は私ひとりだった。すべての郡のひとをあわせて天安に集結し釜山へ汽車で行
きました。釜山に行って連絡船に乗らなくてはいけない。日も何日に乗るとい

う話もして(しれ)くれません。飛行機が爆撃するから昼は行かれず夜に行くの
だが、その情報を得ようにも、その情報も自分たち同士でいつに行くんだと。

倉庫のような場所で3日ほどいました。それなのでいつ出発するかも知らなか

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金永元軍人として召集されたら月給もらうのに軍属としていきなり… これは詐欺だよ、詐欺

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った。釜山で3、4日ほどいて突然夜に、今夜何時頃に出発だから集結せよ、と
いった。それで連絡船に乗船しその連絡船もひと部屋に豚小屋みたいな所に

詰め込んだ。はじめて乗船したから気分が悪くなり外にも出られなかったで
す。連絡船なのかどうか大きいものを運んで行った。

その時、人々は大勢いましたか?
いくつかの郡の人が集まって行ったから大勢いました。一中隊ぐらいなるでし

ょう。その日行ったのは。私が知っているのは舒川面のひとは全員知っていま

す。そのように天安で集まって連絡船に乗ってかなり行きました。何日乗った
か分からない。それは夜だったのか朝だったのか。途中でどこに停泊したかも
分からない。数日経ちました。どこで停泊したか分からない。下船した場所は
分かります。下関だった、そう。朝方4時だった、そう。下船しろといわれて降

りました。それなのに降りると服をすべて脱ぐように言われた。パンツだけは

かせて。どうして服を脱ぐようにいったかいうと、検査をすると検査。シラミが

うじゃうじゃいるから全部脱ぎ消毒すると、全部、追い出すため消毒すると。

パンツだけはいて消毒だといって、どこか倉庫みたいな場所へ入るようにとい
って、消毒しろと言ったか、風呂に入れといったか、ともかく分かりません。
行き先も名古屋といったり大阪といったり、それだって日にちも言ってくれな
い。夜にいきなり汽車に乗れと言われた。夜だから走ってしばらく行くと名古
屋あたりまできたのか。汽車には窓があるでしょう? こちら見てもあちら見
ても両側は火の海です。ほんとの火で。こっち見ても火の海、あっち見ても火
の海。そうして走ってまた停車しました。でもなぜ停車したのか誰に聞けます
か? その時はまあ犬のように誰かが引っぱって行っても、まあそういう犬の
ような扱いだった。走って停まれば停まったのかなと、走れば走っているんだ

と。だけどそれは火の中を走って行くんだ。最初は私も家族も満20歳ほどで若

かったから、行けば死ぬだろう、生きて帰ってくるか分からなかった。死にに
行くんだと思っていた。その時はそんなことを秘密にしても勘で分かります。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

34 

耳に入ってくる、いくら秘密にしたって。いつかすっかり知られるにせよ日本が
火の海になっていることはみんな知っているだろう。どうして分からない。もう
すべて火の海だから生きて帰るとは思いもしなかった。

当時、軍属として何年間働き月給はどうという話は…
そんな話もありません。軍属としてきて行くということだけ分かっていたん
だ。

あなた(ご老人)、これを(これに)見ますと、大阪に行って軍需工場と…
聞いてみると大阪だという。他の人に聞いてみると。降りてみると駅も片隅に
小さいのがあって、大阪といえば都市じゃないか、家なんてなにも見えなかっ
た。ところどころに電柱だけあって。さっと下車するとトラックかが来て連れて
行った。どこへ行くのか。工場に行くとばかり思ったんだ。しばらく走った。小
さな倉庫に家があった。そこで降りた。平屋建てだ。まずそこで訓練を受けな

くてはいけなかった。軍需工場に行くなら。そこで2週間ほどかしばらく3週間

はしなかった。2週間ほど受けて…。

どんな訓練でしたか?

軍隊訓練はなんでもありません。竹棒槍、背丈より高いのに端に銃をつけて
軍事訓練です。その最中に飛行機が飛んできたら壕に入って。1日に軍事訓練

もあまり受けられない。飛行機の音がすると壕に入って。大阪は防空壕だらけ
です。飛行機の音がすると壕に入る、やむと訓練する、時間になったら夕食食

べ、時間になったら寝ます。寝ても安心して眠られない。でもそこは飛行機も
頻繁には飛んでこない。なぜかというと爆撃するところがないから、とっくに
爆撃し尽くしていたから。それでも1日1、2回は飛んできます。ですがそこに爆
弾を落とすところは見ていません。なんで爆撃するか。でも人達がいるのでひ

ょっとするとあるか分からないから防空壕を掘って。

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金永元軍人として召集されたら月給もらうのに軍属としていきなり… これは詐欺だよ、詐欺

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訓練は、誰が教えましたか?
訓練はそこの男子が引率する二個中隊で。私に小隊長せよ、と言った。ひとが
多くて全員だと多いので。小隊長になって引率してせよと。若くてしっかりし
ていたから。それで小隊長になって。職員は女子ひとりと男子ひとりは出たり
入ったりして、ひとりしかいません。訓練し統率する人はひとりしかいなかっ
た。私に小隊長をといったから受け持ち訓練させて、竹棒もってこう、するこ

とはした。夜昼、そうしました。

みんな朝鮮人でしたか?
みんな朝鮮人です。軍人に行けない1種か2種のひと。詳しいことは分かりません。

釜山から大阪まで連れて行った引率者は?
天安では引率者がひとりいました。日本から来たのかは分からないが。その人
が釜山から大阪まで連れて行きました。

訓練は何時から何時まで?
訓練は時間も決まっていません。昼食してしばらくすると訓練する、暗くなる

と出来ないから、電気がつかないから出来ないので、その時は廃墟だった。そ
うして約2週間、3週間、朝に集結しろといわれた。その中隊で3人に召集令状

がきたので。なにをしなくちゃいけないと。某日某時に出発しなくてはいけな
いと。引率者がいません。私に2人を引率せよ、と私に。引率して召集令状かな
にかの紙の令状をくれ、これを博多から連絡船に乗船する際に渡すようにと。
そして途中でなにか事があれば提示するようにと。何かあればそれを提示せよ

と。なにか白いものをくれた3人に。そして乾パンを入れ背負い袋にして麦せ

んべい約3日分の食料をくれました。その乾パンだけを3日間食べ汽車に乗って
行ったのです。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

36 

つまり他の人達はそこに残って、あなたや(ご老人ら)3人だけに召集令状が
きたのですか?
そこに残って。

なぜ3人だけそうなったのですか? それは分かりませんね。それで連絡
船に乗って釜山にこられたのですか?
釜山に来て舒川里に行きました。舒川里に行くと兵事係に行くよう言われまし
た。兵事係に行って何時に大田へ出発というから。大田へ空軍部隊に入所しな

くてはいけないから、何日まで面事務所に来るようにといわれた。大田空軍部

隊はその時は柳川国民学校です。当時、空軍部隊で訓練するところは柳川国民
学校でした。そこに行くと兵長やゴチョウ(伍長)が数人いて。集合して訓練
を受けた。

舒川面に到着してまっすぐ兵事係…
そのまま到着して兵事係に行って、到着しましたというと、何日何時まで面事
務所まで来るようにと。私が一緒に入所する日なのに。私が3、4日ほど遅れた
んだと。私がそこから来たので。他の人達は行ってみると全員いました。私だ
け遅れて行った3、4日ほど、日本から来たから。他の奴は先に入所して訓練受
けているのに、私だけがぽつんと遅れて入所してなんだか居心地がよくなかっ
た。そのこともかなり精神的苦痛で辛かった。

どのような苦痛でしたか?
その人達は先に入所してみんな自分の持ち場でしっかりしているのに、私は遅
れて入所して迷惑かけて。そういう苦痛で気をつかうじゃないですか。

そこは日本人だけいましたか? 朝鮮人達はいなくて?
そこは全員軍人ですから一等兵、上等兵、ジョウトウヘイ(上等兵)というそ

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金永元軍人として召集されたら月給もらうのに軍属としていきなり… これは詐欺だよ、詐欺

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いつが訓練させたがお話にならない。ゴチョウ(伍長)、小隊長か黄色のひと
つ星をひとつ付けたのは、それはゴチョウか…

その時はどんな訓練を受けましたか?
その時は、本物の銃を与え毎日、山とかですごく克己訓練するといいどれほど
訓練させられたことか。そして訓練しない時は毎日、彼等が必要な建物を建て
る木材を運んできて建物を建てる、さもなければ訓練をする、そこでの訓練は

とても辛かった。完全に日本のヤツらがさせた(した)から。

直接に戦闘訓練場に行って戦うとかはありませんね?
それはありません。銃弾もくれないし。

あ、ただ訓練受けて。銃を撃つ訓練は受けましたか?

う~ん。そんな銃を撃つ訓練受けてまあまあ。実弾もない射撃訓練。飛行機が

飛んでくるとすごく***

訓練はどれぐらい受けましたか?
柳川国民学校で約3週間受けました。そこを終えると各自それぞれ部隊に配置
されます。その人達は同じ場所に行きません。満洲へ行ったひともいます。満
洲へ行ったひともいるし、他のところへ行ったひともいる。私は見事に汝夷島
飛行場空軍部隊。

そこは何で行かれましたか?
空軍部隊警備。そこへ行ってまた数日、訓練を受けました。そこで数日訓練を
受けて。韓国人は何人もいません。韓国人は数人いるかどうか。全員が日本の
ヤツら。工兵は全員が少年兵達。日本人少年兵が工兵。それはなにかというと
その時はじめて知ったが、飛行機で敵軍のところへ飛んで爆撃する、夜になれ

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朝鮮という私たちの国があったのだ

38 

ば出撃して***、そんな人達がみんな訓練を受けました。その空軍部隊は。飛行
機もすべてそんな飛行機で。それでそこへ不審な者が入って来られないように

し上部に報告する。不審な者入ってくることもありえた。全員が出入りする人

達は上等兵達。そういう人がくると捧げ銃して礼をして挨拶する、そういうこ

とをする。それが仕事です、それが仕事で。入ってきたら上等兵達の洗濯物を

洗濯してたたんで、よく乾かして手入れをして食事の準備をした。

警備兵をしたのは、解放のその年ですか?
そこで解放を迎えて帰ってきました。8月15日。

そうすると大阪で訓練受けたのも解放のその年ですか?
その年でした。1945年に行きましたから、2月に。

警備兵は何ヵ月しましたか?
大田に1ヵ月ほどいて、大田で訓練受け1ヵ月いて、おもにそれ以後は汝夷島飛
行場で送りました。

そこでの組織生活はどうでしたか?
そこでも軍隊は日本のヤツらだったから、なにがちゃんと出来ていないといっ
て殴られ。私は殴られなかったが、気合をたくさん入れられました。私より年
下のヤツでしたが全員が上等兵、兵長達は。私を脅かす(私は脅かされ)だけ、
それだけで殴られたことはありません。

逃亡したひとはいませんか?
逃亡はできないでしょう。また軍人になって逃亡すれば、死ぬものと思ってい
た。万一、逃亡すれば私の家族も生きていられません。軍人がそうすれば銃殺
です。

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金永元軍人として召集されたら月給もらうのに軍属としていきなり… これは詐欺だよ、詐欺

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もしか月給などは貰いませんでしたか?
貰えなかったです。

では警備兵をして食事、服をくれ……
服ってなに服はそれ一着だ。洗うのも自分でして着る、上衣がすっかりくたび
れてもくれません。靴も一足くれ。そして彼らは出撃すれば全員が死ぬヤツで
すから、そんなヤツらには良い食べ物、良い服を与えました。見てはいないが
上等兵が食膳を運んであげるのは見たから。洗濯も私が手洗いし乾かしてたた
んで、寝床に1ミリの狂いなく折りたたんで置きました。また上等兵ふたりを受
け持つときっちり決められています。おまえは、どのゴチョウ(伍長)を受け持
つのだ。お手伝いしてあげるのだ。おまえが受け持って不自由ないように仕え
よ。諸事にわたり手足となってお仕えせよ。警備兵のときは警備して。

解放はどのように知りましたか?
中隊長さんが臨時休校するから中断すると言いました、解放とは言わなかった
です。臨時休校令が下りたとか、臨時中断すると。各人は帰郷しふたたび召集
令状がきたら、呼び出されたらまたその時来るように、とそう言いました。臨時
で天皇陛下が臨時中止するので休校令が出たので、また募集があったらまた来

るように、また来なくてはいけない。その翌日かそれぞれ帰った。めいめいの

所持品を持ち服は着るか着ないかは各自に任せる、私達は解放になっていない
からまた呼べば来いということだ。また会おうと。私たちはほとんどが若もの
だったが、解放になったことを知らないはずなかった。すべてあの永登浦から
万歳の声が聞こえてきたから、解放になったことは分かりました。そこでもお
およそ雰囲気で分かることだし。だいたい分かりました。

何日に行けといって解放の翌日にすぐに帰宅したのですか?
すぐさま家へ、その日に永登浦で乗ろうとし、(乗船せよと言われたから、) 解

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朝鮮という私たちの国があったのだ

40 

放になったことは外に出てみて知った。あいつらは臨時休校といったが私たち
は外に出てから分かりました。出てくると太極旗が掲げられていたのでそれで
分かりました。

旅費もくれなかったのですか?
旅費もありません。車も無いし私は屋根の上に乗ってきました。あまりに大勢
で。途中で座席があいて座り途中で休もうと降りると、いったん降りてしまうと

もう乗れない。満員で。

手紙もしませんでしたか?
私は一度もしませんでした。大田にいたとき、舒川面の人か私の弟かが面会に
きて妻が来ましたが、その人は、今は兄も亡くなり、その人も亡くなった。私の
妻は舒川から歩いて大田まで来ました。

あ、大田で訓練を受けるときに面会に来たのですか?
そう面会に来ました。一度来ていました。

では結婚されていたのですね?
結婚して娘がひとりいました。

嘱託のときに、結婚されたのですか?
ええ、そうです。馬西面に行って一部屋借りて。部屋、そのとき月々の家賃で
借りられました。そのときは私の姉と義兄が住んでいて近所でした。その近所
に姉が一部屋借りて住んでいて、それでふとん数組と茶碗をつつんで通いまし
た。なんといってもした苦痛よりも、私が行くときの家族、私の家の直系家族
達の精神的苦痛は言い表せません。死にに行くとはっきりと知っている気持ち
がどういうものか。面で一緒だった職員たちがとても良くしてくれ里長達、区

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金永元軍人として召集されたら月給もらうのに軍属としていきなり… これは詐欺だよ、詐欺

41 

長達が、この人はほんとうに気の毒だ、かえって軍人としてそのまま召集され
て行けば月給をもらうこともできた。それなのにこれは軍属としていきなり行

くのだから、これは詐欺だよ、詐欺。なのにただ軍属として行くから、月給もな

いし何もない。行く当日の夜は夫婦抱き合って一晩中泣いて一睡も出来なかっ
た。死にに行くから。どうして生き別れするなんて。

では生存して帰って来た時は、家中が大喜びしてすごかったでしょう?
大田に行って汝矣島に行く時は面会もこなかった、生きていると知っていたか
ら。

面会に行けば面会できたのですね?
面会に来るとね。何人か(顔見知りが数人)入ってきます。入ってくると面会に
行かせてくれます。訓練のときもたくさんくれません。1時間なら1時間ときっ
ちりして。食べ物などを準備し持ってくるでしょう。**そいつを時間が足りなく
て食べきれずにそれを包んで洗面所に行ってそれを食べる。ぜんぶ食べまし
た。内務班に入るとすべて取り上げるので。洗面所に行って食べる。私はそん
なものを洗面所で食べたのは、そのときがはじめてです。どうすればいいです
か、ぜんぶ取り上げてしまうから。それを包んできたものをどうします。時間
になったから洗面所で包んできたのを食べる。

そして解放になってから、どういう仕事をなさいましたか?
そうして軍人として行っていればそのまま復職できたのに、退職願を書いた
から復職できません。どうして? 軍人はできるが、軍属はできない。それで
も復職しようと郡へ、そこへ何度も通いました。郡の職員達、兵事係も知り合
いだったから。軍属のことは変わったから知らない。内務課のひとが行政係長
になっていました、そのひとは舒川に住んでいた。それで訪ねて行きました。
分かりますか、ああ、いつ帰ってきたかと? 履歴書を持参しておいてきて、

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朝鮮という私たちの国があったのだ

42 

その時、長項に副面長制度がありました。それで会計に持参して置いてくると
連絡がきました。何日に一度来てみなさい、という。来なさいといって臨時書
記補に任命してくれました。それで書記補は、書記と一緒に仕事するけれどそ
の当時は、正規職員は書記、私は正規職員ではなく書記補で、書記補として3
年勤務すると正式に書記になり、そのようにするという話はなかったが、規定
にそうなっていました。3年勤務すれば書記になると。書記補が書記に任命さ
れる。書記に、それで長項で3年勤務して舒川係に転勤しました。その時は行
政係に話して、当時はバッグがあれば(何度も足を運べば)すべてなりましたか

ら、同じことなら故郷の近くがいいので舒川で勤務しました。

面談者_チャ・ヘヨン調査官
録取者_チャ・ヘヨン
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア
特記事項_軍属として日本・大阪に動員され1ヵ月も経たずに、
                       軍人として再動員され、 汝矣島飛行場空軍部隊警備兵として服務した
                       軍属、軍人二重動員被害者

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金元逸真っ暗な夜に車に乗せられ、ひきおろされて(乗ってクサガ(草加)で降りて)

43 

金元逸

創氏名

金山元逸

1921.5.12     京畿 漣川郡 金谷面 金谷里 生まれ
1944.12       

陸軍 被服廠 工員として動員 

1945.11

帰還

真っ暗な夜に車に乗せられ、ひきおろされて
(乗ってクサガ(草加)で降りて)

当時の本籍はどうでしたか?
当時は、京畿道漣川郡全谷面全谷里480番地。

その時、日本へ連行される前の家族関係はどうでしたか?
当時の家族関係は、田舎に母が、私はソウルに上京していました。

おじいさんは、ソウルでどういう仕事をされていましたか?
ソウルでその時、建築会社に通っていました。現在、桂洞現代建設があるとこ
ろ、そこの2階で朝鮮共栄株式会社。現場所長が出かけると、現場の仕事を代
行する助手として。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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もしや以前に、練成といった訓練を受けたことありませんか?
ありません。

そのようなことは全然、教練とか訓練をまったく受けずに、中学校卒業後
はそのまま就職されたのですか?

ここソウルにいましたが、田舎から連絡が来たのです。

通知書が来たのですか?
そうです。通知書が来ました。

それはいつ頃のことですか?
そう、それは冬(秋)、44年12月だったようです。私の記憶では。正確には分りま
せん。44年12月か45年2月だったか。

通知書を受けとられて?
田舎から(で)戻れというので帰りました。帰ると、そこにキム・ドゥピルさんや
近所の人が数人いて、誰か引率者がいて車に乗れ、といいました。それで車に
乗って夜に釜山へ行った。

軍属という名称でしたか? あるいは他の名称でしたか?
いずれにせよ軍属ということは聞きました。一緒に行くとき聞いたし、行く道
々でそういうことを聞きました。

村のどこで集まりましたか? 
駅前に集まったみたいです。駅前で、停留所前で。

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金元逸真っ暗な夜に車に乗せられ、ひきおろされて(乗ってクサガ(草加)で降りて)

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では駅前に、何人ぐらい集まったようでしたか?
その時、40人ぐらいいたと思います。正確にはその時行って、日本に行って下
車して集まると42人いました。

どなたか引率した方はいましたか?
そうですね、私は、誰かは知りません。私はそのまま連れられて車に乗りまし
たから。

民間人か軍人か、それもよく分かりませんか?
それもよく分かりません。そのまま夜に行った。真っ暗な夜に車に乗せられ、
引き下ろされて(乗ってクサガで降りて)、あの4階建ての大きな連絡船、それに
乗船して行きました。渡って行きました。

では、その途中でお前は軍属だ、といったような言葉を…
いいえ、いいえ、着いてから私達がどこへ行ったかというと、日本サイタマケン
埼玉県イルマゴン入間郡カワカトムラ川角村というところ、カワカド、カワカド
村。そこへどのように行ったかというと、日本東京のニッポリ日暮里、東京ニッポ

リ日暮里でトウジョセン東上線に乗ってサカド坂戸3)という駅で下車します。坂

戸駅から当時、徒歩で1時間ぐらい行き川角村というところに行きました。川角村
に行くと、スギ(杉の木)やシュノキ(山茱萸)とかの木が、こんもりと生い茂って
いてそれは山でなく、その野原一面にそうなっていて、その川角村に行くと日本
家屋の2階建てがあって、2階建ての家に行ってそこで、そこが宿舎だといった。
そこで10人ずつ、12人ずつぐらいだったか? そんなして班を組みました。そう

して班長、班ができると班長はキム・ドクキさんがしました。

3) 埼玉県坂戸市

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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おじいさんの班ですか?
そうです。そして私が副班長になり、そしてその統率をして、朝食べて飯を食
べてその山中へ、線路というのがたぶん2kmほどです。その宿舎から。その
山に木が、木を数十本伐採して空地をつくってそこに木をこのように、線路を
通じて陸軍被服廠から東京陸軍被服本廠から、貨物車で陸軍の被服を運搬し
てきます。それを降ろして縛って、そこへ、ノズミ野積といいます。ノズミ、野
積。それをこんなに大きくこう積み上げる。そしてひとつ積むとこう覆って。当
時、私達だけじゃなく近隣の在郷軍人たち、日本の在郷軍人たちが11人いまし
た多分。11人いて、また日本高等学生の女学生がいます、また、合わせると私
達は40人ほど、その人達も30人ほどだった。女学生と在郷軍人を合わせると。
一緒に協力してしたが、私は降ろして積むこと積み上げる。何個、何個と積み
あげるが、それすべてそこの田舎で農業している人達が来たので、荷を背負う
仕事を上手にします。それで布地200斤もするものも持ってきて、下ろし上げ
てそうしてそこへそれを積み上げると、それを背負ったまま50mさっと持って
行くと。あとからどんどん高くなるから、こうアシバ足場(踏み台)を置いてそ
れをさっと背負って上がって行って***そうした、***おどろいていた。こんなこ

とができるのかといわれた。そうして行ってみると飯をこんなドンブリ鉢に麦
と米を混ぜて炊いて、飯はその家の台所で炊事して食べたけれど、誰がそれし

たかというと、私達のなかに漣川というところから来た人が、中国人の家でそ
れをした人がいました。その人が飯を炊いたりしたが、飯をどんぶり鉢で飯を
これほどくれてこうして押すとほんのひと匙だけ。それで私がこう言った。これ
っぽっちの飯で荷物を背負えるか、私達のそこの担当は誰かというと陸軍少尉
で、陸軍少尉の下があって陸軍少尉の下は中尉、中尉は当時35、6歳で、ソウ
ルの日本軍隊にいた人です。

日本人ですね?
日本人でマイガツトム、マイガツトム。その人は、私が日本語を流暢によくでき

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金元逸真っ暗な夜に車に乗せられ、ひきおろされて(乗ってクサガ(草加)で降りて)

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たから、私がおもにほとんどしましたが、この飯を食べて私達があの荷物を背負
えるか、私たちにはできない。だが、それをいう前に、それを話す前に、その近

所の畑にジャガイモが植えてあった、サツマイモも植えてあった、その家の裏に
半分に切った***があり、風呂***あったが、焚き口があったが、私も知らなかった
がその翌日、翌々日にか? そこの近所のお年寄りが大騒ぎになった。追いかけ
て来てあれを掘って食べたんだと、うん、畑に植えておいたのを。

掘って食べた?
腹がすいたので夜中に行って、掘って食べたということ、それを。それで私が

こう言ったんだ。マイドツに会って中尉、中尉に会って、飯がこうでは仕事が
できないではないかと、だから、***被害が大きいからどうにか処置しましょ
う、と言うと、(その中尉が)「ソウカ」と言って、トラック4)2台で東京陸軍被

服廠へ行きました。私が行って、私と一緒に上にあがろう、2階に行ったら、星
ひとつは何かな? 准将か? どっしりと座っていて、行ってから私は傍で直立し
ていると、私達はそこの部隊名は必勝隊、必勝隊私達は。

必勝隊といったのですか?
必勝隊といいました。そうだったが、そこに行くと全員が軍服を着ていました。
私達に軍服をさっと着させて、着させてここに星を数個ずつ、布地の星です。布
地の星。軍属の星をこう付けた、付いたその軍服を着させたので私達は着まし

た。軍服を着せた、だから軍属でしょ。行ってから、私に話せといった。陸軍***

(被服)本廠長がそう言ったので。それで私が言った。私ら韓国人は全員農民が

来ているが、韓国人は朝に食べ、間食、昼に食べ、間食、夕に食べて、また夜食

とって1日に6回食べます、6回食べて農作業します。それなのに***指ぐらい***

食べてこれで仕事ができますか、「ソウカ」というと、1台のトラックに小麦粉を

4) トラック

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トラックいっぱいに積んで、もう1台のトラックには唐辛子などをトラックいっぱ

いに積んで、そうして2台のトラックに積んで私と二人で東京からそこまで来ま

した。降ろしてその中国店にいた人に、うどんを打つようにと言って、うどんを

打った。それをホホ。どれほど腹いっぱいに食ったことか。それからは腹いっぱ
い食べて、仕事をもっとたくさんしました。田舎から来たひと達***私がそうです
が、そうこうして3月9日だったか、あのB29が東京、そこから東京は80里足らず
のようだが。***B29のウェーンという音がすると空爆機がなにかして、私達はすぐ

に防空壕に入っていたが、私は出てからこう見ると、B29 がこう飛んで来てこう、
こうして、これが東京なら手榴弾を落として、ここに手榴弾を落として炎があが
っただろう。1時間ほどして一般の日本人女性達、男性達が、幼児をおぶってあと
からこちらの方へ避難してきて、それが3月9日だったか。それを思い出します。
そうしてその後も米軍はその船からカンサイキ5) という当時、B51かがパンパン
それをしたそうです。その飛行機がそのまま屋根の上空を飛ぶと瓦がぐらぐらし
て、私達は木をつかんでこんなふうに、***そうしてまもなく8月14日かになって、
明日は15日正午に集まれと、それで行って集まりました。日本天皇が今やその放

送をした。それでそれを聞いてからは、聞いてからはなにも仕事はしません。仕
事をせずに宿舎でただ食事だけしました。そこにいながら私は東京のあの、***
鉄道局かに通って、私たちは当時42人いましたが、***下関から乗船して渡って
行くもの、汽車、汽車の切符を15日間通って私が準備したんです。

東京にある鉄道局ですか?

うん、東京に、東京に。

つまり戦争が終わってからですか?
そうです。終わって帰らなくてはいけないから。私もどうにかして知って、東京

5) 艦載機:軍艦に搭載した航空機

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金元逸真っ暗な夜に車に乗せられ、ひきおろされて(乗ってクサガ(草加)で降りて)

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にその鉄道***にどこかにあった、それでそれを私が通って、やっと切符をもら
って、私がすべて移してあげて。私達は。

その時、おじいさん一人で行かれたのですか? あるいはその中尉だったマ
イダというひとが一緒に行ったのですか?
一度は一緒に行ったと思います。最初の1回は。それからは私が通いました。も

う11月、11月までいました。11月上旬になんとかできました。汽車に、そこから
トラックに乗って、そこでは雨が降っていました。すでにトラックに乗ったとき

から、宿舎から。トラックで東京に行って東京のどこだったか日暮里、日暮里
駅だったか? そこへ行って汽車に乗り、すぐ下関へ、下関まで行くのに、雨が
ひどく降ってどこかで鉄道が途切れた。途切れてしまって汽車が来られない。
来ないから***日本人女性***その後ろは***そのままこうなっていた。それを持
って全員が外へ出ていました。それで荷物を、鉄道が途切れたのでそこで荷
物を受け取りその人たちが背負ってこちらに持ってきてくれます。私たちはお
金をあげます。2箇所でそのように雨が降りました。そうして下関に行ったが、
下関に行っても雨が降り続いていて、ふたたび渡って来る船が来られますか? 
旅館で15日間、そのまま遊んでいました。毎日、いつ船が出ますか、聞いて、
聞いて、結局はそこで船に乗れず、そこから少し離れた海辺に行って船に乗ら
なくてはと、そこまで行ってそこからすぐに大きな船に乗って釜山にたどり着
きました。婦女会が出迎えおにぎりをみんなにくれて、そして汽車でその東豆
川。38度線がしかれているから、全谷6) には汽車がこないので東豆川で汽車を
降りました。東豆川で汽車を降りて、私もその時、たくさん荷物がありました。
私の父が来ていて、そこでともかく解放になってからは、そのまま少し歩いて
そこまで来て待っていらっしゃったのです。だからすごく待ったことでしょう。
そうして父に会って、荷物を運ぶ人を頼んで私の荷物を運び、徒歩で漢灘江を

6) 口述者の当時の住所地。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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渡れば全谷ですが、漢灘江は***軍が守っていました。だからむやみに渡れま
せん。そのため夜半にその上流まで行って早瀬7)で荷運び人を雇って、早瀬か

らそのまま遠回りしてこうして家に帰ったのです。

汽車で夜どおし釜山まで行かれましたね? そこから乗船して降りてみると
下関でしたか?
下関です、そう。

では下関で降り、東京へ行かれて…
そう、東京の日暮里駅に、私は、このことは覚えています。日暮里。

日暮里に行かれて…
日暮里駅で降り、東上線という坂戸、坂戸というところへまた乗車して行きま
した。田舎に行ってその坂戸というところで降りて、そこからその時は4キロぐ
らいか? その駅から歩いてそこカワカドムラ川角村、川角です、川角。

おじいさん(ご老人)は、軍属だとおっしゃいましたね? その軍属という身
分は、いつお知りになりましたか?
そう、それがはっきりしない。汽車の中で私は聞いたようだ。

それでは当時、朝は何時に起きられましたか?
6時頃か、7時頃か。

朝食を7時頃にとられて、仕事は何時に始まりましたか?

7) 川底や海底が浅く幅は狭く水流の早い場所。

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金元逸真っ暗な夜に車に乗せられ、ひきおろされて(乗ってクサガ(草加)で降りて)

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それはたぶん9時前に出たと思う。

9時前に出られて、12時頃まで午前中の仕
事し、昼食がでて…
戻ってからまた昼を食べて。

また出かけて仕事をされて?
うん、そう。

夕方、何時まで仕事されましたか?
5時か6時かそれぐらいです。そんなに長時
間しなかった。車が、汽車が入って来なくち
ゃいけないから。

では、入って来ない日は、何をされましたか?
入って来ない日はそこで***といって、その宿舎前の庭でこんなの、***棍棒
で…。

あ、軍事訓練を受けられましたか?
そうだ。軍事訓練を受けました。

休憩しないで?

うん。

2階建て宿舎で就寝されたとのことですが?
2階建て宿舎だが下の階で全員寝ました。

金元逸 工員名表

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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では、そこで40人全員が就寝されたのですか?
もちろん、そう。40人全員が寝ても十分だった。広いし家は大きかった。

そのそばに日本軍幕舎も別にありましたか?
ありません。そこから50m裏にコクオイチオという農民がひとり住んでいた。
その裏に、そのひとがその裏でひとり住んで、***いた。

では、おじいさん(ご老人)が仕事されるのを監督するのは?
監督はそのひとだよ。マイタツ…。

そのようになさって、そこで仕事をして月給などは貰いましたか?
月給は毎月貰ったのは無くて、帰るときに、そこの金でたぶん7千円貰ったよう
だ。

7千円もですか?
ええ、当時の金、倭政のときの金で7000円。で、それを持って下関へ行き、15

日間も雨が降り続いたので旅館の宿泊費を払って、少し遊んだりして、そうし

ても故郷へ帰って残った金で***私がして***

7千円ですと、とても大きい額ですが…
そうです、そう。

8ヵ月分にしては、その当時の日本**たちが受取る金は1.33円、この程度で

したが?

そうですか、私はそのことは正確に分かりません。

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金元逸真っ暗な夜に車に乗せられ、ひきおろされて(乗ってクサガ(草加)で降りて)

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ですから1円程度~1.5円程度を貰われて、7千円程度…。8ヵ月しかならな
いのに? 仕事されてから、それなのに7千円程度でしたら、とても多いの
では…
家に持ってきて、家に持ってきた金は5000円程度でした。その5千円で何はと
もあれ私の伯母の息子で、えーと? 私の父の姉の息子ですから。その兄ですが
兄のところに行くと、私は仕事が無いというので、大きな黄牛で馬車を引くよ

うにと買ってあげました。

あ、それぐらいお金がありましたか?
私たちは十分に貰いました。
働いているとき、マイダ中尉や少尉に殴られたとか、そんなことはありま
せんでしたか?
マイタスはほんとうに良い人でした。韓国のあの竜山に行って来たと言ってい
た。竜山にいて来たということだったが。マイダ中尉、その人の上官は少尉で
すがジンペイ少尉が上官で。その当時、私たちが行ってからの苦労は、最初に
行ったときに空腹だった苦労以外に特別に苦労はしなかった。

そこでなさった仕事は、おもに汽車が荷を積んで来ると、それを野積みす
る仕事だけなさったのですね?
そうです。

うーん。ずっとその仕事だけ。そしてその仕事をした人達は、わたしたち

朝鮮人40人程度だけでその仕事をされたのですか?
そうです。他のところの人達は、私達が解放後のことですが、その解放です
が、12時に日本の天皇がなにか話をして終わって、数日後に聞くとそこから数

10里先で韓国の労務者達、労務者達が大韓独立万歳の声を挙げて、日本の奴
らがその場で怒りをたぎらせ撃ち殺したとかどうかしたという、そんな話を聞

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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きました。それで私は、私達は絶対に騒ぎ立てるのはやめよう。ここから生き
て出なくては。ここで大韓独立万歳と声を挙げ大騒ぎしたら、銃で撃たれ死ぬ
ことなる。だがそこにいると、日本の奴らが血走った目をして銃を持って東京
へ来たんだ。つまり行ったり来たりしていた。いっせいに軍隊が解散になった
のだろう。それで自分の故郷に行って、帰ってきてそうしたのだろう。だが、
あ、そいつらがよりによって、***降伏したんだ、といって大騒ぎするうちに、
その周りの労務者たちの噂が入ってきたんだ。大韓独立万歳と声を挙げて日本
の奴が銃で撃って死んだと。

では、もしや仕事中に逃亡した方はいませんでしたか?
いません。

では、さきほどおっしゃった7000円は、いつ受け取りましたか?
もう私達が、すぐに解放になって受け取りました。

汽車の切符は買いましたか? それとも貰いましたか?
そのまま貰いました。うん、名簿を提出して。

提出して?
そこからトラックに乗って直接、たぶん東京へ行きました。東京。私達の宿舎
からトラック2台かで、日本国軍のトラックを出してくれました。それでトラッ

クに乗って。

あ、トラックまで出してくれたのですか?

うん、出してくれて近所の人たちがきて、気をつけて行きなさいと。トラック
に乗ってそのまま東京へ行って、東京から下関まで汽車で行きました。そうだ

な、私たちは本当にその田舎に行って苦労はしなかった。考えてみると。近所

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金元逸真っ暗な夜に車に乗せられ、ひきおろされて(乗ってクサガ(草加)で降りて)

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の人たちも、近所のあの在郷軍人会は、私たちが行ってひと月もしないのに、
私たちの歓迎会だといってしてくれるんだ(た)、そこの日本人達は毎月1回その
時、忘れちゃったんだ、話をすれば(あのサケとか、例えば)。

汽車は、たくさん入ってきましたか? 1週間に何回ほど入ってきましたか?
毎日、2トラック分ぐらい入ってきたし、たまに週1回しか入らないこともあった
けれど、ほとんど。

不規則に入ってきたのですね。
東京被服本廠で載せなければ来ないので。

そうですね。ではそこに積んで置くだけですか? 他の場所へは送らずに?
ええ、送ることはなかった、全部。だから数箇所に積みました。1箇所ではな

く。積めるだけ積むと、またむこう側に積んで。

なにかこう覆いをして?
覆いをして、あとから板切れで倉庫のように表面を覆いました。倉庫のよう
に。だから上空の飛行機からは見えません。***というそれは20mずつ高くなり
ますが、数百回、断ち切っても上からは見えません。どういうまあ***がありま
すか? 実際こういう話はですね、連れて行かれて苛酷になんの苦労をしたと
かいう、

そうではありません。それも少し間違ったことでしょう。強制動員という
と、一般的な考えでは、連れて行かれて殴打され、空腹で、すべてそうあ
ってこそ強制連行と考えていますが、そうではなくて連れて行くというこ
と自体が強制連行なのですから。
そうです。それは。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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では、おじいさん(ご老人)は、モロ*隊という話は、はじめて聞かれたので
すね?
はじめて聞く話です。

おじいさん(ご老人)の所属は、当時、モロ*隊だったという話は、ご存知で
はありませんね?
はい、知りません。

おじいさん(ご老人)は、この40人だけをご存知で、被服本廠で他の朝鮮人
達はどんな被服廠へ送られたのか、まったくご存知じゃないのですね?
まったく知りません。はい。

この部隊とはちがうほかの朝鮮人は会われていませんね?

会っていません。

チ面談者_調査三課 シム・ジェウク(オク)班長
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア
特記事項_口述者は、委員会に被害申告を出していないが、陸軍軍需部被服廠等集
                       団動員事例を明らかにするための調査過程で採録された口述。

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柳鍾雲人にするような扱いではなかった

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柳鍾雲

創氏名

柳江鍾雲

1922.11.28       全北 高敞郡 新林面 茂林里 生まれ
1942.        

長崎県 佐世保市 相浦海軍基地建設 作業 動員  

1945.8.15     解放 以後 帰国

人にするような扱いではなかった

昔の創氏名を覚えておいでですか?
柳江と創氏しました。柳江鍾雲。

現在、お身体の具合がすぐれませんね?
健康はそこで、あの日本海軍錬兵場を、山を崩して錬兵場を造りました。造っ
て昔、鉄クルマ(手押し車)トロッコ、トロッコを押して、その石を運んで錬兵
場を造り造って、それを造りながら****ここにぶつけてしまいました。ぶつかっ
て、それがだいぶ良くなっていたのに、年取って今も具合がよくないです。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

58 

また、特別にひどくどこか具合の悪いところはありませんか?
耳が少し遠いです。

耳はどうされましたか? どうしてよく聞こえませんか?
あそこでなりました、あそこのあのハッパ(発破)、石を、山に穴あけてナムポ

(火薬)、火薬使ってするんだ。音が響いてそこでこんな。

ところで、ナムポってなんですか?

ハッパ。

ハッパ?
石を、石山に穴あけて。

ぺ、いいえ、山に穴をあけたというのですか?

うん。山に穴をあけてナンポで石を崩す。崩しておく。そしてそれを運んで錬

兵場を造りました。

そうすると山にダイナマイトのようなものを?

うん。ダイナ、ダイナマイト、それを入れておいて(でそうなった)。

爆発させてそこで土などを。
はい。土、土や石を運んで錬兵場を造りました。

そこにいる間はずっとその仕事だけされたのですか?
その仕事だけしました。

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柳鍾雲人にするような扱いではなかった

59 

それで耳が良く聞こえないのですね?
はい。ハッパ(発破)の音にそのままびっくりして******その、年寄りになって

とても良くない。年寄りになってしょっちゅう。

日本へ行ったとき、おいくつでしたか?
19歳のときに行きました。

おじいさん(ご老人)は当時、学校はどこまで通われましたか?
そのころ、国校を。

国民学校を卒業されましたか?
はい、はい。

その時、おじいさん(ご老人)が19歳で行かれた当時、家族関係はどのよう
でしたか?
そのころは父母も両親ともいらっしゃって兄弟も兄弟3人が全員、家にいました。

ご両親は、何をされていましたか?

農業をしていました。

ではおじいさん(ご老人)はその当時、国民学校を卒業し行かれたとき、お

じいさん(ご老人) はどんな仕事をされていましたか? おじいさん(ご老

人)も農業されましたか?
はい。農業を手伝った。父母がしていたので。

昭和17年に行かれるとき、どのように徴用で行くことになりましたか?
徴用、11次徴用工員として行きました。11次徴用工員。徴用。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

60 

徴用工員として行かれたのですか?
はい。徴用工員で海軍軍属。

ではその時、令状のようなのを受け取りましたか?
はい。面から令状のようなのを受け取りました。面から通知書が来ました。

おじいさん(ご老人)は当時、その令状を受け取って何日後に行かれましたか?

受け取って、それは昔のことでよく覚えていないが、10日以内で行ったと思い
ます。たぶん。

ではそこへ行かれるとき、どこへ行くのか、なんの仕事をするのか、すで
にご存知でしたね、ご老人は行かれるとき?
行くときは知らなかったです。でも行ってみると日本九州、九州サセボ(佐世
保)。佐世保。

行かれるときは知りませんでしたか?
行くときもどこへ行くのか知らなかった。釜山に行って釜山で軍艦に乗って、
サドナイカイ瀬戸内海8)を通って佐世保で降りました。佐世保で降りてそこで
みんな、アイノウラ(相浦)、日本語でアイノウラ、韓国語では相浦宿舎で、そ
の宿舎に行って帰って来ました。

では、令状を受け取って行かれるときは、家に、いつどこに面事務所に来
なさい、こんな話はされましたか? 令状通知書を受け取って。
新林面で、みんな新林面のひとがみんな集まって高敞に行きました。高敞郡

8) 瀬戸内海

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柳鍾雲人にするような扱いではなかった

61 

へ、そこへ全員で集まって高敞郡で60人だった。1面に20人ずつ。

その労務係担当職員といっしょに高敞郡へ行かれ、そこで60人が集まっ
て、60人は全員いっしょに釜山へ移動されたのですか?
はい。60人が行きました。

なにに乗って行かれましたか、釜山まで? 高敞郡から…
だから井邑へ行って列車に乗りました。

井邑に行って列車に乗られたのですか?
そこへ臨時列車がきて、その木浦近隣から***停車して整然と乗車させます。釜山

に着くと約1,000人いました、1,000人いて、そこ釜山から、日本九州から海軍その

軍属関係者が来ていて連れに来たようだった。そうしてその人が引率して軍艦に、
船に乗って日本九州に行って、瀬戸内海を過ぎて日本佐世保へ行きました。

おじいさん(ご老人)、では釜山に行く途中で井邑、木浦、そうして途中で次
々と人々がみんな乗車して行って、
井邑で乗り、あの金堤で乗り、***で乗ってあそこ、停車駅ごとに乗車した。乗
車して釜山に着くと1000人ぐらいになっていた。

そうして釜山へ行って、列車に乗って降りてみると、ここからまたお話し

してください。

釜山に行って降りて見ると、日本、その引率者が連れに来ていました。

日本人の引率者ですか?
うん。引率者が連れに来ていて、なんか行事を、式を、行事をして、そしてそ

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朝鮮という私たちの国があったのだ

62 

の人達が引き継ぎしてから、その人たちは軍艦にみんな乗った。軍艦に乗って
瀬戸内海を過ぎて日本佐世保港に着きました。

歓送式行事もあったのですか? 行事がどんな内容だったか覚えていますか?
昔のことでよく覚えていないが、きっちりした行事でした。

覚えていることがあれば、歓送式行事というのはどんな行事ですか?

こうして行って、日本に行ってしっかりと、努力をしっかりするんだ、という行

事です。

天皇にそうする一種のそうした行事ですね?
はい、そんな行事ですまあ。そのとき日政のとき、みんなそうしたでしょう?
 
そうでした。それで日本人引率者は、何人でしたか?
何人だったか***は分からないが、5人ぐらい来ました。

そして軍艦に乗って、軍艦はどんな軍艦だったか覚えていますか?
まあ、軍艦はそのときはじめて見たけれど、1,000人ぐらいが乗船しても片方側
が少し埋っただけ。 

佐世保港に到着されてから、そこにまた部隊から誰だかひとが来ていませ
んでしたか?
そこに行くと佐世保に着いて降りると、いろんなとこからトラック9)貨物車が来
ていて、ケイム(警務)というそこの引率者が私を連れに来ていました。

9) トラック

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柳鍾雲人にするような扱いではなかった

63 

警務?
引率者。警務という。警務、ケイム。日本語はケイムで。

その人が引率者なのですか?
引率者がそのトラックに乗って連れに来ていました。

さきほど軍艦に1,000人が乗船したと、そうおっしゃいましたね? ところで
その1,000人は全員同じ場所へ行きましたか?
同じ場所へ行きませんでした。うん。だから相浦宿舎に何人、カワタナ(川
棚)どの宿舎に何人、そのように分けて全員、責任者が人員を数えて乗車さ
せ、全員は各地、各地に解散しました。1,000人が1ヵ所に行ったのでなく。

では佐世保港までみんな一緒に行きましたか?

うん。佐世保港までは同じ軍艦に乗って一緒だったけれど、佐世保で全員解散
になりました。ですが相浦宿舎はその横が第2海軍訓練所でした。

第2海軍訓練所のなかにその相浦宿舎があったのですか?
臨時に建てたみたいでした。

ではご老人の場合はこの相浦宿舎へ行って、残りの他の人達はどこへ分
散しましたか?

どこへ行ったかみんな知らない。

さきほどおっしゃった数ヵ所があるでしょう?
川棚というカワタナ宿舎もあるし、オオムラ(大村)という、大村、大村オオム
ラ、大村宿舎にも行ったし、そんなだけ分かっている。知らない、行ってしまっ

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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たから分からないだろうが?

軍艦に乗って行くとき、引率者は軍属として行く、というような話はしてく
れましたか?
そんな話、あんな話も全然言ってくれないからまったく分からない。分からな
いままただ行った、行ってみるとそんな作業をしていた、という話だ。

おもな仕事はどういうのでしたか?
錬兵場の整地が仕事? それだけしました。だけどそこでも水道班を修理する
班もあったし、またいろんな仕事で作業することが別に、別に作業するところ
がありました。あったが私たちがしたところは鉄クルマ(手押し車)を押して
土を運んで、土を運んでその錬兵場をつくる仕事をしてきました。錬兵場は海
を塞いでそのまま海だった。でも錬兵場をつくるから整えなくてはいけない。

あ、その錬兵場は海だったのに、そこを埋める作業をされたのですね?
はい、断崖を石できっちり塞いで埋めたんだ、***石で。ですがその奥は深いと
ころと浅いところがあるでしょ? そこを鉄クルマで土**運んで行ってそいつ
を埋めた。平坦に、なにをするのに。運動場つくろうとした。

ダイナマイトで山を爆破して、そこから出る土や石を運ばれたのですね?
その手押し車で。山はすぐそばにありましたか?
山はすぐそばにありました。そばにあったその山を、それを爆破して、石の山
はなかなか掘れないんだ。そいつを運んで、鉄クルマで土を運んで、押して錬
兵場を何度も整えていった。

その海軍訓練所で、ご老人は錬兵場を整える仕事をなさって、さきほどの
他の人達はまたちがう作業をされた人もいましたか?

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柳鍾雲人にするような扱いではなかった

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そこから一緒に行った人達もそこで他の作業、水道修理の作業もあるし作業班
もあるし、線路を敷く人もいるし、いろいろです。

おじいさん(ご老人)は、正確にはそこで何年間いましたか?
3年。2年期限で行ったけれど、1年延期になった。休暇をくれたので家に行っ
てきた。

休暇は、何日ありましたか?
そのとき10日間か1週間だったか、約10日だった。10日間。

それで休暇で帰るとき、何に乗ってきましたか?
休暇で帰るときは連絡船に乗って、汽車に乗って帰りました。

そこで、休暇で送り出すとき、部隊内で休暇費とか他の支援はありました
か?
そんなのは無かったです。

それではどのようにお帰りになられましたか?
そこでお金を少しずつくれたのを交通費にして帰ってきました。

1942年度に行かれましたが、42年に行き1945年に解放になって帰ってこら
れたのですか?
はい。

もしや何月に行かれたのか覚えていらっしゃいますか?

1月に行きました。雪が降っていました。1月に行ったと。日にちは分かりませんが。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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そして解放になりすぐに帰ってこられたのですか?
はい。すぐ帰ってきました。

宿舎の施設はどうでしたか?
宿舎は、建物をこう建ててまん中に***がありました。両側に20人ずつ、20人
ずつ押し込んで、9時になると点呼しました。軍人式に。点呼して、現在人員何
人、患者何人、事故何人、そして以上無しと、そのように点呼する。点呼して、
毎晩そうします。朝6時に起床ラッパが鳴ると、さっと起きて洗面して食事をし
て、また仕事に出る。

班長した人は、基本的に国民学校程度を卒業したひとが班長になりました
か?
はい。その程度でなければなれません。

文字も少し読め、日本語も少しできる、そういう人達。
それで、また飯を食べる食事、食事のときは、食事するひと何人、現在、仕事
に出るひと何人、毎日書いて渡さなくてはいけない、毎日。だからそんなこと
が出来る人は、そのように国民学校卒業していなくては、そういうことをでき
ないでしょう?

朝の勤務時間は、何時からでしたか?
朝6時半頃に出たかな、6時頃に出て7、8、9、10、11、12、1、2、3、4、5、6、
約12時間勤務した。

月給はどのぐらい貰いましたか?
当時の金で60円、60円だったかな? 60円、65円、それぐらい貰いました。

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柳鍾雲人にするような扱いではなかった

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家にお金は送金されないで?
休暇になるとそれを持っていってまた使った。

休暇は、どの程度ありましたか?
そこで? 月1回ずつ。はじめは外出させなかったけれど、数ヵ月すると全員を
外出させてくれました。

月1回の休暇以外は、月曜から日曜まですべて勤務でしたか?

うん。そうです。雨に濡れても仕事したんだ。とてもひどい雨で暴雨のように

降って、雨に濡れても仕事した。

そこで月給みたいな65円から貯金したとかとはありませんか?

うん?

そこで貯金をするようにいわなかったですか?

した人もいるでしょう。

訓練所の雰囲気がすごく強圧的ということはなかったですか?
最初は恐ろしいほど厳しかった。はじめは少しでもきっちりしないと、すぐに
びしびし殴られてばかりいた。殴られて、なんであれ少しでもよくできないと、
やってきて殴られるからとても怖かった。そうだったが、もともとひどいのが約

1000人もいれば、そこには変ったひとがいるじゃないか? 一度はケンカがあっ
た、わけもなく。もとからこいつらがやたらとしたので。膳をぶっこわして蹴っ
たり叩いたりケンカになり、そこに警務のひとがいました。そこを監督する人
たち。その人たち***殴られともかく殴った。そのまま数回殴るとひとりふたり
とケンカに加わって殴るじゃないか? そうして憲兵隊、そうして海軍、海兵隊

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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に電話をして銃を向け剣を抜いて、あまりにお前たち***するな、加わらずにい
られるか? みんなそうしてケンカになってしまった。お前たち、ここにいても
いなくても同じだ。お前、どうするつもりだといったから、みんなそのまま引き
さがったんだ。引きさがったが、その後に憲兵隊で、海軍憲兵隊ですべて調査
して行って、主動者を捕まえて行きました。主動者を捕まえて憲兵所に連れて
行ったが、その人たちが戻ってきて聞いてみると、死ぬほど殴られたという。
死ぬほど殴られて出てきて、けれどもその後、舎監がすべてを謝罪したんだ。
すべてのことをそう。その時は飯も少しだけくれ空腹で死にそうだった。飯も
少なくくれて。だからゴミ箱から***拾って食べる人がいました。それで動くと
また殴られ。そうなってからそこで主動者を捕まえ憲兵所に連れて行ったが、
その人達は死ぬほど殴られ戻ってきたが、その後は、人々はみんな不満があっ
てそうなって、それをそのまま調査したんだ。だから何が不満かというと空腹
で死にそうだった。空腹が一番***することじゃないか? それでそうなって、
何だかただ禽獣のように扱って人にするような扱いではなかった。そのことは
良くないことで、いろんな状況を話ししたその時に、それからは少しましにな
った。そうなって、田舎に行ってジャガイモを少し買ってきて、バケツで蒸し
てもくれたし、飯にジャガイモ入れて飯に少し混ぜてくれたりした。それから
は少し良くなった。そうして最初はそのように容赦なく***すぐに捕まって収容
された。

最初に行ってから1ヵ月間の訓練を受け、訓練の内容はどういうのでした
か?
訓練は、前にすすめ、後ろにすすめ。ハハハハ。

実質的に技術訓練のようなことをしましたか? そういうのはありません
か?
はい。ありません。全部すべて***。入ったり出たりして。班長が20人ずつ連れ

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柳鍾雲人にするような扱いではなかった

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て***して。入ったり出たりして。

おじいさん(ご老人)は軍属としての職位は、なんでしたか?
階級はありません、そこへ行って、すぐちゃんと警務に選ばれた人がひとりい
ました。千人ぐらいの中から。

警務になれましたか?
千人ぐらいの中から3人ぐらいなりました。

韓国人ですか? 

うん。韓国人。その中で成績の良いひとを選んで、その人達が、日本人達がさ

せました。

もしやそこから逃亡したひとはいませんか?
逃亡したひともいました。

逃亡できましたか? そこは海岸だったのに。
逃亡すると、そう逃亡したら、その班全員が多くの、まあ配給の酒のようなの、
配給、たくさん配給があるんだよ? そんなものがパッと中止になり、外出な

ども禁止する。それだからその班で責任をとるのは困難なことを、だからその

班から逃亡者がいると苦痛だった。その班の人達は。でもそうしても逃亡する
人は仕方ないです。

逃亡したひとは、何人ほどいましたか? おじいさん(ご老人)がいた期間
に?
何人かは分からないが5人、数人いました。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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配給があったとのことですが? 配給はおもにどういうのを配給されました
か?
配給は酒も、休日は正宗、酒もくれ、菓子などもくれるし、そんなもの。

日本人は、だいたい何人ほどいましたか? 朝鮮人は?

私達は約1,000人だったし、日本人は約300人いたようです。

その人達は工員もいるし、管理者もいるし、そうでしたね?
はい、そうです。そこに守衛もいる、舎監もいる、警務もいる、警務長もいる

し、みんないました。ケイムチョウ(警務長)、警務長。

警備が警務ですか?
警備と変わらない、警務といっていた。ケイム。警務。

警務は、勤労監督をする人ではありませんか?
でも警務というのは、そこの軍需工員達を全員、監督する。その作業場も監督
するし、宿舎に宿舎内も監督するし、全部いっさい監督します。その工員を監
督する。

勤務されたとき、大きな事件や事故、あるいは空襲などを経験されました
か?
その当時は、灯火管制をしていて夕方に飛行機が飛んでくるとみんな***しな
かったか? そんなことはあったけれど特別なことはありません。

いらっしゃった間に、家族に手紙などの書信交換をされましたか? 手紙な
どは可能でしたね?

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柳鍾雲人にするような扱いではなかった

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はい、そういうことは出来ました。

もしや、佐世保の近辺で、慰安所のようなのがあるという話は聞きません
でしたか?
特別にここから軍属として行った人たちを慰安させるというのはない。そうい
うのは見なかったです。また遊郭のようなのはすべてありました。

敗亡したという噂はどのように聞かれましたか、次にその部隊内ではどの
ような仕方で処理されたのか、また部隊内の雰囲気はどうだったか、その
ようなこともお話ください。
ラジオで聞き、はい。送ってあげるといわれ、そうして帰ってきました。

帰ってくるときに引率者はいませんね?
引率者はいません。

シ面談者_チャン・ミラ調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

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薛仁奎

創氏名

荘川仁奎

1921.9.28.  ソウル 鍾路区 生まれ
1943.5.       

日本 呉などの海軍宿舎建設作業及び地下壕建設作業

として動員  

1945.10. 

帰還

人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

荘川なんとですか?

うん。荘川ジンケイ。

当時、連行された当時の住所は、鍾路区城北洞ですね?
はい、そうです。

当時はどなたとお暮らしでしたか?
私たち夫婦でしたが、一番上の子がお腹にいるとき行きました。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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ご両親は…

私が5歳のとき、両親とも亡くなりました。

当時のご老人の年齢はおいくつでしたか?
その時、ええっと、わたし****, そのとき当時私が行ったころは21歳でした、た
ぶん。

当時はどんな仕事をされましたか?
その時は労働です。学べなかったから労働です。

当時、ご老人は建築場で働いて、なんとか生活されたのですね?
はい、はい。貧しい暮らしでした。

では、そこへ行かれたのは、どのように通知書を受け取ったのですか?
それは、私は仕事に出て、仕事をしてあの恵化洞中学校のところでした。城内
に。そこは恵化洞です。ここ私たちは城北洞で。そして学校の敷地を広げるた
め地面を掘る仕事がありました。それで仕事に出て、昼を食べに帰ると通知書
が来ていました。来ていて読んでみると日本で2年間、就職させてあげる、とそ

う書いてあった。2年間。それでそれを持って日本に行ったわけです。

2年間、日本で就職させてあげると?
そうです。

どこに就職させてあげると、そう書いてありましたか?
ただそれだけ、そこに書いてありました。

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

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詳しい内容は、書かれていなかった? 
はい。

どこへ、どのような仕事をするなどは。
どこという指定はなくて、ただ日本で2年間、就職させてあげるという通知書

で、そう書かれていて、行ってみると海軍軍属として、そうして行った。行って
みるとそうでした。

では、その通知書を受け取って何日後に…
ええ、その2日後に行きました。

どこかに集まって行かれましたか?
ソウルに、ソウル駅で集まりました。汽車に乗るため。

その前に、錬成所や訓練所のようなところで、教育受けたことありません
か? 
ありません。そこへ行って受けました。

ソウル駅に集まった方は、何人ぐらいでしたか?
たぶん、その時だいたい列車に乗った人は、だいたいの数は約2~300だったと
思います。ソウル市内から全員行きましたから。列車一両にぎっしり乗って行
ったから。

列車に乗る前にソウル駅で歓送式や行事のようなことをしませんでした
か?
そういうのはしませんでした。 

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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釜山で下車されてから…
そこで下車して船にそのまま乗船して行きました。ちがった、あの初等学校に
行った。釜山に初等学校があって、その初等学校の名前はもう今ではすっか

り忘れてしまった。そして集まって、いったんそこで全員集まって乗船しまし

た。

そこで全員集合し、人員点呼のようなことをしましたか?
そうだ。そう。点呼して。日本の奴らがしました。そうして船に乗ろうとしてそ
のまま人員が終わると乗船しました。乗船して、その船は。行く途中で昼食を
食べました。弁当のようなのを貰って汽車の中で。だから午後になった。午後
に釜山駅に下車し初等学校は近くにあった。その時、私が列車から降りてみる

と。

どの駅で、降りられましたか?

釜山駅まで、終点です。終着駅だ。それで終着駅で降りると、船がもうありま

した。大きな船が一隻。それで私は心の中で、日本に行くらどうして船に乗ら

ないで初等学校に行くのかな、そんなふうに思い行って集まると人員調査、人
員を確認しようと学校に行き人員を確認したんだ。乗船して2日目の11時40分
に到着しました。

もしや船名は覚えていますか?
分からない。なんという船か。私たちのような人を乗せて行くので。日本に向
かう船だと思って乗船してそのまま船の中へ入ったから。

それに乗船して1日行ったのですね、まる1日?
その2日目の11時40分頃に呉市に到着しました。そこは海軍本部です。

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

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では行く途中で食事などは、そこでしてくれましたか?
昼食もないです。2日目の昼食もなかったです。

乗船されたとき、船の中に引率者はいましたか?
引率者ですか? 船の中に? 数10人、数100人が乗船したので、誰が引率した
かそれも分からない。ええ、日本の奴か、朝鮮の奴かも分からない。日本語を
すごくたくさん使っいたから。

乗れといってとりあえず乗ったけれど、引率者がいたかいなかったか、誰
だったか覚えていらっしゃらないのですね?
覚えてないです。それでそこへ行って下船して、また人員を点検したけれど、
その時、着いてみたらすごく暑かった、そこは。それで暑さ負けして倒れた人

もいた、そこでたいがい日本の奴らは、日本語の上手な人達を手先にして引率
しました。日本語の出来ない人は、まあ、使いませんでした。

おじいさん(ご老人)は日本へ船で行く時、行く途中もどこへ行くとか、なん
の仕事をするとか、そんな話を聞かれなかったのですね?
それは分からないでしょう。秘密なので。

ここに1943年5月に行かれた、とあります。これはおじいさん(ご老人)が話
されたことを書いたものですね?

★はい。そうです。◎あの暑いときだったから、その程度だよ。★今、お話なさ

っていることも少し記憶が前後していますが、そのことをはっきり覚えておら
れないようですね。今のお話と少しちがう部分もありますし、私にその時にお
っしゃったお話と。◎その時、暑い天気だった。そのままそうなのかと推測し
てくれなきゃ。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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呉港に到着し、おじいさん(ご老人)が正確にいらした部隊名を、もしかし
て覚えていますか?
その部隊、そんなことは秘密らしいよ。軍隊だ、軍属なんだよ。どんな場所へ
行くという、そんなことも分からない。そこへ行って下船し11時40分頃で、昼
食も食べさせてもらえずに、そこで人員点呼をして人々を分散させて、どこか
へ送って全員別れました。各地域へ。

では、そこへおじいさん(ご老人)が到着されて、また他の場所に船に乗っ
て移動され、その仕事場までまたちがう船に乗って行かれたのですか?
船には乗らなかった。自動車。

トラックに乗って行かれたのですか?
トラックで。2~30人ぐらいをトラックに乗せて連れて行ったんだ。

到着したのはどこでしたか?
現場ですよ、なに。

もしか移動中に、逃亡した方はいませんか?
いません。それは。

トラックで移動して到着してみると、その現場だったというお話ですが、

そこはどのような仕事をする現場でしたか?
現場は、その現場は海辺で、昔は塩をつくっていました。そこで山を崩して埋
めて、そこで何をしようとしたか、海軍宿舎を建てようとしてそこを埋めたん
だ。うん。

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

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するとおじいさん(ご老人)は行かれて、海軍宿舎を建てる仕事をなさった
のですか?
★海軍宿舎を建てようと、塩田を埋めたのです。

塩田を埋める仕事をされたのですか?
はい、小さな山だけれどその山を崩してそこを埋めた。埋めてそこをすべて
埋めると、また他の場所に移動する。また他の場所へ移動して、ずっと移動で
す。だからそんなことも分からず行ったんだよ。

あ、ではずっと地域を移動されながら…
そうです。移動しました。移動して行ったんだ。1ヵ所にいたんじゃありませ
ん。

呉市にいらっしゃって…
そこにはいなかったです。そこにそのままいた人はいなかったです。
 
呉でなく、他の地域へ移りましたか?
そうです。全員分散しました。呉市、そこにいません。人を置かなかった。そこ
は海軍本部だから、そこで私達がすることって何かありますか?
 
初日に到着してすぐ仕事をされたのですか? または翌日から仕事されたの
ですか?
それ、翌日にそこに行くと、行くと暗くなってしまった。11時40分に下船して人
員調査して、夕食も食べないで行って配置されて、そこ行って夕食もらって食
べて寝たんだ、寝てその翌日から仕事したけれど、その村の名前は分かりませ
ん。私は。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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最初は海軍宿舎をつくる仕事をされて、次は移動してどんな仕事をされま

したか?

それも海軍に関係する仕事です。そんな宿舎を建てるところへ行きました。急
斜面***(宿舎)建てるところに行き、そこへ行って出来上がると、また他のと
ころへ、また他のところへ、だからすべて行くときに、どこの村へ行くといわな
いんだ。

そのような話はいっさい無く…
◎はい。それは海軍軍属だから。★おそらくそのために何ヵ所も転々されたよ

うですが、最後に解放された時は大阪、はい、そちらにいらっしゃったようで

す。そうして大阪から船に乗って帰って来られたようですね?

大阪から帰って来られたということですね?
★はい。そうらしいです。だから全国どこへ行ったかも分からず、ずっと捕ま

ったまま転々とさせられたのでしょう。◎お。そうだ。捕まえて連れまわしたん
だ。

宿舎を建てる仕事をされて、また他にどんな仕事をされましたか?
★防空壕掘りをされた、とおっしゃったし。

防空壕も掘られたのですか? それもすべて移動しながら?
★そうです。防空壕掘りを少し多くなさったようです。

もしや、ダイナマイトなどを使われましたか?
あ、私が行ったところではダイナマイトを使ったところもあるが、それは洞窟
じゃなく、最初は海岸の崖を崩し海を埋める仕事だったからそれは**広い範囲
を活動するからそうしたけれど、大阪周辺に行って竹林畑、竹の根っこがすご

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

81 

く張っていて、それをなかなか切り倒せなかった。そこの穴を掘っても、****

だ。穴が掘れない、ほぼ中間ぐらいのところまで掘って崩れて、(しまい)この腰
を打ったんだ。

大阪で仕事されたとき、最初に移動されたときにソウル地域から一緒に行
かれた30人は…
いません。みんな別れて。

その人達とみんな別れたのですか?
そうです。みんな別れました。移動するたびに別れました。そして日本語が
上手な、内容が分かってみると、日本語が上手なそんな人は日本で1年間の技
術、労働も後方で仕事する能力がある人は、南洋群島へ送られたんだと。それ
でみんな別れ別れになった。帰ってくるときは私ひとり帰ってきたんだ。

日本語も少しでき、技術が少しある人はみんな南洋群島へ送られたという

のですか?
そうです。そこでそこは日本の訓練所です。いうなら訓練所でした。日本本土
は訓練所みたいなものだった。そこで1年か、2年か訓練して日本語も上手で仕
事がちゃんとできると、第一線へ送ったんだ。

その第一線は南洋群島でしたか?
そうです。南洋群島だよ。

一緒に仕事をされた方で、もしか選出されて南洋群島へ行かれた人達は
いますか?
ええ、います。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

82 

その人たちが南洋群島のどこへ行かれたという話は、聞きましたか?
シンガポールへ向かう途中、すぐ近くにまで行ったのに爆弾3発が海中にズド
ンと投下されて死にました。みんな死んでしまいました。

そのような話をどなたから聞かれましたか?
その甲板で仕事をし、恵化洞に住んでいる人だが、その人もこの**学校に通
いました。甲板で掃除をしていて爆撃され、そのひとは火傷して病院にきまし
た。日本へ。その人から聞いた話だよ。

その方は、生存されていますか?
分かりません。そのとき別れたから。

そのときお帰りになってほどなくして、その方に会われ、そういう話をお
聞きになったのですか?
そうです。その人は私たちと一緒に移動しないで、別れて仕事をしていて、そ
の人は知識があるので南洋群島へ行くように、そこに入れられたんだと。それ
で行くとき甲板にいました。だから火傷した。爆弾に撃たれて。それで日本に
病院治療に来たので、私たちはそのことを知って会って話を聞いたんだ。その
人に。

日本でお会いになったのですか?

そうです。病院で。

どこの病院で会われたのですか?

海軍病院だったけれど、どこだったかは分からないでしょ?

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

83 

その人の姓名は、覚えていますか?
姓を、覚えていられますか。その人ひとりだけ生存した。

その人は恵化洞に住んでいたんですか?

うん。恵化洞に住んでいたよ。

最初に行く時は、その人も一緒…
集まりました。同じ場所に集まって、15日くらい飯食べさせて遊ばせました。
でも奇妙なんだ私が考えてみると。どうして他の現場へ行けば仕事をさせる
のに、仕事をさせずに飯だけ食わせて遊ばせるのか、これは変だと思ったけれ

ど、まあ当時は私も本を買って**(日本語)を少し勉強して**ついて勉強した

から、だいたい出来ました。出来たけれど。15日目に運動場に集合しました。
そして集合して全員、列になってぞろぞろ並んで、そしてそこにひとり、ふざ
けた子がひとり、いたとしましょう。その子が私の後列に並んでいて、何度も
私の背中をちくちく突っつきました。ショウカワ(口述者の名前)、ショウカ
ワ、ちぇっ、あそこ調査に来たのは、南洋群島へ行く人達、日本語が上手か下
手か、その調査で来ているから、ショウカワは行くな、というのです。日本語出
来ない、そうしろと、何度もこの背中をちくちくしました。それで私の横に立っ
て、横にきて横でひとが聞いているのに背中を突いた。知らない、そうしろと。
それで面食らってしまって分からない、としたんだ。私も日本語分からない、
って。

★日本で仕事をしたとき、そうだったのですね?
◎そうです。**工事現場で集めて連れて行こうとそうしたんだろう。それでそ
の人がちくちく突いたからそう、私はその人がちくちく突いたから、面食らって

しまって日本語分からない、とそうしたんだ。それで選ばれずにすんだ。それ

でその人は行って、行って死んだだと。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

84 

さきほどお話なさった、集まったという場所はどこですか? 南洋群島へ行
かせるため選出した場所は、どこだったか覚えていますか?
韓国でいうと、呉は道(市)になります呉は。呉の港湾は呉の陸地で、だけど私た
ちがその呉で降りたところが、港の海軍本部だ。その海軍本部の降りた場所で
はなく、離れた、かなり離れたところにその宿舎がありました。徴用で行った
人をそこに集合させてそこで選抜してそこで南洋群島へ送る場所が別にあった
んだ。行ってみると。そんな場所です。とにかく。

各地域で仕事をしていた人達が、南洋群島へ行く人を選出するときに、ま
たいっしょにみんながそうして集まり、その人達が南洋群島に行く人達か
そうでないか、日本語や技術の熟練程度によってその人達を選んで南洋
群島に送る人達を送って…
残った人は前に仕事していた場所へ送り返した。20日ほど遊び食べました。そ

こに入れられたから。入れられて私も日本語はだいたい理解できたから、私も

行こうと決心しました。南洋群島へ行こうと一度、軍隊だから決心したのに、
そう、行こうと思ったのに、その後ろで背中を何回もちくちく突いて、分からな
い、そうしろといって、それで面食らって、その横の奴も分からないといったん
だ。日本語分からないと。そうなのだ。それでその人は行って。そこへ行く途
中にそこへほとんど到着するところだったのに、その爆撃を受けて、飛行機、
飛行機に爆撃されて死んだ、全滅してしまった。海に沈んでしまったんだ。そ
れでその人は私を生かしておいて行って死んでしまったんだよ。

ですが、その人は、さきほど船の甲板員として仕事中に火傷して…
★その人とはまたちがう人です。

おじいさん(ご老人)は、たくさん場所を移動されたりされていますが、そ
の中にもしや覚えている同僚や上官、日本人上官でもいいのですが、覚え

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

85 

ている名前がありますか?
覚えているのは、私は仕事したことは覚えているが、他のことはすべて忘れて

しまって分かりません。

どなたの名前も思い出せませんか?
それで、覚えていること、ひとつ言いましょうか? 覚えているひとつは、日本
の奴は急迫した時だったから、日本と韓国はもう差別のないひとつの国だ、と
いって一致させる時があるのよ (合併した時がありました)。そんな頃に日本の

宿舎を1回ぶち壊したんだ。米と食糧をくれるそこの管理者を舎監といいまし
た。宿舎、炊事のその責任者を舎監といったが、こいつが食糧をすべて横取り

してたっぷり食べて飯を少ししかくれなかったんだ、腹が空いて宿舎を1回ぶ

ち壊したが、そのときどんな力があってぶち壊したかというと、お前は我々を
合邦して人間区別はしないといっただろう、なんで人間差別されたうえ飯も少

ししかくれない、おい? どうしてお前は人間差別するんだ? 絶対に問題は
ここにあります。あいつら日本人達は、貸してもらうというのがありません。借
りていくのです。借りれば翌日に返すんだ、返さなければダメだよ。たぶん、そ

のはずだ。それだからひと部屋でいっしょに寝たが、日本人ひとり、若い人ひ

とりとわたしの3人で寝たが、ひとりはこの腕力が弱くて軍にいけなかった、怪

我して。年取ったのは年取ったので軍にいかれずに徴用できて、それでひと部
屋で3人が寝たが、その年取ったのが、配給でもらってタバコを吸っていたが、
そいつも私もまったく同じように配給をもらってタバコを吸ったが、あ、タバ

コを1本借りたいといったんだ。明日返すからタバコを1本借りたいと、だから

貸してあげたんだ。それで仕事に行って帰ってきた夕方には返さなくてはいけ
ないのに、タバコを返さないでもう1本借りたいといったんだ。それで私はすぐ
そこでバカヤロウ(馬鹿)、***こいつめ、昨日借りたのを返さずにまた借りた
いっていうのか、お前も私も同じようにもらったのに、どうして返さないんだと
いうと、そいつが馬鹿野郎、と怒鳴った、ゲス野郎***棍棒を持って戸とか食堂

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朝鮮という私たちの国があったのだ

86 

などもおかまいなしに、そこの韓国人は私たち同胞だけで5~60名もいたんだ
が、そこで寝ているとドタバタしてうるさいから、みんなが見てすべて壊して
あとかたもない。それを口実にどんな権力を使ったかというと、我々すべて同

じ民族なのに何故差別する、ということです。だから我々を差別したから気分

が悪くてぶん殴った。それでかえってそいつが懲役になった、私たちより。そ
れで1回騒動をおこしたんだ。

同僚の名前を覚えていませんか?
あ、同僚達はみんな別れてしまって海軍病院から出てしまって、いません。

日本人の上官も覚えている方はいませんか?

いません。

そこでもっとも高い人の職責はどうでしたか?
そこで高かった人達、その人達ですか? すべてこうじっと考えてみると、それ
は公務員として、日本人の奴らは生活して、みんなもうなんというのか? 退
職? 退職するでしょ? 退職した奴らを連れてきてそれをさせた。
★そうすると年輩でしたね?
◎そうです。年輩の人達。若い人はひとりもいません。

移動するたび、宿舎はいつでも有りましたか?
宿舎が無いのでそれをつくろうとして、寺へも行って寝たことがあります。

宿舎は、幕舎のようなものでしたか?
ハコバン(掘っ立て小屋)のように建てて部屋はひとつずつ。食堂は別でその
端にあって。

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

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ひと部屋に何人、寝ましたか?
3人。

食事はどのように、そこで食べましたか?
飯はもらってきて食べます。

そこには食堂はありましたか?
ついて行っていました(別の場所へ行きます)、食堂は。飯櫃。飯櫃を持って行
き、そこに人数分をくれると持って来て食器に盛って食べました。

食事はどういうのがあったか今、覚えていますか?
米、麦、豆は良いから混ぜてくれなかった。たぶん。豆は無くて麦が多かった。
小麦も入って。

おかずは?
おかずは、私たち韓国の食べものもそこも似たようなものです。

種類は多かったですか?
種類がどうして多いですか? 2種類なければ3種類で。汁ひとつと。それにキム
チがあればキムチ1種類と、2種類なければ3種類で。

一日の勤務時間は、何時間ぐらいでしたか?
勤務は朝9時に始まり午後は昼食で1時間あって、それから日が短かったり長か

ったりするから時間をどう測ればいいのかな?

普通は9時に始まり6~7時になると終わりましたか?

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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そう、その程度です。そうだと思います。

勤務している時、もしや日本人管理者や、そんな人達から過酷な仕打ちや
殴打などされましたか?
あ、あります。殴られたこともたくさんあります。国が無い悲しみをそんなとき
に思いました。

おもに、どんなときに、そのような仕打ちを?
仕事を終え、宿舎にもどり夕食をとって、退屈なので花札を少しすると、花札
を少ししたからといって、こぶしで1回殴られ奥歯がすごくはれました。ほんと

うに恐ろしかった。そんなことが国を失ったことの悲しみです。もうひとつはあ

の九州、九州、わかるでしょ? 海から離れたそこの島。そこに行って何をし
たかというと、飛行機の防空壕をつくったけれど、ヤ、その時に行って私が***
炊事した。飯、飯炊き。そこに行って初めて降りてサ***またそのとき集めまし
た。工事場に***して連れてきて、私たちは50人くらいが行ったが、ソウルのひ

とが、そのなかに数人いました。行ってばっと降りると***分かる人、挙手せよ
というので、すぐに手を挙げてしまった。その時、飯炊きをさせられました。ご

飯。

九州ですか?
九州です。食堂の仕事をしました。
★でもどうして殴られたのですか?
◎私の話を聞いてごらん。そして防空壕を現場に出て仕事をして、私たちは食
堂で炊事をしたが、アイゴ、時間が少し早かったので、その人達が帰ってくる
かこないかと門の外で少しこうのぞいていたら、アヒュー、そいつに見つかっ
た。外をぶらついていたと。ひとが仕事しているのに、外をぶらついていたと
いって、14人を整列させ棍棒でぶん殴られた、私は最後だったが3回しか殴ら

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

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れなかった、腕が痛くて。

月給は貰いましたか?
月給ですか? 月給というのかな? タバコ代でもそうか?

直接に貰いましたか? タバコ代程度の月給を月々貰われましたか?
そうです。なに、私の小遣いにも足りなかった、それ。

では、おおよそどれぐらい貰ったように記憶していますか?
月に10円程度もらったと記憶しているみたいだ。

週7日間、すべて仕事をなさいましたか? あるいは月曜日から土曜日まで
仕事をされましたか?
遊ぶ日はありません。休む日はありません。仕事をずっとします。

1週間ずっと仕事されたのですか?
そうです。1ヵ月でも2ヵ月でもそのまま、1年だったら1年間ずっと仕事をしま
した。休んだ日は無かったです。

では、外出は全然無かったのですか?
外出も特に。金があれば外出するでしょう。

ですから外出は可能なことは可能だったのですね?
はい。ちょっと外出したいときは、少し出かけて来ます、と申告し外出しまし
た。ぶらぶらして来ました。休みの日はなかったです。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

90 

仕事された場所の近くに、朝鮮人村とか朝鮮人達がもしや住んでいた村
がありませんでしたか?
朝鮮人が住むところは大都市に行って朝鮮人は何かして暮らしたでしょ。地方
に朝鮮人で住んでいる人はいなかったです。

おじいさん(ご老人)は、貰った月給で貯蓄をしたとか、そんなお金はあり
ませんね?
貯蓄をなにでするんですか? アイゴ、ハハハ。

あちらにいらっしゃったとき、もしや家に手紙を送るとか手紙のやり取り
などは可能でしたか?
手紙は出来ました。

では、家からもご老人のところへ手紙がきましたか?
そうです。この家の消息はそれでも聞かなくてはならないでしょ。

解放になった話は、どのように知りましたか?
昼に仕事をして8月15日に昼食をすませると***(日王)演説する講演するので
現場は行くなと言われました。それで行かずにいると、ちょうど1時になると講
演しました。日本***(王)が。

日王が降伏するということを、ラジオで聞かれましたか?

そうです。ラジオで放送しました。

それを、ラジオを一緒に作業された方達も、みんな一緒に聞きましたか?
そうです。みんな一緒に聞きました。全国民すべてがその時間にすべて同じよ

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

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うに聞きました。

勤務されたときに、直接に体験したか、あるいは聞かれた話で、大規模戦
闘があったとか、大事故があったとか、そういう話をもしや聞かれました
か? あるいは直接に体験したとか……
私たち韓国人同士、日本と敵だから飛行機が空襲すると、壕掘りを中断し壕のな
かでヤ、ヤ、ヤ、ヤ、空襲だ、これだ。いいぞ。いいぞ。壊せ、壊せ。ハハハハ。

その空襲はどれぐらいありましたか?
アイゴ、なに、毎日です。毎日。

最初に行った頃は、そうではなかったでしょう?
それは私が行って1年ほどして空襲が始まり、それ、とにかく大阪が最初に破
壊された。大阪が。

日本が敗亡した事実を知ってから、ご老人は1945年10月5日に到着したと

おっしゃいましたが、8月15日後の1、2ヵ月間は何をされていましたか?
遊んでいました。なんの仕事をします? 仕事もしませんでした。

大阪にずっといましたか? 2ヵ月間?
そうです。そこにいて解放になって帰ってきたから。

2ヵ月間いらっしゃって、何をされていましたか?
何するって何があります。していた仕事をしました。

仕事されたのですか?
仕事を中止せよ、という話は無かったので、その仕事をしました。だから金を

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朝鮮という私たちの国があったのだ

92 

少しでも貰って食べられるじゃないですか。そして米の配給はくれたからご飯
食べて。
★日本人達が8・15に敗戦した後も、仕事していたところにそのままいました
か、という話です。
◎そう引き続きいました。自分の国なのにどこへ行く。自分の国だから自分の
国にそのままいるでしょ。
★日本人管理者はそのままいたのですか?
◎そうです、その部隊で解散させないから、そのままいたんだ。

解散させたのは、召集解除したのは2ヵ月後ですか?
違います。その人たちがいるのを見て出ました、なに。解散はすぐしてくれな
かった。
★どのように帰ってこられたのですか?
◎そこから大阪の海辺に出ると、釜山に来る船がありました。

解放2ヵ月ほどして召集解除したのですか? そのまま出てきたのですか?
★ちがいます。解除したではなく、韓国語でいえば無断離脱になります。

そのまま無断離脱して帰ってこられたのですか?
そうです。

何人か一緒に帰ってこられましたか?
私が仕事した現場には、現場には20人ぐらいいたが、帰った人は15人ほどで、
残りの人はみんな残り、会ってきました。帰らないでそこで住むと。

そこを出られてどの港で乗船しましたか? 朝鮮に帰ってこられるとき…
それはそのあの、韓国まで来る船じゃなく、日本からただ韓国へ貨物その、連絡

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薛仁奎人間差別されたうえ飯も少しだけくれて

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船の埠頭まで乗せてくれて、いくらあげたかな、その時、そこまで5円あげたか?

日本を往き来する連絡船で帰って来られたのですか?
日本の連絡船じゃなく貨物船で稼ぐ船。

呉で日本の貨物船に乗って、下関港から釜山港に来る船に乗られたのです
か? 関釜連絡船に乗船されたのですか?
大阪で、それは、まあ船とは言えない。木船。機械は付いているが木船で小型
の海に出て稼ぐ船。韓国へ人が帰って行くから、韓国へ人を乗せてあげて稼ご

うとして下関まで。そういうの、そういうのに乗りました。そこから下関までそ

んな船できて、下関に来て連絡船に乗りました。

大阪でいちばん最後までいたところありますね?その現場から出て来ると
き、あちらのほうで、今から帰って行く人達に交通費などくれましたか?
そうでなければ配慮のようなことは、なかったですか?
ありません。日本の奴らは会えば称賛はしてくれました。貴方がたは1等国民に
なっていいなあと。私達はもう負けてしまったと。私達は2等国民で、貴方がた
は1等国民だから、どれほど良いかと、このように称賛してくれました。

では、帰って来られたときは、おいくつでしたか?
その時は何歳だったかな? 年齢も忘れた。ホホホ、25歳だったかな?

ご家族は帰ってくることをご存知でしたね? 手紙のやりとりをされていた
のですから?
あ、家では知らないです。それは何故かというと、解放が突然なったから、ほ
かのあらゆることが、すべて中断されました。おそらく。そうでしょ? 書信連

絡は出来なかった。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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周辺に、ご老人が強制動員されたという事実をご存知の方はどなたかいら

っしゃいますか?

知りません。どうなったのか、たくさん死んだでしょう。そう思っています。数
人は生存しても韓国に帰ってこないで、そこに残って暮らすという人はたくさ
んいました。

最後に、私たち委員会や政府に望まれることがございましたらお話してく
ださい。
★父は、話したいことはないようです。私は少しひとつ言いたいことが、大金
を望むのでもなく、決定なりとも早く出して、他界する前に恨を少しでも解い
て差し上げられればと、ただそのことをお願いしたいです。大金を、お金は多

くはなくても少しでも良いので、そうして自分がその時、そうして苦労したこと

はもういいんだ、なにかそんな恨がとける、それを少しお願いしたいのです。
こうするうちに数年経てば、みんな他界されてしまうのに、その恨を。次にもう
ひとつは今その当時に対日財産権請求にこのことはすべて入っている事項では
ありませんか? その当時にそんなことをした人がまだ生きている人がいると
いうことです。金鍾泌さんとかこのような人たちは生きているし、また朴正熙
の主導でこうなったのですが、その娘は現在政治圏にいるし、そんな人達が率
直に真摯に一度頭をさげ、誠実な気持ちで謝罪なりとも一度しなくてはいけな
いのではありませんか? これはあまりにも国民を愚弄する仕打ちです。またこ
のような人々を欺瞞することであるし。

面談者_チャン・ミラ調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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朴魯英検閲を受けて引っ掛かれば手紙も出せない

95 

朴魯英

創氏名

正木魯英

1927.3.22.  忠南 燕岐郡 全東面 金沙里 生まれ
1945.1.       

沼津市 海軍123施設隊へ動員

1945.8.15.  解放後 帰還

検閲を受けて引っ掛かれば手紙も出せない

おじいさん(ご老人)、その写真、そこで撮られたのですか?
その時、その徴用に取られた時に撮りました。
 
この時、何歳でしたか?
この時は18だったかな、19だったかな? それは国民義勇が初めて出て、それで
行ったのです。国民義勇は私が多分最初の番になったようです。国民義勇で行
ったのだから? 国民義勇で行って、何処に行ったかというと、静岡 沼津市10)と

10) 静岡県沼津市を示し、沼津には海軍工廠があった。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

96 

いう所に行って、そこで1,2箇月だったか居
て、イスナンハオカ11)という所に移動しまし
た。そうしてそこに居て、解放になって帰っ
て来ました。

今年で何歳になられますか?
住民登録上では80で、本来は81です。
 
その当時、日本名は?
マサキ、日本語でマサキ、正木。木の木。魯
英。

ソウルで生まれ育ったのですか?
いいえ。忠南で生まれて、2歳か3歳の時に上京したのだと思います。多分。

 

当時の家族関係はどのようになっていましたか?
その当時の家族関係は、お母さん、お兄さん、兄嫁、以上でした。

 

ご両親は?
お母さんだけでした。

 
それでは、兄弟はお兄さん以外にはいらっしゃらなかった?
そうです。そうです。

11) 伊豆長岡。伊豆長岡は静岡県東部の田方郡にある町。2005年4月1日、韮山町等と併合

して伊豆の国市になった。

国民義勇 当時

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朴魯英検閲を受けて引っ掛かれば手紙も出せない

97 

その当時、何をなさっていらっしゃいましたか? お母様は仕事をなさって
いましたか?

していませんでした。お母さんは。

 
そうするとお兄様は
お兄さんは当時、郵便局に、西大門郵便局に勤めていました。郵便局に。

 家計の状態はどうでしたか?
そりゃ苦しかったよ。
 
お兄様が仕事をなさって家族の生計を立てていらっしゃったのですか?

はい。

 
おじいさん(ご老人)、何年度に強制動員されたのですか?

だから、解放になった年だよ、その時だよ、その年だよ。解放になった年に行
き、行って、解放になって、帰って来たよ。解放になった年。それが何年度だ?

 

1945年。45年度ですか?
その年、1月に行きました。

 

1945年の何月に帰って来られましたか?
それは9月だったか?詳しくはわからないよ。9月あるいは10月だったと思う
よ。

 
動員された地域が何処でしたか?
私が?静岡 沼津という所に行きました。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

98 

静岡県沼津市。
沼津市 海軍123施設隊。
 
海軍123施設隊ですか?

うん。それは海軍123施設隊だと言った、そこではその当時、部隊はよく知らな
くて、そこは最後に居た所。イスナンハオカ。

 
ナンハですか?
ナンハ。イスナンハオカだったか?イスナガオカだったか?よくわからない。
イスナンハオカマチと言った、その当時。そこに居て解放になったんだよ。最
初に沼津市に2箇月だったか居たと思うよ。それからそこに行ったんだから。
 
それでは沼津市にいらっしゃって、最後にいらっしゃった所がイスナンハ
オカマチですか?
そこに、そこで駐屯して…あの山奥、この奥地等に行って整地作業をしたんだ

よ。

 
そこが一番、最終的にいらっしゃった所ですか?
その二箇所以外には居なかったよ。初めに沼津に居て、それから行ったんだ

よ。その部隊が一つの部隊のようだった。だから我々が軍人だとすると、そこ
は多分補充隊だった見たいだよ。

 
補充隊ですか?
補充隊かどうか。そこには長く居なかった、2箇月居てイスナンハオカに行った

よ。

 

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99 

ここ沼津市が補充隊だというのですか?

補充隊かどうか、ともかくも、その部隊はよく知らなくて、そこに1,2箇月居て、
イスナンハオカに行ったんだが、そこで私の部隊名を確実に知ったんだ。

海軍123施設隊という部隊だというのをイスナンハオカに来て判ったので
すか?
海軍123施設隊で合っているようだ。
 
全部これが静岡県にある所でしたか?
それがイスナンハオカなのか静岡なのかよくわからないよ。静岡。とにかく、
シミズマツ12)という所があったが、シミズマツから乗って行って、田舎に入って
行くとありました。イスナンハオカマチという所が。
 
何箇月程度いらっしゃいましたか?
それは、ここを1月に出て、8月までだよ。
 
その時、おじいさん(ご老人)が連行された当時、お歳は何歳でいらっしゃ
いましたか?
その時、19歳だったか?17歳だったか?記憶が、17だったか、19だったか…
 
その当時、おじいさん(ご老人)は何をなさっていらっしゃいましたか?
その時、日帝時代、工場に通っていました。労働だよ。
 
工場で工員として仕事をなさってましたか?

12) 静岡県駿東郡清水町:沼津市の大部分は駿東郡に属する。

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100 

ただ、年が若いから下で。その~シタと、日本語でシタと言うでしょう?職工の
下で…

 
何の工場ですか?

まあ色々とあちこち通ったよ。主に多く通ったのはゴム工場でした。

 
学歴はどこまで行かれましたか?
学校は小学校中退だよ、2学年。3学年に上がろうとしたが、行けなくなった

よ。

 
そこに行くようになったのは、どのようにして行くようになったのですか?
その当時、国民徴用が来たから。国民徴用。

誰が行けと言ったのですか?
令状が来たから行かなければ。
 
令状を受け取って、その後、何時、何処まで、何処に来いというそのよう
な…
その時、令状を受け取って、区庁に集結したよ。多分、麻浦区庁。そこで集結

したと思うよ、麻浦区だから。

 
令状を受け取ってから何日で行きましたか?
令状を受け取って10日?10日も経たないかな、10日前に。
 
一週間後に麻浦区庁に行って見ると、何人くらい集まっていましたか?
約150から200人?

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101 

麻浦区庁に集結した後、次に訓練所や養成所のような所に行って、訓練を
受けましたか?
行かなかった。
 
麻浦区庁に行って…
そのまま日本に行ったよ。
 
その時には、家族に話をし、荷造りをして、麻浦区庁に行ったのですか?
そうだよ。
 
集まった人たちは、その日、そこに集まって直ぐに日本に行ったのです
か?
そうだね、そこの記憶がはっきりしないね。
 
それではそこに行った時、誰が出て来て話をしましたか?
区庁から引率しました、全員。
 
引率していた人は韓国人。朝鮮人でしたか?
韓国人だったと思う。
 
麻浦区庁に集まって、ソウル駅から汽車に乗って行きましたか?
はい、ソウル駅から汽車に乗って釜山に行き、船に乗って行きました。
 

どんな船に乗りましたか?
その、下関には行かなくて、博多に行ったよ、多分。そうしてそこでその当時、

地下鉄***行き交う列車があった、日本に。これに乗って下関に渡って行って、

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朝鮮という私たちの国があったのだ

102 

またその次からは記憶がよく出て来ないよ。あ、また汽車に乗って来て見たら
そこで。沼津市駅で降りて、そこで。その当時、日本の奴らの話では、カイテン

トネル13)だと言うが、それは何か海の下を渡って行くものだと言っていたよ。

 
釜山港から博多港に行く時、船に乗って行かれましたが、どんな船だった
ですか?
それは、その、連絡船なのか、貨物船だったのか? 連絡船なのか貨物船なの
か、記憶がはっきりしないよ。ただそのまま入れられて、一番下の貨物室に居
て、着いたら降りたりしたんだよ。
 
一緒に行った方たち全員が貨物室に乗ったのですか?
そうだよ。九州で降りて、何処、何処へ行くのかと言って、多分分割したようだ

ったと思います。その日、我々が乗った一行は、沼津に行って、降りて。

それでは、貨物室に乗って、何日程度掛かりましたか?
船の中で一晩寝たかな?
 
引率者はいましたか?
引率者はその時は日本人だったよ、その時は。麻浦区でだけ韓国人だったと思

う、釜山からは日本人だったと思います。

 
船に乗って行く間、何処に行くようになった、という話をしてくれました
か?
その時、何処に行くのかと聞くと、沼津に行くという話を聞きました。
 

13) 海底トンネルを「カイテントネル」と間違えて記憶しているようである。

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朴魯英検閲を受けて引っ掛かれば手紙も出せない

103 

日本人が話をしてくれましたか?

その時、我々には日本語がわかる人もいて、だから日本語がわかる人が話をし
てくれたと思う。我々だけでこういう風に座って、何処に行くのか、何処に行く
んだと、こういう風にヒソヒソ***と話したが、その時、沼津に行くという話が
聞こえたと思うよ。誰かが公式的に何処に行くという話は無くて。
 
何百名程度が船に乗りましたか?
そうだね、それはちょっとわからないよ。ただこのように部屋に、一列で入って
行けと言って、それで一列で入って行って、その次には自由が無くて、歩き回
ることが出来ないから、人がどの位居るのか居ないのか分からないよ。
 
麻浦区庁から行く時、同じ地域に住んでいた方たちの中で、一緒に行った
方はいませんでしたか?
記憶がある人は、そうだね、ファン・ミョンファンという人がいたが、彼はそ
こに行って、召集令状が来て、再び韓国に来て、韓国に来て軍隊に行った人だ
よ。それから日本陸軍軍人として出征したようです。軍隊にまた行った。そう

して徴用に行って令状が来たという話を聞いて、韓国に来たと。その人が一人

いて、その次には、長い時間が過ぎたので記憶が出て来ないよ。
 

この方は、最初は軍属として行って、再度召集令状を受けて軍人として出

征したのですか?
そうです。そこで、その123施設隊に居て、ソウルから召集令状が来たと通報
が来て、それで再び家に送られたんです。そうして家に帰って来て、軍隊に行

ったそうです。

 

この方は歳が幾つでしたか?
その方は歳が私より2歳位上だったよ。その方は21歳だったか20歳だったか

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朝鮮という私たちの国があったのだ

104 

な。その時、かなり徴兵が出て来た時だった。
 
123施設隊で職責や職位のようなものは。ただ軍属だったのですか?
職位? 職位はその時期は、ただ、何か黄金色の服を着て、そうして仕事をした
よ。これが写真だが…
 
写真を持って、いらっしゃいましたか?
写真は一度捨てようと思ったが、必要だと思って所持して、今は保管していま
す。それで、そこに行って、こんな服装をしたんです。これを捨てようとしたけ

ど、昨年申請する時、何かこんな物でも一つなければならないと思い、探した
らこれが出て来たんだ。

 
他の物は全部捨ててしまいましたか?
他の物は、写真を2回撮ったが、6.25(朝鮮戦争)の時に***。あれは、一枚が。
二人で撮ったと思うが、一人は今では星になって、切り取って捨てて、あのよ

うに私の顔だけ残したんだよ。

 
所属部隊に朝鮮人はどの位いましたか?
朝鮮人だよ、全部。日本人が何人かいて、他は全部朝鮮人です。

管理者は…
部隊長は、その時は海軍中佐だったと思います。
 
名前を記憶していますか?
アイゴ、名前が出て来ないよ。歳をとった人だよ、老けていたよ。ここに、日本

も黒い物をこうやって吊るして、拳銃をこうやって付けて。その人が部隊長で

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朴魯英検閲を受けて引っ掛かれば手紙も出せない

105 

した。それで、海軍が二人いたが、昼間は何処かに行ってしまい、見えなかっ

た?少尉が二人いて、その海軍中佐、韓国式に言えば中領、その人が最後まで
いました。歳をとっていました、その人たち。

 

この部隊長。海軍中佐だったその人は日本人で、その次に他の…

海軍将校が一人いたかな?一人いたが、後で行ってしまいました。上海の何か
特戦隊に行くとかいう話を聞いたよ。だから陸戦隊。日本の奴らは陸戦隊とい

う。

 
部隊長、海軍中佐や将校、その次の何人かを除いて大部分が朝鮮人だっ
たという事ですか?

日本人は炊事班長、その他に二人か三人いたよ。行政部には女子が二人いて、

男子が一人いて、その他は全部朝鮮人だったよ。

 泊まる所、寄宿舎はありましたか?
寄宿舎は、土方場、飯場だよ。普通の飯場じゃなくて、幕舎だよ。そこに居て、
数小隊、数分隊と、このように分けて置いて、そこに居ました。畳が敷いてあ

って。

 
一つの幕舎には何人程度が寝ていましたか?
それは、数個分隊いたかな?一個小隊がいたように思うよ、一幕舎に。そうし
てそこに分隊勤務があったように思うよ。一個小隊で。その当時は、約40名近

くいたように思うよ。

 
宿舎は123施設隊の中にありましたか?外にありましたか?

中だよ。鉄条網の中に。それは行って見ると、麦畑の横に鉄条網をぐるっと張

り巡らして置いてあったよ。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

106 

生活はどうでしたか?そこで、何か殴打されたり…
殴打は無かったです。そこには医務室もあった。
 
特別に不合理な待遇を受けたり、そんな事が無かったですか?
徴用で行って、特別な待遇は受けなかったが、不合理な事など、そうした事は
無かったです。
 
おじいさん(ご老人)、その当時、日本語は話せましたか?
いや、その当時はよく出来なかったです。しどろもどろにやり取りして。
 

日本語が出来ないといって、そこで不当な処遇を受けたり、そんな事は?

無かったです。そこには韓国の通訳がいたから。
 
123施設隊で、おじいさん(ご老人)がなさっていた仕事は、正確にはどんな
仕事ですか?
やっていた仕事は、そこに行って見たら、部隊から直ぐ近くに山があって、山
に洞穴がありました。洞穴に行くと、洞穴を真っ直ぐ行くと、これ位の広い空
間があって、また横に行くと、またあって、またあって。洞穴の中が全部このよ

うに部屋のようになっていました。ところで話によると昔、日本銃を撃つ時に

そこで全部銃を撃ちに駆けて行ったと言ってたよ。そこで、大きな石を掘り起
こして、小さな石を底に敷いて、それを整地する作業をしたのです。それで、
話では整地作業をしてから、そこを飛行機の付属品工場として使うのだと、言
っていました。
 
それでは正確にはどんな仕事だと言うべきですか?防空壕ではなくて洞
穴…

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朴魯英検閲を受けて引っ掛かれば手紙も出せない

107 

洞穴の中に軍需工場施設を造るということだよ。そこで飛行機の付属品を削る
工場をやると、そんな話でした。それで整地作業をしたと、そういう事です。
 

ところで、なぜ洞穴の中で軍需作業をしたのですか?
ああ、その当時は激しい空襲があったから。工場造ると言って整地作業をし
たんだ、整地を。話では、そこに飛行機付属品工場を造るのだと言っていまし
た。だから我々が洞穴の中で整地作業をしたのです。石を敷いて、このように
デコボコになった所は石を外側に持ち出して、深くなった所は石を持って行っ
て埋めて、このような作業をしました。

 

123施設隊では、それだけを行なっていたのですか?
それだけをしていて、後に解放になった頃に、若い、歳が若い人たちを、また
訓練させたよ。訓練をさせたが、何の訓練かと言うと、壕を掘るのだが、丸く
掘るのです。そうしてこのように人が一人、このように入るんだよ。上に蓋を作
って置いて、それで、日本人の奴らは何をやるのかと言えば、それを掘って、
中に入って、手榴弾14)を持って入って行くんだよ。そうして戦車がそこに来た
ら、その手榴弾を投げて素早く逃げなければならないんだ。日本の奴ら、どれ
だけ逃げれば生き残れるか、とか何とか言ってたよ。そんな訓練を受けまし
た。

 
それはタク何と言うのですか? それは何の訓練だと言ってましたか?

タコツボ 15)

 

タコツボですか?

14) 対戦車手榴弾
15) 蛸壺:戦場で兵士が一名隠れるように掘った穴。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

108 

タコツボと言うのは、蛸から来ていて、どんな物かというと、地面を掘るんだ
よ、深く、このように深くね。そしてそこに入って、このように座って、蓋をこ
のように被せて、穴が一つあって、そこからこのように見ているんだよ。それで

戦車、戦車は何で作っているかと言うと、クルマの上に竹で、このように作っ
て、***人が引っ張って行きます。戦車といってもそんな物です。実物は無いか

ら。そうして戦車が来ると、そこからぱっと飛び出して来て、手榴弾を投げる

んだよ。***手榴弾を。それから、アイゴ、3秒だけ逃げられれば生き残ると言
ってたと思うけど?死んでしまう人もいるだろうね。だから、タコツボ壕という
のは、そういう物だね。
 
タコツボ壕? タコは蛸の事じゃないですか?
蛸壺壕という物だね。丸く掘って、入って行くから。
 
あ、だからそれは土の中に掘る物ですか?それとも地上に竹を編んでこの
ように…
私は竹を丸くして、このように蓋を作りました。周囲がこの位です。これを私が
作って偽装をしたんだよ、木をさして。それからこの中に入って行くんだよ、
壕の中へ。手榴弾を一つ持ってそこに入って行くんだよ。入ってじっと座って
いるとこれが出て来るから、このようにちょっとうずくまって座りました。そう

してこの蓋を、丸くした物を私が被せて、このように、このように見張ったんだ
よ。見張っていて、戦車が来ると蓋を開けて出て来て、手榴弾を戦車に向けて

投げるんだよ。
 
月給は貰いましたか?
月給はあったと思うけど、幾らもなかったです。月給は貰いました。貰ったと思
います。外出して、その当時、とうとうその時、戦争が激しくなって、市内に出
ると配給をくれたよ、食堂で。食堂に入って、さあ食べようとしても出来ず、こ

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朴魯英検閲を受けて引っ掛かれば手紙も出せない

109 

の飲食店は昼食の時間になると、列が並びました。列に並べば配給を貰える時
もあって、何か食べ物を配給で貰って食べるには、そのように列に並ばなけれ
ばだめだった。並んでも、食べ物が無くなればそれで終わりだよ。一時間並ん
で待っていても、食料が無くなれば、それで終わりだよ。そうやって食べ物も
買食いして、さっきの、先程の写真も撮ったりしたよ。
 
食事は何を召し上がりましたか?
食事はご飯ですよ。豆ご飯、麦飯など、そんな物。豆を混ぜる時には、***を貰
い、麦を混ぜた物も貰い、そして作業に出掛ける時は、弁当を作って出掛ける
が、弁当は木で出来たこのような弁当箱を使ったよ。それを一つずつ持って出
掛けたよ。木で出来た物。
 
外出なさって、その月給で写真も撮ったのですか?
外出する時は、握り飯をくれたよ。土曜日の午後に出掛けたが、午後に出掛
けると、晩飯に食べる握り飯を一つ、日曜日の朝飯に一つ、昼飯に一つ、この
ように握り飯をくれました。それを持って出掛けて食べて。米で下さいと言え
ば、お握り一つ分の量の米をくれて。そうやっていたよ。
 
何故お握りを予めくれたのですか?
土曜日に外出すると部隊に戻って来れないからね。外泊だよ。
 
何処に行って泊まって来たのですか?
だから、時間が長いから、そこは村だから、日本人が農作業している所に行
き、ちょっと手伝って、どこにも行くところが無いと話したりして知り合いにな
って、「お前、俺の家に来て寝ろ」と言われて、そこで寝たりしたよ。お金が
ある時には勿論旅館にも泊まったりもしたが、お金が無いと、そのようにして
泊まらせて貰ったよ。また、そうでなかったら、こっそりと部隊に帰って来まし

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朝鮮という私たちの国があったのだ

110 

た。晩に、歩哨に立つ人は皆韓国人が立っていて、部隊においても動哨が、鉄
条網に行ったり来たりする動哨も立っていたが、動哨が立っている所に行くん
だよ。行くと、その時、我々は暗号が何かと問うんだ、銅銭・葉銭とね。銅銭は
日本の奴らで、葉銭は我々韓国人だという意味だよ。初めは、ほら、このように
動哨がこういう風に来れば、葉銭・銅銭と言うんだよ。そうすると韓国人は葉
銭と言うんだ。そうして、これから俺は中に入って寝なければならないと言う

と、歩哨に立っている奴は、鉄条網の中に入れてくれるんだ。そうやって帰っ

て来て寝て、また朝に、夜明前に出て行くんだ、こっそりとやるんだよ。

そこにいらっしゃった時、家族と手紙など書信交換のような物を書くこと
が出来ましたか?
書信交換は、やりました。厳格にそこでは検閲をしました。だから家から来た
物も検閲して、私が家に送った物も検閲しましたよ。検閲して郵便局に持って
行ってくれました。
 
では、家族たちが何処に居るのか。日本に行って、どんな仕事をしている
のか、何処で生きているのか、そんな事を知っていましたね?
そうだよ。でも、正確に何処に居るという事は手紙に書けず、何の部隊にいる

という、そんな事だけ。その位置も正確にその住所は書かないで、何の部隊に

いる、何処の部隊にいる、つまり言うならばイスナンハオカの何なにの部隊に
いる、と正確には書かずに。それ書くと検閲に引っ掛かって手紙を出してくれ
ないよ。
 
部隊では、物品のような物を全部支給してくれましたか?服、靴など…
そうだね、靴、服、全部そこで支給してくれたよ。支給してくれたけど、私はそ

こに1年も居なかったから、最初に貰った物を使っていたままで、そのまま帰っ
て来たよ。

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朴魯英検閲を受けて引っ掛かれば手紙も出せない

111 

もしかして、そこに慰安所のような所があったという話を聞きませんでし
たか?
部隊の中に?部隊の中には慰安所のようなものは無かった。どうなっていた
かと言うと、鉄条網をぐるっと麦畑に鉄条網を張り巡らしてあったが、そこに
温泉が一つありました、部隊内に。この温泉は、この部落に住む人たちが使う
温泉だが、この軍が全部占領したから、この温泉が今は部隊内にあったから。
だから、この鉄条網の門を、このようにして置いて、一日は部落の人たちが使
い、その次に我々が使っていたが、ある時その温泉で、あの山向こうに挺身隊
が来ているという話を聞きました、女子たち。でも私は見なかった。挺身隊が
来ているという話だけ聞いたよ。だから多分そこに臨時集結して、何処かにま
た行ったのかも知れないよ。とにかく、私は行って見た事も無く、山の向こうに
来ているという話だけ聞いただけ。

 
解放になった事は、どのように知りましたか?
解放になった事は、ある日、この部隊長が全員を集合させて、運動場に全員集
合したら、天皇陛下が国民のために無条件降伏をしたと、その部隊長がそう言

って、降伏は、

我々日本は降伏をしたから、お前たちは独立するのだ。だからここで受けた全
ての訓練を、国に帰ってそのまま利用してやれ、と言った。
 
8月15日当日ですか?
その翌日(二日後)。
 
それから部隊内に少し留まりましたか?
部隊に、解放されて約20日いたかな?それ位いて、どういう話があったかと言

うと、米軍が上陸するというものだったよ、そこに。それから駐屯するが、米

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朝鮮という私たちの国があったのだ

112 

軍が入って来ると捕虜として全員認定されて、家に帰れなくなる、という話だ

ったよ。だから、我々を早く送ってくれと言ったよ。そうすると部隊長は、そう
ではない、そうではないと、ここから引率してやるから、その時に行けと言った
よ。我々はそれでも、だめだ、今すぐ俺たちは行くと言ったんだよ。そしたら、

行くなら行けと言ったよ。それで我々は団体で、全部このように何人かで組み
を作って、引率者が一人いて、そうやって我々は自分たちだけで出て来たよ。
 
引率者は朝鮮人でしたか?
はい。韓国人、そこで小隊長をしていた人。韓国人が引率をしたが、そこで何
かを受け取って、何かの書類をくれました。だからそれを受け取って来て、下
関に行きました。
 
部隊で何か書類のような物を作って貰ったのですか?
そうだよ。引率者になった人に、出発して、船に乗るという事を証明してくれる
物だよ。
 
渡航証明のような物を受け取ったのですか?
はい。
 
港はどの港まで行きましたか?
下関に行きました。そこで船着場を探して行ったら、順番があるが、お前たち
はまだずっと後になると言うんだよ。いつ乗船出来るのかわからない。それで
誰かに聞いてみると、仙崎という所に行って見ろと言うんだよ。そこに行けば
早く乗れると。その日直ぐに仙崎港に行ったよ。行ってみて、先ず寝る所を探

し回って、そして部隊でくれた証明を持って、乗船の受付をさせたが、そこで

寝場所をどうするんだと聞かれて、部落に配置されたんだよ、村の部落に。民
家に配置されたんだよ。そして、来る前に米を貰っていたよ。部隊から米を持

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朴魯英検閲を受けて引っ掛かれば手紙も出せない

113 

って来たからね。それでその米をくれてやって、その民家で寝たんだよ。仙崎
で4,5日過ごしたかな、2日間だったかな、そうして船に乗りました。貨物船。

 
貨物船に乗ってそのまま真直ぐに来たんでしょ。釜山港に?
釜山港に来たよ。
 
釜山港まで何日程度掛かりましたか?
一日でそのまま来たよ、多分。仙崎で夜明け前に乗って、夜に到着したと思う

よ。

 
釜山港に到着なさった後、ソウルまでは汽車に乗って来ましたか?
汽車に乗って来たよ。釜山で降りたら、何か握り飯を作ってくれていて、降り
て来たら握り飯をくれながら、少なかったら、もっと食べろと言ってくれたり。
そこではファンファーレが鳴っていたよ、釜山港に来たらね。それから釜山の
何処かに行った。行って、釜山市庁だったか、どこだったか行って、そこで解
散になったよ。各自、個人別に皆なったよ。
 
おじいさん(ご老人)のような場合、早く帰って来られましたが、残った人た
ちは、もしかして捕虜収容所に行ったというような話は聞きませんか?
それは、捕虜として捕まえなかったそうだよ。あれは、誰かが知りもしない事
を話し散らしたんだよ。誰か捕虜にされましたか? ハハ、今思い出すと間抜け
なことだったよ。

面談者_チャン・ミラ調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/イム・ドア

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

115 

李長民

創氏名

イヒムラ チョミン(不確実)

1923.11.3.

全北 完州郡 参禮邑 後亭里 生まれ

1943.9.    日本 大阪 陸軍造兵廠に動員
1945.8.15.  解放後 帰還

長い剣、
すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

おじいさん(ご老人)、今年おいくつでいらっしゃいますか?
ええっと、83歳です。

創氏名、覚えていらっしゃいますか?
創氏名?(はい。)覚えています。イヒムラ チョミン。

そのとき当時、徴用に行った時、おいくつでしたか?
たぶん21歳でした。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

116 

そのとき、何月ごろでしたか?
9月ごろでした。陰暦の。

21歳ですと、そのときどんな仕事をされましたか?

日本の奴の家で日本の奴の倉庫掃除をして鉄工場であの、鉄工の仕事をして

いました。職工生活をしました。

そこの連隊長、造兵廠連隊長ですか? 連隊長は日本人でしたか?

日本人でした。タツミタイ(タツミタ)という。 

連隊長は大尉で、その次の下はまた小隊長ですか?
それは中隊長です。モリグンソウ16)。モリグンソウ。モリが名前で、グンソウは
その階級です。そしてオカノ、オカノゴチョウ17)という人がひとりいて、ゴチョ
ウは階級です。

小隊長はいなくて、中隊長ということですか?
小隊長はあの、その人がそうです。オカノゴチョウという人が。

どういう仕事をされましたか?
どんな仕事をしたのか分からないけれど、鉄を加熱して鉄板棒に堅く押して伸
ばす仕事をしました。溶鉱炉で溶けて出てくると、平らになるように叩いて18) 

伸ばしてそんなふうにして、これぐらいをこのように伸ばして平らにしなくて
はいけない。平らにして鉄を削ります。それを機械に入れきっちり削って、そ

16) クンジョウ(軍曹)
17) オジャン(伍長
18) 平らにして

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

117 

れで何をつくるのか分からない。そういう仕事をしていましたが、工場がこっ
ちで休んであっちで休んで、そんなふうに休みました。材料が無いから。それ
で私は、材料がないから仕事できなくなった、できなくなったから土方工事の
現場で荷を背負ったり、道路を造ったり、どこか掘るところなどで、まあそんな
仕事を。

1日に何時から何時まで仕事をされましたか?

1日に何時間仕事をしたかですか? だいたい6時に終わります。涼しいとき

やこう暑いときには6時に終わります。6時、7時頃にこう出て。7時に出て8時頃
に仕事が始まった。

それでは仕事を終えて食事はそこで…
宿舎に行きます。電車に乗って宿舎に行ってそこで食事をしてまた寝て、また
起きて寝て、まだ日本語できない人は日本語を習い、また何かを習い、何かを
習って、寝ることもできない。すべて日本語、やって来て教えるので寝られな
いし腹は空いて眠気はくるし…

夜、宿舎で日本語も教えるなどしたのですか? 日本語を、日本人がですか?

日本人が。

日本人がみんなを集めてですか、宿舎に?
まあそれは、その仕事は3班、4~5班ずつきっちりと分けて、日本人が少しそこ
にきて教えました。

4~5班ずつですか? すると宿舎にそうした教育できる大きな講堂のよう
なのがありましたか? 
ありません。そのままその宿舎の部屋で。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

118 

そうすると、ある部屋では日本語を教え、ほかの部屋ではなにかを教え
る、こうでしたか?
ありません。ひとつだけ。

日本語だけですか?
日本、日本人、日本語が上手なひとは習わなくてもよかった。日本語、私のよう
に分からないひとは習って、もう工場に行って韓国語をつかうと韓国語を話し
たといって罰を受けた。膝をついて罰せられた。日本語をつかうんだ、韓国語

をつかったと、韓国でもそうしたが。

ご老人、その陸軍造兵廠の部隊名は、また異なる部隊名はありましたか?

部隊名は分かりません。

ただ陸軍造兵廠とだけ、ご存知でしたか?

うん。知ろうとしても知りようもないし、もし少しでもそうしたら、連れて行か

れて調査しすごく、話すんだ、とすぐ殴られた。なんだか話も出来ないしどこ
か見物にも行けないし。

そこは、大阪の正確にいうとどの地域にありましたか?
大阪の野原、その市内の野原にそれはありました。中心に。

中心にあったのですか? 例えばここだと洞名があるでしょう?
洞? そこはそのまま下って行くとモリノミヤ19) とだけ知っていたが、とても大
きいのでどこがどこなのか分からない。いろんなものがすべて揃っていて写真

19) 大阪市城東区森之宮

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

119 

館もあるし飲み屋もあるし、なんとかいう店もあって。とにかくありとあらゆる

ものがある、その中へ行くと。またそのまま汽車も往来していて電車なんかも

往来して。行ったり来たりして。

そこで仕事するとき、月給などは受け取られましたか?
受け取りました。受け取ったが2000円貰ったか1500円貰ったか、それをよく
覚えていません。

2000円か1500円かですか?
はい。

それを現金で受け取りましたか?
現金で。

毎月毎月ですか?
毎月、毎月。毎月、毎月くれます。

現金で貰いそれはどうしましたか? その全額をご本人が持っていたので
すか?
持っていました。持っていて腹が空いたり休みの日はみんなでぶらぶらして、
なにかを買い食いして酒を飲んだりして。

あ、そうですか? 外出のようなのは自由でしたか?
それだからこっそり外出します。外出したことがばれると、だから点呼、点呼
の前に帰らなくてはいけない。騒動があっても点呼までに帰らなくちゃいけな
い。そして帰るときに日本の奴にみつかると、そこで捕まり殴打される。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

120 

点呼は何時でしたか?
点呼は当時11時ごろ…

夜11時ですか?

11時。勉強をする人は勉強をして、一緒に全員みんな通路で点呼しました。

もしか月給をためて貯蓄などはされましたか?
貯蓄しました。貯蓄をしましたが、それは韓国に帰ってから引き出しました。

あ、引き出せましたか?

うん。引き出したことには引き出せました。それもひょっとすると引き出せな

かったけれど。みんな日本の奴をさがそうとしたが日本の奴がどこにいるのや

ら、しかし誰かがこう言ったんだ、軍人が今さっき家にいたと。それで私は家

へ帰っていたので、軍人のところへ行って引き出そうと。それで日本でしたこ
れを返してくれ。私が貯蓄したのを返してくれ、返してくれと言うと、まだ日本
人が韓国におおぜいがいるから、韓国に帰って引き出しなさい。そういって返

してくれないからどうしようもない。通帳持って韓国に帰ってから引き出そう
とすると、日本の奴らはそれで誰かが府人20)の何某がいるといった。それで府

人のところへもう1回駆けつけたがいない。1回自分で行ってあのこれぐらいの
奴を連れて行くと、その中に入っていた。それで軍人から引き出せました。そ
の時、13人か14人か? ここから行った人達。

その夫人というのは、誰の夫人をいっているのですか?

20) 府庁の職員である府人のようである。

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

121 

例えて言えばその時、府庁のひとたち21)、まあ、シジェン22) ですよ。

市長?
そうだ市長、府人とこう2人。

それでは全州市長?

うん。全州市長。

全州市長に責任があるから?
市長が責任あるでしょ。いったい誰が責任をとる。

その全州市長は日本人でしたか?

日本人です。

区庁長だったのですね、その人は?

うん。そうです。その時は府人といったが。

府人ですか?

うん。府人といった。府庁のひとだから府人といったようだ、たぶん。

あ、市長を府人といったのですか?
そう、その人の妻、夫人、奥さんを言ったんじゃなく…

21) 府庁:日帝強占期に府の行政事務を処理した官庁。全州は1935年10月1日府令第112号

(1935.9.28.公布)により全州邑は全州府に昇格し原州郡から分離した。

22) シジャン(市長)

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朝鮮という私たちの国があったのだ

122 

あ、その時は全州市長を府人と呼びましたか?
府人って、府庁だったからそのとき。

そうですか。ではその全州市長のところへ行って、その貯蓄した金を全額
受け取られたのですか?
受け取りました。

どのぐらい受け取られましたか?
その時、100いくらか受け取ったはずです。

貯蓄をたくさんしなかったのですか? 2000円とか1500円を貰ったというこ

とでしたが?
う~ん。それぐらい貰ったが、家に送金するにはしたが、家では1回受け取って

全部は受け取らなかったという。家に帰ってみると、受け取っていないと。そ
の時、大東亜末期のときで秩序もあったものではなかったんだろう?

うむ…

トラック乗って、日本の奴のトラックに乗って8月14日だよ。8月14日のことだ

が、トラックに乗ってそのセメントを運んで行った。セメントを運びに行った
んだ。日本の奴と。でも新しくつくられ道路は静まりかえっていた。自動車も通

らず人声もしない。「あれっ、なんでこんなに人声もしないし、人も通行しな

いで静かなんだろう。ひとっ子ひとり歩いていない。」自動車で走っていると、

どこかで泣き声も聞こえてきたんだ。その日は空襲もこないし。あれっ、これは

何かある。これは何事かおこった。セメントを運んで行くと会社では、セメント
だと、なんのセメントを運びにきた、帰れ、と言われました。ああ、それで解放
になったと分かりました。14日です。8月14日の日。そうして確実に8月15日に
確定した。

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

123 

するとご老人は、さきほど貯金を100円ぐらい受け取ったとおっしゃいまし
たね? そして通帳をそのようによく持ち帰られましたね?
その通帳くれたから、行って引き出しなさい、と通帳をくれたから。

慰安所があったという話は、聞きましたか?
慰安所ってなんですか?

あの慰安婦がいるでしょ。慰安婦、慰安所、そういう話は聞きませんでし
たか?
聞かなかった。その時は日本の奴は笑うこともなかった。ものすごく飢えている
人がほとんどで、買って食べるものも無いし、そうして大混乱になったんだ、解
放がパッとなったということだ。解放がパッとなって、キャーと日本の奴はもの
すごく泣き叫んで、日本人たちは通りでも泣くな、泣くんじゃない、我々は3年以
内に起ち上がる、そう振れ回っていたんだ。3年以内に起ち上がったじゃないか
ね? 日本の奴ら。それなのに、韓国はそのように日本を追い越すべきなのに、わ
が韓国は立ち遅れているじゃないか。そんなのが腹立たしいし、あいつらは韓国
人をどれぐらい連れて行って殺したか知っていますか? 大勢が殺されました。
それでもまだ足りずに独島を自分の土地だといっているんだ。殺したって飽き足

らないよ、胸の中に拳のようなのがふつふつとこみ上げてくるんだ。

韓国から行かれるとき、釜山港から出発し大阪に到着するまで、何日ぐら
いかかりましたか?
昼1日、夕1日行って夕刻に乗船してしばらく、その翌日しばらく行って夕方に
着きました。大阪に。

釜山から下関まで、どれぐらいかかりましたか?
夕刻、1日夕刻のうちに行きました。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

124 

釜山から夜に出発しましたか?
夜に出発しました。あ、昼間に出発したんだ。朝、朝に出発しました。

朝出発して下関に着くと夜だったのですね?

うん。夜。

夜に到着して…

また、そこでその場所でそのまま乗りました。汽車。

汽車で大阪まで…
ひと晩。その日の夜、その日の夜に着きました。だがその翌日に着きました。き

ょうの夜に乗った汽車でその翌朝に着きましたから。

すると行くときは、丸一日ではなく2、3日ですね。2日半ですか?
そうだね。

さきほど、その造兵廠から逃亡したという人たちがいらっしゃいました
ね? その人たちが逃亡してから故郷に帰って来たという話、もしや?
聞かなかったです。ほかの地域の人達で。

おじいさん(ご老人)、宿所ではひと部屋に何人いましたか?
3人。

その宿所全体でいた人は何人ぐらいになりますか?
正確によく分かりません。さきほどですね…

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

125 

その宿舎には数百人はいましたか?
何百人だったか、いませんでした。全部で総勢、行ったのは約300人以上行っ
たけれど、一群はタシマヤ宿舎というのがあります。タシマヤ宿舎というそこ
へ行き、一群はペノジ宿舎というここにきて。

では、100人ぐらいいましたか?
100人はいないです。

宿舎は思ったほど小さいですね。ではご老人、この写真ですが? この写
真は昔、その時そこで勤務なさったときに撮ったものですか? 遊びに行っ
て?
はい。そうです。どこ? 写真、どこ?

これは、おじいさん(ご老人)が添付されたものですね? 45年3月に奈良県23) 

公園で…
奈良県公園で撮ったものです。公園で撮ったものです。

この奈良県はその大阪にある…
そこから近いです。そんなにかかり
ません。

仕事している方たちと遊びに行っ
て撮ったものですか?
遊びに行って。日本の奴、そのカメ

23) 奈良県

1945年3月 奈良県 公園にて

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朝鮮という私たちの国があったのだ

126 

ラで写真を撮った、そいつがみんな撮った。そこで。

今見ると、ご老人か、そうではないのかよく分かりませんね。この写真を
お持ちですか?
あります。

もしや、その工場内で撮った写真はありませんか?
工場では撮れません。工場では。

敗亡する頃、空襲24) が頻繁だったということですが? それなので仕事中に
空襲がくると逃げ回るなどされましたね? 防空壕にも潜って。
死ぬまいと思うから逃げなくちゃ。すごくその工場は修羅場(阿修羅場)にな

って秩序もなくなりうろうろと。それでどんな方法があったかというと、日本の

奴らは空襲がくると女子だけさっさと避難させてしまう。男子はそのまま。ど

こに行ってもそのままでいると。だけど私たちは逃げなくちゃ生きられない、
そこにいると死ぬからなんとしても逃げなくては。アイゴ、あれが隊列組んで

飛んで来てその日に工場は沼25) になってしまった。そのまま。日本大阪が廃墟
になったからどうなるんだ。都市という都市がすべて爆撃された。

それは、45年の敗亡が迫る8月頃でしたね?
そうです。8月頃、すごくそれが最高に、そしてあのセッセッ機があるでしょ? 

24) 1945年、B29の大阪空襲日誌は次の如くである。1945.3.31~14.,1945.6.1.,1945.6.7.,194

5.6.15.大阪市街地空襲、1945.6.26.大阪住友精錬所、1945.6.26.大阪造兵廠、1945.7.6~
7.大阪丸善精油施設、1945.7.19~20.大阪港口、1945.7.24. 大阪住友精錬所、1945.7.24. 
大阪造兵廠、1945.8.14. 大阪造兵廠。

25) 沼という名詞の沼を指すようであり、沼は湖水より浅く泥の多い沈水植物が生い茂ると

ころをいう。

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

127 

ゼット機(セッセッ機)。それまではそれに似ているの26)が飛んできて、橋や工場
のようなところ、そんな場所だけ爆撃したんだ。大東亜戦争末期になると、な
にが飛来したかというとセッセッ機、そいつが飛んできたから日本の奴はおど
ろいてしまった。

セッセッ機ってなんですか? それは名称ですか? 正確な名は? セッセッ
機?
セッ、セッと音をたててすごく。

戦闘機のことをおっしゃっていますか?
はい、戦闘機。そうです。そいつが飛んできて、そこに軍需工場があるとそい
つが4機飛んできて、いっぱいそこへきてそこでグ一ンと上昇する。するとあ
の断岸27)に艦砲射撃すると、山に行ってこうみるとククックックックンと音がす
る。黒い煙がさっきそうするとそこに飛んできて落下した。

では、その空襲で造兵廠にいた人達で、どこか負傷したり亡くなった人は
いましたか?
そういう人は特にいません。

空襲がはじまれば、みんな逃げましたか?

ええ。その門は、工場内の門は7個ぐらいあったが? 7個あるがすべて閉ざして

しまう。それからそのとき、そのときにそこいればいちおう死んでしまう。だから

逃亡しよう、とジュンテという子が。私は文字を読めますか? ジュンテがいなく
なった。そして醤油樽4個をころがしてきて塀に立てて上がって、外を東京をみ

26) 似たようなもの。
27) 断岸:河辺や海辺の切り立った丘。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

128 

ろと言った。私はどうする? 上がろうとしたけれどダメだった。私もまた醤油樽
の大きいのをころがし、ふたりでころがして、そっとそこに上って外をこう見渡す

と、憲兵、先端に剣をつけたのが両側にこう立っていた。日本の奴がどこかへ抜

け出ようとするひとを必ず捕まえようと立っていた。それで私が降りてきて2人の

うちのひとりが、2人のうちのひとりがあまりしっかりしていないのを押してしま

おう。すっかり押し込んだらすぐに避ける。や、あの銃の先端に剣がついている
から、ぐっと刺されたらどうするつもりなんだ。私が今、先に行こう、死んだら死
に生きられれば生きてこうしても死ぬんだからと跳んだ。前に住んでいる知らな
い子が(前に住んでいる知らない子?)が行って憲兵が剣を持ってこうしたが、
片側の横へ行ってしっかり掴んだから、当時は身体もすばしこく機転も利いてし
っかり掴んだから、膝をつき銃をおいてしまった。そのまま掴んで跳んだが避け
ようとして踏まれて腕が折れてしまった。骨がおれてしまった。踏まれて。そうし
てそこから脱け出してそのとき逃亡しました。逃亡して4日目に工場にもどったん
だ。工場にもどったが、私たちが大変な事をしでかしたのか。どこでなにをした
のか分からない。どうして押し込めたままなのか、そこにいたら死ぬだろう。どう

しようもないだろう? そうして4日目にもどった。それでどこへ行ってきたのかと

調査は徹底的にはされなかった。

それでは、いずれにせよ死んだ人や負傷された人たちはいなかったのです
ね?

うん、特にいなかったです。見ませんでした。日本の奴らはたくさん死んで。

どこですか? 造兵廠ですか?

工場で仕事していて。

仕事中ですか?

うん、門を閉じてしまったからどうなる。女子だけさっさとどこかへ避難させ

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

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て。男子はその場所に。

すると、日本人だけ大勢が亡くなったのですか?

日本の奴らだけたくさん死にました。韓国人は立派にどうにか生き残ったの

か、生きて。

それでは、その造兵廠で朝鮮人と日本人の比率は、朝鮮人のほうが多かっ
たですか? それとも日本人が多かったですか?

日本人が多かったです。

日本人は2、3倍ほど多かったですか?

2倍でなく4倍ほど多かったです。

ところで、技術者のなかには女子もいましたか?

女子達が多いです。

もしや日本人学生達も仕事に来ていましたか?
ほかに見かけませんでした。学生達は。

女子技術者ら…
仕事する、仕事する女子達はたくさんいました。

日本人は家族と一緒に住んでいましたか? 技術者たちは?

いいえ、その人たちは自分達の家庭があるので、家庭にみんな帰って寄宿舎に
いませんでした。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

130 

寄宿舎にいませんでしたか? では、造兵廠の近くに官舎のようなものがあ

りましたか、その人達の家?

ありません。

すると、その人たちはどこに住んでいましたか?

うん? どこに住んでいるかって、みんな家族と暮らして昼になるとそこへ出勤
したりする人達。

みんな出勤して通う人達?

うん、うん。それで私たちの寄宿舎は、女子2人と男子3人がいました。日本人
たちです。ご飯をしてくれる、私たちのご飯をしてくれる女子2人、男子3人。

寄宿舎には、いまおっしゃった日本人女子と男子の5人のほかは、全員す
べて朝鮮人だったのですね?

うん。

おじいさん(ご老人)は解放になったことを、そこでどのように知りました
か?
ある日、飯を食べてから日本の奴らとカマスを載せて、トラックに載せて、わ
たしら5人と日本の奴ら、その時、何人だったか分からない、日本の奴ら3、4人

とセメント室に行ったんだ。セメント工場へ。行ってみると初対面28)の人がい

ない。飛行機も飛んでこないし、ひともいない、どこかでひとの泣き声もする

し。そして私が乗って行くときも通行する人がひとりもいない、どこかで泣い

ているようだし。なにがあったんだ、ああ分からない、という。奇妙だと思っ
て行ってみたセメント室に、工場にさっと入っていくと、入ってくるな、出て行

28) 新しく迎える

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

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け、といった。引き返してきた。引き返してきて車から降りて工場へ行くと、機
械がすべて動いていたのに止まっていた。そしてそうして解放です。8月13日
にもうそうなっていた。14日にすべて知っしまった。

8月13日にご存知でしたか?

うん。

ええ、そうでしたか?
や、どうして解放になったって? それは、天皇陛下があの東京に行ってしっか

りみると、廃墟となったところで国民達がワーワー、まるで葬式のようにワーワ

ー泣いて日が沈むとどこに行くのか、洞窟の中へみんな入っていく。それが水
底だ。洞窟の中が。洞窟としてすべて掘ったのに水底。日本ではどこを掘って

も水が出る。さっとならして29) 。そうして家をしっかり建てる。水底になったと
ころに座りこんだ。そうして朝がくると飯を少し、どうにか炊いて長時間30)***
いまや天皇陛下がみると寒心に堪えない。自分がこうしていては国民達が根絶

やしになってしまう、それで先に降参したんだ。降参してから発、発表は15日
に発表された。

工場から出られたのは、いつ出られたのですか? 解放してすぐに…
すぐその翌日、仕事行かなかった。どうして行きますか。本当に日本の奴は撤
収してしまったのだから。
 
そうすると13日に知り、戻った日から出勤されなかったのですね?
出勤もしなかったです。

29) さっと平坦にして
30) 長時:長時間

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朝鮮という私たちの国があったのだ

132 

では、宿舎からどのように帰ってこられましたか?
まあ、宿舎で飯を食べて2、3日ほど休んで、くれた飯を食べて休んでぶらぶら

して、日本の奴らはすごく泣いてもう船からそのまま家へ帰って自殺する奴は
自殺した。そうして帰るのはきょうか明日かと、つくったものを食べながら1ヵ

月間ぶらぶらしていた。食べて1ヵ月ほどぶらぶらし、そこでなんというのか、
船の準備がまだできないので、船の準備ができたらすぐに帰れると。なんども
今日明日、今日明日といって1ヵ月ぐらい経ってしまった。

1ヵ月ぐらいかかりましたか?
そうして陰暦9月になりました。

そこではさきほど炊飯していた人たちがずっと一緒にいたのですか?

うん、日本、日本の奴が日本に帰ってきてとてもごった返していて、日本の将

校が、あの日本の軍人将校が米国人将校にあってここでは私たちが***それを
すべて教えてその人たちに引き継ぎをして、家に帰り自殺する奴は自殺し、生
きる奴は生き、そうだった。
 
そして一応、米軍にそこを引き継いでその次に米軍が帰っても良いと言い
ましたか?
帰って、日本人が行けと言いました。ただ。

日本人が…

日本人が大阪で私たちに、船が準備できたと、釜山まで引継ぎをしてくれました。

あ、日本人ですか?

うん、日本人が。

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

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日本人が、大阪までですか?
うん、ちがう、あの、あそこまで、あの下関まで。

船で引率してくれたのですか?

うん、船が大きい。そこでそうして昼に1日中乗って釜山にきて、夜に、真っ暗

な夜に着きました。

その宿舎にいた朝鮮人は、みんな一緒にその300人はみんな一緒に帰って
きましたか?

うん、みんな一緒に帰ってきました。

なにか釜山に着くと、行事のようなことはありましたか?
おそらくそこの女性達が韓服姿でずらりと並んで、両側にすごくあのアリラン
打令をすごく歌っていて、音楽なんかもして、飯をこんなにいっぱい山盛りに
置いてあって、出迎えてくれてそれをくれました。けれども私は涙があふれて
飯も食べられなかった、でも誰かがやって来て、誰かが来てこういったんだ、
もらって行くんだよ、さあ、そうしてみんな行くのだと。私の眼を見て。

日本人ですか?

韓国人。カタクラというひとです。でも悪質です。悪質。日本の奴の手先。

船で帰ってこられて。では釜山に着いて汽車でこられましたか?
汽車で来ました。

汽車、釜山からどこまで乗ってこられましたか?
全州。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

134 

全州まで直接? 釜山駅から全州までくる汽車がありましたか?
だから、その汽車には四方各地へ行く人をみんな乗車させたから。そしてハン
ジュのひとはこっちに来なさい、大田のひとはこっちに来なさい、どこそこの人
はここに来なさいと、立札にそう書いてあり、すべてに引率者がいました。郡
なら郡、市なら市、面なら面、そうしたところから来ていたが全州だけ来なか

った。全州だけ来ない。全州に行って殴り殺す奴はみんな殴り殺してやりたか
った。腹が立ってやっと大田、大田まで、大田で出迎えにきていた、その時に
なって。まあ、ひとりが病気になってそうなったということだった。

それでは、もしや米軍の捕虜だったとか、そんな人はいましたか?
いました。

米軍の捕虜という話は、誰に聞かれましたか?
仕事するところで見ました。うん。仕事をする時、仕事をさせていた、日本人
達が。

日本人達が、戦闘に行って捕らえてきた米軍捕虜達を造兵廠へ連れてき

て、米軍をそこで労働者として使っていたのですか?

うん、うん。

あ、捕虜として。そういうひとは造兵廠に何人ぐらいいましたか?
約7、8人です。気の毒で見ていられなかった。

米軍捕虜ですか? では、どのような仕事をさせましたか? まったく同じ仕
事をさせましたか?

まったく同じ仕事です。レンガのようなのを載せて運んで、材木のようなのを載せ
て運んでいた。見るとなにかの材料みたいなのを載せて運んで。土も掘ったし。

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

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レンガ運び? 土も掘ってですか?

野方の仕事をします。

この米軍たちと一緒に仕事して、ずっと見ていたのですね? 一緒にレン
ガを運んで…?

一緒に、遠くから見ました。一緒に接触できないようにして、話も交わせない
ようにした。

その人達を、とても厳しくこき使ったのですか?
厳しくこき使ったようだった。あの小麦粉の殻をつぶして砕いて食べて。

その人達が?
かわいそうで見ていられなかった。気の毒で。

造兵廠にいるとき、手紙のようなものは家に送られましたか?
家に送りました。

手紙はしばしば書けましたか?
手紙を書き、封をしないで事務所に持って行くと、そこですべて検閲し送った。

家の状態はどうでしたか? 帰ってきてみると?
家族は飢えてほんの皮と骨だけ、骨だけで。

当時、兄弟姉妹で仕事する人はいなかったのですね? ご老人があちらに
行かれてからは…
いませんでした。右も左も分からない者たちが、どこへ行ってなにをどうしま

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朝鮮という私たちの国があったのだ

136 

すか。私が金を少し貰ったもので米をひとカマス売って、肉の骨、魚の骨を1、
2升ほどもらって、それを干して食べさせて、私の妹が横に座っているのに誰
が誰なのか見分けもできず、顔をまじまじとみると妹だった、末っ子、末っ子
の妹だったが、あれほどまでに追いつめられ、そんな状態にさせてしまって。

では、持って帰るとき、いくらぐらい持って帰られましたか? 月給を?
たぶん4000円ぐらい持って帰って来ました。

ずいぶんたくさん持って帰られましたね?
4000円ほど持って帰りました。

そしてご老人は、帰って来られて、何かなさいましたか?
仕事もあまりできませんでした。腰を打って、後遺症で。また殴打されて、こ

こ、ここを。まったく、この肩のあたりも痛くないところはありません。

うーん。その時に打ったのですか? 仕事中に?

打ったのではありません。

そこで大怪我してそうして……
並みの人間だったら日本の奴に剣で突かれたら死んだだろう。みんな日本の奴

とケンカしてうろうろしていた。タイアカマ氏、タツミタイ(タイ(隊)、さっき

のタツミタイ)がケンカばかりしてうろついている、と日本人とケンカばかりし
てうろついている、と5人を捕まえ事務所で跪かせて長い剣、すっと抜いて腹
を突き刺したからすごくあの時はくらくらしてしまった気分が。そうしてから、
これぐらいまで刺して止めた。そうしてぶん殴れるだけぶん殴って、どうして

日本とケンカばかりしてうろうろする、とすごく殴打されました。日本の奴ら
に。

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李長民長い剣、すっと抜いて腹を突き刺したからくらくらして

137 

では、帰られてからさまざまな仕事をされましたね? どんな仕事をなさい
ましたか? あるいは鉄工所で引き続きまた仕事をされましたか?
鉄工の仕事はできませんでした。鉄工の仕事をしばらくしていて機械でつくっ
たのがたくさんあふれて。あの中国から出てきたの、ソウルで機械でつくった
のがそのまま、そういうのがたくさんあふれ出すうちにもうそれでは食べてい
かれずに、毎回それでも弟妹が働くようになり、私はもう嫁をもらって、それで
も嫁をもらわなくては、子どもが生まれて稼いで、ああ、学ばなかったから、ど
こかそういう野方場で仕事をし、仕事がなければせずに、仕事があれば仕事し
て、家の事情がひどい。暮らしが。

そうすると鉄工の仕事をして、それから他の仕事も少しなさったですね?
他の仕事を少ししました。家を建てる仕事。

もしや現在も仕事をされていますか? 現在はされていません?
できません。

今はもう子供たちが?
はい。

おじいさん(ご老人)、現在のご健康は?
健康はよくありません。見た目はこうだが夜は3回ほど起きます。腰が痛くて。
そして痛くないところがありません。

面談者_チャン・ミラ調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

139 

張昌權

創氏名

長谷川昌權

1930.3.18.

慶南 統営郡 蛇梁面 良地里 生まれ

1943.5.

蛇梁初等学校在学中 日本軍航空機製作廠 少年工員として徴用鎭海

日本軍51航空廠に入所 6ヵ月教育

1943.12. 

日本群馬県所在 軍用機製作廠 中島航空機株式会社に動員

1945.9.20.

帰国

級長が行かなくては、ついて行かないのだ

おじいさん(ご老人)、写真を持参されましたか? これはどういう写真で
すか?
それは、日本のあの航空機製作廠。

どこの航空廠ですか?
中島、うん、ナカシマ航空機製作廠。そこで日本の奴らの戦闘機のあるところへ

行きました。製作廠です。家に写真があるので、必要なら私がまた持参します。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

140 

ほかの方たちも幼くみえますね。同じ年齢のようですが。
はい、そうです。初等学校6年のときです。私が写真を別途に持参します。

1930年3月18日生まれ、そうしますとその時、連行された当時はおいくつで

したか?

年令は、ええっと、44年度に、はい、43年度に行きました。

1943年度ですか?
はい。

何月ごろでしたか?
5月頃です。 

当時のご年令は?
その時は10、14歳か?

14歳、14歳ですと初等学校を卒業するや…
いいえ、卒業できなかったです。はっきりといつか分からないが、6年に通学中
に連れて行かれ入りました。

そうしますと1943年5月から1900何年まで?
はい、解放になったのが1945年でしょ? (はい。) 45年解放、だから45年8月ま
でです。

では、解放になってすぐに帰ってこられましたか?
ええ。解放になって9月29日頃、韓国に帰国しました。解放になって約1ヵ月し

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

141 

て、9月29日頃に韓国に帰ってきました。

それでは、おじいさん(ご老人)はその時の創氏名はなんでしたか?
‘長谷川 ハセガワ(ハセヨ)’で、この卒業証書にそう記されているが、長谷川、
名前の昌權はそのままで。日本語でハセガワショウケイと。

ショウなにですか?
ショウケン。私の名前の昌權は、日本語ではショウケン。

では、当時のご住所はどこにお住まいでしたか?
その当時は慶南統営郡。そこが本籍地です。

家族関係はどのようでしたか?
家族関係は祖母、父、母、私の下に弟妹3人。

その当時、ご両親はどんな仕事をされましたか?
父母はそこで農業をして、父は漁夫で魚捕り、母は農作業。島です。島だから
畑作業です。

経済的にはある程度、食べて暮らせる程度でしたか?

とても貧しい暮らしでした。

その当時、学校で先生が志願せよ、と言うので行かれたのですか?
それはどうだったのかというと、私の学校では合計4人行ったけれど、学校で
勉強、いわゆるその当時は級長といいました。私はそのとき級長でしたが、級
長が行かなくては、ついて行かないのだ、といわれて仕方なく、その時、級長

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朝鮮という私たちの国があったのだ

142 

だったし、先生の言葉もちゃんと聞
いたので私が選抜されて、ですが、
行くには志願しなくてはなりません
でした。どうしたかというと、父に知
られないように父の印鑑をこっそり
持ち出して押印して、そうして志願

したのです。先生が、まあ、先生に

誘導されたわけです。

担任の先生は、日本人でしたか?
はい、日本人でした。

日本人の担任の先生が、志願せ
よ、と言って…
はい、先生の名前は、加藤先生で

す。

では、その時に先生はどこに行って、どんな仕事をするという話を、事前
に言われましたか?
前もって言ったのではなく、その当時、日本の奴らの政策で私たちが入った名
称は年少工員です。

年少?
少年と。

年少工員ですか?
それは、幼いこどもたち工員。幼い工員。だから年少工員。漢字で書くと…

張昌權の当時の学籍簿

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

143 

年老だ、こういう時のように年令が幼いという…
幼い工員になり、鎭海に行って6ヵ月教育を受けました。

50日工廠というのは、訓練を50日間受けるということですか?
いいえ、ちがいます。その工廠の名前が。ゴジュウイチクショウという。日本語で。

51工廠31) ですか?
そう、51工廠が鎭海にありました。鎭海市に、現在は鎭海市です。その工廠で
教育を受け、1週間の教育を受けて日本へ行きました。

そこへ学生たちが大勢来たでしょう?
はい、みんな私たちと同じ年ごろでした。その当時。中学校、その時は高等科

というのがありました。国民学校の上級に。高等科2年から、初等学校で今な
ら、その当時の国民学校6年まで。

何学年から何学年まで対象でしたか?
対象は、今なら中学校2年から初等学校6年まで。最近の学年では。

それではどれぐらいの期間、訓練を受けられましたか?
約6ヵ月受けました。

6ヵ月間教育を受けられて、そうして家に行って話をして、荷物をまとめて
行かれたのですか?

31) 元来、鎭海には大村第21航空廠の鎭海支廠があり、1942年に鎭海第51航空廠になっ

た。元山には鎭海51海軍航空廠の分工廠があった。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

144 

ええ。そうです。

では当時、いっしょに同じ班から何人がそこへそういう工員として行きま

したか?

私の学校からは、蛇梁国民学校からは全員で4人しか行かなかったです。

その方たちも、形式的には志願する形ですか?
はい。全員、志願しました。

全体で4人行って、同じ班からは?
同じ班からは私ひとり行きました。私か、ふたりかひとりいましたが、覚えてい
ません。

人数は多くありませんね? 全体で4人ですから?
はい。学校からたくさん行けなかったです。

わざわざ志願をしなかったのですか?

しなかったのではなく多分、私の考えでは、その当時は何人という割り当てが

あって、そのように行ったようです。

そうでしたか。そうして行かれて、次に鎭海51海軍航空廠に行って、およ
そ何人ぐらいがそこで教育を受けましたか?
正確に分かりませんが、とても大勢でした。少なくとも5~600人程度が一緒に
受けたように思います。

その教育を受けて、そして日本51航空廠へ行く前に家に帰って、どこから

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

145 

何に乗って行かれましたか?

しばらく家にいて、その当時、行く時は連絡船です。連絡船。

関釜連絡船に乗りましたか?
ええ、私たちが行く時は、それが連絡船か貨物船か分かりませんが、ともかく
船に乗って私たちは行きました。

どこからですか? 釜山からですか?

鎭海湾から行ったみたいです、釜山から行ったと記憶していません。

鎭海から貨物船に乗られたのですか?
ええ、連絡船、ひとを乗せる船みたいでした。いま思えば。

家に行って、どれほどして又そこへ?
家で1週間ほど休んで、しばらく家にもどり母にだけ会って。

そしてもう召集通知書を持って、ふたたび行ったのですね? いつまで来
い、そうして…そう、それでその召集通知書があったでしょう?
ですが、それは覚えていません。

ともあれ家に帰って、いつまで、どこへまた集まれ、というので行かれた
のですか?

鎭海訓練所にふたたび集まって、そうして行きました。
 
航空廠はどこにありましたか?
そこ日本群馬県です、ここにあります。太田市です、その当時、オデ所にこの

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朝鮮という私たちの国があったのだ

146 

群馬県太田町。呼ぶときは群馬県太田市といいました、ここにありました。
群馬県、日本関東州です、関東州。会社はこの会社でした。ナカシマ32)コクキ 
カオシ カイシャ 、そう中島航空機株式会社。

ここ中島航空機株式会社に、工員として行かれたのですね?
はい。

同期生1人と2人で群馬県、その太田町にある中島航空機株式会社。おじい
さん(ご老人)はそこに行かれて帰ってくるまで、その一ヵ所にいました
か?
一ヵ所にずっといました。

訓練所に集結したその人たちを、そのまま乗船させて行ったのですか?
その当時、背がやや高く体格の良い人は、すでに他のところへ送り、私たちは
背がやや低く、体の弱いひとは、私たちをそこで訓練させたけれど、私たちは
身体も小さくて工場にそのまま行ったのではないかと思います。

そこの気候はどうでしたか?
韓国と似ています。日本の東京の近くでした。

韓国を出発して会社まで行く時、どれほどかかりましたか?
2、3日ほどでした。あっという間に着きました。特にその時は、米軍の航空機

32) “ヒコクキ”は“飛行機”を、“カオシ”は“株式”の発音を間違ったようであり、中島飛行機株

式会社を示す。中島飛行機株式会社は1917年設立し、旧日本陸海軍課との関係で航空
機製作を担当した民間の飛行機製作会社。しかし1943年10月31日に軍需会社法が公布
されて1945年4月1日、中島飛行機株式会社は国営化となり軍需省第1軍需工場になっ
た。

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

147 

がたくさん飛来した時ですごく用心して行ったようだった。

では、そこへ行ってから……

日本へ入ったのは43年、6ヵ月教育を受けて行ったので、日本に入ったのは43

年12月末でちょうど44年初めに入ったでしょう。

1943年5月から6カ月間の教育課程を経て、5月から教育を受けられて、そ
こへ行って汽車で移動して中島航空機株式会社に入られ、行ってみるとそ
こに何人の人たちが行っていましたか?
同じ年ごろのひとのことは分からない、何故かというと、私たちはきっちり部
署に配置されたので、私たちは私が行った部署は、私たち2人のほかはいなか
ったです。他のひとのことは知りようもなく。

あ、同期生と?

うん。私たちは2人で行き同じ部署で勤務しました。今、その工場の構造がど
うであったかというと飛行機生産工場で、日本の奴の戦闘機を生産する工場で
した。艦艇です。航空母艦に載せる飛行機製造廠ですが、部署別にきっちりい
ると、飛行機が、はじめに機体が入ってくると、私は何をしたかというと、そこ
にエンジンを取り付ける、エンジンをしっかり取り付け、そのネジを組み立て
ることだけしました。ひとつの部署ですると、車が通過して、またほかのものを

組み立てる、そうじゃないですか? そんな方式です。

飛行機のエンジンをネジで組み立てる仕事をされたのですか?
はい、組み立て工として仕事しました。エンジン組み立て工といえば分かるで

しょ。

では同級生もその仕事をされましたか?

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朝鮮という私たちの国があったのだ

148 

はい、同じ仕事をしました。

その方の姓名は、なんとおっしゃいますか、同級生の方? 
その人はキム・ジョンテ。今も生きているかは知りません。

そうすると、その部署にはおよそ何名程度?
私たちがいたのはおそらく一個分隊程度。10人ぐらいです。最少でも。でも日
本の奴で学生もいたし。

日本の学生ですか?
日本人もいっしょにしました。

各部署の班長は、日本人でしたか?

日本人でした。

その日本人学生たちは、どうして来たのですか?
分かりません。まったく話を交わさないから、知りようがないです。

比率は、日本人が多かったですか、朝鮮人が多かったですか?

日本人が多かったです。私の部署には朝鮮人はそんなにいませんでした。約2

分の1か、2、3人しかいなかったから。3分の1程度?

養成所で訓練を受けたとき、どのような訓練を受けましたか?
まず私たちが受けた訓練は、精神教育といっても過言ではありません。精神武
装の次に技術教育はありません。ただひたすら身体鍛錬、その次に基礎軍人教
育も受けました。基礎軍事訓練です、いわば。特に私たちの中で少し賢い子た

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

149 

ちは、あのソネンコク33)という少年航空兵になって行った子たちもいるし。だ
から、そういう子たちは行っておおぜいが死んだことでしょう。

航空兵で行った人たちは飛行機…
乗ったでしょう。おもに航空軍に行った人たちは、どんな人が韓国人でいたか

といえば、私は正確な情報ではありませんが、それ以前に、戦争末期に飛行機
に爆弾を積んで、カミカゼトッコタイ34) といって、私の同期生の中にそんな子

たちがいました。国民学校、中学校の子たちを完全に精神武装させて、まあ、
あのあれ、天皇陛下がくれる***といいました。盃、小さいの。一杯の酒をいた
だいて飲んで、その翌日にはその子は行っていなくなりました。そんなことが
ありました。それは、詳しいことは知りませんが。

その会社に行く時、引率者はいましたか?
引率者は全員日本の奴らです。日本の奴、軍人たち。

日本軍人?
はい。あの鎭海51工廠、そこは海軍工廠でした。海上兵です、飛行機が海上に

浮上する、日本の奴、そんな飛行機がありました。それを日本の奴。軍人たち
がすべて管理しました。

そして行くときになにか、そこで食事などはどうでしたか? そこへ着くま
で食事はしましたか? そこに移動するまで?
はい、すべて着くまで、私たちはすべて食べました。私たちは着くまで。

33) 少年航空
34) 神風特攻隊

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朝鮮という私たちの国があったのだ

150 

中島航空機株式会社、もしや所属の宿舎が別途にありましたか?
はい、別にありました。寄宿舎が工場近くにありました。ここ韓国でも大きな
工場には社員宿舎があるでしょ? そのように工場とは別に寄宿舎がありまし
た。

では、宿舎では大部分が朝鮮人たちでしたか?
宿舎は、大部分は朝鮮人でしたが、とても広大なので職場がどこにあるのか分
からないし、夜だけ少しの間、寝て別々になるから。

その寄宿舎は、何人ほどいたようですか?
一部屋に私の記憶では、小さな部屋に8、9人ほど、それぐらいの小さな部屋を
使用しました。ですが夜に点呼するとき見ると、あの大きな***立って二列整列
するとびっしりだったから、少なくとも一寄宿舎に一個中隊とすれば、100数十
人になるでしょう。120~130人程度だったが、それが数棟あったから。

おじいさん(ご老人)の最終学歴はどのように?
高等学校。

高等学校を卒業されましたか?
はい。高等学校。高等学校2年のとき6.25事変で学徒兵として入り、入って卒
業証書を私はもらいました。

ご老人は日本語がお上手だったでしょうね?韓国語より?
いいえ、私はまあ、それは日本語を、(韓国語を)まったく全然できませんでし
た。韓国語がまったくできませんでした。なぜなら日本語をたくさんさせたか
ら、あの日本の奴らは、日本語をいつも使うよう督励して、日本でした***だっ

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

151 

たでしょ、日本で。それでもう解放になって帰ってきて1年間、韓国語を学んで
入りました。ですがこれはもう本当、日本語も忘れてしまった。ハハハ。

もしや非人間的な仕打ちを受けたとか、殴打とかは?
いいえ、そのようなことはありません。

ことばの暴力のようなことも無かったですか?
そのようなことはありません。ともかくちゃんと、呼ばれればそうして、言われ
たことはちゃんと聞いたので。またそういうことにまったく神経を使わずに、た
だ自分の仕事だけ熱心にして。

月給は、貰いましたか?
月給がいくらだったかも知りませんでした。

貰ったことはもらったのでしょうか?
貰った月給はありません。ただもう終わって、もう帰ってくるときに、金を少し

くれたけれど…

帰還するときにですか?
帰還するときに金を少しくれましたが、その金がどれほどかというと、ええ、そ
の金をもらって、私は久しぶりに父母に、帰ってきてから父母(に)買いまし
た。贈り物をたくさん買いました。服やなにやらをひと包み買いました。それ
を買うと金は残りませんでした。

では、そこにいた期間に金を貰ったことはありませんか?
ありません。そんなものは。それで私たちが抗議してその後に一度したとき、

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朝鮮という私たちの国があったのだ

152 

私は海軍になって現在入っていますが、一度論山からやってきたその方に話し
ましたが、私のようなひとが数人いました。それで私たちが言ったことは、当
時、ほかの事は知らないが、私たちはそこに連れて行かれて、勉強も出来ずに
虚しく歳月を送ったことは、やむをえずして行ったにせよ、私たちはそこから
金を貰わねばならないのではないか。そう言うと、そのときに聞いた返事は、

日本でいう話は、韓日なにの協定をするとき、その金をくれた、その金をくれ

て浦項製鉄工場を建てたではないか、という話だった。そんな話を聞いて私た
ち一緒に行った同窓生もそうだったが、私たちが望むことは、ともかくそこで
奴隷生活をしたのだから補償をもらわなくては***なかったし、ですが私たちが
万一もらうべき金があり、政府が受け取ったのであれば、それは私たちに少し
戻してくれなくてはいけない、そんな思いです。

そこでは、昼だけ会社で食べましたか?
はい。

食事はどうでしたか?
食事は口に合いました。そのほかに解放になってひと月経って帰ってきました。
8月に解放になったのに、9月20日頃に帰ってきました。そのひと月間、ほとんど
食べられませんでした。だから、それまでは食べたという話です。それであまり
の空腹に特攻隊をつくって、たくさんナスももぎ取って食べ、サツマイモも掘っ
て、私たちの部屋の子たちは互いに盗み食いして空腹をしのぎました。

寄宿舎に担当する人がいますね? 寄宿舎長のようなひとはどんな人たち
ですか?
私はどんなひとか知りません、ただ最も怖かったことは、警備に立つその人た
ちだけ恐ろしかったです。まるで軍出身者たちがすべてを掌握しているように
振る舞っていました。

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

153 

そこで勤務したとき、空襲とかは常時、何回もありましたか?
はい。特に45年度に休戦を、解放になる2、3ヵ月前から、ものすごく空襲がす
さまじかったです。そこは軍用工場だったので、工場はほとんど屋根がなくな
るほど空爆されました。だから雨が降ると雨合羽着て仕事しました。日本の奴

らはたいした奴たちです。

爆撃で天井が飛んでも仕事を続け、雨が降っても雨合羽を着て仕事をし
て。1日何回ほど空襲がありましたか?
空襲がもっとも激しかったのは、ちょうど終戦になる3ヵ月前で、昼間も1、2回
あり、夜間にもあって。夜間にあると、全員が、もう空襲に対する訓練が徹底
されていました。全員が毛布を持参して逃げ、爆弾が落下すると腹ばいになっ
て耳をふさぐのだ、と全員が訓練されていましたから。防空壕が全部できてい
ました。無条件行くとすべて池があってそこへそのまま全員が入って行く。

昼間1、2回、空襲があったのですか?
昼間に空襲がもうまあ***で、そんなときが頻繁にあった。夜はB52なのか大きな飛
行機、爆撃機、それがあの上空から爆弾を落下して建物を破壊するのです。

一日に何台ほど組み立てをしましたか?
それは記憶していません。どの部分であるかも分からないし、狭い場所で完成
するのではありません。どれかひとつを、私たちが少ししたのは数個作業だけ
すると、次の段階にすすんで次の段階にすすむから。

勤務日は、月曜から土曜まで仕事で日曜は休むなど、休勤日はありましたか?
休む日は無かったようです。ずっと勤務です。万一、空襲が激しくて工場にな
にか問題が生じると、休み。そうでなければずっと仕事をして、ただ日曜日は
月1、2回休んだと思います。私も日曜日に、日本の奴らの家に遊びに行った記

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朝鮮という私たちの国があったのだ

154 

憶があります。

朝鮮人は宿所を利用したでしょうし、日本人は近くの家から出退勤しまし
たか?
たぶん出退勤していたと思います。寄宿舎にいたのは、ほとんど私たち工員だ

ったと思います。その宿所にいる工員は韓国人だけでなく、日本の学生たちも
そこに多数動員されていたと思います。

解放がなったという話は、どのようにお知りになりましたか?
そのことを聞いたのは8月15日、放送を直接聞きました。 

そこで放送を聞きましたか、ラジオを?
その日は、全日本国民全員が聞くよう強要された放送でした。だから私たちは
放送を聞いて、なにも言わなくても放送聞き、降伏したことが分かったし。そ
れから1ヵ月間、すごくたくさん苦労しました。

解放になった事実を知ってから約1ヵ月間、そこにいらっしゃったとのこと
ですが? では日本人たちもそこにいたのですか?

日本人はいなくて私たちだけ。私たち韓国人だけ。きっちりそれが放送される
と、私たち韓国人は、私たちは知らなかったけれど、その日夕刻に放送がぴた
っと終わると、朝鮮独立だ、太極旗があらわれました、その時はじめて私たち
は知りました。朝鮮という私たちの国があったのだ、ということを。はっきりそ
うなると、私たちを寄宿舎の数棟に詰め込んでいっさいの外出を禁止し監禁し
ました。それが1ヵ月間です。

あちらで日本軍人たちが監禁したのですか? 寄宿舎に?
はい。

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

155 

それでは、会社には行かず寄宿舎にだけ…

うん。寄宿舎にだけいました。そしてその時から、もう食べるものもアイゴ、
まねをできません。食べ物を、飯がどうだったかというと、ご存知か知れない

が、あの食器があるでしょ? それに飯をくれます。さっとすくいあげるとひと
匙しかならない、それと汁を少し、それが1食分です。それでその食器で1回さ
っと食べると、ありません。今が育ち盛りの子供がそれぽっち食べて大丈夫で

しょうか? それでどうしたかというと、私たちの班は12人でしたが、12人を4

組に分けました。3人が外に出て食べ物を盗んでこなくてはいけない。義務的
に。

どこへ行ってですか?
その日本の奴らのナス、ナスがあるでしょ。

でも、それは会社の外にあるのでは?
外にあります。

ですが先ほど1ヵ月間、寄宿舎に監視、監禁されたと?
監視が厳しくとも、どうにか隙をみて外に出なくてはいけない。こっそりと外に
出るのです。鉄条網が張ってあるわけでもないし。外に出て、何も無いから服
を脱いで、服をきっちりと折りたたんで、それを風呂敷にします。そうしてから
ナス畑に行ってナスももいで、次にサツマイモも掘って包んでもどって、それ
を夜間に生のまま食べました。何も無いから? そんなふうに1ヵ月間送った。
その時が最も苦労でした。

そうすると、ラジオ放送を聞いたその日ですか? その翌日から寄宿舎に監
禁したのですか?

1週間以内に監禁されました。1週間以内に。数日間はあいまいで外出もさせ

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朝鮮という私たちの国があったのだ

156 

なかった。そうなるともうその寄宿舎では私たちが一番年下で、いうなら今や
南韓、韓国人もいっしょに詰め込んだのです。その人たちはとっくに知ってい
て、太極旗、独立した、なにと宣伝するから、日本の奴らが遮断したのです。日
本の奴らは韓国から出て行くとき、苦難をなめたではありませんか? 私たち
もまったく同じ苦難をなめました。そこで。
 
工場へ行ってみませんでしたか? 日本人たちが降伏したと聞いて…
聞いてからは、その工場へ行けませんでした。

日本人たちは帰ったのか、帰っていないのか、それもよく分からないま
ま?
はい。私たちだけをきっちり家に入れて。

1ヵ月ほどしてから、そこでは何と言って帰れ、と言ったのですか?
船の準備ができるまで、待て、と言ったのです。そこからもう乗船して帰るとき
は貨物船で帰ってきました。出てくるときは大きな船に荷物のように運ばれ帰
って来ました。

帰って来るときは、どの港から乗船してお帰りでしたか?

日本では長崎で乗船し、鎭海湾へここです。

鎭海湾に到着すると歓迎でたくさんの人だかりでしたか?
はい。歓迎に大勢が来ていました。

どちら側の人々が迎えに出ていましたか?
その時、見るとおもになに、その、人民共和国のひとが迎えに出ていました、

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

157 

あの旗を掲げて人々が来ていて、私たち韓国人を歓迎しようと。ですが迎えた
人たちは知りません、どんな人たちか分かりませんが、旗だけたくさん見まし
た、その時は人民共和国だったか民主党だったか共産党だったか分かってどう

しますか。なんの政治的概念もなく、ただ嬉しくて旗を揚げて大勢が迎えてく

れました。

その歓迎した人たちは、もしや家に帰るときのお金をくれたとか、車の便
宜を提供してくれたとか、そういうことはなかったですか?
そんなことはよく分かりません。分かりませんよくは。車の便宜を図ってくれた
ようです。でもどうだったか分からりません。

帰ってきてから、ご老人はその当時、何をされましたか? 帰られたとき何
歳でしたか?
そのとき15歳だったか? 16歳だったようです。

帰ってきたときは16歳? では当時、学校にそのまま入りましたか?
そうです。初等学校にまた入って、ハングルを1年学び中等学校に行きました。

帰ってすぐ入りましたか? それとも少し経って入られましたか?
それほど経っていません。ただちにハングルを学ぶことは全国各道でしていま

したから。帰ると、いくらでも来て学べ、とそうだったのです。それで。

では16歳で帰還されてすぐさま国民学校へ、学校に通いながらまた別に農
作業をするなど、そんなことはありませんでしたか?
ありませんでした。ただ私が学校に通学していた高等学校2年のとき、あの学
徒兵で連れて行かれたため、学徒兵として行って、論山訓練所で訓練を受けて
甲種将校団試験を受けました。それから歩兵学校に入って53年度に将校に任

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朝鮮という私たちの国があったのだ

158 

命されて分隊長をして帰ってきました。

論山訓練所で訓練を受け、試験を受けて何になられたのですか?
はい。陸軍少尉に。53年9月5日に任官されました。

53年に陸軍歩兵学校に入って、その後も引き続き勤務されたのですね?
引き続き軍にいました。

そうしますと、先ほどの試験を受けて陸軍歩兵学校に入学され、それが53
年度で、そしてそこで服務し、そこで大尉で除隊されて、ふたたび陸軍本
部へ…
除隊は、除隊年度は1968年9月30日、大尉で除隊しました。

最近数年前まで、ずっと仕事をなさったのですね?
私は年齢が今年73歳になるまで仕事をしました。5年前まで仕事をずっとして
いました。

今年で80おいくつですか?
満で76歳ですが、わが国の年齢で私は今78歳です。

78歳ですか?
戸籍が1年遅れになっていて。

では、現在の家族関係はどのようになっていますか?
現在、妻と息子ひとり娘ひとりです。

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張昌權級長が行かなくては、ついて行かないのだ

159 

そして特別に最後に、私たち委員会や政府に望まれる点がございました
ら、おっしゃってください。先ほど未払い賃金のことを言われましたが、
ひとことおっしゃってください。
はい。そうですね、過ぎたことでもっともやり切れないことは、今どんなに私が
***たくさんしても、いろいろと難しい状況を免れることができたのに、そのよ

うなことを今さらなにか政府に訴えても仕方のないことで、但し、ただひとつ

あるのは、私たちは幼いときに他国に行って私の生活はおわったのだが、幼い
状態だったからその当時に稼いだ金の一部なりとも、実際に万一政府が受取っ
たのであれば、それは返してくれなくてはいけないのではないか、こう思って
います。実際、私は自分の意志で半分、他者の意志で半分で行ったから、一生
を弁償してくれ、とは言えないでしょう。

面談者_チャン・ミラ調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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朴成春ともかく行こう、と連れて行かれた

163 

朴成春

創氏名

務本成祚

1915.6.1

全南 務安郡 清溪面 南安里 生まれ

1943.6.30. 芝浦海軍施設普及部 所属 工員として トラック島

(現在名 チュウクchuuk)に動員

1946.1.15. 芝浦で解員された後 帰国

ともかく行こう、と連れて行かれた

おじいさん、お名前はなんとおっしゃいますか?
ええっと、朴成春といいます。

創氏名は?
それ、務本成祚といいました。

はい、そうですか。それではあの日本の植民地期に連行されたときは、お
いくつでしたか?

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朝鮮という私たちの国があったのだ

164 

あの頃、私ははっきり覚えているが、27歳のときに行ったと?

昭和なん年でしたか、その時?
昭和18年度に私は行きました。18年度。

昭和18年のなん月頃ですか?
陰暦5月は何月になるかな? 麦打ちして麦、稲をして。面からきて。

その時に捕まえに来たのでしたね?誰が捕まえに来ましたか?
面から、面から。みんな死んだ、あいつらも。

なんという名前のひとですか?
あのころ、あのひとか? チョン・ギィドンだったか、その人も死んでしまっ
た。面書記。

チョンどなたですか? キドン?
チョン・ギュドンが。

はい。それで、なんといって連れに来たのですか?
あ、日本に徴用で行くんだと。農作業はどうなるんだ、食べていけないじゃな
いか、と言ったら、行くんだ、行かなくちゃいけないと、面でそうして。

おじいさんは、行きません、とおっしゃらなかったのですか?
行かないと言っても、言っても無駄だった。行けないと。家では大騒ぎになっ
たあの頃。

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朴成春ともかく行こう、と連れて行かれた

165 

はい。それではこの村からそのチョン・ギュドンという人が、村からおじ
いさんだけを連れて行ったのですか?
あ、私の村では私ひとりです。

では、チョン・ギュドンという人は、徴用でどこへ行くといって、そうした
のですか?

どこへ行くという話もなくて、ともかく行こうと、連れて行かれた。またなに、

農村でなにが分かりますか?

はい。それではどこへ行きましたか? 最初に行ったところは…
松島海軍本部というところだった、そこは。

それでは、この村からチョン・ギュドンさんについて行って、最初に行っ
たところはどこですか? 面事務所とか郡庁とか。

ここ清溪面。そして木浦、木浦のどこの郡庁だったか、木浦へ行ってまた身体

検査をして…

はい。では清溪面事務所に行ってみると、おじいさんひとりでしたか?
いいえ、私たち清溪面事務所から13人行きました。

清溪面事務所に集合してなんて言われましたか。あの、教育されました
か?
なんの話もなかった。よく分からない。どう言ったのか。もうそうだから行こう

と、またそこで車に乗せられて行ったんだったか、木浦に行ってまた身体検査

をして、その日夕方に行ったか、その翌日に木浦へ行ったんだったか?

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朝鮮という私たちの国があったのだ

166 

木浦で、身体検査はどこでしまし
たか?
木浦のその郡庁だろう。間違いなく。

務安郡庁?

うん。

では、木浦で身体検査をして、次
にどこへ行かれたのですか?
そこで汽車に乗って釜山。釜山に
行って降りて朝だったかな? 朝、
その翌日の朝に。夕方に乗って朝降

りて、そこでまだそのままそれで船

に乗せられ、全員乗せて、あの山の
ような奴、大きい船に乗せられたか

ら、どこがどこやら分からない。そこが日本だというので日本だと分かった。日

本に行って、日本で1日か2日かどこか部屋へ入れられたので、どこがどこだか
分からない。だから私たちはついて行っただけだから、どこがどこなのか分か

らないでしょう?

誰か引率者のようなひとはいなかったですか?
連れて行ったひとは、私とあの島のひとの班長いて、あの班、あの頃、島の人
で私その人の名前も班長の名前も分からない、ここサマ里(サマリ)35) に、ユ
なんとかさんがいるでしょう。あのヨンソンさん。ユ・ヨンソンさんが副班長と

して行って。

35) 全南務安郡清溪面にある村名

海軍軍属者 名簿

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朴成春ともかく行こう、と連れて行かれた

167 

その日、その釜山から乗船したとき、何人ぐらい集まりましたか?
あ、ぞっとする。釜山から何人だったかはっきりと分からない。おそろしい。ま
るで山みたいな船だ。

その船の名前は、なんといいますか?
私たちが乗って行った船はアサカゼマル36)、朝風丸。

乗船してどのぐらい、日本に到着するまでどのぐらいかかりましたか?
私たちはどこがどこだか分からないけれど、船でそんなにかからず約1週間、1
週間もかからなかったから、あのトラック島か。けれども私たちが行くときは、

17日目かにそこへ到着しました。どうしてそうかというと、そこへ以前に行った

人たちの話によると、あの米国の魚雷にあって破壊されてもう死ぬかと思った
んだと。そこに着くとみんなが手をとって喜んでくれて、韓国人でそれまでに
行った人たちが。

そうしますと、釜山から船で行く途中で、米軍の潜水艦から魚雷攻撃を受
けたということですか?
そういうそんな攻撃は受けなかったです。私たちの時は。そのふたりがどこか
でどうにかして、ひっかかったということだった。それで。そうしてこうバック

して後退したり前進したりして、日にちがそんなにたくさんかかったんだ。

船に長時間そうして乗って、どうでしたか? 食事をするとか、睡眠は?

36) 朝風丸;山下汽船所属、1940年12月16日海軍徴用船として供出。12月25日呉鎮守府所

管特設運送船、1941年11月5日南方部隊に興業丸等と配属、1942年12月10日第8聯合
特別陸戦大輸送を目的に盤谷丸等と船団を編成し駆逐艦山風の護衛を受けて横須賀出
航。1942年12月22日ラバウル入港等の経歴をもつ海軍徴用船。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

168 

それで17日だったか? 船に乗ってから半ば死んだようになって気力が、飯も
食べられずにガリガリにやせて、半数ぐらい死んだ人も多かった。途中でほと
んど食べられないから飢えたようになった。その頃は若かった、私はこんなに
小柄でもその時は元気盛りの時。27歳だったし身体が頑丈だった。飯をいっぱ
い、いっぱいくれなかった。それでおかずもたくさん、たくさんくれなかった、
干ものをちょっとくれて水もそう、1食と洗面水を、洗面水もケチって。水もい
っぱい飲めなかったし小魚もたくさん食べられなかった。

港に着いてから、天気はどうでしたか?
ふつうそこは45度、43度、42度で毎日雨が降る、雨が、夕立。でも雨が降らな
いと米もできない熱くて。そうしてそこの土民(原住民)はそこで暮らしてい
た。顔はすごく日焼けして真っ黒。行って身体にアセモができて住めたものじ

ゃない。そうするうちにそれは皮膚に徐々に慣れていく。それからは大丈夫だ
った。私は満4年目に、私は昭和18年だから、昭和21年度に解放になった秋に
出たので。そうでしょう? 約6ヵ月かかったかな。雨が降らない日はそこで3日
だったかな。1日に3回も4回も降って、それなのに土はこれが砂地や灰地だ。雨
が降ってまた陽光が強くさすのでいつも乾燥してしまう。雨が、雨が降らなか
った日が3回か、3日かありました。3日だけ。

そこはどういう島か、どこである、そんな話は聞きませんでしたか?
そこはトラック島37) 、そこは海軍本部。夏島(Tonoas Island)といったか夏島。そ
れでそのトラック島に行くと島が77あった、島が。その島は。

トラック島夏島という場所に到着されて、そこは軍部隊でしたか?

37) 南太平洋ミクロネシア群島のひとつ1990年までトラック(Truk)と呼ばれたが現在名は

チュウク(Thuuk).

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朴成春ともかく行こう、と連れて行かれた

169 

そうだ。軍部隊だった。

それでは、そこでおじいさんはどんな仕事をされましたか?
その人たちが、遊ばせるために連れて行ったと思いますか? そして飛行機場
に飛行機場でなければ日本人達はその島にああして木が、そこ全部材木がいっ
ぱい積まれていました。そいつをすべてどうにか空けて土を運んで飛行機場に
ならして造った。飛行機場。
その飛行場名、名前はなんですか?
知りません。それ、水曜島(Tol island), 水曜島だったか? なんといったかな?

はい。軍人達をそのときたくさん見ましたか? ええ? 日本軍人達。
日本軍人もあの、アイゴ、あの日本人達は私たち韓国人達をもう、青年達がも

う24歳になった青年達が言葉では表わせない。みんな死んでしまった。若い人

達、ほんとうに若い人たち、学校に通っていたのに連れてこられて、私たち韓
国人もおそろしいほど死んでしまって。

はい。どうしてそんな大勢が死んだのですか?
ああ、あの米国人達の飛行機が飛んできて戦争したんだ。1日に砲隊が4組で
旋回して、そいつが来ると、日本の飛行機は***そこへ行ってそうしたんだ。あ
あ、でっかいのが夕方に、夕方に戦争するのをみると、炎がものすごくこんな
に、こんなに炎がこうなって四方に広がってみんな殺されてしまった。最初は
人を、人は殺さなかった。飛行機場にきて、米国の飛行機がきて全部爆弾***し
て、全部すべて飛行機場をそうして、2回目は船が入ってきて船が数千隻あり
ました。そして夏島海軍本部。その船でそうしてしまい残ったのはひとひとり
だけ、飛行機からみて韓国人か日本人か分かりますか? ひとりでもみると機
関銃で撃ってきた。あとからは戦う戦力がない、日本人。そう軍糧も足りない

し。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

170 

ええ。そうでしたか。そこは大きな山みたいなのは無かったですか?
山は、全部島だから。トラック島は77の島だから。

トラック島夏島、そこにだけいて飛行機場の建設だけしましたか?

ええ。あとから軍糧米がなくなって日本人達は飯もくれないし、サツマイモを
植えさせました。みんな山を掘って。

サツマイモを植えさせたのですか?
サツマイモを植えたんだ。日本人達が、日本人がサツマイモを植えるように

と。サツマイモは最初こんなに太いのがなったけれど、虫にみんな食われてし
まった。それからはトウモロコシ、トウモロコシを植えて、1食で醤油も塩もな

いから、沼の水を汲んできて沸かし、汁はジャガイモをちょっと入れて沼水を
汲んでそうして食べた。飢えでみんな死んだ。

宿舎のようなところは、どうなっていましたか?

こう板切れで、こうトタンでそうして家を建てて、こう通路はこうして、こうな
ってひと部屋に、ひと部屋に3人ずつだったかな?

はい、そうでしたか。日本語は少しできましたか、おじいさん?
日本語は分からない、韓国人とだけしゃべったから、日本語はそれほど…

そうすると日本語が通じないと、その飛行場建設のときに作業の指示はど
のように受けたのですか?
そこにも班長がいるし、団長がいるから。その人は日本語できたから。

はい。月給は、お金は貰いましたか?

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朴成春ともかく行こう、と連れて行かれた

171 

金はくれません。そこにいて行くとき、もう出るとき、満期がきて出るとき2
年、満1年が満期だったかな? 出るときに渡すからといって通帳に入れておく

といっただが。少しずつ、今ならまあ数千円ずつをそこで使うようにとくれた

が、それをそこでなにに使う? けれども金、金、そこから出るとき、金、そうし
て3万円か3千円かの金をくれなかった。日本人達は、金をそうしたのに、通帳
に入れたのもどうしようもない。1円もどうしようもなくなった。日本に行くと、

日本に行って降り、そこでまたそこの米国人がくれた服、その軍でくれたオー

バー、すべてなくなって、すべてひとつも残らずなくなって、みんなそんなの
を着て。乞食になって帰って来たんだ。乞食。

はい。そうでしたか。その給与を1年単位にするという話は、誰から聞きま

したか?

あ、そこへ行くときに、ここの面だったか。ここに連れて行ったひとで面書記。
1年と私は聞きました、はっきり聞きました。

はい。そうしますとそれはもう、釜山で乗船する前に、それをご存知でし
たね? 1年間する。1年だけすれば良いのだと?
そうです。行くときはそう思っていました。

外出などはどうでしたか? 外に遊びにでかけるなどありませんでしたか?
月1回、休暇だったか? 月1回、休暇だったか、2回だったか、3ヵ月1回か、1ヵ
月に1回くれたかな?

そこで飛行場を建設するとき、何時から何時まで仕事をされましたか?
そこへ行って、時間は少し、トラック島の時間はちがうみたいだった。ふつう5
時、5時に出て何時に解散したか分かりません。陽がまだ少しありました。時間
が。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

172 

食事などはそこでどうでしたか? 食事や寝るところは不便はありませんで

したか?

最初行ったときは、食堂でソン・ヨンスというひとがスユ、スユでご飯を炊い
て来たのかな。してきてこんな桶に盛って食事のときに持って来てくれる。そ
の飯を。そして食堂に持って来てくれた。そうするとこうしておかずと持って
来てくれて食べます。

はい。お腹はすきませんでしたか?
はじめはお腹すかなかった、でも育ち盛りの人達はそうだった。あとになって
サツマイモこんなのをサツマイモを育てて蒸かして3食くれた、沼水を汲んで
汁をつくってくれたけれど、空腹なのでそれでも食べたけれど、くさい臭いが
する沼水、塩もないし醤油もとうとう日本から醤油や味噌なども運んでこられ
なくなって。

それでは、その仕事中に事故などはありませんでしたか?
私はそれにかかって1度、発疹が出て、ここをどうかして打って。ここを、ここ
を打ってきれいに治ったけれど。日本人達が病院に連れて行って痛い人はそこ
で治療した。

はい。そうすると医者もいましたか?
医者は、日本人全部、全部医者です。

朝鮮人だといって粗末にされたり、ひどい仕打ちを少しされたししません
でしたか?

日本人達、そこの軍人達はちょっと上官の人は高い人たちはなんだったが。兵

卒のヤツらは韓国人だ、朝鮮人、朝鮮人といった。でもそこで上官に知られる

とすごく殴打された、そこで。

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朴成春ともかく行こう、と連れて行かれた

173 

はい。日本軍人。日本人の高い階級のひとは大丈夫だったが…
あゝ。上官たちはそうではなかったが良いひとは、上官達はすごく良い。言葉
づかいもとても丁寧で。だけどあの悪いヤツらは韓国人にケチをつけるんだ。

家にはどのように連絡、手紙などはたくさん書きましたか?
手紙をそれ、それはわたし、それが手紙は…77島だからここで住所をそれ、私
はここで手紙をしましたが、手紙もよくできません。どうしてかというと、私が
書けなかったから、それで。手紙を何度か受取るには受取りました。

どなたが送った手紙でしたか?
ここで、私の妻がここでひとに頼んで書いてもらって。

では、おじいさんは返信は送らないで?
返信はしたが、何回かしたが、返信できなかった、それ***送ってくれなかった
から、できなかった。

はい。たまに、先ほど休日はたまに1日あったとのことですが? その時はな
にをして休みましたか?
アイゴ、どこにも行けない。どこにも、金さえあればどこか行くだろう。そこも飲み
屋があったし、あの女性の家もあったけれど。それは金がなくては通えない。

はい。飲み屋もあるし、女性の家もありましたか?
あゝ、女性の家もすべてあった。

はい。ではそこの飲み屋や女性の家に、わが国のどこか、朝鮮から来た女
性もいましたか?

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朝鮮という私たちの国があったのだ

174 

朝鮮女性達がたくさんいました。朝鮮女性もいたし、日本女性もいたし。

日本の軍人だけ行きますか? あるいは韓国人も金さえあれば行くところで

すか?
そんな日本の軍人のことはよく分かりません。韓国人達も、わが国の人達も女
性の家にも通うし休日に外出もできるし、そうだった。それ1時間、1時間。

1時間ってなんですか? 遊べる時間ですか?
うん。長時間はいられない。

するとその時、朝鮮女性は何人ほどいたようですか?
知らない。何人か口にするのも恥ずかしいし。あれがあるから何人かは分から
ない。

では、その施設は部隊の中にありましたか?
いいや。別の場所でそこから離れていた、日本女性、韓国女性がいるところは
こう別にあった。

えっ、別に? えっ、韓国女性、日本女性は別々に? それでは1時間、女性の
家に行って1時間、遊ぶとお金はどれぐらい渡しましたか?
1時間でその頃、だから300円だったかな? 3000円だったかな? それは知らな
い。1時間で。

300円なのか、3000円なのか、正確にちゃんと分かりませんか?
えゝ。1時間に3000円といったか? 当時の金で。

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朴成春ともかく行こう、と連れて行かれた

175 

朝鮮女性がいた女性の家は、どのようなつくりになっていましたか? 構造
は?

こうなって、こうなって宿舎があって。部屋ごとにひとがふたりほどこういて。

入って1回、見物だけしたが、こんな部屋でこいつがひと部屋***こいつは小さ
い***こうして人がふたりほど入り寝ると、こうでこうしたから。そうだ、その外
に出ると、そこに写真がありました。写真がちゃんと貼り付けてある。だからそ
の女性と遊ぶ人は、その写真をみてそうするといえば、そこへ連れて行き入れ
る。横の人がそうして外で見物だけしたんだ、そこへは入らなかったよ。

解放になったという話は、どのように知りましたか?
そこで昭和20年度8月、8月15日だったか? 8月15日でしょう? 解放になって、
朝起きて洗面に行ってみると、それまでは日本国旗をこのように掲げていて、
あの水曜島(Tol island)という島は80里にある。大きい、山が。山がこんなに山
が大きい。

その山の名前はなんといいますか?
水曜島。

水曜島?

うん。ああ、その山の名は水曜島といった。そこに行くと日本の汽車がそれま

で停まっていた。朝起きて外をみると、このように並んでいた米国国旗だよ。
それが並んでいた。だから班長に島人達がそうして、班長の名前はキム・ボン
ソクで、もう名前は 知っている(呼ばない)。班長はキム・ボンソクですが、
班長と私は同じ年令です。あゝ、それで班長さんがそうして、あのスユに行っ
て、汽車がそうしてこう見てみると、たいへんなことになった。何もしゃべるな

という。大変なことになるという。とにかくもう何も言わずに仕事をそのまま続

けました。そうして1週間を、私はその日数を忘れない。そうして1週間経って、

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朝鮮という私たちの国があったのだ

176 

あの海軍大将がきて全部飛行機場に韓国人達、日本人達を全員集合させて、
米国飛行機がきて日本本土にこう爆撃したが、韓国と日本、日本沖縄と二つの
国だけ和解するという。そうして徐々に分かってくるじゃないですか。8月15日
に解放がなって、昭和21年度に私が出てきたから、8月、9月、10月、11月、12
月、4、5ヵ月ほど経ったのか? その間にもうそうなって、いつ出発するという
話も教えてくれない。いきなり、それだから米国人達は何月に来たのか知らな
いけれど、もう日本人達は武器をすべて奪われ、軍服をすべて脱がされ、米国
人が入ってくるともう***という島へ、どの島だったか山のような船、米国船が
きて、運んで米国人たちが運んでくると、昼間だけきて太陽がわが韓国のよう
に5時間もするとその島に行ってしまう。そうして仕事は必ずそれをさせたから
解放になった後も、必ず日本人達が仕事をその前のようにさせたから、日本人
に強制的に連れて行かれて仕事して捕まれば仕事してもしなくても、捕らわれ
たのであれば仕事はしなくてもかまわないというのだ。それなので誰が仕事し
ようとするか? だからその頃は私たち韓国人に倉庫のようなもの、食糧倉庫
のようなもの、倉庫のようなものを数個***その人達が韓国人にもいっしょに配
給してくれて、解放になった時は少し、私たちは少し楽に食べられました。飯
ももう炊いて食べて、米があんなに積んであっても飯をくれなかった日本人達
は。少しは食べたのか。

日本が敗亡して、いつ出発されましたか?
ここで陽暦11月頃、ちょっと待って。私は陰暦正月7日にこの家に帰りました。

わが家に。そう7日か8日にここに帰って来たけれど、12月にともかく船に乗っ
て日本にきて2日か3日か、また日本空港にきて***島でそうして、大騒ぎした声
張り上げ。船に乗せて、もうそうすると、そこでどうにかしてそうだから、何日
なのか私は日にちがはっきりと分かりません。

ではいずれにしても、陰暦7日、正月7日、そうすると昭和21年1月ですね?

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朴成春ともかく行こう、と連れて行かれた

177 

あゝ。そうです。

日本が敗北して家に帰りましたが、日本軍人たちがそのまま素直に無事に

行くようにと、なにか協力してくれましたか?
なに、あそこから来ると、飯はなかったです。くるときにそれ船で食べるように

と。あゝ、そうだ、そこで私たちは聞けなかったけれど、1度そこで解放になっ

てから帰らせようとしたのに帰らせなかったから、あの李承晩博士かなに大統
領がそこへ来て、飛行機に乗って来て、韓国人をちゃんと保護してそうして無
事にそうして韓国に送るようにする、と言ったそうだ。その話にだけ聞きまし
た。

李承晩大統領が、そこ夏島に来たのですか?
ですから私たちは会わなかったけれど、来たと言っていたから。

はい。それではお帰りになるとき、お金などは受取られましたか?
だから私は昔のことで分からないけれど、金、その時の金で3000円、3000円
か3000円だったか、その時の金で3000円だろう。

面談者_チェ・スヨン調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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金濟斗倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて

179 

金濟斗

創氏名

金城濟斗

1925.9.26 済州 北済州郡 涯月面 トンジ里 生まれ
1941.5.

中国新京飛行場 配属   

朝鮮第2航空軍 第4航空路部 満洲第12914部隊所属 傭人として動員

1945.8.15 日本敗戦後 ソ連軍捕虜となる
1948.2

帰国

倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて

先生のお名前は金字、濟字、斗字?
済州島、現在の濟の字、一斗の斗の字。

その当時、日帝時代のとき、創氏名などはありましたか?
創氏名は金城です。カネシロ。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

180 

生年月日はいつですか?

1925年9月26日。

それでは始めに、先生の幼年時期から少し簡単にいくつか質問させてくだ
さい。
はい、幼年時期に私は、この郭支で五人兄弟の末っ子に生まれ、私は郭支で生
まれました。涯月邑郭支で。いつ生まれたことなどは省略して、そして涯月国
民学校を卒業しました。当時は涯月にしか国民学校はありませんでした。

その時は、普通学校といいましたか?
いいえ、尋常小学校、私たちは普通学校が尋常小学校になった第1回卒業生です。

それは4年制ですか? 5年、6年制ですか?

うん。6年制です。その次に卒業して日本へ、大阪へ行きました。だから大阪へ

行ったのは1941年5月、いいえ、1941年5月じゃない。大阪へ行ったのは、はっ
きりしない、これは。ですから大阪へ行って、そこで学校を卒業しました。

どちらの学校を?
うん、東京で通信学校を卒業して。

これはどういう通信学校ですか?

無線高等通信学校。

これは陸軍や海軍のようなところの学校ですか?
いいえ。技術養成のところでその通信学校を卒業し、そして配属されたところ、そ

こで就職して配属されたところは、どこかといえば1941年5月に新京飛行場。    

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金濟斗倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて

181 

新京飛行場ですか?
はい、つまり当時どうであったかと
いうと、無条件にきっちりどの海軍
に行きたい、次に陸軍に行きたい、
船舶に乗りたい、そうすれば志願し
たところとほぼ近いところへ送って

くれます。それで私はどうしたかと

いうと、陸上を志願しました。

陸上。陸軍のほうへ?
陸上、陸上を志願して第1志望、第2
志望の2ヵ所ありました。その時は大
東亜戦争の時で、船舶に乗った人は
待遇がたいへん良かったです。ここの
通信で何番といえば、船長待遇と同じです。それで待遇が良いので船舶に乗った
人は、一度でも乗船した経験のある人は無条件に船舶に行った。うん、船舶へ、無
条件に行けるのではなく、自分の志望を船舶と志望します。そうだから行ってしま
い、私たちはそういう経験は無いので、私は陸上勤務者にしてくださいと志望し、
私は、この韓国に帰ってくるつもりだったが? それなのに長春飛行場に配属され
てしまった。それで軍属として入りました。最初から軍属として入りました。

最初から…
はい、軍属としてそこに配属されました。だから私たちは軍属で、そこには軍
人も数人いるし、つまり飛行場ごとに飛行場にすべて軍人、軍人たちが勤務し
ていて、軍属が数人入ったのです。私たち通信系統は相当脆弱だったので、通
信系統に人員を送り込んで運用したのです。あの長春、あそこですがそれが中

留守名簿

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朝鮮という私たちの国があったのだ

182 

央航空ロブ38)を…

ロブですか?
それはどういうのかというと、東京から飛行機が離陸すると、ここ韓国咸興専用
にし、長春に着く前は、どこだったそこは、満洲に入って奉天、奉天か? そこへ

飛んでその次に長春まで飛んで、あの新京まで飛び新京飛行場まで飛んで、そ
の次に南方へ飛んで行く、飛行機は。それを連結させる役割をはたします。それ
が中央航空ロブです。そこで、その長春飛行場で約2年勤務しました。

約2年ですか?
はい。1年ほど勤務して、次にどこへ行ったかというと、あの図們飛行場。

図們飛行場ですか?
図們飛行場へ43年度に。図們飛行場へ行ったのはどうしてかというと、満洲一
体に飛行場が多かったです。そこはその時までどうであったかというと、満洲
航空で経営していたが、その飛行場をそのままにしておき、それを第4航空労
務にしました。それなので満洲航空で勤務した人がいるし、私たちは軍人軍属

として、だから軍人がすべて占領するのです。結局は軍で、そこで陸軍少尉が

長になり、私たちは軍属なので軍属として配属され一緒にその人たちの下で仕
事をしていくのです。そうしてあの満洲一体の飛行場と通信連絡したのです。

つまり満洲、一般民間人が経営していたものをあとから軍が接収して…
そうです。すでに一般人がしていた、一般人も今や軍人、軍属として配属され
てしまったのです。満洲航空はもう、会社の人達も軍属として配属されて、そ

うして軍人がすべて掌握していました。それでどうしたかというと私はわたし

38) lobe;アンテナまたはマイクを通じて直接に電波や音を受信できる角度や範囲

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183 

の兄が咸興で勤務していました。咸興鉄道局におり入れてくれました。
                                                                           
鉄道局にですか?
ええ、日本の学校を卒業し鉄道局に勤務していて。ですがこう地図をひろげ
てみると、私としては済州島なので、いちばん近い親戚がいるところはどこな
のか。その飛行場の図面を持ってきて見せてくれました。その当時、私たち同
窓生はハルビン39) にも行き、北京にも行き、あちらこちらに配置されました。

うん、このようにテサ航空 労務(ノブ)といって、飛行場がすべてその図面に

描いてあるのをみせ、自分が行きたい場所を志願せよ、とそうして志願するの
で、私は図們を志願しました。図們飛行場。

変更する時に、図們飛行場を志願されたのですか?

はい、図們。長春飛行場からこの新京飛行場から、長春飛行場へ転属しました。

転属…。
ええ、転属です、結局のところ。それで次にどうだったかというと、そこで2、3
年勤務していると、軍人のあれが来ました。令状が来ました。だから令状とい

うのは、私の事務室はどうであったかというと韓国人、あの満洲に住んでいた

人を給仕として使っていました。そのひとは私より1歳上です。ですがそのひ

とは甲子生れ、私は乙丑生まれです。甲子生れには召集状がきました。

甲子生れにも徴兵がきました。

徴、徴集がきたのでそれでそれをお送りして。そう酒も一杯飲んで送り、その
次の翌年、私は乙丑生まれなので翌年にきました。それが45年10月10日です、

39) ハルビン

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朝鮮という私たちの国があったのだ

184 

10月10日が徴集でしたか?
あ、いいえ、8月10日、8月10日に徴集がきました。

令状はどこへ?
それで、どこかといえば図們警察署。警察署の責任のもとに徴集してあの図
們、そこの駅前に全員召集して、そして汽車に乗せてどこ行ったか、ハルビン
へ行きました。ハルビン。ハルビン、分かるでしょ? ハルビンへ行くとどうだ

ったか、学校へ全員が入って行くと、そこには1000人以上がいました。

ハルビンの学校のようなところへ行かれたのですか?
はいはい、学校に。そこは臨時に、ともかくそこへ。ともかく待機させた。そこ
へ行きハルビンへ行って一晩泊まって、その翌日の夜によく聞いてみるとソ連

と戦闘が始まったと。ソ連と戦闘が始まった、この噂を聞いたとき、私たちが

逃亡したことがありました。

そのときそのままその場所から逃亡したのですか?
私たちが鈍感でそうなのか、鈍感でそうなのか。ですから当時21歳です。う
ん、乙丑生まれ全員をそこへすべて召集したんだ。召集してその学校でひと晩
宿泊し、その翌日戦闘がはじまったんだ。昼間は汽車の運行ができないので。

すぐにもう戦闘がはじまったのですね、そこで?

ソ連とすぐに戦闘が始まった。しかし私たちの目的地はどこか、ソングだ、ソング。

ソングは、どこにありますか?
ソングは北満州で、ソングの次に黒河40) がある。黒河はあのソ連の地のちょう

40) 中国黒龍江にある都市、ヘイホ(Heihe)

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金濟斗倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて

185 

ど河の対岸にあるところ。あっちはブラグ41)で。ウム、ソ連の地はブラグで、船

でこっそり渡ればブラグ。ウム、そうしてなんとか入隊しました。入隊してそ
こで42) ひと晩寝て、翌日の夜行列車でそのソングまで行くのです。ソングへち
ゃんと入ると真っ暗で誰が誰か分からない。私たちを収容しにきた人は軍人だ
った。軍人が収容しに来ました。自分たちの新兵を収容しに来たのです。そこ
に連れてきた者を連れて行くだけです。その新兵を収容する人たちが何部隊、

どの何部隊、どの何部隊、どこといいながら。そうして、私は本来あの通信師
団司令部に入隊したが、通信師団司令部で教育できないため、一般のところに

押し込まれてしまった。ウム、一般に押し込まれて、夜中に汽車が到着して歩
いて行ったが、暗闇のなかを歩いた。誰が誰で、どこで誰なのか分からない。
そして歩いて幕舎に入りました。幕舎に入ってみると誰もいない。全員が陣地
へ、高地へ登ってしまっていたのです。幕舎はかなり大きい。大きくてその山
間に建っているが、官舎などは部落にすぐ近い場所にあるが、幕舎は軍人幕舎
は、どこか山間に入ったところに建ててあった。それでそこに入って、あ、私た
ち約30人がそこに入りました。他の人たちは他の場所へ行ってしまって、私た
ち約3~40人がそこに入って、そこに行って服を脱いで、当時は私服を着てい
たので。そしてそこの倉庫に行ってみると、衣服やらなにやら靴などの新品が
すごくたくさん積まれていました、倉庫に行くと。それで全員着替えよ、とこ

う。だからそれをすべて新品に着替えて、自分が着たものは風呂敷にそっくり

包んでいつか故郷へ送ってくれるだろうと。その翌日は。軍服に着替えて。陣
地に登って行って内部に入るとものものしい。それは師団司令部以上でした。
その陣地のなかへ。そこの市内はソ連軍が入ってきて戦闘が繰り広げられたと

ころで、いっぱい戦車が入ってきて激しい戦闘が繰り広げられた。ものすごか
った。ともかく。だからそこでは戦闘を繰り広げられるものが無くなり、韓国人

41) ロシア東部アムール州の州都のブラゴヴュンチュンスク(Благовещенск)。

黒河(ヘイホ)の対岸。

42) ブラゴヴュシチュンスク(Благовещенск)を指すようである

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朝鮮という私たちの国があったのだ

186 

に何をさせたか、木をこのように持って、その戦闘に入って行け、とこうでし
た。だから壕を掘ってタンクが来たとき、タンクが来るのを阻止さえすれば、
どうにかなるというわけです。タンクが来たとき、人がいることが見つからない
よう壕を掘りじっと潜んで、ワッとそのマルタ(丸太)を持って、持ってタンク
に入って行け、ということです。そのように教育します、そう。

教育ですか?
そう、その時はその、今なら、あのタンクを撃つ銃を一発バーンと撃てば、お
わりだが、そういうものはなかった。だが、あちらはどうかというと、キュウジ

ョウバクライ急造爆雷43)といって、身体に巻きつけ突入するのもあって、それ

さえ無くなってしまったので、その棒切れを背負って行く、それで韓国人が苦
労しても知ったことじゃない。行け、といえばこちらへ行きあちらへ行き、こう
行けばこう行く。そうしてだ、それを持ってするのだが、私たちが行ってからソ
連軍人はあとからしきりに爆撃するから、壕をすばやく掘って、確実に爆撃を
避けようと壕を深く掘るんだ。ウム、それも砂なのだ。そして壕を掘ってその
上に木を束ねて覆い隠し、煙突には砂を詰め込んで、爆撃にあっても最少です
むように。ずっと壕ばかり掘ったから。そうしているうちに5人ほど逃亡してし
まった。韓国人、これが逃亡したが、どうなったかというと、中隊本部に小隊長
を呼んで、よし、この者達を銃殺せよ。

捕まったのですか、また?
捕まった。捕まるさ、どこへ逃げる? それで逃亡したけれど。この者達、全員
銃殺せよ、だから、こう中隊長から命令が下されたから、小隊長は銃を背にし
て行った。行って、もうこう見れば小隊長がきて銃をもって行ったから、彼ら
は死ぬ覚悟をしたんだろう。どうしようもない? だからまさしく死ぬ寸前にな

43) 急造と爆雷を合成した単語で身体に爆弾を定着しタンクに突進させたことをいう

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金濟斗倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて

187 

って、これはなんとかしなくてはと、小隊長にすがりついたんだ。5人が全員。

今度だけ生かしてくれれば、小隊長のお言葉に絶対服従します、ということ
だ。ウム、絶対服従するから生かしてください、と言うと、小隊長も人間なの
でしょう、その場で銃を5発パンパンと撃って連れて来ました。連れて来たの
で私たちは知った、そのままでは分からない。誰が逃亡したのか、その人たち
が話したから分かった、さもなければ死んだか生きているか、何人が行って帰

ってきたのか、それも分からない。そうしてそのままその人たちは生き残れま
した。あとからその人達も全員が捕虜になったが。その次にどうだったかとい
うと、敗戦というのは8月20日頃、15日敗戦、解放されたから、20日頃に敗戦
だといって武器などをすべて谷間44)に整列させて、身ひとつになって降りてこ
い、というから身ひとつで降りて行った。降りて行って次にソ連軍の陣地に入
るのだ。ソ連軍陣地に入って行く。それで官舎に全員を詰め込んだ。官舎とい
うのは日本の奴、その将校たちが住んだ官舎だよ。そんなところに行って、鉄

条網を張りめぐらせ、そこへ全員を押し込めたんだ。押し込んで10日ほどする

と、家に行く。それで満州に行くと、日本人も韓国人も下手すると満洲人にや
られるから、こちらのほうから歩いて行くあの、ソ連をまわって行く。

ウム。ソ連をまわって行くと…
うん、まわって行く。そんな噂がでました。それでそうかなと思った。そしてそ
こ満洲で関東軍は、すべて年輩の人たちで、急迫した時だったから、校長をし
た人、銀行員だった人、まあそんな人たちだ。昔、軍人をした人、そんな人た
ちだけ選ばれて入ったから、すべて年輩のひとだけだ。若い人は誰か、あゝ、

若者はすべて韓国人です。ウム、韓国人がもっとも若い。今しがた21歳になっ
た、21歳になった人たちだけ。それでもうそこへ全部武器を返納して幕舎にま
たもどって、家に帰るのでどうしたかというと、自分で背負えるだけを、幕舎に

44) 谷間?

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朝鮮という私たちの国があったのだ

188 

は軍服でもなんでも全部新品のもの、倉庫にはいくらでもあるから。毛布もす
べて新品のもの、下着も服も。厚手で編んだもの。手編みのような厚手に編ん
だそんなウワギ(上着)なども全部、そんなものを背負えるだけ背負って。ど
うしてそうしたか、満洲にいた人たちは、その人たちは生活していて行った人
たちだから、これは息子にあげるもの、これは娘にあげるもの、これは妻にあ
げるもの、こうして背負えるだけ背負った。ウム、そうして背負った。そして降

りて行って、その幕舎に入って、そこで待機して一個中隊なら中隊ごとに出発

させたんだ。出発して3日間歩く、3日間を。その黒河まで3日間歩いて行った
が、その年輩のひとがそれを背負い切れますか? 3日間歩くともう歩けない。
だから半分ほどに減らして歩き、またもう半分減らして歩く、ホホホ…すると
私たちはそれを拾ってひとつずつ持ち、独身者は着実に歩いて行き、その人た
ちは歩いて行くうちに倒れてしまう。そうするとソ連軍が後からついてきて全
部運んで自分のところに持って行く。ソ連はありません。物資がないから。本
当、そんなのを見ると目頭が熱くなった45) 。うん、それ、時計なんかもない。な
いから時計をひとつでもあげると、このように自分の身を捧げでもするように
喜んだよ。そうして3日ほど歩いて黒河まで行って、黒河で乗船すれば10分も
かからない。船でそのソ連まで入って、あの河、あのようにそれ、それも約500
m、1kmにもならない。そう、そこを渡ってこんな大きなレンガ造りの家。そ
の学校へ入った。そこに行ってはじめて見たが、私も荷物を持っていたが、そ
こで全部無くなってしまった。こいつらの盗みがどれほど巧妙か、技術証明が
あったのに、それも持ち去りそこで失くしてしまった。そして1日ほどするとジ
ャガイモを掘るところへ来いという、それでジャガイモ掘るところへ行った。
ジャガイモ掘りに行くと、あゝ、まったくジャガイモを、そこではトラットラと
いうが。うん、トラクターをトラットラという。うん、それをどうするかという
と、畑をひととおり耕して、そのまま取り入れをすればすむじゃないか。ジャガ

45) 赤らんでしまう

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金濟斗倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて

189 

イモを拾ってジャガイモを大釜、釜に粥のようにする、たぶん牛乳、牛乳のよ

うな。少し甘いにおいがした。えゝ、はじめの頃は食べられる。いっぱい腹が痛
くなるまで食べたんだ。しばらくすると腹が減ってまた行くと、それを弁当箱

でそこで食べるんだ。そうしたにはしたけれど、つまりそうして仕事場に行け
ば、食べ物はなんとかまにあった。そしてそこで3、4日仕事をして次に、家に
帰るといってまた船に乗せたんだ。あゝ。船に乗せて。黒龍江だよ、だから、そ
れは黒龍江だよ。コクリュウウコウ、黒龍江、黒龍江で、船に乗せて行く、家へ
行くといってです。その船に乗ってハバロフスクへ、ハバロフスクで少し船を
接岸させた。接岸して、さあまた行く、といってまた出航して、どこまで行った
かというとニコライスキ46) というところへ行った。

ニコライスケンですか?
ニコルライスク。

ニコルライスクですか?
ニコツケイと読んで、ニコツカイというところがあります。ここ、ここですよ、
私たちはここに行ってきました。こここれ北海道じゃありませんか? ここが
カラウド(サハリン)で。樺太(サハリン)はここで。ここが河のちょうど入口
です。入口がものすごく寒い。ここでは零下40度は問題にならない。まあ、昔
住んでいたら必ず死んだだろう。行って見るとここはチシマレットウ千島列
島、ここに軍人と、軍人の一個大隊、すでにここに来ていました。ここに来てい
た、その収容所に収容されていました。

はい、収容所に? そちらに…
はい、収容所です。その収容所ですよ、いちおう今ではもう捕虜だから。これ

46) ニコラエフカ(Николаевка);ウラジオストクから北方へ400キロメートル離れた村。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

190 

捕虜です、もう。どうしてかというと、いったんソ連に入ったのであればそれは
捕虜でしょう。うん、捕虜生活がとうとう始まったんだ。

ええ、そうですね。
そして9月1日頃になると黒龍江はカチカチに凍ってしまう。だからそれに間に
合わせようとして入ったようだ。黒龍江がカチカチに凍るだけ凍り、もうそれ
からそこで伐採。

そこでまた伐採されたのですか?
木を切ること。また、どこかの倉庫整理。倉庫はどうだったか、麦類を積んで
置くところ、また河が硬く凍ってしまうともう船を運航できない。だからその
小麦粉袋を屋上に上げて車に載せるんだ。ウム、そうそう、倉庫に入れる。え
え、そんなこと。そしてまた家を建てるのに土を掘る、便所掃除。だからここ収
容所で一般のひとが要求します。ええ、一般のひとが、それを何人と要求しま
す。収容所に私たちは何人と志願し、私たちのする仕事はこれほどあるから、
何人ください。そこはすべてどうなっているかというと国営農場です。国営な
ので個人のものはありません。農場のようなところでジャガイモの裏返し、ジ
ャガイモが倉庫にこのようにあると、それを1回ずつ裏返しにしないと。腐りは

じめるとどんどん腐ってしまう。だから年1回なら1回、2回なら2回、裏返しに
しなくてはいけない。つまりジャガイモ返し。農村では、冬なのでだからそれ

であの、そうして、そうでなければ木を切る、伐採。木が凍りついてしまう47)、
韓国人はぎょっとする。どうしてか、すべて木を、そんなのを全部すべて切
れ。だから少しでもそうなると、それは実に奇妙な木なんだ、このぐらいで、あ
んなに木が高くなって、風が少し吹いただけで倒れる。あ、倒れそうになる。
まあ、今なら機械でバサッと伐採できるが、それをまるまる自力で切るんで

47) 凍りついてしまうと

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金濟斗倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて

191 

す。そうして伐採をそれ冬にさせるんだ。夏にさせない。

あ、冬にだけですか?
私たちは1日当りどれぐらいだったと思いますか? 299グラム。どんなのかと
いうと、そこではフルレバ48)という。フルレバ。あの食パンがあるでしょ? 食
パンを8等分して真ん中をサッと切って一つ、二つ、三つ、四つに切って、それ
をもらって食べ重労働するんだ。それだから空腹でたまらない。気が狂いそう
だった。目がくらくらした。人に食いつきたくなるほどだった。だから全員ガリ
ガリにやせ細って、私もここに帰ってきてから身体がだいぶよくなった、全員
ガリガリにやせ細って。半分ほどに。だからそこは1度力が尽きて倒れたらそれ
までで、患者は必要ではありません。患者に病院がどうして必要なもんか。倒
れたら石ころ同然だよ、凍りついて。瞬くまに凍りつく。あ、まさに、命が尽き
たときには瞬くまに凍るので。その人には病院も必要でない。どうなのか本当
にそこは、こんなだから食べることもできない、食べられないからもっと寒い。
だからそこで韓国人が歩いているとこんな具合です。人が歩いて行くのに、そ
れはまあ、マラソンするようなものです。女も男も大股にさっさと歩いていく。
そんな速さで歩きます。あのソ連人たちは。そうして歩かなければ寒くて耐え
られない。翌年6月1日、46年6月1日になると雪が解けた。黒龍江が。コクリュ
ウコウ。あのソ連語ではアムール川というが。そして韓国人だけきちっと別に
集めてどうしたか、韓国人行くんだ、といって別にしてどこかへ行くのです。だ
から日本人たちがどんなにかうらやましがったか。あゝ、本当に、これはその、
韓国人が帰れるなんてとても良いことだ、うらやましい。それは、なに、どれほ

どうらやましがったことか。それはそうでしょう。飢えに飢えていたから、家に

帰るという話だけを聞いても、私たちのことを喜んで。そのまままた船に乗っ
て又こっちのほうへ戻ってきたんだ。

48) フレープ(хлеб);パンという意味のロシア語

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朝鮮という私たちの国があったのだ

192 

どこへですか、その次は?

私たちはあの、そこはどこだ、ハバロフスク。

ハバロフスクに戻ってきたのですか?
ハバロフスクにまた戻ってきて、船をさっと接岸させ、命令をもらって行く、そ
んなふざけたまねをしれくれたんだ。ハバロフスクでまた数年暮らしました。
 
最初に捕虜として行ってまもなくすぐ朝鮮人だけが別になって集まったの
ですか?
はいはい、別に集まりました。そしてハバロフスクに着くと韓国人収容所があ

りました。

ハバロフスクに、韓国人収容所が別途に建ててあったのですか?
はい、別に建ててありました。韓国人収容所だけ別に建てていました。そし
て、またここでどうだったかというと、帰れるとばかり思っていたのに、また働
かせる。どうすりゃいい。そして働かせるのもいろんな仕事です。1種類では
なく。小麦倉庫に行った人は運の良いひとだった。他のところへ行ったひとは
死にそうだった、あの木を切りに行った人は空腹で気が狂わんばかりだった。
それなので自分の服でもなんでも売り払って食べた。冬でも下着なんてとんで

もない、それもまた交換して食べるんだ。パン、それを1、2個くれる。下着を

渡すと。だからそれを持ってきて、少しでも1日でも持ちこたえるため食べよう

とした。それで小麦倉庫に行くと、そこには食べ物をいくらでも食べて良かっ

たが、持って行くな、という。そうして数年間暮らし、46年だったか、48年2月
に、どうしたかというと38線を越えたのです。船をそこで、ウラジオストック・
ポスタ49) 港だったか? その港があります。そこから船に乗って貨物船です。そ

49) ウラジオストック ポルト(владивосток порт)ウラジオストック港

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金濟斗倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて

193 

れも旅客船じゃなく。どのように来たか、咸興に着いた。咸興に到着し、咸興
の学校に入って行きました。

学校ですか?
学校に。学校に入って行って、その時はだから降りてみると、その時は北韓の
人たちが責任だった。うん、北韓の人たちが責任で、その人たちは船で行って

しまって。ようやくもう捕虜生活が完全に終わったわけです。そしてそこで約5
日、約1週間滞在して多分。そして1週間ほどして約10名なら10名、20名なら20

名ずつ38線まで連れてきます。38線まで連れてきて、その責任者がこっちの
道に渡って行きました。「渡って行きなさい。」といったから私たちはそちらの
ほうへ。そこをずっと歩いて行くとば部落があるからそこ韓国に入れば、若者
はひどく殴られます、そう脅かしてちょっと殴って。それで、今はそうなのかと
思った今は。私たち全員は軍人出身だから、一列になり先頭が約10メートル前
方、そうしてのっしのっし50) 歩きました。のっしのっしと歩いて人が見える程
度に並びました。そうして行くと部落がありました。そこはどこか、漣川に入っ
てきた。山からこう見ると大きな部落があった。だがみると他の離れたところ
に家が一軒あった。それで最初に見た人をそこへ送った。送って、そこへ1回、
行って見るように。どういう事情かが分かれば、私たちもどうにか行動できる
ので。最初に下見を送り、その人がその家に入ってしばらくすると出てきて、
そいつを捕まえろ、という声がして騒々しい。だから部落は大きい部落なので
犬の鳴き声、幼児の泣き声、捕まえろ、捕まえろという声、さまざまに声が。だ
から私たちは山へまた駆けもどった。そのうち全羅道のひとりがあの北へ越え
て行ってしまった。その人、その人はすごく臆病な人だった。私たちは山へ行

ってどうしたか、私たちは済州島まで私は歩いていく、峰つづきに私は歩いて

行くと。歩いて行かなくては。それでもう無条件にともかく歩いて行こう、そう

50) 身体の大きい人か動物が、身体をすこし揺らしゆっくりと歩き続ける様子≒のそりのそり

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朝鮮という私たちの国があったのだ

194 

して歩いてすごく疲れてしまった。山上は2月だから雪があって、雪がとけて、

だから木の下で寝ました。寝てから朝に目が覚めると、ちょうど前方に家が数
軒あった。もうその翌日は空腹でどうすればよいのか、以北から来るときにひ

とり2000円ずつかをくれました。

それはどういう名目でもらったものですか?
約5000円だったか? それは途中で腹がすいたら買って食べるなどして使うよ

うに、と韓国の金で5000円ずつくれた。そこへ行ってどうしたかというと、ご

飯を炊いてください、というと。自分たちは飯を炊けない、という。どうしてな
のか、ここにある家々がすべて飯を炊いてあげるのであれば、自分も炊いてあ
げるが、自分ひとりがそうすると万一捕まるかもしれないからと。共産党だ、な
んだかんだと盛んにうるさい時だったから。それで米だけでも売ってくれとい

って米をもらってきた。そしてそこで朝飯炊いて、弁当箱で炊いて食べて、船
を借りてだね。そうして、さあ、ここから乗ってみよう。さあ、みんな一緒に行
こうか? そうでなければ歩いて行くのか? 歩いて行く人は歩き、出るひとは
出て行き、そうしようということです。それで共に苦労して来たのだから一心
同体で出発せねばということです。そして地理も調べてみると、そんなにたい
へんなことではないようだった51)。だから出発しようと出て橋をちょうど渡って
いると車がすっと来た。それは警察官が乗った車で、どこへ行く、と聞かれた
ので、私たちはあちらの方へ行く。あちらに行けば抱川警察署だから、抱川の

近くに一歩でも踏み入れたら、銃撃されるから用心しろ、という話だった。そ

ういって彼らは警備のため去った。それで私たちは歩いて抱川警察署まで入っ

て行った。そして抱川警察署へ行って3日ほど入っていました。そしてその次
に全員が仁川に送られました。仁川収容所、仁川収容所に行って何を受けたの

51) たいしたことはないようだった

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金濟斗倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて

195 

か。ひとりずつひとりずつ呼ばれて、どうしたかというと調書52)を受けました、
但し、その人たちはあの米軍に行って、韓国人は調査しないで、あの米軍に全
員が調査を受けました。

米軍にですか?

どこで、どのようなソ連軍たちが、という話ですよ、どこにいて、どこにどんな

飛行場があり、そういうことだけを調査しました。ほかでもありません。その時
は本当に腹いっぱい食べました。少し生きた心地しました。とにかく私が思う
には、1週間以上そこで調査を受けました。

1週間程度ですか?
私も2、3、4回、呼ばれて行ってきました。良かったですよ。そこに宿泊させ
て、済州の人は済州警察署が引き取りに来ました。全羅道の人は全羅道警察
署がきて引き取り、また京畿のひとは京畿道がきて引き取りました。そして私
は、そこに知人がいたのでソウルに行きました。ソウルに行ってソウルで2、3
日遊んで、兄があの咸興鉄道局から新川鉄道局に来ていたので、新川鉄道局に
いる兄の家に滞在して、新川鉄道局に履歴書を出しました。そしてそこで採用
してくれました。そうして済州に戻ったのは、16歳頃に出て、その時です、どう
であったか、済州に帰ってみると、済州の4.3事件はすべて終わって。あの副司
令官の李徳九が捕まった時です。その時にちょうど帰って来ました。そうして
歩いて帰宅しました。その時は4.3事件が終結したときで車もなにもない。無い
ので歩き、家まで帰りました。家に帰って父母に挨拶し、2、3日してふたたび
警察に行って申告しました。私はこうして帰ってきたんだ。それがこの警察に
は、先に帰ったひと全員が警察に入れられていて。警察に入れられていて私だ
け抜けていました。それで警察に入るんだ、といわれたので、私はもう新川で

52) 調査

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朝鮮という私たちの国があったのだ

196 

就職しましたから心配なさらないでください、というと、分かったと。

いくつかもう少しお尋ねします。幼年期、学校に通学していた頃、ご両親
はどんな仕事をなさっていましたか?
農業しました。麦耕作。

その当時、農地を少し多く所有されていましたか? 学校にも通って、日本
にもまた留学されましたので……
いいえ。留学したのは、父母が金を工面してではありません。どうしてかとい

うと、兄が日本で工場をしていました。2番目の兄は薬局をして、3番目の兄は

2番目の兄とふたりでデブライト53)工
場。あのソケットのようなのがある
でしょう? 女性たちのクリームのふ
た。そんなのをつくりました。それ
をつくるには、それも技術的につく

らなくてはいけません。その技術を

必要とされます。だからデブライト
工場をして日本人からかなり信用を
得ました。そして当時、軍需工場に
されてしまいました。軍人の食器、
食器のようなものもつくりました。
最後には。そうなのです。兄たちが
すべてをさせてくれました。このこ

とは父母がしてくれたのではありま

せん。兄がそこで金を稼いで弟を勉

53) debrite:堆積岩の一種、安山岩質角礫岩ともいう。

金濟斗 写真

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金濟斗倒れたら石ころ同然だよ、凍りついて

197 

強させてくれたのです。

日本の大阪へ渡って、無線高等通信学校を卒業されましたね。
はい。

では、この学校を卒業すると、ほとんどがこういう軍関連やその方面に就
職することになりますか?
ほとんど軍関連です。その時は先祖代々とても迫いつめられていた時だったか
ら、軍関係でなくてほかにありますか? どこにまあ、卒業する頃にひとまず募
集があります。募集があれば自分の行きたいところへ行けます。

それでは、陸軍や海軍のような…
陸軍でなく、陸軍とは言わずに陸地、陸地とそのようにだまされ行ってみると
軍隊だった。

軍隊へ行くのでしたか?
海軍、海軍のようなところそこは、海軍軍属は、それは完全に軍とみなされ、こ
れは陸地とあって行ってみると軍属として入れられていた。

海軍は軍人として、軍属として行くことを知っていて。
はい、それは知っていた。知っています。

ですが、陸地といえばそれが軍人として行くのか、軍属として行くのか知
らずに…
軍属として行くか、それは分かりません。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

198 

それでは(パシ)、20日頃に入隊して、武装解除はちょうどその時になった
のですか?
ソ連が武装解除せよ、といったのです。命令が下りたその時に、あ、もう敗戦
だと分かった。私たちはなに、ただ、上からもう負けたので武装解除だから、
その銃などをすべて返納せねばならないといわれれば、その言葉を聞いたとい

うことだけなのです。ほかにはありません。

では、その時の所属はどこでしたか?
私は、私は師団司令部、その通信師団司令部に。

最初に行ったとき、捕虜になり最初に入ったところはどの地域でしたか?
そこがハバロフスクでしたか?
黒河を渡ってそこがあの、ソ連のニコライスカ54) だった。

はい。それでは、最初は日本軍と宿舎や幕舎もみんな一緒に使用されたの
でしたね? 最初に幹東(間東)に行った時は。そうなのにいつから朝鮮人と
日本軍にはっきり分けるようになりましたか?
結局どうだったかというと、ソ連に行って1、2ヵ月経って。

それではニコライエフカで朝鮮人だけが別になったとき、そこに朝鮮人だ
けで集まったのは何人ぐらいが集まりましたか?
そこで約20人。
そしてむう帰ってこられる時、ウラジオストクのそばに、ポシエット 55)とい

54) Николаевка(ニコラエフカ);ウラジオストックから北側へ400キロメートル離れた村。
55) Посьета(ポシエット):ロシア連邦のハサン地域(Хаса́нский райо́

н:北韓側に面している)。東海岸の港湾都市 

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199 

うところに集まった時、あちらのほう社会主義国家ですから、あちらで社

会主義教育のようなこともたくさんさせましか?
あ、私は教育された経歴はありません。私は教育されたこともなかったし。
あ、そんな人がいたにはいたようだが。

帰ってきてから、また仁川などの収容所においても、ときどき調査のよう
なことが、たびたびあったようですが? ええ、帰ってこられてからいつも
監視されていたとのことですが…
帰ってきて一次的に調査したことは、只どんなのかといえば、人々は各地で労
働したからみんな異なります。ウム、だから労働に行って、そこに行くと、ソ連
軍人はどこに兵士がいたか、あるいはタンクなどもここに配置されていたか、
あるいは飛行場はあったか、それを調査したので、どこに何があるかは予測で
きました。そうすると図面を描ける、それです。それひとつだけで、ほかのこと
で調査したのはありません。なに、お前は共産主義者か、なに、そんなことも
ないし。

はい。その時はまたちょうど戦争直前でもあり、反共が厳しい時でした。
北韓からそうして降りて来た人たち、またソ連にもしばらくの期間いて、
帰って来たという、少しそんなことで多く監視を受けたという疑惑があり
そうでした。もしや先生もそのような部分があったのではと思いまして…
ですが私はどうかというと、すでにスンチョン(新村?)鉄道局に入っていたの
で、監視はあまり受けませんでした。

先生、それでは鉄道庁に勤務なさって、次に6.25が起こり軍人として韓国
軍、国軍へ参戦されて…
いいえ、私はどうだったかというとスンチョン(新村?)にいて、兄はどこか田
舎に行っていて、私に木浦へ行けと、だから私はまた兄のいうことをよく聞き

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朝鮮という私たちの国があったのだ

200 

ました。父母の言葉もよく聞きますし。言われるとすぐにそうします。それで食
べ物を少し包んでその時は車がありますか? 何がありますか? 人民軍が入っ
てくる時だから。山中を行きます。山中を歩いて2日ぐらい歩いて木浦まで行き
ました。それで木浦まで行って木浦で隠れていました、アイゴー、次にきて軍
人にして連れて行こうと、若い人、全員ともかく家々を探すのです。我が軍が
はいってきて。ともかくどうしようもない、耐えられそうになかった。それで、
道頭里56)というところがあります。私の妻が道頭里出身です。それで捜索隊の
小隊長をよく知っています。それでもうふたりでどこでも行って隠れ場所があ
ればそうしろ、といわれたのです。そういわれてもう士官司令部に、通信部に
入りました。11師団。それで11師団に入ったのですが、現地入隊させられまし
た。私の原籍は3月26日生まれなのに、ええ、原籍は。9月26日生まれです。8
月でも入隊せずにすんだのに、9月26日生まれだ、ということで現地入隊させ
られてしまった。それで結局、約4年間また軍人生活を送りました。それでずっ
と苦労が多かったです。

軍生活を終えられて、次は、ではどのように?
軍人生活を終えて済州空港で。

いつまでそこで勤務されましたか、定年になられるまで?

うん、定年退職する時に、60歳になる時まで。

56) 現在の済州市道頭洞 

面談者_調査総括課 ピョ・ヨンス班長
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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裵英虎ちょっと身動きしても殴られるから

201 

裵英虎

創氏名

米田英虎

1927.3.25 慶南 釜山府 凡一町 生まれ
1945.5.26 中国派遣軍 第6方面 軍直轄部隊 傭人として動員
1945.9.13  解放後に帰国

ちょっと身動きしても殴られるから

生年月日はいつですか?

1927年3月25日です。

創氏名は?
はい、ヨネダエイコといいました、米の米字に畑の田字。それ日本語でヨネダ

といいます。ヨネダ、英虎。エイコ。

おじいさん(ご老人)はその当時、どこに行ってこられましたか?
中国江西省南昌市。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

202 

どこですか? 南昌市のどの部隊ですか?

征部隊、征、征。征伐するという。その征部隊。当時はすべてこんな、部隊名
はすべてこうでした。

ではその当時に行かれた時、年令はおいくつでしたか?
その時19歳。

19歳ですとその当時、なんの仕事をされていましたか?
家で遊んでいました。

学校に通われましたか?
はい。学校は今なら国民、初等学校です。卒業して職場で少し勤めてやめ、ま
あそうでした。

お父さまは、その当時なんの仕事をされましたか?
父は会社員でした。

そうしますと当時の家庭状況は、お父さまは会社員されて経済的に苦しい
ほうではなかったですね?
苦しくもなく余裕があるでもなく。まあまあ。その時は韓国人が待遇される位
置にはいませんでした。やっと食べて暮らせる程度… 

では、行かれた時は、どんなきっかけでどのように行かれましたか?
ですから駐在所、派出所から捕まえにきたのです。各村に派出所が一ヵ所ずつ
ありました。現在もありますが、そこから日本の巡査がきて、当時は非常に急迫

した時でした、日本人は。45年度8月15日に解放になりましたね? 終戦になっ

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裵英虎ちょっと身動きしても殴られるから

203 

た。非常にその時は急迫していました。日本人達は敗亡する直前だったから。

それは、そうすると何年度ですか?
ちょっとみよう、1943年だったか? そんな時だったから。8月初旬かおそらく
その時分です。正確な日は覚えていません。

そうしますと、その巡査がきてどういって行こう、と言ったのですか?
軍に行け、こうです。その時、私が少し年長だったら、徴用で連れて行ったで

しょう。でも年が若かったので軍属として行ったのです。やってきて行こう、ひ
とまず行こうと。それで私は***ではないのに何故行く、と言ったけれど、行け

ば分かる、とこうです。それなのでそこに行ったが、2、3日内に軍に行かなくち
ゃいけないというので、では軍のどこへ勤務するのか、日本へ行くのか、どこ
へ行くんだ、というと、中国へ行かなくてはならないと。日本軍部隊に集合さ
せて、それが3日後だったか? 3日後か、2日後だったか? ただずっと汽車に乗
って、ずっと汽車で行きました。

ではその時、その人はどこへ行って、どんな仕事をする、そこへ行ってど
ういう仕事するということは?
そんな話はしなかったです。

では中国の部隊へ行く、そこまでは話してくれましたか?
はいはい。秘密になっていて、最初はどの地域だ、という話もありません。中国
へ行く、という以外は言いませんでした。

それではそのとき派出所に行き、2、3日後に直ちにそこに集まった人たち
と一緒に行き、家に帰られて行きます、ということも言えずに直ちにその
まま…

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朝鮮という私たちの国があったのだ

204 

ええ、そのまま行きました。

では、ご両親はまったくご存知ではなかったのですか?
そうだから知らないでしょう。かわりに見送りをしてくれました。追いかけてく
るではありませんか、お母さん、お父さんが。なぜ捕まえて行くんだ? そう
いったがその時は韓国人にひどい扱いをした。それで知る必要もない、中国へ
軍属として行く、それだけ知っていらっしゃればよいと。それで連れて行って

しまったので。だから知らない。お母さん、お父さんは、行く、その2日後か3日

後に汽車に乗って行く、それだけしか知らない。どの地域に行く、どの部隊に
行くということも知らない。

すると、挨拶もできずにすぐ行かれたのですね?
そうだ。そうです。そこでお顔だけをみて、その派出所内に入ることもできな
いで、外でガラス窓から見て、行ってしまうのか、捕われて行った、その後の

ことは知らないでしょう。

では、その派出所に何人ほど集まっていましたか?
10数人来ました。正確にいま思い出せません。

それでは、おじいさん(ご老人)と同年齢のひとでしたか?
はい。私より2、3歳上の人もいたし、私が一番おそらく若かったでしょう。19
歳だったから。2、3歳上だったでしょう。

ではその時、その派出所で集まり、どの駅から行かれましたか?
釜山駅から行きました。その時、集まってどこへ行ったか、釜山兵站司令部へ
行きました。釜山市内の全人員をそこへ総集合させ、汽車の便を待ち汽車がく
ると憲兵がきて引率しました。

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裵英虎ちょっと身動きしても殴られるから

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すると、その派出所には10人程度が一緒に行って、次に兵站司令部に人々
をまた乗せてそこへ行き…
約100人程度いました。

釜山から中国まで、何日ほどかかりましたか?
9日。どこかというとあの南京。いまあの揚子江があるところです。そこは汽車
の線路がありません、当時は。船で、船で行き来した、その揚子江には鉄橋が
なかったから。その手前に浦口57) という駅がありました。浦口という駅で下車

し船に乗って南京へ渡って行く。南京に行くとまたあの南京島のしたに兵站司

令部がまたありました。そこで3、4日待ちました。そこで飯を食べ食事してそ

こで寝て。そこで待って3日か4日後に、船は揚子江の中間ほど行くと九江58)、

九の九字、九江。九江という小さな湾がありました。そこで全員が降りました。
下船させました。そこで下船させると軍部隊からトラックが来ました、トラッ

ク。そしてトラックに乗って南昌まで行きました。そこまで9日間かかりまし
た、9日、9日間、汽車の中で生活しそこで寝てそこで動いたりするものだから

膝がすり切れてしまった。当時はナイロンではなくて木綿だった。この膝のと

ころがすり切れてしまいました。

では行く途中、なにか残虐な行為や、あるいはなにか…
そういうことはありません。まだです、もっとすごく経ってから、完全に軍属に
なって軍人となるのです。行く途中は憲兵が、逃亡しないよう包囲して行った
のです。

57) 浦口(pukou:プーコウ):中国江蘇省南京市にある湾。揚子江を挟んだ南京市街地の

対岸。

58) 江西省九江(九江:Jiujiang)

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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南昌 (南京)に行くまで、憲兵に包囲されて行ったのですか?
はい。そうです。逃亡させないために。

ではその時、行く途中では食事などは提供されましたか?
食事はくれました。にぎりとあの、今のあの沢庵あるでしょ? それを数切れ

と。塩でこう漬けて、少ししょっぱいおにぎりをこれぐらいの。小さいのを2個

ずつ。

では汽車に乗って、船に乗って、またトラックに乗って南昌まで行かれ
て、その間に1度もどこへ行くということをまったく話さなかったですか?
それはしません。そして私達ははじめて中国に行くから、そこがどこでどこや
らまったく分かりません。また、私も知らないしまたその軍人達も。あの憲兵
達も、引率する憲兵達もどこへ行くという話も、私たちと対話もないし。ただこ

ちらの車輛とあちらの車輛の扉口で

しっかり一人ずつ座り、便所に行く

のを見張りして座っていて。逃亡し
ないかしっかり監視し座っていたの
で。どうしてそこで憲兵が座ってい
るのに逃亡できますか?

もしや、釜山駅にご両親がいらっ

しゃり歓送された…

いませんでした。誰もいませんでし
た。それがいつ行くのか、何時に行

くのか、どのように行くのか、それを

聞けない、分からないのです。これ
が釜山駅で汽車に乗るのか、釜山鎮

兵籍戦時名簿 写真

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裵英虎ちょっと身動きしても殴られるから

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駅から乗るのか。それは父母に教えてくれません。

では兵站司令部で待機する間、事前教育のように教えたものはありません
か?
いいえ、そんなのはありません。そのままずっと待機。時間がくれば食事して、
船、船便が来るまで待ちました。ですが行ってから、現場で部隊に配属され教
育を受けました。その兵站司令部というのは一種のそれです。そのホテル59) 、
ホテル。旅館ホテルに集結させ、日時がくれば送るというその役割だけしかし
ません。

もしや、その部隊名を記憶されていますか? 正確に?
征部隊としか知りません。私は日本からそれだけを持って来ましたから。名
簿。日本から名簿、それにもなに、何千何部隊というのがありませんが? それ
がありません。***派遣軍中支第6方面軍直轄部隊。それしか書かれていなか
ったです。

では、その部隊は何名程度になるか覚えていますか?
アイゴ、私がそれをどうして分かりますか? きっちりと一個連隊ですよ、一個
連隊だ。征部隊というところは。

それでは、部隊内に入って宿所などもそのように配置されて…
いいえ、2ヵ月間訓練を受けました。征部隊に配置される前に訓練。配置前に
行く途中、行くのに訓練を受ける場所もなく、訓練させる奴もおらず、部隊に
ひとまず入って、部隊正門から入った錬兵場で2ヵ月間教育を受けたのです。

59) ホテル

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208 

訓練はどんな内容でしたか?
まあまあなに、韓国軍で数日ほど銃を持って走って銃撃態勢、伏して銃撃態
勢、そして前進というのを組み合わせ歩行をぴったりきめるといった訓練で
す。いつも軍事訓練をしました。いつもあの論山とか、まあ新兵訓練所のよう
なそういう訓練です。そしてその服をくれてですね。私たち、あの南昌という

ところは暑い国です。暑いところです。だからなのか長ズボンはなしに半ズボ
ンのみです。半ズボンをはいて軍靴をはいて帽子をかぶって戦闘模様、上半身

ハダカで。

ではそこに集まった人達は、すべて朝鮮から集まった人達でしたか?
釜山もいるし、ソウルもいるし。この名簿を見るとソウルもいるし、慶南もいる

し、いろんなところからすべて来ていた。すべて朝鮮人達です。急迫していたそ

の当時は、急迫していたんだ。日本軍隊は非常にたいへんな敗亡か、最後まで米
国と戦うのか、そういう岐路に立った非常に、目から豆が飛び出すほどの急迫し
た時だ。だから他のことを考える余裕もなかった。2ヶ月間訓練して銃を持って、
当時は蒋介石軍隊、蒋介石軍隊だ。彼らが何度も奇襲したんだ、部隊に。銃を掲
げて奇襲してくるんだ。そしてすぐに応戦して戦かって、死んで、殺して。

そうすると国民党と直接、闘ったのですか?
そうです。銃を撃ち闘いました。その部隊の外郭に鉄条網を張りめぐらした。
そいつらは、たびたびそこをうかがいたびたび銃撃して逃亡した。また防御す
るとまた夜にすごく奇襲してきた、すごく。その時、蒋介石軍隊がそこにいま

した。その時は毛沢東ではなく、現在のように毛沢東ではなく、その時は蒋介

石軍隊だよ。

出発するとき、動員地域まで行く途中、さきほど憲兵が護衛したとおっし
ゃいましたね? それですが憲兵ではなくその部隊にまた他の引率者がいま

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裵英虎ちょっと身動きしても殴られるから

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したか?

はい、いました。あの日本軍人が、今だったら中士。当時、グンソウ60)といった
が、その時に中士その人は着剣してひとり1名来ました。そして運が悪いことに
またそれにかかりました。汽車のなかであれは、腸チフスにかかり狼林で死ん
でしまいました。汽車に乗り揚子江を渡って南京城下の南京兵站司令部からそ
の汽車に乗って、監視していてどうしてか腸チフスにかかり、その病院に入院
して死んでしまいました。それで他のひとがまた引率者として来ました。部隊
から。そうして私達を連れて来ました。

先ほど、その部隊は全員すべて朝鮮人だとおっしゃいましたね?
ちがいます。日本人も多いです。はい。日本軍隊、日本軍隊も多いです。です
が私達は補充、補充です補充。日本はもう軍人が足りなくなって、それで韓国
青年を捕らえて戦争もさせた。

では補充としてそこに朝鮮人はおよそ何名程度?
それは知らない。それは知らないです。知りません。

日本人がより多かったですか? 朝鮮人がより多かったですか?
日本人がもっと多かったです。はい。日本の軍隊だから。日本人が多かったで

す。数日ずつ夜に歩哨に立つときは、10名出ると韓国人は3人、2人、3人が一
緒に立ちました。そう一種の補充兵です補充。日本軍人たちは人員が足りなく
て、韓国人の子も補充するため連れて行ったのです。

それでは、征部隊でその所属や職責はどうでしたか? 職責はありますか?
まあ兵卒ですから。

60) 軍曹:旧日本軍階級で下士官のひとつ。

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そこでなさった仕事は? どんな仕事をなさいましたか?
ですから夜に歩哨に立ち。中国、その中国人を鉄条網周辺に攻撃してくると一
緒に撃退して。

全部すべて戦闘兵だったのですか?
はい。

では、征部隊にいて、他の場所へ移動されましたか?
移動しませんでした。私はそこにいました。私はそこにいて解放に遭遇し、解
放になって即時帰らずに、そこで数ヵ月いました。

そうしますと、そこに2年以上いらっしゃったのですね?

どこです、ちがいます。そこで1年半いて解放になり、こんな紙切れに、除隊証

でしょう、一種の。今でいえば。金も1銭もくれず、除隊証のそれ1枚だけくれ
て、今、韓国へ行け、こうだ。

では解放になって、解放になったという話はそこで聞かれたのですか?
そうです。聞きました。アイゴ、その時、錬兵場に軍人は全員集まれ、といい
ました。それで集まって立っていると、すごく調子の悪いラジオが、すごい旧
式、その倭政の時代になにがありますか? それをつけて、いま天皇陛下が、
いま天皇陛下が重大放送をするから、聞け、こうです。それでしっかり、その
時は天皇陛下というと直立姿勢をとらなくてはいけない。しっかり直立すると
まもなく聞こえたが、かなり遠方なので、日本東京で放送したけれど、あまり
に遠いのでなんと言っているのか、聞き取れなかった。それで、まあまあ、一
語ずつ途切れ途切れに聞こえたが、私達は戦争を知らなかった。私達は兵卒な
のでなにが分かりますか? そうしてきっちり終わると、あ、将校達が泣いて
いて、日本の将校達が。軍人達は、したの完全に軍人達は、どうしたのかとお

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裵英虎ちょっと身動きしても殴られるから

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どおどして、将校達はすごく涙を流し涙を拭いてすごい騒ぎになった。それで
これはどうしたのだ、なにかあったのかこれは。私達はまったく知らなかった。

3、4日して、日本が降伏した、その時の天皇陛下のラジオ放送は降伏、降伏放
送である。それで私達は知りました。そうしてその中に銃、私たちが持ってい
た銃に、日本の天皇陛下のあれがあります。紋、紋様があります。それは何か

というと菊の花です。きっちり銃にきっちり刻んであった。それを、ヤスリ61)を
くれてすべて削るんだ、とこうです。削り落とせと。そしてきれいに削り取ると

縄で10丁ずつ、10丁ずつ束ねた。10丁ずつ、10丁ずつに束ねて、それで何故

こうする、と聞くと、その時はもう韓国人と同等の位置です、もう。なに日本軍

隊はもう今は、日本は完全に負けたから少しも威張ることができなくなった。
すると蒋介石軍隊に武装解除されるのだと。しかしこの天皇陛下の紋様があっ
ては良くない、だからヤスリですべて削り取れと、だからきれいに削って10丁
ずつ10丁ずつをわら縄62)で束ねて置く、という話でした。そしてまもなくして
中国、中国軍がやってきて運んで行きました、車で。

それでは解放になって何ヵ月程度、
3ヵ月ほどいました。その中を整理し、作戦地図などをすべて巻いて出してそ
の錬兵場で焼却してすべて火にくべて焼却して。機密文書、軍機密文書それを
すべて焼やし尽くして。銃器などは 全員( 移すので)、そいつを出してすべて束
ねて結んで。それするのに3ヵ月もかかりました。

解放になっても、するとその人たちは3ヵ月間、本国へ、日本へ帰らずにず

っと文書を廃棄して、一緒にいたのですね?
その人たちは全員、捕虜として捕まり行きました。中国軍に捕虜として。ひとり

61) 金属を磨いたり削ったりするのに用いる鋼鉄でつくった道具≒ヤスリ
62) 縄で

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212 

として日本へ送られたひとはいない、その部隊のその部隊全体すべてがそうだ
ったはずです。中国にいた日本軍隊は無条件に、その上から高い司令官から下

の兵卒までひとりも家に帰さなかった、 全員( 移動し)労役、捕虜として労役さ
せました。

あ、すると解放になってから日本軍は捕虜として捕らえられ、3ヵ月間は残
った朝鮮人達がその文書をすべて廃棄した、そうされましたか?
はい。廃棄しました。

その時、一緒にいた人の中で同じ故郷から来た人はいませんでしたか?
ひとりも会いませんでした。さっと部隊から出てきて票を、そいつをひとつ持
って、金も1銭もないし。だが部隊でどんな話をしたかというと、なんでも欲し
いものをみんな持って行け、こういう話でした。それで背負うもの、それはな
んだ? それと、まあ、ともかくまあ、中に下着や服や、靴は古くなっても履いて
いたけれどもすべて捨てて、新品に履き替えて、そうして出て来ました。金が
ありますか? 金は少しもくれずにそういうもの、これぐらいの票を持って除隊
証と。そんなあれだ、敗けた軍人が、何が敗北、あのあのあの、そうして来ま

した。それで出て、いちおう部隊を出たけれど、その時から中国人たちは、すぐ
さま日本人、日本の民間人もすぐに踏み倒して殺しました。日本の女性たちも

男性たちも。だから女性たちがどれだけ追いつめられたか、髪をすっかり短く

して男性のように。女人男装いるでしょ? 死ぬまいとして。それでもなに、誰

か干渉するひとがいますか? 身動きすらできませんでした。

殴打やらは無かったですか?
少しありました、ちょっと悪いことをすると頬を平手打ちされた。日本軍隊も
気合がきつかったです。まあ、韓国軍の気合は向こうへ行け、です。

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その部隊内に宿所もありましたか、寄宿舎?
はい。寄宿舎。内務班にすべてありませんか? ええ。ありました。

宿所の施設はどうでしたか?
食事? 食事はまあまあ、戦場はそんなもんでしょ。飯とあのタクアンとちょっと

したもの、まあ、毎日そうでした。味噌汁。奴らは味噌汁をミソ汁といいます。汁

をして毎日汁をしてくれます。タクアンは時々あって。ほかはありません。

では、おにぎりを食べましたか?
いいえ、ちがいます。部隊ではおにぎりはくれません。そのまま飯をくれる。器
にタクアンなど、和え物、なにか細切りした炒めもの。月1回、牛肉のようなの
を1回ぐらい炒めてくれたときもありました。

それでは、その部隊で起床時間は何時でしたか?
朝5時。就寝時間は10時。それが毎日、就寝できますか? 夜も歩哨に立たなく
てはいけないし、就寝時間10時になるとラッパが鳴ります。就寝、就寝ラッパ
が鳴ると、そこで消灯して寝なくてはいけない。眠れなくても寝るふりして横
になります。ちょっと身動きしただけでぶん殴られるから。

5時に起床されてすぐ…
訓練し、そして朝食してまたすぐ自分の哨所へ配置され。だから私たちは最前
列、最前列だよ。そう日本人の数が、日本軍人の人員が少ないから、韓国人を中
間に少し少しずつ入れて一緒にして数字だけ合わせるのです。そしてあそこで、
遠くに中国人が眼にはいると銃撃し、一緒に戦争し、逃亡して静まればじっとし
て。必ず昼間にそれが来ます。空襲があります。米国のあのB29、ええ、まちがい
なく来ます。毎日のように、そうしてすぐ防空壕にじっと潜んでいました。すると

まあ、日曜も土曜もありません。毎日くる。飛んできて爆弾落下して去る。

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214 

その部隊内へですか? 部隊に?
はい。部隊へ。それすぐに日本軍隊だとすぐに部隊へ爆弾落とす。

すると、その部隊内に爆弾が投下され、負傷者も多かったですね?
分かりません、それは。中に、中に防空壕があります。すべて掘ってあります。
そこに全員が潜んでいなくてはならない。チェンーとサイレンが鳴ると、途中
の仕事もすべておき、そしてすぐに第一線で歩哨に立つ人はすぐさま壕が掘っ
てあるから。そこに伏せます。飛行機が飛び去るまで。

ご老人、そこで歩哨に立ち、戦闘して、そのほかにちがう仕事をしました
か?
いいえ、それはありません。はいはい。どうしてそうかというと中国、中国人を

捕らえて雑役は中国人にさせます。便所を掘るとか、その当時は水洗式なんか
思いつかなかった。そこがいっぱいにたまると、中国人達がきてそれをすべて
掃除する、雑役はともかくすべて中国人にさせます。まあ、ちょっと。ちょうど
軍属のように軍隊に連れてくる、あの労務者たちいませんか? そんな人達、す
べて中国人を捕まえてさせます。そしてその仕事をする時は、日本軍人が銃の
前にいてすべて最後まで作業が終わるまで歩哨に立っていませんか?

ですが、おじいさん(ご老人)もそこで軍属として仕事されたのではあり
ませんか?
軍属です。その時は軍属、軍人の区別もありません。差し迫ったときだから。

そうしますと、その戦闘された以外でほかの仕事を受け持ったことは、ま
ったくありませんか?
ありません。その雑用をするのはすべて中国人を連れてきてさせ。私達はその
鉄条網のところで、中国人らが奇襲してくるのを防ぐため血眼になり。

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すぐに爆撃機がくれば防空壕に潜んだとのことですが、その防空壕を掘る
ようなことは、なさらなかったのですか?
あ、掘ってありました。行ってみると、すべて準備が整っていました。あ、そこ
の軍人達がすべて準備していました。あまりにもよく急に米軍の戦闘機が、あ
の爆撃機が、部隊があるから必死に叩きつぶそうとした。毎日、飛んでくる。
それがぐるぐる旋回して。あの豪州の飛行機も飛んできた。

豪州ですか?
豪州の飛行機。飛行機名はなんだったか? 豪州の飛行機はそれは胴体が無

くて、こうその飛行機も飛んできて。それだから毎日1日も欠かさずに爆撃機が

きたから。ともかく来るのを待ちかまえる程度に。ウーンとサイレンが鳴りひ
びく。そうすると逃げる、あのあの、防空壕に全員が潜り込まなくてはいけな
い。高官も兵卒も。

ご老人は、その部隊にいる間、苛酷なことなどをされたことはありませんか?

はいはい、そんなことはありません。私はまあ、徹頭徹尾しました、命じられる
まま。日本語も少しできたから。日本人によく、日本軍人によくみられた、と言
えるでしょう。よその家ののらくら息子はたくさん殴られましたよ。ゲンコツで
頬を殴られたり、あるいは棍棒で尻を叩かれたり、でなければ靴底で蹴られた

り、まあ、日本軍隊の気合は怖いです。

一緒に部隊にいた方で親しくなった方はいませんか?
いません。親しくしようにもできません。親しくさせないから。親しくならない
ようにした。自分のなすべき仕事をきっちりすると、疲れてとても、交代をき

っちりおえると2時間でも眠らないと、その防空壕内です、こうして身体をまげ
て寝ます。寝て起きれば銃をもち地面にうつ伏せになり今にも中国軍が来るか
と、入ってくるのではと。

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216 

部隊内でもしや月給のようなものを受け取ったことはありますか?
ありません。

毎日毎日、戦闘に出らたでしょう? 歩哨に立ち、さきほど戦闘にも出た、

とそうでしたね?

戦闘に出たのではなくあの、そこは私たちが追跡し捕まえられない。部隊が空っ
ぽになるから。部隊でその鉄条網内に壕を掘っておき、そこに潜み歩哨がいま
す。歩哨が、歩哨ではなく、そこへ中国軍がくれば一緒に銃撃して撃退させる。

あ、それでは直接に戦闘に出て闘われたとかではなく、部隊内だけにいま

したか? 部隊内で歩哨に立って、万一きたらそれを防ぐ、そう…

はいはい。ですが部隊内でも、その外郭に鉄条網をしてあってそれは部隊内で
す、鉄条網とまったく同じにぐるりと壕が掘ってあります。そしてそこに毎日潜
んでいました。交代で。

では、部隊の外に出たことはありませんか?
出たことがありません。中国軍も中国服を着て、私服で拳銃をもって通行し、そ

うしてするのです。狙撃するのです。日本軍人や人をみればそうするので、勝手

に出るのは、部隊の外に出ることはできません。狙撃されるかもしれないので。

すると解放になって部隊の外に出ましたか? それまで一度も出ずに…
そうです。そうです。解放になってから。3ヵ月後に、内部を整理して行けとい

うので、その時はじめて世の中を見物しました。

その部隊にいらしたとき、もしや家族と、または家族から手紙を送るとい

うことはいっさいありませんか?
アイグ、いっさい。

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では休日、こんな日はありませんか?
休日? どうにか交代、交代で1回ずつ。日曜日は風呂にも1回入って。風呂とい
ってもなに温泉のようなそんな浴場ですか? どこかへんな、あのあの、倉庫の
ようなところで水を沸かし、そうして風呂に交替で入ったりしました。

週1回、風呂に入りましたか?
なに、そんなにはできません。15日に1回? あ。毎週日曜は休めません。15日に

1回ほど風呂に入り、入って。そう、部隊にあれがあります。あのあの、理髪所

があって理髪師がやってきて散髪してくれて、その時はこの韓国軍のように髪
を長めにする人はいません、全体をバサバサ、あの坊さんのように切ってしま

う。日本軍人達は。それも昼だけします。昼間に限って。夜はふたたび歩哨に

立つ、ふたたび、そうしなくてはならない。

では帰ってきた日を記憶されていますか?
帰ってきた日は45年度だったでしょう? 解放のとき。46年度。46年度5月、月
尾島にサクラの花が咲いていたからね、桜の花が咲いていたから、5月たぶん
中旬だったか初旬だったか分かりません。

先ほど45年8月に解放されてから、3ヵ月ほど部隊内にいて、文書を廃棄し
て3カ月後に帰ってきたと言われましたね?
帰ってきたのではなく部隊から出たのです。部隊から出て私たちが故郷を探し
ていく道は数万里です。数万里。

はい。それではどのようにして帰ってきましたか?
ハ~、その時はもっともっと苦労しました。完全にまあ、軍隊生活はあっち行
けと。まあ、あ、その時はまた毛沢東と蒋介石がまた争いをはじめた、戦争
が。それで汽車で数万里、私たちは上海に行こうとした、上海へ。上海に行け

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朝鮮という私たちの国があったのだ

218 

ばまさか韓国へ行く船がないはずはないと? そう思って上海に行こうとした
が、南京兵站司令部では今、上海に行くと日本人をすべて殴殺すると大騒ぎ

している。だから上海に行かないでそこから上方に行けと。そうすればあちら

から陸路を行って韓国に行けるだろう、こんな話をした日本の奴が。それでそ
の話を聞いて線路を歩いて北上した。南昌63)から南昌から出て九江に行きま

した。九江そこを通ったではありませんか。九江、最初に行ったときも九江、

九江で下船して部隊に行った、また、九江に行けば船が運行しているという話
だ。それで九江に行って船に乗せてもらって南京へ行きました。そして南京か

ら乗船してまた渡って、浦口駅で汽車が解放になって汽車が運行しています

か? それで線路をずっと歩いた。群れて歩いた。そして運良く良い人と出会い
ました。そして夜は線路を枕にして線路で眠り昼は歩いて、またなんでも部隊
から持っていけといってくれたものを一つずつ、一つずつ取り出してパンと交
換して食べて、そうして天津まで行くのに2ヵ月かかりました。そこまで行くと
中国北支、中支からきた軍人、軍属韓国人たちが数百人いました。行ってみる

と韓国に行けないというのです。ええ? 山海関64)からこっちへ歩いて山海関ま

で行くと、ソ連軍がもうすでに満洲に来ていました。それで怖くなってまた戻
ってそこで冬を過したのです。そしてその時はもう韓国軍政、軍政責任です。
軍政庁。米軍がそれをするとき。そして軍政庁から翌年5月に米軍の上陸艇65)

というのがあって、はい、船が。その船で送ってくれました。そして軍人、軍属

できた人たちだけ最初に乗せて送りました。そして5月初に天津港を出港して

63) 南昌(ナンチャン:Nanchang):江西省の省都
64) 山海関(シャンハイグワン:Shanhaiguan):中国河北省北東端にある交通・軍事上の要地。
65) 米軍上陸用艦艇。2004年4月に刊行したシン・ヨンホの評伝(テサン シンヨンホ-素手

で生木に穴をあけ)には次の内容が載せられている。“1946年5月初旬、中国天津港から
米軍上陸用艦艇のLST一艇が汽笛を鳴らし東へと航海を開始した。乗務員等500余人が
乗船したこの艦艇は日帝の敗亡で夢の中にも思い焦がれた故国に帰る朝鮮人が大勢乗
船していた。いわゆる”帰国船“だった。戦闘用軍艦なので船はひどく揺れてみんなひど
い船酔いをした。”

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裵英虎ちょっと身動きしても殴られるから

219 

仁川港に着きましたが、そのとき5日ほどかかったと思います。仁川港まで来る
のに。その時46年度5月に韓国で米軍政庁が船を送ってくれ、乗務員達は元日本
海軍達です、その乗務員達は。その人たちが運転して仁川まできましたが。来て
みると仁川港のあの月尾島の港に船を着岸して、なぜ下船させてくれない、とい

うと現在韓国ではコレラが蔓延66) しているので下船させられない。船で、にぎり

飯、また寝てにぎり飯です。にぎり飯を1食1個もらって食べて5日目に下船させ
てくれましたが、仁川港でさっと降りると当時DDT67)というのがあります、DDT、
そいつを頭から足の爪先まですごく散布し、人々にいっぱい散布して消毒し、そ

うして大韓婦人会が当時の金で、日本円1000円をくれました。船からさっと下
りると1000円と、釜山行きの切符と、ちゃんと大韓婦人会がアイゴ、ご苦労さま

でした、と言いながらくれました。そして乗って仁川沿岸埠頭にきてみると汽車
が、汽車その貨物車がちゃんと待機していて、枕木 68)を走って釜山、大邱、どこ

どこ、麗水、光州と、枕木が敷いてありました。それに乗車すれば、もうその時そ

れも汽車が出ていないので5日間かかりました。そこから出て仁川から出て、永
登浦から出ないから数日いて、そうして帰るのに5日間かかり家に着いたのです。
ほんとうたいへんな苦労だった、話しにもならない。

乗務員たちはどの国の人ですか?

日本軍海軍。つまり船は米国の船、米軍の船だが、乗務員は全員日本人です。
日本海軍達で、そう一種の捕虜でしょ。米軍の指示に従ったのです。その天津

で乗せて仁川まで運んで、仁川まで連れてきてくれた。そうでなければ上海か
ら日本のどこか下関なら下関、福岡なら福岡に下ろしてくれた。

66) 解放の翌年の1946年6月初旬、南韓でコレラの気勢は極度に達した。ひと月前の5月2

日、中国から釜山に帰還した同胞から広まったコレラは瞬時に全国に拡散し、全国で9月

末まで1万1000余名が死亡した

67) DDT:有機塩素系列の殺虫剤で農薬。
68) 線路を敷くときに下に埋設して鉄道を固定させる木。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

220 

ではくる時に、部隊内で配慮のようなものはありましたか?
ありません。アイゴ、1銭もないのに、彼らは解放、いやその、敗亡したからそ
のような気力もなく、金もなく、そのまま紙切れ、除隊証といって。

そこ南京には朝鮮人たちはどれほど多かったですか?
それは分かりませんよ。自分たちは帰途を急いでいるし、自分の生きる道を探そ

うと、その周囲には神経もはらわずに。ですが天津にきてみると、どこに収容さ

れたかというとすぐに最初に、天津には同胞がおおぜいいました。そこへ倭政時
に移住して家族たちと商売しながら、その人たちが何度も、その天津港がなった
ので韓国へ行く一番の港になったので、そこがもっとも早いといって、寝ている
人が数、数百名になった。だからその多数の同胞達がすぐに少しずつ金を出し合

って食事をさせていたけれど、どんどん人数が増えたので粟粥を炊いてあげ、そ
の次は米の汁をしてあげたが、遂に責任をもてないといった。それで米軍政の部

署で軍人、軍属に行った人たち、独り者が一番気の毒だから、その人たちを一番
最初に韓国に乗せて送るようにしたので、私たちが第一次で出てきました。

先ほどその天津に集まった軍人、軍属に動員された人たちは数百名いたと
のことでしたが?
数百名、はい。数百名でしたが、その時、その収容所はなにかというと、倭政
のとき、その娼妓たち、するところです。あれなに、あれ、なんだ? 売春婦達
を収容した。していたところでもう解放になったから。

慰安所ですか?
はい。慰安所。

慰安所がそこにありましたか?
天津市内にありました。それはもう空家になってしまった。そこで待機していました。

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裵英虎ちょっと身動きしても殴られるから

221 

ではそこ天津でどれくらい何ヵ月ほどいましたか、乗船するまで?
天津でええっと、8月だ。ジュウイチ、ジュウニ、イチ、ニ、サン、シ、ゴ、69)約
7ヵ月いました。

あ、7ヵ月間、さきほどのその天津にあった軍慰安所?
はい。慰安所の建物に収容されていました。

その軍慰安所はとても大きいのですか?
あ、とても大きかったです。ざっと数百名収容できる、日本人の奴らが女子を
捕らえて、あのあの、軍人達のその慰安所になっていて大きかったです。

それではもしやそこに残っていた慰安婦たちや、そういう…

どこかに去って、解放になってどこかに去って***みんな出て行ってもう空家な

ので収容したのです。

そこが軍慰安所だという話は、誰が教えてくれたのですか?
あのその、同僚のひとが話してくれました。その韓国人たちはその周辺に店70) 
を開いていました。米商売の人、洋服店の人、さまざまな店をする同胞がいた
のです。その人たちが話して、あの軍慰安所だと。

そうすると、先ほどその天津で朝鮮人同胞達が米軍政庁がその船を手配
するまで、食事も提供してそうして…
はじめの頃はご飯をくれましたが、次にどんどん人数が増えて、どんどん私た
ちもどのみち韓国に帰ることになるし、少しでも金を使おうとしますか、誰が? 

69) 11, 12, 1, 2, 3, 4, 5
70) 店、商店

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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だから最初は飯をしてくれ、その次に粥をしてくれ、その次は粟粥をしてく
れ、次には米汁をしてくれたが、とうとうぷっつり途切れてしまいました。だか
ら乞食ですよ。完全に、なに完全な乞食、乞食。

では朝鮮人たちは自分たちの家にある食糧をそうしてくれたのですか? そ
れとも米軍達が提供してくれたのですか?
はい。米軍達が提供してくれたものはなにもありません。その同胞達が十匙一飯
で、少しお金を渡すとその金で米も売り、粟も売り、そうして。おかずもなしに、
おかずをつくる余裕はどこにありますか? そこに大根の葉の汁もないし、あり
ません。ただ飯を炊いて、最初は飯だったけれど、あとになるとすっと飲める粥
になりました、粥。そしてあとで軍人、軍属たち、こいつらはどこで何をしたか、
拳銃を購入して強盗をしたのです。もう金がありません。食べものもなく。それ
だから悪事をしでかした。拳銃をもって強盗したのです。こうして一時はです
ね、とても中国人たちは、韓国人と中国人はポンヨウ71) 、ポンヨウ、朋友、ポンウ

といって私たちをもてなしてくれたけれど、あとになると強盗をして拳銃で脅か
したりしたから、朝鮮人をみんな殴り殺せ、と騒ぎになった。とても親しい友、無

二の親友だ、いまや朋友といっていたのに、アイゴ、あとになると悪事を韓国青
年がしでかしたから。あんなだから倭政のとき、倭奴の手先になって私たちをお
おいに苦しめたのだ。あいつらも殺せと、そうしまった。だから私たちも外出もで

きないで、とじこもっていました。おそろしくて。

では、すでにその時、以前にその米軍政はすでにそこに来ていたのです
ね、天津へ。そして天津に行ってすぐ、米軍によってそのまま軍慰安所の
建物に収容されたのですね?
はいはい。そうです。当時、思いどおりにはならなかったでしょう?

71) 朋友(pengyou)

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裵英虎ちょっと身動きしても殴られるから

223 

では、その軍慰安所の建物は、ある種の捕虜収容所とみることができます
か?
捕虜収容所ではありません。完全に倭政の時から軍慰安所。

そうではなくて、その米軍政庁、米軍によってその天津に着いてすぐ、米
軍によってそこの軍慰安所の建物に収容されたではありませんか? です
からそれ自体を収容所のひとつとみなせるのでは、ということなのです
が?
まあ収容所はどうなっているのか分かりませんが、収容所ではありません。ま
ず、ひとり暮らしの、軍人、軍属だから故郷に帰る手立てもなく、だからまずそ

こで。けれども米軍が飯をくれる、服をくれるというようなことは一切なかっ
た。その天津市内で暮らす韓国僑民たちが金を少し少しずつ十匙一飯で少し

ずつ出し合って飯も食べさせていたのに…

では天津に入ったとき、米軍政その米軍が入ってくるとき、この人は朝鮮
人軍属なのか、軍人なのかこんなことを…
直接にそういうのを管理しませんでした。米軍は治安だけ。治安だけそれをし
ました。全体的な天津市内の治安だけそれをしました。統制をしました。

苦労して帰ってこられて、ご両親はその時もご存命でしたか?
アイゴ、大騒ぎになりましたよ。どこの家72)の息子は軍に行って帰って来た、ど

こか南洋に行って帰って来た、来たというのに、我が家に、こないのです。あ

んなふうに行ってしまったと、と母はそうして涙で歳月を送っていましたが、
突然に風呂敷を乞食みたいにしてみすぼらしく完全な野宿者みたいになって、
ひょっこり帰って来たのです。来たので私の母はおどろいてしまって素足でそ

72) どなたかの家

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朝鮮という私たちの国があったのだ

224 

のまま庭、庭に下り駆けてきたのでした。来ました、隣近所の人たちが、嬉し
いよと、ヨンおかあさん。そして近所で祝宴をひらきました。祝宴、祝宴じゃ
なくてこちらの家では餅をついて持ってきて、こちら家では甘酒をもってくる

し、そうして簡単な祝宴を開いて祝賀してもらって、その当時、門のなかにさ
っと入って行くまでいつくるか、どこから来るのか、死んだのか、生きているの

かも分からないでしょう。知る手立てがありますか? 手紙がきましたか? 1
ヵ月近くも、まあ、なんというか完全に土方でした。それほど苦労したこと、一
方では家に帰れたという安堵感でほっとして緊張がとれてしまいました。アイ
ゴ、それでまあ、完全にまあ、死に際から生き返ってきました。外出もできずま
あ、もう緊張感がすっとほぐれてしまって病気になりました。どんなことをして
でもそこにいたときは、あゝ、死のうが生きようが家に帰らなくてはいけない、
そんなふうに緊張して決意して神経をとがらせ活動して、行動して、家に帰っ
てきて横になると、とたんに緊張がとれてしまって。

お帰りになった時、おいくつでしたか?
その時はこう、22歳か? 21歳か? 22歳か? 3年かかったから。

それではお帰りになられて、何をなさいましたか?
アイゴ、警察からも訪ねてきて。また国防警備隊、当時韓国陸軍長達、長達で
す。警察も当時は長達がそういう時だったが、アイゴ、軍に行って帰ってきた
のだから毎日、私に将校になれと。派出所、その警察からも訪ねてきて、兵士
を殺したのだろうと。また、軍からは、国防警備隊からは、少尉にするから来い

と、でも私は振りはらって行きませんでした。アイゴ、まあ、どれほど死ぬ思い

の苦労をしたことか、もう組織生活はいっさいしません、としませんでした。

そこで、他の同僚達はとても苦労しましたか?
苦労といって毎日まあ、休息時間もなく、毎日まあ中国人と戦うことは、それが

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裵英虎ちょっと身動きしても殴られるから

225 

すべて苦労でしょ。銃弾は飛んでくるし、ここから撃退せよ、と言われれば命
令どおり撃退しなくてはいけない。それでも鉄条網の外へは出るなという、日
本軍は。だから鉄条網の内側で、壕を掘って頭を低くして銃、銃、銃口だけ向
けて撃ちまくる、それです。なに、そうして昼間にまた空襲になって。

今になって振り返ってみて軍隊、中国にある軍隊に行き送られた3年間
は、どのような生活というか、そんなことをいま振り返ってみると、どん
なことがもっとも記憶に残り、またどんなことがもっとも心が痛むこと
か、そんなことがもしありましたら、少しお話してください。
はい。心が痛むことについて話します。日本人が、韓国人をひどく蔑視し虐待

したこと。そのことがもっとも心が痛む。同等に名前まで創氏させておきなが
ら、そして内鮮一体だ、日本人も韓国人もまったく同じ国民だ、そうしておきな

がら、虐待したこと。人種差別して虐待したことは言うまでもなく、もっとも良
い私たちが見習うべきことは、いくら組織生活、軍隊生活といっても実に一糸
乱れず行動したことは、もちろん韓国軍もそのようにはしますが、日本軍隊は
もっと徹底していました。そうして一糸乱れずにその組織生活を引導するのを
みると、実にそれは日本人は見ごたえがあります。

調面談者_チャン・ミラ調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

227 

金壬用

創氏名

金谷澤山

1922.11.26 慶南 昌原郡 内西面 校坊洞 生まれ
1942.6     陸軍捕虜監視員として動員され釜山西面野口部隊で訓練
1942.8   インドネシア ジャワ捕虜収容所 捕虜監視員として動員
1945.8.15    日本敗戦後 戦犯裁判等に連座
1947.2.20    日本 宇品で解用後 故郷に帰還

韓国人もおおぜい死にました、
捕虜を虐待したと

おじいさん(ご老人)、創氏名はなんでしたか?
金谷カネヤ、金谷澤山。

1922年のお生まれですか?
はい。

その当時どちらにお住まいでしたか?
昌原郡内西面校坊里。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

228 

おじいさん(ご老人)は当時、何歳でしたか?
20何歳か、21歳か? 22歳か? よく覚えてない。

当時、ご両親と兄弟は?
当時、私の下に兄弟3人いました。弟ふたり妹ひとり。

おじいさん(ご老人)は当時、学校に通われましたか?
城湖普通学校。

その時は何年度でしたか? 千9百、
42年か? 思い出せません。

1943年に行かれたことになっています。
その頃でしょうたぶん。

その時、43年度に行かれ、47年度に帰還されたのですね?
はい。

では当時、通学していたときの先生が、班の卒業生を訪ねて行き、1班に
何回ぐらい…
先生ではなく村の里長が。

先生が推薦されたのではありませんか?
ちがいます。面長が里長に証明をして、普通学校を卒業した者は集まれとい
って。面長の弟もそこへ行ったのに除外して、私たちだけ送ったんだ、悪い奴
だ。

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

229 

はじめに、いつ、どこへ集まれという話を、里長を通じて聞かれました
か?
それはよく分かりません。何日に行くので面事務所に集まれといったかな。こ
こに集まれ、とそれで集まって最初は早く行きました。

その時、面事務所に集まったのですね? だいたい何人程度、集まりました
か?
★最初に行ったとき何人ぐらい集まって行きましたか?◎約20人いたかと。

その人達はみんな国民学校を卒業した人達ですね?
はい。

そうしてその日、面事務所に20人が集まって、その時にいつどこへ行って
何の仕事をする、こういった話は聞かれましたか?
そこへ行ってそんな話をたくさん聞きました。

捕虜監視員として行くことになる、それではそこでどんな仕事をするとい

う話は始めに聞かれましたね?
そうです。

それは里長が話されましたか?
はい。募集するという話をしました。強制しても募集だそうです。

そうですね。ではその時にその場所に集まった20人はみんな捕虜監視員と

して行った人達ですか?
はいはい。全員がその島に、みんな島に。30人集まって行ったから。全員集めて。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

230 

そしてその時、もしやそこに行けば月給をもらえるとか、どんな待遇を受
けるとか、そんな話はしませんでしたか?
そんな話はなく、訓練を受けると初月給が30数円だった。初棒給が37円かあっ
て。そして1年、2年いると80円までもらいました。80円もらいました。40円は
竜山部隊から家に送金してくれ本俸は、手当といって40円、それはもらいまし
た。軍票73)で使えない金です。

家に40円送金されたか、事実は分からず?
分かりません。消息がないから。

その軍票について覚えていらっしゃいませんか? どんな軍票だったか。現
在、お持ちではありませんか?
来るときに数百円ずつもらえたのに、米軍の奴らが検問して金はすべて押収さ
れました。千円か2千円くれて、***に証明してくれただけだ。恨んみても仕方
ないです。

73) 外国で戦争をする場合または軍隊が占領地に駐屯した場合、軍隊に必要な物品を購入

するときに使用するため政府または交戦団体が発行する特殊な貨幣。

1942年インドネシアで使用された軍票

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

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その日、30人全員汽車で移動され
ましたか?
はい。いっしょ、いっしょに。

釜山駅で下車し西面に行って、そ

この訓練所に行かれましたね?

野口74)部隊で。

はい。野口部隊です。私が確認

したところでは、ここで訓練を受

けたひとが少しいらっしゃいまし
た。
いるでしょう。3千人いたから。

3,000余名程度が野口部隊に集まり、その人達は後日どこへ配属されまし
たか?
最初に配属する時に日本語で番号をつけ、この者はどこへ行く、お前はどこへ
行く、ある者はどこへ行く、とこうしました。ですが乗った船はみな違いまし
た。***あるフィリピン 75)へ行き、***ない南洋へ行き。

訓練所でいっしょに訓練を受けた人達のうちでは、何人程度がジャワへ行

74) 1942年5月陸軍省は捕虜監視と取り締まりをするため朝鮮全域で3,223名の青年を選抜

し、釜山から臨時軍属教育隊(通称[野口部隊])を編成した。約2ヵ月間にわたる厳格
な軍事訓練を修了後、3,016名を捕虜監視員としてタイ、マレーシア、ジャワ等の捕虜

収容所に派遣する一方、捕虜処理要領を発表し連合国捕虜の強制労働を決定、悪名高
い泰緬鉄道、軍用飛行場建設に動員した。

75) フィリピン

金壬用 留守名簿

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朝鮮という私たちの国があったのだ

232 

きましたか、いっしょに?
一個小隊だから約80人。

80余人がいっしょにジャワに行かれ、1小隊ごとに各地域へ配属されまし
たか?
ジャワに行ったが、1小隊1分隊はどこで、2分隊はどこで***。

もともとはジャワ捕虜収容所だった人がまた派遣され、他の分所に送られ
た、そんな方もいましたね?
はい。

小隊別で先ほどのジャワ、フィリピン、マレーシア、またほかに地域は?
それは、私はよく分かりません、マレー、シンガポール。

その訓練内容はどういうのでしたか? 野口部隊にいた時…
銃の撃ち方、人を捕縛する方法、ハハ、ここ韓国軍隊式と同じ。

その教育は何ヵ月受けましたか?
3ヵ月か、2ヵ月か分かりません。2ヵ月受けて、3ヵ月目に行ったから。

訓練を3ヵ月間受けたときその西面、野口部隊は西面のどのへんにありま

したか?

凡一洞のあたり、競馬場のところです。昔はそこが兵站部隊だった、日本の奴

らの。

おじいさん(ご老人)、それでは3ヵ月間の訓練を受け、次は釜山駅から出

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

233 

発し船で行かれましたか?
船に乗って行きました。釜山鎮部隊から。第3埠頭。輸送船、貨物船で貨物船
の部屋にこう押し込んで立つことも出来ず。全員捕らえてそこへ行きました。
座るとすごく船がすごくこう揺れました。

ではその船に乗ってどのぐらいしてジャワへ着きましたか?
ひと月かかった。回り道して行きました。急いで行かず。こう行き、こう行っ
て遠回りしたから遅くなった。潜水艦を避けようとして。来るときは1週間だっ
た。そのジャワから日本まで1週間。速力は、それが貨物船だから速いはずない
でしょ?

1ヵ月程度行っている間にどうでしたか? 食事などはそこでしてくれまし
たか?
話もなりません。食事は安南米。日本の味噌汁にカボチャがほんのひと切れと
飯は一杯分。

ジャワまで? ひと月かかったのですね。そうして途中でフィリピン、シ
ンガポールで下船させながら、ご老人はジャワまで行かれたのですね? 
そしてちゃんとジャワで下船したとき、そのジャワへ行くということをご
存知でしたか?
知りません。

ただ捕虜監視員として行くことは知ってが、ジャワへ行くのかはご存知な
かったのですか? ひとまず船から降りて到着して分かった…
下船しろ、というので下船すると、そこだったんだ。

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234 

ジャワ港、ジャワ港でしたか?
タンジョンブロク76) 

タンジョンブルクですか?
うん。タンジェヨンブルク。その埠頭名はタンジェヨンブルク。ジャカルタでそ
こは港。

これは日本式発音ですか?

発音は日本式だよ。それが名称だ。

そこに到着してからジャワにきたという事実を知ったのですね? そこに80
人がいっしょに下船しましたか?
80人か150人か分からない。その数は分かりません。当然、数えなかったか

ら。

先ほど野口部隊でジャワ捕虜収容所に配置されたひとは80人と、先ほどお

っしゃいましたが?
ちがう。1個部隊が80人だ。

小隊は80人で、小隊は同じ地域に行ったのではなく、みんな分散したとい

うことですか?
そこへ行って1週間もしないでシンガポールへまた行った人もいるし、タイに

行った人もいるし、各地へ思い通り…

76)タンジュンブリオク(Tanjungpriok):インドネシア・ジャワ島西岸にあるジャカルタの外

港。

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

235 

あ、そこへ行って。ではその港で下船してどこへ移動しましたか?
ジャカルタからきたなに所長かがやって来て査閲した。所長、星ふたつ。サイ

トウ所長。そうしてやって来て***か、だからチラチャプ77) というところ。ジャ

ワから汽車でチラチャプという収容所に行きました。

最初に行かれた場所がチラチャプ収容所、ここでしたか?
約6ヵ月いてからバンドンというところも行って。そこは高山地帯で島だから本
当にいいところです。そこは避暑地だよ。またジャカルタ行って。

またジャカルタ収容所ですか?
最初に行ったところへもどって、また出てぐるぐる回りました。一ヵ所に長くい
ないで。

では、おじいさん(ご老人)が最初に行ったのは、ジャカルタ収容所へ行
かれて、その次にチラチャプ収容所で6ヵ月、バンドン収容所にいて、また
戻ってジャカルタ収容所に行かれ…
ジャカルタ収容所でスマトラへ出張が2回ありました、輸送しに。そこの捕虜が
みんな死んでしまって、私たち韓国人3人だけを残して、警備する人達。韓国
人たち、鉄道工事をするのでその…というところへ行って約1,000人運びまし
た。

あ、ジャカルタ収容所にいたときですか?

うん。

77) チラチャプ(Cilacap):インドネシア中部ジャワ州にある地名、第2次大戦当時、日本が建

てたジャワ捕虜収容所第2分所があった。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

236 

捕虜を約1,000人運んだのですか?
捕虜は約500人で、現地住民、労務者。

先ほど、捕虜500人、現地住民、労務者。ではこの人達が行ってそこで鉄
道…
みんな死んでしまいました。潜水艦魚雷攻撃を受けて船が爆破され船が座礁

してしまった。

それなのに、おじいさん(ご老人)は生存されたのですか?
そうだ。ひと晩中、海面の上に浮かんでいたら救助船がきて。(手)振る人だ
けを運んで行って、振らない人は運んで行かなかった、そうしたんだ。

2回目のときですか? その時は戦争が非常に激しくなって盛んに空襲が…

日本の奴は海軍がなくなって、日本海軍が全滅して**できなかった。警備で伴

走した船はわが国の船でなく捕鯨船で魚を獲る船。それに大砲を載せ、伴走し
ていてそうなった。

日本軍が攻撃したのではなく、連合軍が攻撃したのですね?

連合軍が。魚雷攻撃を受けて沈没してしまった。生存者は約100人いたかどう
かだ。

連合軍は、捕虜がいるのを知らずに、それを攻撃したようですね。
だから赤十字社側は避けて運行するようにと、ひらひらと目印を付けていれば
死なずにすんだのに、日本がしたんだ。目印を付けなかったからそうなった。

では、もともとはこの人たちが捕虜や労務者や住民たちを運んで、そこで

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

237 

どういう仕事をさせようと連れて行ったのですか?

建設事業をするため。

おじいさん(ご老人)は、そのとき魚雷で沈没してから海上で24時間漂流

して救助されたとのことですが? そしてそれが原因で中耳炎にかかったの

ですね? ではその時に治療を受けられましたか?
受けるには受けたが、まったくいい加減です、いい加減。病院といっても衛生
兵が診てくれる。膿を拭いてくれた、それ。

中耳炎にかかった後に難聴になったのですね。そしてご老人はそこでチラ
チャ収容所に6ヵ月いて、バンドン収容所では何ヵ月いらっしゃいました
か?
期間もありません。ほとんど行ったり来たりする出張でしたから。

おじいさん(ご老人)の場合、かなり長期間いらっしゃいましたね? 4~5
年程度なりますか?
解放になって3年もよぶんにいたから。最初は2年契約で行ったが、その人たち
が帰してくれなかったのだ。1年、また延長したが、帰してくれたとしても、そ
の時に死んだかもしれない。帰れば、お前死ぬぞ、といって止めました。帰し
てくれず延長させられて。

捕虜収容所で捕虜監視員だった方は、朝鮮人たちがかなりいたのではあり
ませんか?
約200人程度。

マレー半島にも行き。捕虜収容所にいらしたときの日本人管理者を覚えて

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朝鮮という私たちの国があったのだ

238 

いますか?
あの所長サイトウ。あとで他の人と交代しました。あとからエンドウという大
佐がきました。

上の管理者達の大部分は日本人でしたね?
簡単にいうと、ここの矯道所のように警備が立ちます。その人たちはみんな銃
殺されました。

連合軍がきて銃殺されましたか?
銃殺、全員されました。私たちも、韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待

したと。

そこで勤務時間などは? 日課などはどうでしたか?

1日24時間。

朝は何時に起床されましたか?
朝5時起床です。点呼も夜10時で。

そこでは食事はどうでしたか?
そこでは大丈夫でした。韓国人が料理してくれたので。飯を炊き汁があり卵も
ついて。

そこでは、食事は大丈夫だったのですね?
はい、食べものは大丈夫でした。週1回、外出しました。

もう日本人の場合は裁判して処刑されて…

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

239 

捕虜を虐待した人たち。虐待しなくても処刑された。韓国人でもっとも位の高
い人たちもフィリピン、フィリピン(で)みんな処刑された。黄某78) というかた
は中領でした。

黄某中将ですか その人の故郷はどこですか? この人は、どこの出身か分
かりませんか?
満洲関東軍出身で。

この人は軍官学校出身ですか? 満州軍官学校出身?
それは知らないが。いいや、その人は日本士官学校出身でした。

すると黄中将という人についてお話されましたが、この人のような場合は
連合軍に捕われどうなりましたか?
死刑になりました。

おじいさん(ご老人)、ではその当時、ほぼ戦争末期の頃に敗亡してから
連合軍がきたとき、その時の状況を詳しくお話してください。つまり、そ
こで敗亡した事実はお聞きになりましたね? 8月15日。
17日、17日。ラジオ放送があった。あゝ、我々は勝てなかったと、集結させて話

しました。降伏したと。日本天皇が降伏したと。

日本人が教えてくれて、それから日本人たちは逃亡せずに、引き続きその

78) BC級戦犯として処刑された洪思翊中将を指しているようである。洪思翊は日本軍関東

軍参謀部、興亜院調査官、北支派遣軍旅団長南方総軍兵站監兼捕虜収容所長などを歴
任。日本敗戦後、連合軍側捕虜に対する残虐行為責任問題によりマニラ法廷でBC級戦
犯として絞首刑に処された。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

240 

部隊に残ったのですね? 解放の消息を聞いてどれほどして連合軍がきま

したか?

覚えていません。連合軍がくる前に捕虜たちが残っていました。その人達を、
武装させてその人たちを監視しました、最初は。

その人たちはどんな人たちでしたか?
オランダ人。オランダの植民地だった。それでその人たちがしていて、外国人
部隊がきました。インド人、外国軍が入ってきた。

連合軍が入ってきてからは、逆にオランダの捕虜によって監視されたので
すか? 全員すべて朝鮮人、日本人はいうまでもなく全員? そうしてその後
にインド連合軍がきたのですか?

うん。連合軍です。そして船が無いから帰れない、順番に送るから待て、待て
といって何回も延長になった。だから、すぐ帰るといってから2年ほどして帰る
というので埠頭に行ったけれど、捕虜収容所の捕虜監視員たちが帰らせないと

いってバックさせました。
 
そして解放になって帰るまで、捕虜収容所でなにか他の仕事をするとか、
労役をするなど、2年間は何をされましたか?
掃除をして、戦後復旧のような掃除をして、ジャカルタで。日本人の奴で関係
のない奴たちは全員送って。

あ、日本人たちは送って?
捕虜虐待の部隊にいなかった人たちは全員送った。船が無いので。私たちは
残っていました。そうして部隊でダメだと***刑務所に詰め込んだのだ。そうし
て写真を撮られたんだ。お前はなにをしたんだ、なにをした、全員写真を撮っ

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

241 

て、6ヵ月間コンクリート打ち79) この人に。***しなかった。金さんならキオッ
()字、キオッ()字、その順番で乗船させるのだと。40人、20人で。私が出て

くるときも大勢いました。

つまり、この捕虜監視員の写真を全員撮って、そこにきっちり貼り出し
て、この人たちにどんな過酷な行為を受けたのか、そうですか? そしてど
のような過酷行為を受けさせられたと指差された捕虜監視員の場合、どう
なりましたか?
軍法にかけられる。かけられたが、他のことは見ませんでした、チョ某、その人
はひと晩とても心配したんだ。どんなに神経をすり減らしたのか。一夜でおじ
いさん(ご老人)のように頭髪が。その人を撮った写真をみて確認しようとし
てくる。その人達が。***(裁判を)そんなふうに終わらせてしまう。死刑にさ
れたひともいるし、懲役約20年、50年を受けた人もいた。

そういう人たちは、そのあとどのように、結局釈放になったではありませ
んか? 10年、20年、終身刑を受けたのなら…
それは日本の巣鴨へ移送されました。長期囚。10年以上の長期囚たちは、日本
の戦犯を収監するところ。

どこですか?
スガモ80)、スガモ。

79) コンクリートを打つ(セメントをこねて塗る)の日本式発音でこの文では文脈上、いろ

いろと辛い目にあったという意味に解される。

80) 東京の巣鴨刑務所:現在の東京東池袋にあった拘置所。通称は巣鴨プリズンと呼ばれ

第二次世界大戦後、極東軍事裁判に回付された戦犯達が収容され、東条英機等7名の死
刑が執行された。東南アジア各地の戦犯裁判で有罪判決を受けた韓国(朝鮮)出身BC
級戦犯もその後、巣鴨に移送され服役した。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

242 

スガモ監護所ですか? 監護所に移送されたのですか?
はい。マッカーサーのその部隊に。戦犯収容所といっていたが。

それでそこへ行った人たちで朝鮮人は?
その消息は知りません。

もしやその収容所内で直接そこで集結、(即決)その裁判によって処刑さ
れたひとがいたとか、そのようなひとはいませんでしたか?
日本将校、少佐、少領。アナミ81)少佐、少領が死刑になりました。

いずれにせよ、おじいさん(ご老人)は命令によってしたことですが、お

じいさん(ご老人)もその命令に従ったので、その捕虜たちの立場では過

酷な行為をしたひとではありませんか?それで、その人たちの中には、お

じいさん(ご老人)からも過酷な行為をされた、と言ったはずですよね?

それは違う。普通はそうでなかった。それはなぜかというと、その人達は品物
を少し所有していた。それをくれ、といってもくれないで、そのまま頑固に**し
ているんだ。それは100円ぐらいのもので、それを奪おうと欲を出し***(して)。

捕虜達が所有していた品物を?
★そのまま所有していたんだ。

おじいさん(ご老人)の場合、命じたことだけをした…

81) オランダによってすすめられたインドネシアに於ける戦犯裁判は12箇所においてBC級

戦犯1000名以上が裁判に回付された。そのうち236名が死刑処罰を受け連合国5ヵ国裁
判中で最大数を占めているが、死刑者にアナミという名前の少領ないし少佐がいたかは
確認されていない。

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

243 

勤務せよ、といわれれば勤務だけして、飯を食べたんだ。

ですが、おじいさん(ご老人)があんなに遅くまでいた理由はなんです
か? 47年度までいらっしゃったのは?
そこで帰してくれなかったから、仕事がなくなれば帰してくれる。3ヵ月、6ヵ
月、苦しめられたその人***まあ、そんなもんでしょう。だけど日本人将校たち
は、重要なのはすべて朝鮮人あなたたちが悪かった。責任者だと、責任者だ、
そうだと。部隊長だ。

先ほどのアナミ少領という人ですか? この人が部隊長でしたか?
その人は軍人常任隊長で、本隊長はサイトウという人で。

ジャワから直接来てすぐにこられたのですか? ジャワから日本まで1週間
かかったということですが? すると1週間かかって日本へ行って日本…
ここ82)に、ここに15日間いた。広島ウジナ港だ、ウジナ港。宇品で日本の奴は
ウジナという。また九州に行って船が無いので密航者として収容所に合同で集
め、合わせて集めて送りました。九州大村収容所に行って、そこも1回に1ヵ月
目に解放された。

そこに1ヵ月いらっしゃったのですか?
だいたいそのぐらいで、帰りました。日にちは分からないが。

そこにいらっしゃって、その次に九州で最終的に出発して、釜山港に帰っ
てこられたのですね? 釜山港に到着してから家にはどのように?
釜山にくると羊の缶詰と小麦粉で粥を炊いて、故郷に帰る汽車は無料で乗車し

82) ここ、広島宇品

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朝鮮という私たちの国があったのだ

244 

た。無賃乗車して。クマサン駅まで。解放して3年も帰ってこないから、皆は死
んだものと思っていた。

もしやジャワ収容所にいるとき、家に手紙などをしましたか?送れました
か?
日本へ捕虜を輸送するときに韓国を往き来する人がいました。それで写真を1
枚送りました。それはこのどこかにあります。父母はその写真を見て生存して
いることを知りました。

あ、写真を1回、送って? では帰還されるときも、いつ帰るというのも知ら
ないまま、帰ってきてからそれを知ったのですね?
解放になって2年ほどしてインドネシア放送局に呼ばれて、韓国へ放送しまし
た。ですがここに帰ってきてから、それが放送されたといったか?

1947年 日本 宇品 撮影

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

245 

放送を聞いたのですか? どのように聞いたのでしょうか? 当時はテレビも
ない時でしたが?
ラジオ、ラジオ。

解放になってすぐそうなって、2年後ではなく、いつ頃?
2年ほど経っていました。***元旦のとき、放送局に金を渡して借りて。

すると解放になって約2年後ですか?
陰暦の正月1日。

誰が金を渡してインドネシア放送局を借りたのですか?
私たちの団体で。その***(捕虜収容所)監視員だったとき日本の奴に**(賃
金)くれと言った。 持って行って食べようと、(行ってその分を)米でたくさん
受けとった。米が何俵もあるからそれもくれた。

その団体というのはなんの団体ですか? 捕虜監視員をしたその人達でつ

くった団体ですか?

私たちは収容所にいたので団体ではなく。クジュ***

それで、そのラジオ放送局に行ってひとり、ひとり、みんな…
いいえ、ひとりが全員から聞いて、名前だけ日本語で、日本の名前で。

帰ってこられて おじいさん(ご老人)は、どんな仕事をされましたか?
当時は職場もなかったし、みんな労働者でした。洞事務所にいましたが金はあ

りません。月給はありません。馬山市が金を出さなかったので。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

246 

それでは、公務員として少し仕事をされたのですね?
★洞事務所書記です。

何年ほど勤めましたか?
★6・25のとき。1年ほどか、2年したか?

1年間、面書記をなさったのですね? 他の地域でもみると、例えば人民軍
が入って来たとき、文字を読める人はわざわざ軍のために行って仕事をす
るんだといって、面書記をせよ、と言われることもあったそうです。
能力もなく、ともかく。実際、当時は正規公務員も月給は無かったから。

おじいさん(ご老人)、もうひとつだけおうかがいします。その捕虜収容
所にいらっしゃったとき、 おじいさん(ご老人)が確実になさったお仕事
は捕虜その歩哨、つまり…
そんな仕事はしていません。

それでは? ですから捕虜を監視する仕事をされましたね? しかし、そこで
捕虜達を虐待したとか、殴打したとか、こういうことはいつも日常的にあ

りましたか? それをした人は多かったのですか?

班に数人です。数人がそうしました。

大部分はそうではなかった、ということですか?
はい。しませんでした。

そこにおもにいた捕虜はオランダ人と、どの国の人がおもに多かったです
か?

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金壬用韓国人もおおぜい死にました、捕虜を虐待したと

247 

オランダ人と、インドネシアがオランダの植民地だったから、それを管理する
ため全部オランダ人です。イギリス人、インド人も混じっていたけれど。

おもにオランダ人で、イギリス人とインド人もいましたか?ここにあとに
なってその捕虜収容所に女性達もいましたか?
女性いました。女性は別途に収容しました。

女子収容所は別にありましたか?
別にあります。

もしやここへあとから慰安所にいた女性のなかに、もしやオランダ人女性
もそこの慰安所にいましたか?
それは分かりません。そのあいの子がいました。現地の女性と、そのオランダ
人との間に生まれたのが合の子、混血児。混血女性がいました。そういうのは
収容されなかった。子供たちと母親は一緒のところに集めました。それは子供
たちが怪我をしないようにと。

その女子捕虜を監視するのも、私たち朝鮮人捕虜監視…
ちがいます。出られないように鉄条網を張って別にしてあって。

そのように分離して、鉄条網を張って?
出られないようにそうした。その人も生存できたか分かりません。キム・マン
スというひと。

キム・マンスですか? キム・マンスって誰ですか?
その人はスパイになって、その人も連合軍から賞をもらった。私たちといっし

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朝鮮という私たちの国があったのだ

248 

ょにいたけれど、呼び出して飛行機に乗せて送ったんだ、おそらく。連合軍ス

パイ。オランダ部隊に潜入させたのです。そしてその話を***知られました。日
本人の奴は驚いてそれでどんな奴がしたのかといって、そいつを捕まえて殺せ

と。

では、連合軍スパイが、敗亡以後に、その連合軍スパイとして捕虜収容所
にきた人でしたか、そのキム・マンスという人は?
私たちといっしょに勤務しながら、そうしたのです。その人は監視をしない
で、私たちの炊事班長です。連合軍が来る前ですが、オランダ人に通信を教え
てあげて、内部ではどうも話が洩れている、というのだ。噂になればどうする
のだと、日本の奴らはなにも言わずに全部あるものを取り出してくまなく捜索

したんだ。そうしたって何かが出てきますか。手を挙げたのをみるとそいつだ

(そいつだった)。キム・マンスという奴だ。(そこ)いたので、お前は前に行

け、飛行機に乗せて送ってあげる、といった。私たちはいっしょに行くものと、

どうしてそんなことができるのか? 呼び出して、送ってしまった。

面談者_チャン・ミラ調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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黄鍾大逃亡もできない、四方は海だから…

249 

黄鍾大

創氏名

黄本鍾大

1919.8.29  全北 錦山郡 錦山邑 中島里 生まれ
1942.春

海軍軍属としてソロモン群島及びラバウル飛行場設営工事に動員

1943.秋

病気で中途帰還

逃亡もできない、四方は海だから…

おじいさん(ご老人)、創氏名はなんでしたか?
黄本83) です。

黄本鍾大?

83) 旧日本軍の軍履歴等軍属を証明する記録はないが、1942年頃にソロモン諸島を経てラ

バウルに行き負傷して帰還したという詳細な口述に照らしてみて、1942年5月1日編成さ
れガタカナルに進出し、残留者がラバウルへ移譲された第11設営隊所属海軍軍属工員

とみられる。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

250 

はい。そのようにしました。

おじいさん(ご老人)、何年のお生れですか?
19年生まれです。

当時、 おじいさん(ご老人)が行かれたのは1900何年度でしたか?
それがですね、それが21歳のとき、その徴用、それがきたので満州へ逃げて、
2年後に帰ってきてその翌年に行ったから、だから42年度に行って捕まって訓
練を受け、その翌年に行ったから42年度だったかな? うん? 24歳で行ったか
ら。はい。そして43年度に帰ってきました。

当時、帰ってきた時は何月でしたか?
その時も楢の木の葉がすっかり落ちていたから、秋か春、晩春だったか、とも
かく1年過ぎていました。あのソロモンで負傷して、今も足をひきずっていま
す。このくるぶしを打って、今も足をひきずっています。

おじいさん(ご老人)、では1943年秋頃に帰られたのですか?
秋かどうかともかく1年少し過ぎて帰ってきました。それであのソロモン島から
ラバウルへ行きました。ラバウルという島に行きました。仕事はそこで終わっ
て。ラバウル島に行ってそこではじめて治療を受けました。治療を受けられな
かったが、そこでは受けられなく、するそれがありませんでした、ソロモン島に
は。そこへ行くと病院があり病院治療を受けました。全員、痛む人は来なさい

といって、そこで治療を受けて、肛門脱肛症もそこで治療を受けられずに薬を

少しずつくれましたが、それは治らない薬で。

では1年余りいたのですね?

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黄鍾大逃亡もできない、四方は海だから…

251 

はい、そう思います、はい。それでそこで言えば日本語でアサヒ丸84) です。私
たちのそれではチョイルファン(朝日丸)、アサヒ丸。病院船です、名前は。今
思うとそれを思い出しました。病院で乗って呉港に行きました。その時、淳昌
の人もいたし、高敞の人もいたし,病気のひとたち。けれど残りの人はニュー
ギニ85)、ニューギニだったか? そこに行くと言っていました。ニューギニだか
そこに行くと言っていました。けれど行ってからこの錦山の人で死んだひとが
いるという話を聞きました、帰ってから。

それでは おじいさん(ご老人)、最初に行かれたのはどのように、令状を
受け取り行かれたのですか?
39年に21歳だったから、39年に令状を受け取りました。あの徴兵、いうなら日
本の奴らが志願兵と名づけたそれを、身体検査を受けさせ身動きができない
ようしました。だから徴用、え…例えば、きょうだったら、今朝までにその日に
行くと、もう徴用に軍隊に行かなくてはいけません。それで先ほどのお話のよ

うに、当時は揮発油もなく油もないときだから木炭車に乗って。ヒィヒィ、木

をくべてバスを走らせた、蒸気をためて。そんな車が錦山から大田まで運行し
ていました。一日2台ほど往復し数回走っていました。それでその車に、私の
一番上の兄がいました。4人兄弟で私は末っ子です。長兄がその運転士に話し
て、当日朝2時に家を出て20里ぐらい歩いてその人に会って満州へ逃げました
私は。満洲へ逃げたけれど約2年後の41年だったか? 家で不幸なことがありま

した。父が危篤状態だったので帰ると、日本人にまた捕まりました。もうそれ

で、その時に捕まって訓練を受けて、私の記憶では42年だったか? 入ったので
す。それがその時に行ったから、その時は令状もありません。訓練だけ受けて

84) 朝日丸は旧日本軍の病院船。1937年海軍が病院船として徴用し使用中に、1942年3月

26日、ティモール島で英国軍飛行機の空襲にもあった。1943年11月、病院船としての任
務を解き輸送船として使用された。1944年油造船満珠丸と衝突後、解体された。

85) ニューギニア(New Guinea)

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朝鮮という私たちの国があったのだ

252 

その日、ある日突然、そのまま大田にみんな移送されて、汽車で釜山に行って
そこで当時、アルヒンシマル丸86)? アルヒンシマル? アルヘンチナマルとかい

う船に乗って、ともかく12,000トンといっていました。とても大きかったです。
だから高敞郡、淳昌郡、錦山郡がいっしょにその時に乗船して行きました。う

ん、その人達がみんな釜山にきて集まって。

それでは おじいさん(ご老人)、1939年21歳のとき令状がきて満洲へ逃亡

し、41年に家から不幸の報せをもらってまた帰られて、いずれにせよ1942

年にまた徴用で行くようになったということですね?
軍隊に行かなかったけれど、当時は名前を軍属に、名前を軍属として徴用で行

って、そこで飛行場をつくりました飛行場。

では1942年度に24歳で行く前に、訓練所はどこの訓練所…?
訓練所ではありません。ただ錦山で訓練を受けました。

錦山のどこで訓練を受けましたか?
場所はその前は普通学校でした。錦山普通学校。キム・ジェユンという人がい

ます。そのひとは錦山邑事務所にいた人です。キム・ジェユンがその人が訓練
しました。前に進め、後退して、後ろ回れ、なにとか、そんなことだけしまし
た。ほかのことはしないで。

その訓練期間は、どのぐらいでしたか?
だからその時に数ヵ月受けて1年過ぎました。1年がその時過ぎました。そこへ

86) あるぜんちな丸は12,755トン級の世界一周用豪華旅客船で1939年に建造されたが1942

年に日本海軍に売却され航空母艦海鷹に改造された。1945年7月24日、別府湾で機雷
に接触して座礁し7月28日に爆撃された。

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黄鍾大逃亡もできない、四方は海だから…

253 

24歳の時に行ったから1年過ぎていたと思う。

それでは釜山まで何に乗って移動しましたか?
汽車でした。

では出発はどこからでしたか?
大田からです。錦山から出発して大田にきて大田から。

大田駅まで汽車で行きましたね。
その時はあれで行きました。木炭車。

釜山に集結して訓練を受けたとき何人が、釜山港から何人行きましたか?
その時、数百人いたはずです。

数百人ですか? すると釜山港まで数百人いっしょに行ったのですね? 
汽車で釜山まで?
あ、釜山駅まで行ったのは私たちだけ行って、そこに集結して汽車に乗って一
緒に行ったかは分かりません。そこでは分からなかったです。それは覚えてい
ません。そこで船に一緒に乗ったから。だから大田ではその人達を知らなかっ
たです。釜山に行って知りました。そこに集結して知りました。けれど私の記
憶ではあれは錦山郡で、ちょっと待って、錦山郡から何班行ったのだったか? 
え、錦山郡だけで36班、それも確実な数字で。ともかく40班。高敞郡の人、こ

こにいた人は40班あった? ひとつで約20人だから、そうだね、ひとつの郡で、

富利面と錦山邑といっしょに行ったのです。錦山面と秋富面の人もいたな。

釜山からアルゼンチナ丸? これはどんな船ですか?

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朝鮮という私たちの国があったのだ

254 

だからこれは遊覧船なのか寝台が全部ついていたから、船に行ってみると。分
かりません。貨物船じゃない、ともかく。

このアルゼンチナ丸に乗船してどこへ行きましたか? 最初に?
ソロモン群島。

では乗船前に、行事のようなことをしましたか? 歓送行事のようなことを

しましたか?

あ、ありません。

では釜山港からソロモン群島までおよその所要期間は、そこまでどれぐら
いかかりましたか?
ソロモン群島へ行くのに昼夜で14日間かかったかな? ともかく2週間かかった
そうです。当時の話では。

食事はすべてありましたか?
飯はまあ、おかずは、ふざけたことに1種類だけくれました。飯と汁だけ。飯と

1種類だけ。それはワカメを炒めればワカメ、ワカメを合えればワカメだけくれ
た。またあのソロモン群島へ行って仕事をする時は、仕事をする時は例えばま
あウサギ肉だったかな? それを1回ずつ炒めてくれた。それ1種類と飯だけくれ
ました。

ソロモン島に到着すると、そこの部隊はどの部隊でしたか?
部隊もありません。日本人は監督といって数人いました。軍隊はなかったで
す。

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黄鍾大逃亡もできない、四方は海だから…

255 

それでは、軍隊に編入されたのではありませんね?
でも言葉だけ、名前だけ軍属とつけたのです。もうこのことを知っていらっし
ゃらなくては。日本人らは徴用、いうならば強制で連れて行って軍隊も志願兵

と言ったのです。名前を彼らの言葉では。でも軍属と言ったけれど勤労者だ
よ。確かに行って飛行場を造成したのだから。

では大きい船で港に下りて、小舟でその島、その作業場まで運んでくれた
のですね? 距離は何時間くらいかかりましたか? その島に入るのに?
はい、運んでくれました。そこからそんなにかからなかったです。それを時間
で計ってどれくらいかは、私たちが時計を持っていればそれも計ってみるだろ

う。時計なんて見物もできない時だった。だからどれぐらいか、ともかくそこで

分からない。その船で10~20分ほどで着きました、たぶん。

そこへ行くと、忠清道の人達がすでにそこに来ていたのですね?
来ていました。来ていたから、そのひとが日本人の下で、総監督がひとりいま

した。あとで分かってみると大徳郡の人だといった。ひとりは私たちが飛行場

の整備するところ、監督は日本人で忠清道の人と2人いました。日本人の下に
いました。私たちが仕事をする場所にはこなかった、その人は。

それでは、どの部隊があったというのでもなく、そのまま行ってソロモン
島で飛行場を建設する、そういう仕事をされたということですね?

どうしてともかくなのですか、高いところから低いところへこうしてリヤカ

ー87)、こうして引っぱるリヤカーがあるじゃないですか? こうして付いてい
る。取っ手のある、鉄パイプでつくってあるの。そのリヤカーで、その人達が1

日にきょうはここ、ここは高くなっているから、ここがこう高いから低くならし

87) リヤカー、荷車

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朝鮮という私たちの国があったのだ

256 

ていくから。それをするので、ここでまたここで測ります。ここを1mだ、2mだ

と彼らの思うまま、きょうはこれをしろ、と測ります。作業量をあらかじめ測
る。これをすべて完了せよ、完了すると申告して戻ってくるんだ。

では飛行場建設ですから、長い滑走路をずっと整地する仕事をされたの
ですね?

うん。整地する仕事をしました。運動場みたいにこう広く。島だからまあ、わが
国のように長くそのように整地しないで、つまり島だからその形状はそのまま

何度も埋めて行きました。道路をつくるのじゃなく。島でも高いところと低い

ところがあるじゃないですか。平坦にするために高いところから運んで埋めま
した。現在、萬頃江の水路を塞ぐところをご存知でしょう? 車で何度も降り

ていくじゃありませんか? そのようにあの高いところまでリヤカーを引っぱっ
て、スコップで掘ってリヤカー引いたところへ行って、手でこうして低いところ
を何度も埋めたのです。

1日に何時間、仕事をされましたか?

だから、その話をしようと思ったのに。また忘れてしまった。年寄りだからうっ
かり忘れる、 今だって。そうさせられると、(こうして話せば、) それをすべて話
すと夜を明かしても話せません。話すことがたくさんあって。そのように組ご

とに2人なら20人、錦山の人は錦山の組があって、その人達をそうさせられる
と、(こうして話せば、)それも話そうとすると夜まで話しても足りない。棒杭を

前に引いておく。棒杭に綱を巻いてパッとはめると、そいつを無条件しなくち

ゃならないのだが、それをすべて話そうとしてもできない。1日中かかっても。

夜を明かしても足りない量だから。そいつを短縮するというのだから私達は。

あ、そこに来た人達を組別にして仕事をしましたか?
組別です。錦山邑のひとは錦山邑のひとどうし。私たちは錦山新面だけど富利

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黄鍾大逃亡もできない、四方は海だから…

257 

面と錦山邑と1組になって行きました。富利面と。

各組別に受け持った仕事は、すべて違いますか?
まったく同じ仕事です。組だけ分かれてしました。そうして私はいつも忘れて

しまうのだその名を。組に班長がいました。それで私が班長でした。

そこで仕事をする人達は、数千人いましたか?
いいえ。そんなにいませんでした。数百人、300人未満だったと思うが。

そこは、宿舎もありましたね?
宿所は、そこに記入してあります。木でこうしてそれをずらりと敷いて、真ん中
に通路をこうつくりました。そして両側を板間にします。両側を板間にして、
そこでずっと寝ました。一軒をそのように建てて。結わいてある松の板を敷い
た。そして毛布を1枚ずつくれました。夜は冷えて寒いから。とにかく木でそう

して当時のことばで、日本語で飯場だ、そう、飯場。

軍隊に行くと、たいてい軍服や軍靴のようなものも支給するではありませ
んか? そのようなものを別途にもらった、物品のようなものはそこでくれ
ましたか?
ええ、タバコをくれました。タバコをくれたが、私はそれをなんでタバコのこと
思い出したんだろう、タバコを私は当時、吸っていなかった。だからそれをた
めて売りました。売って金にしました。それで金を巾着に入れ持って行ったの
に。金はありません。すべてありません。金は1円もくれなかった。

それではおじいさん(ご老人)、その訓練所へ行って訓練を受けられたと
き…
訓練所は行っていません。学校でまるで監視でもするように毎日、呼び出され

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朝鮮という私たちの国があったのだ

258 

ました。それがそうなって訓練でしょう。言うなら監視しようとして毎日、呼び
出したのだ。そのまま自宅にいて通いで何時に出てこい、明日は何時に出てこ
い、といって監視をして、逃亡ができないよう、監視するために訓練を受けさ
せたんだ。なにか特別な訓練所じゃなくて。

錦山初等学校から釜山へ出発するとき、また家に帰って行くことはお話に
なりましたか?
私の兄が付き添って来ました。

では、家に話をされてきたのですね? 行くのは、ご存知だったのですね、
ご両親は?
もちろん知っている。

それで、お金をいくらか持って行くことができたのですね?
そうです。

ではご老人、お金とかそういうものを家で準備して行かれたのですか?
アイグ、なんの金がありますか? 当時ですよ? 金儲けもしないでなんの金が
ありますか? だからなにか買って食べなさい、と少しずつくれた金、そんな金
ですよ、すべて。

そこでは階級とかこういうのは全然なかったですか?
ありません。

日本人監督はずっといましたか?

いません。

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黄鍾大逃亡もできない、四方は海だから…

259 

では誰が監督したのですか?
そのまま作業、あの白い半ズボンをはいて、こんな半袖を着て白いのをこんな
風につくって着て、その人達が着ていました。軍人達はいなかったから。
 
月給をもらったことはありませんか?
ありません。

それでは、先ほどのタバコを売ってためたお金はどうされましたか?
使うところもありません、売ったところで。そのまま持っていて病院船に乗って

くるときに持ってきました。

軍隊のようなところは、すごく監視なども厳しかったのではありません
か? それでそこでは特別にそういうことは?
監視人もいません。逃亡もできないから、四方は海だから。まあそんな監視み
たいなこともなかったです。ただ日本人が3、4人いました。

そこでお風呂には入れましたか?
風呂は海水でしました。

衣類はそこで支給されましたか?
最初に行く時にしてくれました。半袖、半ズボンなどをくれました。そして衣
類もみんな持って行きました。私はね、すごくいやになっていて、そこで暮ら

していけるのではと思って、別途に服も持って行きました。カバンにそうして

行きました。ぜんぶそのまま故郷から。うんざりしていました。逃亡できるな

ら逃亡しようと、どこかへ消えてしまおうとしたけれど、そんなところじゃあり
ません。暮らしていくにも暮らしていけないところで。あの黒人たちだけがそ

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朝鮮という私たちの国があったのだ

260 

のまま、原住民たちだけがそこに住んでいて。丸太でつくった舟、女たちが乗
ってあの島、この島へ通って。またその原住民達を連れてきて踊りを2度かそ
んなこともありました。日本人が彼らを連れてきて踊り…

そのソロモン群島に行かれて、そこにいてから、先ほど他の場所に移動さ
れたと、そうでしたか?
ラバウルに行きました。

ソロモン群島にいた人達は、作業が終わってからラバウルに移動したので
すか?
はい。みんな移動、いっしょに移動しました。あ、3郡88)がすべて。当時そこ、
そこに行く時には、私たち忠清道のひとは見かけませんでした。

ラバウルに行く前、ソロモン群島ではどれくらいいましたか?
それが日の経つのも分からない。嘘じゃなくて事実そうなのです。日が過ぎる
のが分らないのです。だからいつ、どの季節、どの時期に出たのか、それなの
で分からないのです。

船で移動するとき、もしや船名を覚えていますか?
その時は分かりません。ラバウルに着いてからは、その時はそこへ行って待機

していました。仕事をしないで待機していましたが、私たちのなかに痛む、あ

の、病気のひとがいて、痛む人達、患者達を選んでまた選んで、残りの人達は
ニューギニアに行くのだ、といっていました、ニューギニア。

88) ともに動員された3つの郡の高敞郡、淳昌郡、錦山郡で、当時の錦山郡は行政区域上、

全羅北道に属した。

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黄鍾大逃亡もできない、四方は海だから…

261 

では、ご老人はラバウルまでいかれたのですね?
ラバウルまで行っていました。そこでは何をしたかというと、ヤシの木の農場
がありました。それは日本人達がつくったのでなく、英国人達がつくったとい
いました。ですが、ヤシの木をそのまま秩序よく、そのまま秩序正しくいっぱ
い植えたところがありました。そんなところで草取りもし、そんな仕事をしまし
た、そこで。

ラバウルにはソロモン群島よりも長かったですか? 短かったですか?
短かったです。数ヵ月だったと思います、たぶん。

 
そこで、ラバウルで健康な人たちは、またニューギニアへ行ってもう…
行くのは見ませんでした。残りの人たちはニューギニアへ行く、という話だけ
聞きました。そしてその人たちはニューギニアへ行ったのか、行かなかったの
かも分かりません。私たちは患者だけ高敞のひと、淳昌のひと、錦山のひと、
患者だけ出てきて船に乗って日本に行きました。それが何日いて出たかも分か

りません。そこでもかなり長くいました。船が戻ってこないので。すぐに、すぐ

にこなかった。

それで、その患者たちはどういう病気にかかった人たちですか?
そのほとんど私が、私は怪我をして赤痢にかかり脱肛症になってしまった。肛
門がこうぬけでてしまった。赤痢にかかると下痢がひどく、すごく力を入れよう

とするから、その病気になったんだと。日本の奴ら、もっとも恐れる病気。

足はなにをしていて負傷しましたか?
それはその仕事をしていて石が原因で。そこにいて、ともかく石が転んで、大
きな石が転がってきて当たって打って。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

262 

ラバウルから出た方達は、同村の人もいっしょに出たとおっしゃいました
が、病気のひとは何人ぐらいいっしょに日本へ行きましたか?
錦山から行ったひとは、チョン・ヘヨンと私のふたりが出たようです。私とそ
の時、誰といっしょに出たかな? 10人もいなかったようだが。どうしてかという
と、日本に行って病院にも入れずに、なんだか粗末な家で扉もない家に寝かせ
て、そこで寝たが。そこもまたそのままいられますか? 毎日、なにを拾えとい
って、仕事をさせられたのです。

日本のどこ?

呉のあの軍港です、そこは。昔、日本の奴らの軍港です、そこは。そこに行きま

した。そしてあとで病院に入りました、入るには。

ご老人、ラバウルにいらっしゃった時、そこに慰安所などがあったでしょ
う?
ありません。

ですが慰安婦として行ってきた人で、ラバウルにいた人が少しいました。
そうでしたか? そういうのは私、私たちは見ませんでした。

おじいさん(ご老人)は、ラバウルでもあのヤシの木の農場にだけ、いま

したか?

いいや、農場にいたのでなく宿所がありました、そこも。農場内ではありませ
ん。こっちが山、例えばこのように平坦なところにヤシの木がきっちり植えてあ

り、こんな山みたいな高いところに幕舎を建てて、家を。だけどその家には英

国人が住んでいたのに、追い出したのだそうです。そんなところで私たちは寝
ました。

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黄鍾大逃亡もできない、四方は海だから…

263 

呉に行って、はじめはそのまま民間の家にいて、しばらくして軍人病院で
治療を受けたのですね?
そう、治療を受けて出てきました。

おじいさん(ご老人)、そこにいるときに賃金をもらったことはありません
ね? 一銭ももらったことがないということですね?
ここに私、故郷にきて。ちがうな、故郷にきて少額で数10回もらったことがあ

ります。

あ、帰国後に当時のお金で120、30円? 120万円程度を…
ちがいます。まったく。120円。え? 想像できますか?

あ、当時のお金で。誰にもらいましたか?
郡でくれました。郡庁で。

そのお金はなぜくれたのですか、そこで?
その金、そこの賃金だといってくれました。

郡庁ですか? 郡庁なら、邑事務所…
現在も原州郡庁とかあるでしょう? 全州だったら、郡庁職員が来なさいと言っ
て。私だけでなく、帰国した人達はみんなそのように受け取ったそうです。

ここに、帰国後1943年とありますが、帰ってきた翌年のようですが…
そうだ。そうです。うん。

では、郡庁でいずれにせよ120円程度をくれたので、それがどんなお金か

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朝鮮という私たちの国があったのだ

264 

分からないで、ただ慰労金だ、こうお考えなのですか?
ああ、そうして行って帰ってきた、さあ慰労金だ、賃金としてくれたのかもしれ
ない。それは。どんな意味でくれるのか知らずに受け取ったから。

それでは、43年度に呉から帰ってくるときは、船でどこまで来ましたか?
釜山に着きました。

釜山港、では釜山からは?
釜山からはもう自由に汽車に乗って。あの木炭車に乗って家に行きました。
あ、釜山にきて、釜山で汽車に乗って大田まできて、大田からは木炭車バス、
錦山まではそのバスで行きました。

おじいさん(ご老人)は帰ってこられてから、これまで何をなさって…
それをまた話すと、ずいぶん時間がかかります。行って帰ってきました。その
時、警察署から、帰ってまもなく高等係に呼び出されました。高等係というの
は、なにを取り締まったかというと、思想犯を取り締まりました。思想犯を取り
締まったところが高等係です。その時、倭政のとき、その時そこに呼び出され
ました。それで行ってみると、中国へまた行け、というのです、私を見て。です
がそのとき高、高い高の字、高某という人が主任でした。我々の韓国、朝鮮人
ですが。で、その人が呼び出して中国へ行け、とこういいました、私を見て。そ
れで私は今も痛くて行けない。それで免除され、いました家に。それだからど

うしますか? そこにいるとダメだから、当時、新京に私のすぐ上の兄がいまし
た、満州の新京に。それでそこに行きました。ハハ。洗濯の注文を受けに行く
とか、そんなことをしました。それをして、宝山百貨店に入りました。そこの商

品部というところで、商品が入ってくるとこうして定価を付けました。そういう
付けるのがあって、ボックスをこう開いて物品目録を読んで、品目を見て、そ
こでその定価票を、糸に通した定価票をゆらゆらしたそんなやつです。そうす

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黄鍾大逃亡もできない、四方は海だから…

265 

るとそこに縫う針があるでしょう? 鉄、縫い針? 先がこんなの。それをこうは
がして、そこに付けます。そういうのをするところがありました。そしてあの、
あとで宝山百貨店89) のところ、その当時、40円しかくれなかった。40円しか、
ひと月。そうして満洲生命株式会社に、また移りました。満洲生命株式会社90) 
、だけどそこも月給は下宿代しかくれないので、とてもなにをしようにもできな
い。それで妹もその時一緒に行っていましたが、その妹を結婚させるのに、そ
こで結婚させましたが、平安道の人に嫁がせました。それでそこ行って興農産
業株式会社91)という葦のゴザ92) とカマスを取り扱う会社がありました。そこに

行ってから月給が少し増えました。そこで勤めて大東亜戦争末期に、大東亜戦
争末期にもう日本が撤収したじゃないですか。その時、汽車に乗って、乗った
汽車はもう、我が国に行くのを乗ったんだ。そして奉天に行って解放になりま

した。

それでは、家に手紙を送るとか、そんなことは全くしませんでしたか?

しました。そういうのをしました。なぜしたかというと、家にもしたことはあり
ません。東京のチェ・サンスンという、そこへいっしょに行った人ではないが、

東京に留学した親友がひとりいます。音楽がよくできました? それでそこに
行ってバイオリン科にいるとのことでした。それで、歌詞をひとつ私がつくっ
て、その人に送ったことがありました。それを送って、送って見てくれと。それ

89) 宝山デパート:竣工年度ははっきりしないが石本建築事務所の設計で1911年、中国新

京(現在の長春)に建っていた百貨店。

90) 満洲日日新聞1937年12月2日付には、すでに「満洲火災保険創立総会開催」という題目

で”日満“において火災海上保険会社の綜合出資をすることとなった満洲国で損害保険独
占・会社の満洲火災海上保険会社の創立総会は1日午前10時新京・大和ホテル会議室で
開催。高橋(経済部商事課長)、高橋(満洲生命理事長)、村井(大連火災社長)、景
山(明治火災理事役)等出席”という記事が掲載されている。

91) 三井、三菱を支柱会社に満洲興農産業が設立した。
92) ござの誤記、葦を編んでつくったゴザ。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

266 

でそれを送ってきました。それだから手紙のやりとりをしたことを、それで今
も覚えています。

それで返事ももらわれましたか?
その返事を、曲をつけて送ってくれましたよ。

面談者_チャン・ミラ調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

267 

金顯沂

創氏名

金田顯沂

1921.1.15

慶南 統営郡 長木面 長木里 生まれ

11942.5 

満洲関東軍 軍司令部及び教育隊軍属・警防手として動員

1945.8.15 解放後帰還

直ちに行け、といわれたら行くのです

何を入れていましたか、ここに?

え? これに貴重品。貴重品をこの中に入れていました。

貴重品とは、どのようなものですか?

ここには、軍人の身元証と重要なものをいれていました。このボケット93)をこう

引っ張ります。

93) ポケット(pocket):ポケット

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朝鮮という私たちの国があったのだ

268 

あ、そうですか。これをよく保管されましたね。見ますと、ここにすべて記
されていますね。満洲第785部隊。そこに行かれてもらったものですか?
はい、関東経理部部隊といっていました。満洲関東軍経理部部隊と。

はい。ほかにお持ちのものはありませんか? これに見ますと、まだ他にも
あるようですが?
ここにあります。その関東軍経理部といっても、日本式ではなくこれは満洲勤
務です、満洲国にありました。満洲帝国といい、勤務しました、そこでは満洲
国が認められていました。ここの505軍事郵便所で支給したものだ。これは
900円。これは月給をもらいボーナスをもらって私がまとめて貯金しました、こ
れは貯金して受け取ったものにしたもの。

受け取ったものには赤線を引いてあるのですか?
900円は別途で、これは引き出して使ったもの、これは部隊で月給をもらった時
に、もらう時に差し引いてくれます。経理貯蓄といって、除隊時にこれを引き出し

ます。これはいわば退職時に引き出して使うようにと、貯金したものです。

あ、退職時に、退職金名目で貯蓄しておいたのですね? ところでこの金
は受け取れなかったものであり、この金は月給名目でもらったもの、です
ね? あ、そうなのですね、よく保管されていましたね。
私はこの部隊にいて、ソ軍(ソ連軍)の攻撃を受けて、ソ軍の捕虜となりまし
た。我々の部隊がだ。奉天にキワジグロイブダイ94)、その捕虜収容所にいて、
何を知っていたのか、日本の奴がソウル、聞いた奴、聞いていない奴、それす
ら知らずに出てみると、日本はとっくに降伏したという。そのため、これを引き

94) 9869部隊の誤った発音のようである。当時、奉天には7陸軍拘禁所である986部隊(日

本の発音:キュウハチロク ブタイ)があった。

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

269 

出せなかったのだ。だか
ら、いろいろ困難な条件
がありました。

当時、満洲へ行かれた
のは何歳ですか?
20歳。

       
20歳ですか。当時のご
住所は?

はい、仁川松林洞に住んでいましたが、朝鮮総督府国民総動員令、朝鮮総督府
国民総動員令26条、27条による令状をもらったのだ、出頭令状を。仁川支庁に
直ちに出頭せよとのことで行くと、すでにあの満洲関東軍経理部、そこの将校
がきて選抜されて行きました。

当時、どんな学校に通っていましたか、仁川で?
ソウルで勉強し、仁川で就職して行っていた。就職して。

では、ソウルでどんな学校に通っていましたか? 中学校まで通われました
ね?
学校は夜間学校。苦学しました。昼間は仕事して、夜間に夜学に通ったが、韓
国外国語学院といって現在の外国語学校。そこで英語を学ぼうと通いました。

軍属募集の話は、どのようにお知りになったのですか?
いいえ、令状が来たのです。朝鮮総督府国民総動員令26条、27条により何日
まで仁川市庁に出頭せよと、令状が来たのだ。

貯金通帳

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朝鮮という私たちの国があったのだ

270 

それでは仁川、もしや日にちを覚えておいでですか? 1940何年何月何日と
か、何月頃と覚えていますか?
だから私は、ちょっと待って。ともかく私が20歳のとき昭和17年で、ちょっと
待って、昭和17。

昭和17年ですと1942年、合っていますか?
はい、昭和17年だったから。昭和17年度の6月か5月かよく分かりません、とも
かく。

6月頃に令状をもらって、仁川市庁前に集まれというので、仁川市庁前に
行かれたのですね? おひとりで行かれたのでしたね? ではその当時、ご
家族はどこにお住まいでしたか?
家族はここ(巨済島)にいたし。

では、もしやその日に集結して仁川市庁に集まって、当日に直接行かれま

したか?

はい。その日、仁川市庁に行きました。行くと約40人、約50人が来ていました。
ですが10人ぐらいはみんなどこか病気で行けないで、約40人が合格した。40人
が合格したが、その日に合格、直接にきっちりその将校が合格だときっちりそう

して、2日後に全員がそうして全員すべてその時に行ったのだ。新しい役所95) を
もらってだ。2日後に仁川駅に全員集結せよといって、だから引率をいわば全員

が満洲へ汽車に乗って行った。だがその汽車の切符もすべて軍人票、軍人票で

くれた、軍人票。将校がすべて汽車の切符をすべて購入し一枚をくれたのだ。

そしていつ、2日後に仁川駅に集結すること。そしてすべて帽子も日本の奴、あ

95) 役所:仕事をする場所

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

271 

の星のある帽子をすべてくれた。すごくゲートル96) それもすべて、巻けというの
だ。服は与えず服は自分、自分の服を着て。ゲートルをきっちり巻いてです。

汽車に乗る前に、なんというのか、歓送行事のようなもの、そういうのは
ありましたか?
ですがそれは当日に合格した人は、全員すべてだね、直ちに行け、といわれた

ら行くのだ。逃亡しないようにきっちりと日本の奴の警察がだ。仁川のあのチ
ンジャ神社、いうならジンジャ、最近の神社、話はその参拝するということだ。

それで行って参拝してだ、敬意を表してだ。そしてきっぱりついに行くのだ。
そうして身動きができないようにした。

では、その2日後に集まれといって、全員それぞれ帰宅してふたたび…
全員に2日間の余裕を与えるのですべて整理するものは整理せよ、といわれ
て、何時に、きっちり仁川駅に何時まできっちり集結せよ。

では当日、汽車に乗る前に先ほどの神社に行って参拝し、行事をしてから…
当日、その当日に合格してから。

それでは汽車に乗るとき、どこへ行くという話は事前にありましたか?
いいえ、汽車の切符にチチハル97)とちゃんと記してあった。

あ、そうでしたか。では行く時に食事などはしましたか?
食事は旅費として計算してくれた。食事して2日間、家で整理するその旅費、

96) ゲートル〔(フランス語)guetres〕;ズボンの裾を巻いて足首から膝上までつけるもの。

ほとんどが軍事用。

97) チチハル

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朝鮮という私たちの国があったのだ

272 

汽車の切符はあるから。車内で買って食べる旅費をすべてくれる。当日に。

列車内ではご飯を買って食べられないのでは?
車内では飯などを販売している。

列車で何日かかりましたか、満洲まで?
満洲まで2日間かかった2日間。チチハル、ここからそこまで2日間かかった。

チチハル駅に到着してからその40人は全員同じ場所へ行きましたか? そ
うでなければ全員分散しましたか?
同じ部隊に決められている。785部隊98) とみんな決まっていた。けれどもその
同じ部隊に配置されると、全員がその部隊だが更に勤務地があるんだ。勤務地
を全員にすべて割り当て配置します。トラックに載せられて行きました。

トラックに乗ってどのくらい行きましたか、その部隊は?

その部隊は約30分? 約20分? トラックで行くとその部隊があります。

その40人が、それでは同じ部隊に入って各自はもう…
その部隊も1箇所だけでなく、本部はそこで、そこにあってそれぞれの現場へ、
40人は5人ずつ、10人ずつ、15人ずつ配置されました。

それではおじいさん(ご老人)は、その785部隊本部にいらっしゃったので
すか?
私は785部隊本部にいました。その駅で降り、トラックで運ばれ部隊に行った

98) 関東軍経理部チチハル出張所

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

273 

のです。その日1日はだ、内務班に、全員
すべて内務班に入れて並ばせ、その中で
配置するのです。お前はどの行政、お前
はどの部、そこのお前はどの行政にと全
員に配置します。そして私は785部隊本
部にいました。

はい。ではおじいさん(ご老人)、
1942年4月、いいえ1942年5月から
1900何年度まで勤務しましたか、そこ
で?
昭和20年8月15日解放まで、そこにいま

した。

おじいさん(ご老人)は、785部隊での職責はそのまま軍属ですか? ある
いはまた他に職責などはありませんでしたか?
警防手です。警防手99)。職責名だと警防手です。

785部隊内でご老人は経理部で、その785部隊はおもにどんな仕事をしま

したか?

その部隊が何をするかというと、作戦用の穴掘り、作戦用の橋づくり、作戦陣
地を建てた。

あ、それが経理部のする仕事でしたか?
経理部でそういう仕事をします。

99) 警防手:火災や危険などを警戒し防止する役割を受け持った軍属。

留守名簿

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朝鮮という私たちの国があったのだ

274 

ですがおじいさん(ご老人)、ふつう経理部は事務室で事務をすることで
はありませんか?
だから、そういう陣地とかの事務をみなくてはいけない。これがまったく仕事

といったら、だから上から、あの日本からですね、たくさん軍需品が入ってき
ます。その軍需品がくると汽車に積んでくる、部隊に。するとそれでそれをす
るのだ。経理部、経理課、経理官が引率します。それを警備しなくてはいけな

い。それを誰かが、泥棒が盗んでしまったらダメだろう? 警備して事務を

してこれが数個だ、まあすべて、なになにというその事務をしなくちゃいけな

い。警備、警備に立つときはまさに軍属で、こう剣をつけて銃をしてそうした。
事務半分、警備半分、そうしました。

あ、事務もなさり、また軍需品がきたりすると歩哨にも立たれ、それをお
もにされたのですね? それをすべてそこでは軍属と称しましたか? そうで
なければ先ほどおっしゃいましたね? 職責がそこではなんとかいう職責が
別途にありましたか?
階級は、階級は軍属のときは階級はなく、そのまま軍属という票を付けて。職
責は警防手だ、警備するひとということだ。

そこ北満洲はとても寒かったですか?
寒かったです。零下40度にまで下がったから。

では、そこでその部隊に行って、他になにかそこで物品のようなものをく
れましたか? こうなにか防寒服とか…
すべてくれました。

いっしょに行った人で同じ部隊、同じ部署に配置されて仕事した人もいま
すか?

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

275 

同じ経理部に勤務しました。経理部は同じでも行政がちがう。工場行政が。穴
掘りのところがあるし、選別するところがあるし、家を建てるところがある。そ
れにすべて配置されてします。月1回、会議もします。

月1回集まって何の会議、どこで集まったのですか? 
月1回、月1回ですね、会食する、会食。会食は内務班で会食します。将校がき
て演説し、なにか注意すること、注意を喚起することを注意し、なにをするこ

となにして。

その経理部に朝鮮人でなく中国人や他の人達も、日本人もいましたか?
おもに日本人です。朝鮮人は数人ぐらいで。全員日本人です。すべて軍人で
す。将校、私の部隊長はサキタニツネイチで、そこで大領です大領。ナナハチ
ゴブタイ(785部隊)部隊長です。日本人の言葉で大佐です。大佐。そして庶
務主任はイチダ 100)少尉です。イヤミ中尉は、技術主任。

その部隊に、朝鮮人は40人だけでしたか?
いいえ、もっといました。

その朝鮮人達は、おもにどんな仕事をしましたか?
おもに警防手。おもに車の運転手、トラック運転手になった人もいるし。車の
故障を直す整備手、整備手になった人が多い。はい、私たち40人中で約20人
が車の運転手、整備手です。車の運転手、整備手は本部勤務でなく全員が現
場に勤務します。

それでは本部には、朝鮮人はおよそ何人いましたか?

100) イシダなのかニシダなのか発音不明瞭。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

276 

本部には日本人がいて、その中で事務をみる人もいたし、まあそんなです。私
たちも合わせると約20人。前からきていた人と合わせて。

現場には、朝鮮人は何人ほどいましたか?
現場は100人ほどいたでしょう。現場が多いです。穴掘り、家を建てるところ、
選り分けるところ、またすごく工事現場がたくさんある。そう1部隊でここにも
あり、あそこにもあるというように。

では、その部隊内に寄宿舎はありましたか?
本部は軍人達がいて内務班があり、内務班が。身動きすらできない内務班が。
現場には幕舎みたいなのが建っていた、たくさん。

それでは寒くなかったですか、幕舎での暮らしは?

どうして寒い。すべて施設して暖かくしてある。

では、水やほかの物資などで不足するものはありませんでしたか?
それはありません。満洲は当時、私たちが行ったときは、関東軍の大部分は南
洋里(南洋)前線に行って。今や軍人達が足りなくなり全部、軍属が代理で仕
事したのです。はい、あちら満洲付近に私たちがいた間は、60年前にそこにい
た間、いた時は物資とかなにやらは十分でした。ありとあらゆるものがすごく
豊富だった。

軍人達は多くはなかったというお話ですが? 軍人達が不足していたと。
関東軍の一部は全員すべて南洋へ行きました。それを補充するため、そこの軍
属がすべて仕事をした。その満洲国の関東軍が南洋に移住した後、兵隊の大部
分が行ってしまって抜け、ふつうの今やもう日本からもおおぜい来た。

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

277 

部隊内で、もしや日本語が分からずに聞き間違いしたとか、さもなければ
他の理由で、もしや日本人から殴打されたとか過酷な行為などにあったこ

とは全然ありませんか?
ありません。

それでは食事はどうでしたか? どんなものをおもに食べましたか?

どんなものって、なに米飯ですよ、まあ。内務班では、ずらりと並んで食器を

置くと、おかずをくれ飯をくれてそうして食べた。おかずはサツマイモのよう
なのがおかずだ。きっちり量って、量ってくれます。たくさん食べようとして

も。目配せしてたくさん欲しいと言った。こんな平たい容器に飯をきちっと盛
ってくれて、それでそれ以上はたくさん食べられないになっていた。

空腹になったとか少しそんなことはまったく無かったですか?
ええ、ええ~、そんなこと。ありました。

もしや、勤務していた内務班の施設がどうであったか覚えていますか?
内務班の施設はひどいものでした。部屋があって。部屋がまあ、いうならまあ
火も焚いてボイラースチーム、スチーム、スチームそれで沸かして。それは熱
かった。施設はひどかった。

もしやその部屋は、タタミ部屋でしたか?
そうです。すべてタタミ部屋。

その部屋の大きさはどうでしたか?

5人が一部屋に。 

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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勤務時間は何時から何時でしたか?
朝6時起床。洗面、食事して7時に点呼。点呼後すぐに勤務。午後6時まで。

では6時まで仕事をして、その後の時間はどのように過しましたか?
その内務班にきて集まって、集まって飯を食べ、寝て、また日直の人は日直し
て、宿直の人は宿直する、そんなです。

はい。風呂の施設は良かったのですか?
その内務班の中に風呂がありました。浴場と浴場施設は良くできていました。
そこもスチームのようなのが入っていて暖かい水もよく出るし。けれど化粧
室、小便大便するところ。スチームを入れないとできない、寒くて。凍って凍
えて、大変なことになる。

7時から6時まで勤務し、6時以後の時間は、ずっと自由なほうでしたか?
その食事までは自由ではありません。内務班で食事はきっちり命令どおりにし
ます。命令でしなくてはいけない。で、6時にきっちり終わり、風呂に入って飯
を食べ、いうなら食後は自由時間です。

夕食は何時でしたか?
6時。6時に終わり、風呂に入ってすぐ食事します。

外出はどれぐらいされましたか?
外出は日曜日。またはあの国慶日の日。あ、日本の奴国慶日だけはしてくれる。
特別にまた自分がどこで何を買いたいといって、酒保101)という酒保。ソ、ス

101) 酒保:酒を売る人の意味に由来し、兵営内あるいは軍艦内で日用品、飲食物などを取

り扱う売店。

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

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ボ、軍用品を売るところがある。他のところでは高いが、そこは税金を免税す
るからとても便利なのだ。なにかを買うときは外出許可をもらい行った。酒保
はそのまま部隊の司令部のなかに酒保がありました。大きいのがあった。

司令部内にあるその酒保、そこで軍から受け取った月給で自由に物品を買
えたのですね?
行くとなんでもあります。百貨店です。

そこで、月給はひと月いくらぐらい受け取りましたか?
その当時の月給は170円か、60円だったかをもらいました。

170円か160円? それでは160円か170円ですと現在の金に換算するといく
らぐらいになりますか?
現在もくれると、300万円か250万円程度でしょう。

それをどのような形で受け取りましたか、月給を?
会社でその封筒でくれます。全部。

そのお金を受け取りおもにどのように使われましたか? 家にも送金しまし
たか?
それは私が、私が使いたいだけ使ってから貯めておいて、あの旧ソ連だったと
きにそれを集めてまたこれはそのままボーナス***スコロ タイ102)ですよ、ボー

102) ロシア語でスコロ タイ(ckopo дaй)はよく使われる表現ではなく、しいて韓国語に

翻訳すると、“すぐ、くれ”程度に解釈できる。いうまでもなくボーナスが早くほしい、と
いう意味で使われる表現は、ヴィストレイ プリミユ(дaйбыстpей пемию)の
程度となるが、ロシア語が上手でない口述者が、“スコロ タイ”といった時にお金を受け
取ったので、口述者はその文章をそのままボーナスという意味に思ったようである。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

280 

ナスをくれる。30、30円ずつ送るとそれをためて900円を貯金したのです。
 
あ、この900円を? とても多くされましたね。ではボーナスはいくらほど受
け取りましたか?

うん、1ヵ月にボーナス30円。ボーナスといわずに、賞与金といわないで間食し

なさいという、間食を。食べたい食べ物を買って食べろ。それで毎月30円ずつ
月給以外に別途くれました。
 
そうすると当時としてはとても大金でしたね。とても大金でしたでしょ?
その当時にどうして大金ですか、その当時。最近の公務員の月給が300万円か
ら250万円程度。その当時はその程度になるかもしれないが。大金ではない。

先ほどの外出したときですが、誰に許可を得なくてはいけませんか?
直属の所属長に。経理部に部隊長まあ庶務、庶務主任じゃなく、自分の6人な

ら6人、10人なら10人がいっしょに勤務するその所属長です。

その所属長は日本人でしたか?

日本人。朝鮮人のわけがないでしょう。

200円ほど受け取っていましたね?
それぐらいです。そして先ほどその中からこれを差し引いて、また受け取る前
にまたなにの宴会費と、ひとが行きます、いわばそこに少し、少し高位の人が
ひとりくると送別会をしてあげます。それもその月給から差し引く。その送別
会の金がたくさんかかります。内務班で、食べ物は内務班で準備し、金はまた
私たちが出して、そう。内務班でしてその内務班長がすべて購入した品名を記

して、月給からきっちり差し引きます。酒は正宗を飲んだから。すべて正宗に
したから高い。

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

281 

もしやそうして貯めたお金をここにすべてこのように貯蓄して、もしや現
金で所持されていたのはなにもありませんか?
解放になって出てくる時は、捕虜収容所から出てきたんだ。金はすべて押収さ
れ、私が持っていた金は20円ありました、20円、ハハハハハ。

おじいさん(ご老人)、その部隊の捕虜収容所にいつからいつまでいまし
たか?
捕虜収容所には3日間しかいませんでした。

あ、3日間しかいらっしゃらなかった?
はい、あ、ですから。私たちは奉天の四平街103)でソ軍の捕虜になりました。で
すが解放になっていたのにそれも知らなかった。それで汽車、無蓋104)汽車に乗
せられ、奉天にきてそのまま捕虜収容所から出ると解放になっていたのです。

捕虜収容所へはどのように行きましたか? 誰かが連れていきましたか、そ

こへ?
ソ軍の捕虜になったじゃないか。

ソ連軍捕虜に? あ、ではその部隊の日本人はすでに去っていませんでした
か?
だが、その部隊長と全部みんあそこで私たちはあのもう、無蓋車です荷物を運
ぶ無蓋車、石炭も運ぶその上にはこんなのがある。天井を覆っていない汽車、
無蓋車に全員我々を捕らえ乗せた。そしてそのまま来て、そうして来て捕虜収

103) スーピンジェ(四平街):現在の地名はスーピン(四平)、Sipingで中国チーリンショ

ン(吉林省)西南部にある都市。

104) コペ:屋根のない汽車、車の慶尚道方言

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朝鮮という私たちの国があったのだ

282 

容所に入ってきたのだ。

ではその部隊の日本人は、すでに逃亡していなかったのですか?
まあ、ただ、なに。日本の奴は全部すべてまあ。だが日本の奴で現役は、この
星たちは現役は全部すべてその捕虜となって出てこられなかった。捕虜収容所
に入るとモスクワから来たという朝鮮女性がだ、演説したんだ。朝鮮人たち、
全員出てこいと。それで私たちが出て行くと、太極旗をくれながら、模型をく
れながら太極旗を描いて付け、名前を韓国人名を書け、と言った。これを付け
ろ、そうして、その女性が演説した。西塔105)へ行くと飯も無料でくれるし、ま
た出て行くのも全部すべて無料なのでそうしなさいと。それですぐ、西塔に行
って解放になったことを知ったのです。

はい。ですが、もうその日本人達は逃亡していなかったのですね?
逃亡は誰ができるのです? 逃亡する余裕があったものか? 軍人達は全員出て
こられなかった。捕虜となり。

ソ連軍は、その部隊内の軍属達、軍人達全員をその捕虜収容所へ連行し、
ソ連軍が連行したということですね。捕虜収容所までは。そしてそれは先
ほどの列車に乗って行った、ということですね?
その無蓋車に乗って。そのままもう捕虜になった。ウム、だから、あの遠いとこ
ろからソ連軍が機関銃鳴らしたので身動きもできなかった。ウム、それでそこ
にソ連軍が乗ったまま奉天駅に到着して四平街で。奉天駅に到着し、奉天駅か
らそのまま無蓋車でそのまま捕虜収容所へいっしょに入ったのです。

では捕虜収容所は、奉天の近辺にあったのですね?

105) 中国シェンヤン(瀋陽)のシーター(西塔)

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

283 

捕虜収容所は、奉天のキュウハチロクブタイ106)という飛行場です。飛行場。キ

ュウハチロクブタイ、キュウハチロクブタイ飛行隊、飛行隊。そこへ数千人、

数万人が捕虜になっていたのだ。そのままたくさんテントを張ってです。

ではそこに集まった捕虜は、およそ何人程度いましたか? 何万人でした
か?
少なくとも奉天、そこには少なくとも数万人、なにまあ分からないが。それはまあ
数万人はいただろう。私たちその時数万人いた。日本人が死んでですね、入れら
れ死にました、自殺してです。そうしてまあ、そのまま、死んでしまうとちょうど
その横が飛行場なので、広かった。そのまま掘って埋めました、そのまま。
 
そこに入ると、滑走路に全員すべて捕虜がこうずらりと座っていたのです
ね? つまり日本人もいるし、朝鮮人もいるし、全員いっしょで?
そうです。だから朝鮮人達はそこにきっちり入れられて、不安な気持ちでいた
が、モスクワから朝鮮女性、背が少し高くて制服を着てさっと現れ、朝鮮人が
いるなら出なさい、と。そういってすべて放送したんだ。それで。だから朝鮮
人は全員行った。すると日本の奴がですね、朝鮮人だと。そいつがたくさん出
てきました、日本の奴の軍属達が。軍属は日本の奴らも出ました。現役だけそ
こから出てこられなかった。だから私たちが先に出てきて、日本軍属は全員審
査を受けて出たでしょう。

満洲のこの部隊にいらっしゃったとき、関東軍にいらっしゃったとき、もし
や慰安所が部隊内にありましたか?
そのときチチハルに慰安所、それは経理部所管です。経理部所管だがこの慰安
所にモプ、日本の奴モプ、モプ、モプです。日本の奴の軍隊、軍用モプがある。

106) 986部隊:奉天にあった7陸軍拘禁所

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朝鮮という私たちの国があったのだ

284 

モプ。あの化粧紙、コットン107)、その慰安所で必要な軍用品(を)その、経理部
で供給します。それでそのチチハルに慰安所があって、第1慰安所、第2、第3、
第4、第5慰安所。5ヵ所あります。第3慰安所までは日本の奴、全部日本の奴が使
用し。いいや、第2まで日本の奴が使用した。第3、第4、第5は朝鮮女性が全部当
時に。そうして第1慰安所は将校しか行けません。その第2慰安所は下士官、上
士ということで、近頃ならヘイチョウ108)とかゴチョウ109)とかで、ですが兵卒達は
第2慰安所と第5慰安所を使用する。そのまま自分の思いどおりだ。将校も朝鮮
女子達のところに来ることもあるし。ええ、それは自分の思うまま。
 
おじいさん(ご老人)も、そこへもしや行かれたことがありますか?
私は供給しに行きました。はい、その化粧紙、そういう類のものを配りました、
その、その時は食べ物が希少で全部配給でした。配給物品を運び、慰安所に供
給に行きました。

するとそこへ化粧紙。コンドーム…
コンドーム。またカゴとか、貴重品があるでしょう。日本の配給品。社会で使う
配給品、その当時、あれこれ、そういうものを供給する。

はい。ではもしや1から5慰安所まで、すべて行かれましたか?
行きました。その市内に第1、第2、第3、第4、第5慰安所。そこは憲兵がおも
に憲兵が管理します、慰安所は。

憲兵が管理するのですか?

107) コンドームを指すようである。
108) 兵長
109) 伍長

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

285 

そう、満洲人がよく来ます。満洲人がくるとあの性病が、病気がすごく蔓延す
る。あれこれつく。その病気を防止するため。満洲人が絶対にこられないよ

う、外国人が絶対にこられないようにした。その、その機密が流失するという

のだ。日本人憲兵がそこを監理もし、歩哨も立ち。

はい。そこの慰安所に女性達は多かったですか?
ひとつの慰安所に約20人から30人。もっとも小さいところは15人。

人々は慰安所をたくさん利用しましたか?
あの日本の奴の天皇。天皇。その4月29日がケンチョウセト110) で公休日だっ
た、天皇誕生日111)だった。その時は良い日です。公休日です。その時は部隊に
いる軍人たちが全員すべて出頭しました。その良い日だから。日本人天皇誕生

日だから。慰安所にずらりと列をなして列、ずらりと列をなして立っている。そ

れで私が配給品を持って行って聞きました。慰安所の中でも一番の、いうなら
その管理責任者がいる。その慰安所女子達が悔しいこと辛いことなどを、その
慰安所を管理(する)人に言って憲兵隊に言って苦情をそうした。それで聞い
た。それなのに、その日は4月29日の日は、列になってずらりと並んで、ひとり
の女子が58人を受け持つんだ。ええ、それが最高、そしてその女子が、それ以
上は受け持てないと言うんだ。

誰からそんな話を聞かれたのですか?
軍人達。

110) 天長節(てんちょうせつ): 天長節(テンチョウセツ)を誤って発音したようである。第2

次大戦が終わるまで当時在位した日王の誕生日をさす名称。

111) 前日本天皇裕仁(昭和)の誕生日

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朝鮮という私たちの国があったのだ

286 

その日58人の軍人を受け持ったというのは、日本人女性や韓国、朝鮮人女
性も同じですか?
その日は、とても将校や下士官や兵卒たちで、もともと人数が多いからだ、う
ん。それは朝鮮第3慰安所でそんなことがありました。おもに、その慰安所を経
営する人達は請負業者だ、請負業者。朝鮮人は朝鮮人で請負業者が募、募集

してくる。あのソウル、ソウルや国内の遊郭あるじゃないか? 遊郭の娼妓。

その人達をすべて連れてくる。殴られ殺されて。

そんな話を聞いたのですか? 運営したひとはつまり朝鮮人ですね?
朝鮮人。日本の奴も全員すべて日本で娼妓だったひと。朝鮮人もそう。

遊郭で募集してきたという話は、その慰安所の運営者から聞いたのです
ね? その女性達に直接物品を配りながらその人たちの顔をご覧になった

こともあったということですね?
まあまあ、娼妓達はまあ可愛いいのもいるし、まあそうでないのもいる。ホホ。

年齢は何歳ぐらいにみえましたか?
おもに30歳以下だよ。30歳以上の人はいない。

もしやおじいさん(ご老人)と話を交わしたことはありますか? どんな話
をその人達はしましたか?
まあ、話まあまあ、ほかの話がありますか、身世打令だよ。

ではどうして自分はここに来た。そんな話をする人はいましたか?
はい。親友にだまされ自分はこうなってしまった。大部分が親友にだまされそ
のまま…

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

287 

その人達に、その慰安所へ行っても良いという利用券を切ってあげました
か?
慰安所は切らない。自由に。金1円だ1円。

1円渡すと慰安所を利用できましたか? あ、その利用者はおもに軍人達で
したか?

おもに軍人達、軍人、軍属。

慰安所は、部隊内にありましたか? 外にありましたか?
ええ、慰安所は市内。車でしばらく行かないといけない。

その慰安所は、軍隊で運営する慰安所でしたか?
ちがう。司令部で運営する。そのチチハルにその第3方面軍司令部がある。そ

こへ軍人達のためにそういうのを設置したんだ。

3方面軍司令部で運営した、という話はどのように知りましたか?
私達は経理部にいてその供給をした。石鹸やコンドームやモプとか。

慰安所責任者は日本人でしたか? 韓国人でしたか?
いいや、朝鮮人慰安所は朝鮮人が、日本人慰安所は日本人が。

おじいさん(ご老人)、もしやそこへ最初に行ったその部隊ではなく、他
の部隊へ移動したことがありますか? そのまま最初に行きずっとその部隊
におられたのですね?
はい。そうだ。その部隊内に。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

288 

その部隊内に継続しておられて。そしてご老人、その貯蓄があるではあり
ませんか? それを貯蓄するときその部隊内にこんな郵便局がありました
か、別に?
その司令部の中に軍事郵便係がありました。私達の部隊内ではそこでは取り扱
いしません。その司令部内に。

受け取れずにそのお金を誰かが自動的に差し引き軍事郵便局に自動的に
貯蓄するようにしたということですね?
ですが司令部内にこれを取り扱う課があります。貯蓄してからいうなら逓信庁
へ行くんです。

この郵便貯蓄を担当する部署、司令部内はどんな部署でしたか?
ひとが4、5人座って仕事するところ。なに課だったかな、それ、経理課かで受
け持ち逓信庁へ渡すんだ。

先ほど捕虜収容所にいらっしゃり、40何年度に帰ってきたとおっしゃいま

したが?

45年8月25日だったか、24日だったかはっきり覚えていません。そうして捕虜
収容所から出て来たんだ。

出て来るとき、もう出てよい、という許可証のようなものを受け取りまし
たか? それともそのまま捕虜収容所から出たのですか?
朝鮮女性がソ連モスクワから来たと言って、全員朝鮮人たちは出て来るように
と言って。ここに太極旗をつけ名前をつけ、それで全員が出て来たから、その
まま続々と外出証なしで出るようにした。それで出てから西塔に行けば、西塔
というところへ行けば、全部すべて受け入れることになっているから、そこへ
行きなさいと。奉天に西塔というところがあります。

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289 

では西塔へはどのように行きましたか? 何に乗って行きましたか、西塔まで?

西塔まではそこからそんなに行きません。歩いて行く。距離は約、約30分以
上歩きました。それで西塔に行ってそこには朝鮮人村があったようだったが? 
全部朝鮮人が住んでいるところ。その西塔に朝鮮人連盟があると。

はい。朝鮮人連盟。新義州行きの列車票を全員に1枚ずつくれましたか?で
すがこれに見ますと、45年10月と、おじいさん(ご老人)は45年10月にその
汽車で新義州へ行かれた、とありますが? ですがおじいさん(ご老人)は先
ほど8月25日とおっしゃいました、8月ですか? それとも10月ですか?
西塔でだから1ヵ月ほど滞在したんだ。あまりにも人がおおぜい押しかけたの
で順番で部隊にして汽車に乗ったから。宿舎は学校の教室をあけて教室に100
人、200人が寝たんだ。

奉天駅から新義州まで行ったのですね?
奉天から新義州のそこ 丹東 (関東)、丹東 (関東)といって、新義州の対岸に 丹
東 (関東112)、 丹東 (関東)あるでしょ?そこまで汽車で行って下車し、そこから
歩いて新義州鉄道まで歩いて新義州まで行きました。橋まで歩きました、鴨緑
江橋へ。鉄道を歩いて新義州まで来ました。その新義州にくると新義州に朝鮮
人連盟がまたありました。そこで全部配置で(配置を)していて飯も無料でく
れ。そこへもう新義州までほとんどくると。治安隊、特別治安隊は憲兵で、た
だの治安隊は警察だ。その警察が指示しました。お前はどこへ行け、そのもて
なしの酒と飯をいただいて食べてだ。

朝鮮人連盟で特別治安隊を運営していたのですか? では新義州ではどれ

くらいいたのですか?

112) 関東:関東をわが国の漢字音で読んだ名。 翻訳者 *当時は安東、現在の丹東では?

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朝鮮という私たちの国があったのだ

290 

新義州ではそこに約10日いて、仁川で物資を運んで38線でぷっつり途切れて

しまって、うまく越えられない。それでその夜に、仁川から物質を運んで新義

州まできて船に物資をおろし。その憲兵隊で行けない、としっかり捕まえるか

ら、こっそり夜に私達全員はその船に乗船して、夜にこっそり逃亡して仁川に

着きました。私が仁川に、その松林洞に行ってみるとその家の主人も、私が下
宿していた主人も爆撃を受けて。ハハハ、飛行機に爆撃され家が壊され、その
付近に全部疎開していました。疎開を。家を家がすべて壊れてどこかへ行って

しまっていた。とても言葉ではいえない。私が通った会社もどこか行ってしま
って無くなり。う~ん、それでもうソウルへ、ソウルまでまた汽車の切符は無

料で、仁川連盟で無料の切符をくれました。それでソウルまで汽車できて、ソ
ウルから釜山までまた無料の切符をくれた。うん。それで釜山にきて馬山まで
無料の切符をくれた。それで馬山まできて巨済島に帰ってきました。馬山から
船に乗ります。船に乗るのは切符で乗船して、金を渡して。

そのとき家に、巨済島に着いたのは何月頃でしたか?
だから9月か、陰暦9月頃だった。

そうすると10月頃ですね?

うん、そうです。

家の状況はどうでしたか?
家の状態はまあ~あ~なに~、ひどかったその時。その時の状況はまあ最低だ
よ。自給生活でした。農業を少し耕して。家族が少なかったから。

おじいさん(ご老人)も農業をされましたか?
できないです。したことがないから。

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金顯沂直ちに行け、といわれたら行くのです

291 

日本に徴用で行ってきて、最近までは農業で暮らしを立てていましたか?

家にいて面議員もしたし面長もした。生計を少し立てた。ハハハハハ。教育議
員もしました。そうして歳月を送りました。 

軍属から帰ってきてから、その時の生活で一番記憶に残ることはありますか?
一番の記憶は、とりたてて記憶はないけれど、結局もっとものんびりしていたの
は、ソ連飛行機が爆撃したときに後退しながら、トラック113) の上に飛んできたの
で爆撃を避けて草原に寝て、私が死ぬときはどんなふうに死ぬんだろう、とそれ
が、ハハハハハ。捕虜収容所に行く直前に後退しました。後退して四平街のその
村に行って汽車に乗りました。奉天に四平街があります。シヘイガイ、そこから
汽車で、汽車、無蓋の、上に屋根がない無蓋に乗ったんだ。それに乗ってその四
平街に。ソ軍が攻撃して遠くからしっかり包囲されて捕虜になった。

おじいさん(ご老人)、先ほど後退するときに無蓋車にどうして乗られた
のですか?
もう後退だから汽車に乗ってその後方へ後退しなくてはいけなかった。日本軍
にソ連がタンク114)で攻めてきたのです。四平街で就寝していて、そこで前方を
ソ連軍が遮断してしまったのだ。それでたちまち捕虜になってしまった。ソ連
軍が近くまでまだこずに、遠方から銃撃していたんだ。8月7日か8日、そこ四平
街に来た。

113) トラック
114) ソ連タンク

面談者_チャン・ミラ調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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金甲天あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

293 

金甲天

創氏名

金田甲天

1922.4.4  全北 群山市 助村洞 生まれ
1942.6        

陸軍 捕虜監視員として動員され 釜山西面野口部隊で訓練

1942.8   インドネシア パレンバン捕虜収容所 捕虜監視員として動員
1945.8.15    解放後 シンガポール チャンギ刑務所に収監
1945.秋     帰還

あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

おじいさんが捕虜監視員として行った背景、どうして行くことになったの
か…
それは、それは昭和13年、私が23歳だが、私は中学校を中退しました。2年
生。生活がもう困難で。日本の奴、大東亜戦争のとき、いうなら日本の奴の店
員でした。私は日本語が少しできましたから。そこで日本の奴は大東亜戦争が
勃発して、行くなら行け、と日本人が。そんな人達は行くものだと。

どこにいたとおっしゃいましたか?

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朝鮮という私たちの国があったのだ

294 

日本人の店舗。そこは食料品などを受け取り配達のようなことを。当時、日本

人につかなければ、どう食べて生きていけるんだ。

ですが、誰がそう勧めたのですか? 捕虜監視員として行く考えがあるのかと?
それは義兄がひとりいますが。その方も亡くなりましたが。その義兄が私に行
く意志があるかと。日本人が来て、あれこれするから軍人として行くよりも、そ
のほうがましでないかと。

 
そのような話を義兄がされたのですか?

はいはい。それでそうしてそのようにした。群山から200人ほど行きました。

群山から行って、その200人が釜山に行き現地に配置されたのは7人しか
いっしょに配置されなかったのですか?
私たち、いわば助村115)チョンウ116)から友だち7人が行きましたが釜山で合同し
て。各地から200人も来ていました。もう何千人来たか分からない、捕虜を監視
するひとが。それが釜山で、部隊でそれぞれ大きな船のあるところへ行って7階
か8階あった。夜だけ行く、夜間だけ。昼間は行かないで。それから飛行機に乗り
夜だけ。昼は行かない。ええ、ひと月ほどかかったはずです。シンガポール。

船の名前は分かりませんか?
分かりません。名前は分かりません。

では釜山で乗船してどこへ行きましたか?
釜山で乗って、あの台湾だったか? 台湾を通過して今の越南はどこ? どこ

115) 当時、口述者の居住地の村名。
116) 全羅北道井邑の井宇面をいうようである。

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金甲天あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

295 

だ? サイゴン! サイゴンへ行って一晩
泊まって、そして夜だけまた何処かへ
行った。そしてもう、そこから熱帯地
方なのでとても暑くなり、船酔いがす
ごくして。そこのシンガポールからず
っと行って1ヵ月間、まともな状態では
なかったです。

乗船したとき、日本とかあちらの方
面から来た人はいましたか? さもな
ければ、がらんと空いた船に乗りま

したか?

からっぽの船に乗りました。からっぽ
の船だけれど、船底には彼らのなにか軍用品などをたぶん積んでいたようだ。

トラックのような、そんなものを載せて、大きな船だった。6千トン級の船。も

のすごく大きいです。そこでご飯もすべて水兵たちがつくってくれました、つ

くって。カンパン117)で寝て、船底で寝たまま、行くときは1ヵ月かかったけれ
ど、来る時は1週間しかかかりませんでした。昼夜ずっと走りっぱなしで。釜山

にくるのに10日ほどかかりました。釜山でもう1日、船で寝て消毒してから夜10
時頃に家に帰りました。

ええ、それでは釜山から出発して到着したのはどこへ…
シンガポール。

シンガポールですか? ではシンガポールからいつパレンバン…

117) “甲板”のようである。

臨時軍人軍属届

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朝鮮という私たちの国があったのだ

296 

シンガポールからすぐスマトラパレンバンへ、また派遣されて行きました。

では到着してまもなく配置されたのですか?
そこで、あれやこれや1ヵ月以上、はい、配置も日本人にされるまま、なに私た
ちはじっとしています。そのシンガポールからスマトラに行くのも、とても遠い
です。1日、2日たっぷりかかりました。

その時、スマトラに行く時は何人でしたか?
私たちが行ったのは60人。一小隊といって。私がいたところは60人。60人で
インドネシアと黒人たちもいて、さまざまな人種が暮らすところじゃないです
か、そこは。まあ日本の国旗をもって歓迎されましたよ。日本が占領していた
から。捕虜***監視、ポリョ(捕虜)たちはそのまま全員がテントにいました。ヤシ
の木の葉をとって、そこは暑いから1年12ヵ月。暑いから蚊がいるし蚊帳もちゃ
んとつるした、捕虜たちは。そこに約20人いました、捕虜が。あとからまた連
れてきて、なにか働かせるため出て、またこちらに行ってなにをして、タイ国
へも行き本島、日本本島に行っても捕虜に仕事をさせて、なんだかそんなよう
でした、働かせて。

捕虜を本島や他の地域に送ったのですか?
はい、はい。仕事をさせるため送りました。

では、シンガポールに1ヵ月ほどいてこのように配置されたということです
が。パレンバンへ直接、配置されましたか?
はい。直接、配置されました。そこだけにいました。

スマトラもメダンとかいろんな場所がありますね。あちらへ行った人とい
っしょに移動せず、分かれてパレンバンの人だけが移動したのですか?

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金甲天あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

297 

はい。そこだけ60人と小隊長日本人ひ
とり、中尉といってひとつ、ふたつある
のと。日本の中尉で星がふたつ、それ
とコチョン(伍長)とかでひとつがいる
し。ヘイチョン(兵長)がひとり、軍隊と
はそう。その時は、その中隊がどこに
あるかも知らないで。それから私たち
を小隊に配置しその捕虜を、監視はテ
ントだけにいましたから。パレンバン
市内の外出を一回して。そこで2年ほど
してから、もう日本が敗戦し不利だと
いう噂があり、捕虜がそういう話もし
て。日本捕虜、いうなら捕虜機が食糧
をたくさん落としてくれる、ちゃんと
書いてあるここは捕虜収容所だと、そ
れで飛行機からみて続々と品物を落としてあげるのです。捕虜に食べさせるた
め。薬品のようなもの。解放後、日本が敗戦したと同時に連合軍がそのように
して送ったのです。だから捕虜達はとても喜んだ、死ぬほど喜んだ。そして韓
国人は絶対に害を加えることはしませんでした。その時まで武装解除もされな
かった。連合軍が入ると同時に武装解除させた、それでもう私たちは。現地の
インドネシア、とても騒々しくなった。そして連合軍が入ってくると私たちはも
う収容所へ、チャンギ刑務所118)へ全員入れられました。そこでそうして日本が
敗戦降伏し、連合軍がきたのも1年経ってから入ってきました。そのぐらい1年
以上かかりました。

118) チャンイ(changi,日帝時期はチャンギともいった)刑務所:第2次大戦中は連合軍捕虜

収容所として使用され、終戦後は日本軍が収容されたところ。BC級戦犯裁判で韓国(朝
鮮)人、台湾人を含め130余人が処刑された。

捕虜監視員 配置 経路

(図出処;ハンギョレ21)

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朝鮮という私たちの国があったのだ

298 

そんなに長期ではありませんが、ご記憶ではそうなのですね。
ちがいます。そこは連合軍がおそく入ってきました。

ええ、いずれにしても遅れて入ってきました。
捕虜をただちにそれぞれ連れて行った、すぐ。患者だったから。

ところで捕虜収容所に監視員として配置されたとき、日本軍人たちもいっ
しょに配置されましたね? 中尉という人、中尉の名前はご存知ですか?
マツオカと。

ではマツオカが、あの釜山からいっしょに行ったひとですか。あるいはそ
のシンガポールで?
釜山から釜山からいっしょに行ったひとです。私の記憶ではマツオカ、松岡、
マツオカフサク、私が知っていることは。

捕虜収容所は、どのあたりにありましたか? そのパレンバンのどのあたり
にありましたか? パレンバン市内からかなり遠いところでしたか?
すこし遠いです。そう。そこから車で30分ほどして市内に入ります。かなり離
れたところの建物です。

では60人が行くまでは、誰が監視していましたか? 日本軍が?
分かりません、それはよく…誰が監視したか分かりません、そのことは。

ところで、爆撃は多くはなかったですね?
いいえ、3,4回ありました。だから丸く掘ってさっと入り、帽子だけ毛の帽子を
かぶり、それから穴の中に入ってこう見ると飛行機の空襲だった、数回。

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金甲天あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

299 

捕虜たちにも防空壕はありましたか?
いいえ、捕虜たちはなかったです。捕虜収容所と大きな看板を掲げているの
で、飛行機からはそこへ落とさない。爆弾を落とさない。市内を少し行くとパ

レンバンで石油調査をしました。そこが石油、石油のボラウジ地区 119)のよう
だが。大きな車があった。飛行機が飛んでくると、そこへ数回来ました。あの

空襲が。数回きてB29といったが、見ても(見えもしない)のに音だけが聞こえ
る、少し。その飛行機がつまり物資を運んできて、そうしました。

解放になった時、聞くところによりますとスミス少尉という人が、英国軍
が先に入ってきたという話をしています。パレンバン方面に。そうして、
最初にその捕虜監視員であった方たちをそこに収容すると、パレンバンで
そうして、朝鮮人だけを集めるという動きがあって、朝鮮人たちが集まる

ところにいっしょに集めることになったという話をしていますが。
はい、はい。それは解放になって、私たち朝鮮人は朝鮮人だけいましたが、私
たち朝鮮人はマークを付けた。それも太極旗を、手を尽くして中国華僑団が私
たちの力にすごくなってくれました。太極旗もそこで私たちがつくりました。

太極旗がどういうものか、それも知らなかった。ですが朝鮮人は市内にいるの
に、絶対にしてくれずに。それでそこの中国華僑団が、こう私たちに教えてく
れたのです。今、38線で分かれていることも教えてくれ、金圭植政府がどこに
ある、そんなことまで中国人が教えてくれました。

そこの中国人と会ったきっかけや、捕虜監視員でなく他の日本の会社にい

119) バリクパパン(Balikpapan):インドネシア・カリマンタンチモール州(東ボルネオ州)に

ある都市。ボルネオ島の最大石油基地のひとつでバリクパパン湾の内側に位置。20世
紀初に奥地のサンガサンガ油田が開発され、その積出港として急速に発展。油田からこ
こへ送油管が附設されており、海岸には巨大精油所が多数。ここの石油業は第2次世界
大戦前からオランダ系人のBPM会社が大きく左右している。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

300 

た朝鮮人や船員や慰安所にいた女性たちが、いっしょに一度集まったこと
はありましたか?
それは、ええ、はい、ありました。それは車を待っていたときですが、収容所へ
また行って、チャンギ刑務所ですが、大きなそこへ行ってみると、朝鮮同胞収
容所と書かれてありました。行ってみると慰安女、慰安女は慰安女でたくさん
女性達がいて、いっしょに入って待機していました。監督番号をひとりずつ渡

して。そこは待機、待機室です、いわば。帰国させる人たちの待機室。そこで

慰安女にも会い、一般の人たちで連れてきた人とか企業体のまあ小さな、とも
かく全部すべて収容所にいました。そうしてそこでも約20日以上、1ヵ月ほどか
かりました。その番号順に続々に出ることになりました。

どのようにして捕虜監視員だけのところから、朝鮮人だけいる場所へ移っ
たのか覚えていますか?
その人たちが全員みんな、そこへ車で行ってみると、そう書いてあったそうで
す。そこへ送ったとのことでした、そこへ。

朝鮮人がいた場所で、自分の故郷とか名前、こんなことをたくさん書きま
せんでしたか?
書きました。けれどもそこで以北の人は南韓へ送らない、ということだった。
以北の人は以北へ送る。以北の人も多数いました。

収容所にいたとき、その女性達がおおぜいいたでしょう? その時の状況を
少し覚えていらっしゃったら少し…
集合した収容所にどの程度かというと、ともかく南方のあそこにいた女性たち
は、慰安所は全員がそこに集まりました。集合所だったから。車120) は埠頭から

120) ‘収容所’のようである。

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金甲天あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

301 

そんなに離れていなかったです。大きな船が入ってくればそこからいくらも離
れていなかったです。約100メートル? それくらいしか離れていません。

はい。では、その収容所にいた人たちはどんな人たちで、何人くらいでし
たか?
それはよく分かりません。何人いたかは。女性は女性でいたし、男性は男性で
別にいましたから、そこでも。そこでは自由に好きなようにつくって食べて、そ
んな草地で草を取って食べ。そのまま米を少しずつ、飯を少しずつくれると、
そこでめいめい簡単につくって食べました。

そこへ集まった女性たちは、どんな女性でしたか、それを覚えていらっし
ゃいますか?
おもに慰安組(女)が多い…

おもに慰安組(女)ですか? すると他の人もいましたか?
そこへいっしょについてきた、あれはなんというか商売人、そんな人もいたよ

うだ。そうだな、どういう商売かは分らない。女性の商売じゃないかな?

女性の商売? すると一種の業者ですね。
そうだ、それは。

慰安婦ではないけれど、ともかく慰安所に関係する女性のようだった、と
いうことですか?
そうです。はい。よく考えてみると、そうだったようです。はっきりはしない
が、そうでなければ、そこまで来るどんな必要がありますか? そうじゃありま
せんか? 軍人じゃないなら軍属なのだから。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

302 

外出するとき、パレンバンは大都市ですよね。大きな都市で、朝鮮女性で
ほんとうにこんな女性商売でなく、ほんとうに一般の商売とか、さもなけ
れば商業する男性、男性が夫である女性とか、そんな女性…
そんな人もいたようだ、いたし。日本の奴は日本女性がついて来ました、慰安
女。日本の奴は日本の奴しか行かれない。朝鮮のところは行けない。朝鮮人
だけが行く。そこに商売人たちも少しいたかもしれない。そこまでは分からな
い、私たちは。

朝鮮女性で、パレンバンでそういう仕事ではなく、他の仕事をしている女
性に会ったことはありますか?
それは会いませんでした。朝鮮女性がそうなら、朝鮮女性なら、ほとんどおも
にその女性だけです。そこに行ったのは。そこで商売とかはありません。

日本女性が少し多いですか?
日本女性はそれほど多くありません。私が、私たちが行ったときは朝鮮慰安婦

が約30人いました。しかし日本の奴、日本の女は別にいたがそれは少なかった

と思います。

30人いたというのはどこで、30人。つまりパレンバンにいた?
ええ、女性は約30人いたようです。私は見ましたから、そこに来た女性。女性
たちも涙をながし騙されて来たと言っていた。ひどいあの日本の奴らの時代だ
ったから、身動きもできなかった、あいつら軍人の相手をしろと。ただそのこと
だけ知っています。他のことは、市内へむやみに行けないから。

市内もむやみに行けなかったですか?
はい。行けません。危険なので。敗戦後に日本の奴らも大勢そこへ逃亡し、あ
のインドネシアが、最後にはただ市内に入ってくると殺したりしました。むや

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金甲天あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

303 

みに出られなかった。夜間は絶対に出られないし、昼間にどこかへ行ったりし
ました。品物を買うところもなく。

捕虜監視員をされるとき、つまり日本が敗戦する前、そこはどうでした
か?

日本が負ける前は市内に出かけました。大丈夫だった。なんでも食べ物、バナ

ナのようなものも、今ならここの金で10円出すとこんなにくれたので食べて。

その時は、おもにどこへ行きましたか?
行くところなんかないでしょ。

そこで娯楽とか…
ありません、何も。はい、ただ行って、そのまま少し慰安婦のところに行ってそ
のまま帰ってきます。それも時間でそうして。

何人ほど、そうして行きますか?

1回出ると部隊ごとで、私の部隊は15人。60人だと外出は15人ずつ? 10人? 
そこを守らなくてはいけないから。全員は外出できないじゃないですか。捕虜

監視員は交代で出かけます。

ひょっとしてその慰安所にいた人たちを、あとで待機したその朝鮮同胞収
容所というところで会ったひとはいませんか?
そこに行ったからみんな会うでしょう。顔だけを見てあの女性だ、そうして。け
れどもその女性たちが全員そうなのか、そうでないのか分からないが、おもに
慰安婦が多かったということです。でもその慰安婦がいたとしても、私に分か
るはずありません、それは。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

304 

パレンバンで待機したとき何人だったかも、あまり覚えていませんか?
それは数百人程度だった。私がみたとき、男性がおもに多く、女性はそれほど
いない。おもに女性は慰安女だけだったから。女性はそれほど多くなかったよ

うだ。そうでなければ他の場所で待機していたかもしれないが。

太極旗と金九のことを聞き、38線のことを聞き、それはどこで聞かれまし
たか?
それは中国僑胞がいます、シンガポールに。

シンガポール朝鮮同胞収容所にいらっしゃったときですか?
はい。そこシンガポールで。あ、パレンバンにも中国の奴がたくさんいました。
中国人が。私たちそのひとりが通訳もよくできました、中国人、通訳しに。その
人達と知り合った私たちはそれを知ったのです。

あ、朝鮮人で中国語の通訳ができる人がいたということですか?
はい。他のひとはいないが、あのチャンギ刑務所でも、通訳官は朝鮮人で通訳し
てくれました。私たちに。こう通訳官がきて、私たちが出てくるとき、彼らはどう

したかというと、赤い紙と黄色い紙、青い紙非死刑(ミスは)、赤い紙は死刑、赤

い紙に名前が記された奴は死刑です。その人が教えてくれます。白い紙で名前
を呼ばれると釈放されて出られるだろう。通訳官がそう教えてくれました。

それでは、少しの間、パレンバンにあった朝鮮同胞収容所から女性や一般
の人たちは、シンガポールへ先に行ったではありませんか。残ることにな
ったとき、どのような経験をされ、ふたたびシンガポールへ行くようにな
ったか、一度お話ししてください。
解放後、そこでますますたいへんで、それから節目がたくさんありました。私
も生きるか死ぬかの問題でしたが。そこにも連合軍が入ってきました。私たち

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金甲天あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

305 

全員を整列させ服を脱がせ写真をすべて撮りました。そしてまた数日もせず
にまた捕虜がきます。捕虜がきて、連れていた捕虜が全部みんな選び出せ、そ

うしたのです。クジビケ121)してそいつを連れて行くと死にます。死んでしまっ
た。戻ってこない。だから捕虜監視した者はたくさん死んだことでしょう。た

ぶん私が見たときは。私たち60人中でおそらくそのとき、帰ってきたとき半分
程度しかいなかったから。私たちがいたその部隊は、60人中で彼らにクジビキ
された人以外では30人しか残らなかった。そう、死んだのか生きているか分か

らない。ものすごく厳しかった。そのまま、捕虜監視は。ともかく捕虜たちがき
て。その時、頬を1回殴っただけなのに、そのひとつがしっかりひっかかった。

私達がそのことを知らなくても、彼らはすべて知っているのです。ともかくあ
いつがどうであったか、私たちはよく分からないが。ですが大勢が死んだでし

ょう。そうするとそいつは分からない、どこへ行ったのかもう。そればかりは私
も分からない。

そのように数回検査を受け、その次にどうしてチャンギへ行くことになっ
たのですか? その検査をした後にある人は呼ばれていき、残った人は…
残った人はあの米軍、あの連合軍が連れて行きそこに収容されました。船に乗
せて連合軍がその収容所、シンガポール収容所に連れて入れました。

その収容所には、日本軍も朝鮮人もいっしょで全員でしたか?
はい、全員いました、はい。朝鮮人は朝鮮人でいて、また日本は日本人でい
て、その死刑台がありました。死刑囚がいて、日本の奴の僧侶も来ているし。

日本の奴がおもにたくさんいました。朝鮮人はそれほどいません。もう外にも
出られず、そこにそのままずっといろ、といわれればいて。朝、昼の2食は準備

121) クビシケン(首実検):旧日本軍の捕虜になった連合軍軍人に捕虜虐待等で嫌疑の

ある捕虜監視員達を選ぶため用いられた方式。捕虜監視員達を一列に並ばせ、捕虜達
が対面して嫌疑のある人達を指差した方式。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

306 

してくれた、それで捕虜船 122)がくると始終、上のほうで名前を呼んだ。20余人

がきっちり呼ばれ、私の名前がちゃんと入っていた。そいつらが座っていて。
そしてそいつが来いというと、とても大きいので監房は一部屋ずつみんなあり
ました。2人で使用する部屋が。それで、それが、連絡するその人が来るとき
ょうもここで寝て、通訳官が毛布1枚とレーション123)というのか、まあ食べ物、
それはみんなありました、それをひとつずつくれた。いいや。そこで1日ずつ寝
て、その日に車が来ました。その収容所、船が、朝鮮同胞収容所まで来てくれ
ました。ここまでは私が確実に知っています。

その朝鮮同胞収容所はどこですか?
シンガポール。

そこは朝鮮人だけが集まりましたか?
そうです。朝鮮人だけいました。解放になって日本人と朝鮮人は別々にいまし
た。日本の奴は日本の奴同士。よく分かりません。そこにいないので。日本の
奴の収容所は他のところにあったから。軍人たちがいたのでそいつらがどうな
ったか分かりません、私たちは。私たちは収容所だけにいましたから。朝鮮人
だけ、女性、男性。

すると解放になった年も、その収容所に長い間いらっしゃったのですか?
勤務して?
そうです。だから連合軍が来るまでそうでした。1年ぐらい。その当時、連合軍

122) 捕虜船
123) Ration:米軍の戦闘食糧で第2次大戦当時、米軍を勝利に導いた3大物品(ガーランド小

銃、Cレーション、ジープ)で、ひとつとして呼ばれる。第2次大戦から韓国戦争まで出
された戦闘食糧をレーション(ration)と呼びA,B,C,Kレーション等があり、C- rationがもっ

とも知られている。

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307 

がきて命令がないと、日本の奴もいっしょだったから。そうして日本の奴は日
本の奴同士で行った。その小隊長というひとは死んでしまった、そこで。自爆

したということだった。あの伍長かなにかはどこかへ逃亡してしまった。

チャンギ収容所ではどのようでしたか一度、すこしお話してください。ど
んな人達がいて、人数はどの程度で、期間はどれぐらいだった、というよ
うなお話を…
捕虜を監視した人達がそこに入れられた、一部屋に全員をいれないで。私がい
たところでは約30人いました。また他にもいたし。また日本の奴は日本の奴同士
で別にいたし。そのチャンギ収容所はものすごく大きい。死刑台もちゃんと設け

られて。だからどこにいるのかよく分かりませんが、ともかく広いことは広い。

そうすると、建物はきっちりありませんか? 建物はきっちりありますか?
テントですか?
チャンギ刑務所?(はい)チャンギ刑務所は大きな建物です。建物は、すごく
大きいです。レンガ建て。とても大きくて門にはすべて電気を通してあって、
門を開けばがらんがらんと音がして。その中に入ると構造はどうなっているの
か、どこがどうなのか、全部が鉄条網になっていて、脱け出して死んでも分か

らない。いいや、分からないだろう。自分がいたところだけを知っている。一度
出ると、どこがどこだか分かりません。とても大きく建ててあるので。さらに運

動場が別にあり? 中間、中間に。その刑務所はとてつもなく大きい。そこへ全
員すべて収容所に入れられたんだ。南方入隊軍人はそこへ全員がいったん行
きます。収容所へ。チャンギ刑務所に入り、そこですべてが処理され、殺す奴
は殺され、連合軍も全員そうして。

そこには、どれほどいらっしゃったのですか?
そこで約1ヵ月間、28日間、私はそこにいました。28日。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

308 

そして船に乗って帰ってこられたのですか?
あの大きな船、乗船して。あの連合軍のあの船、日本の奴もいっしょに。日本
の奴が船をもってきました、私たちはその船。

船は日本の船のようでしたか? 船名は分かりませんか?
分かりません。それは分かりません。日本の奴たちがいてそいつらがみんな話

していました。他の人たちは捕虜を監視し連合軍に罪は無くそのまま故郷に送
るから、そのように承知して釜山までは連れて行ってあげる。以北のひとはそ
うできないと。

釜山にくる時は、日本などへは寄らないで?
寄りません。直接来ました。

乗船した人は全員朝鮮人たちでしたか?
はい、はい、朝鮮人。女性達と。

女性も乗船しましたか?
そうです、そこへ女性もたくさん乗りました。

チャンギにいた人たちだけが乗船したのではないようですね?
いいえ、そこの人です。番号を1人ずつきっちりと入るときにくれるじゃないで
すか?整列して女性も大勢乗って、男性も大勢乗った。朝鮮人だけ乗船しまし
た。

チャンギ収容所にいた人だけ乗船しましたか?
そうです。そうです。

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309 

すると、女性達はチャンギ収容所でも大勢いたということですか?
多かった、大勢。

その女性はどんな女性たちでしたか?
分かりません、それはもう大勢でした、ともかく。

チュロンでなくチャンギとおっしゃいましね?

うん。

そこに女性達が大勢いたのですか?
集合所に集まって、私がちょっと見たときは待機名簿を見たようだが、どこで
見たかも分からないが、船は満員だった。また他の場所で乗せて来たのかは分
からない。けれども乗船するとぎっしりでした。

それは何月、いつですか? 何月ですか?
何月か、秋、秋です。私が家に帰ってきたとき秋、稲穂が黄色く輝いて。でも
私は夜に帰ってきたので分からない。ともかく稲穂が黄色く実った秋だった、
私が見たときは。群山の助村だったはずだが、そこの稲が、稲穂が黄金色だっ
た。夕方の夜だったが陽光124) が見えたんだ。

いっしょに到着した人はいますか?
いません。私だけです。その村、私たちの村では、群山では、群山で降りたか
もしれないが、数人。私の村では私以外にいません、帰ってきた人は。あとか
らまた帰ってきたかもしれません。

124) 月光を意味するようである。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

310 

最初に行ったとき7人というのは、群山のひとが7人ですか?
そうです。群山のひとだけ7人で。その人達はみんな分散して、それぞれそうな

ったので私も分からない。出てくるときも分からないし帰ってきたか死んだか
も分からない。

ええ。船をおりたときに交通費などをくれましたか?
なにもありません。裸になって帰ってきました。毛布1枚だけしかなかった。着
ていた軍服と。暑いからなにも必要でなかったし。

釜山から群山までどのように来ましたか?
汽車で来ました。

どなたのお金で?

金はありません。そのまま無料です。群山までそれは。

そして帰国して下船して、お金をくれたとか、そういうことはありませんね?
はい、ありません。ただ飯をひと匙くれ、身体ひとつで送り出されたんだ。そのま
まなにも無しに。でも汽車はそのまま無料だよ。私は群山に下車して家に帰りま

した。家でも誰も知らない。私が帰ってくるのか死んだのか、数日して到着して

から、家では夜分だから分かるはずもなく。それまでは通信できました。日本が
敗戦してぷっつり途切れてしまった。もう家には知らせはないし、そのまま。もう
死んだのか生きているのか分からない、家では。そのまま数年間は。

先生だけ軍服を着ていましたが、他のひとも同じように1銭もくれずにそ
のままそうして全員を送り出したのですか?
はいはい。そこでその捕虜にすべて奪われてしまった。何回も調査したんだ。

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金甲天あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

311 

指輪であれ、なにか持っているとすべて出せ、とすごく。金みたいなのを持っ
ていると。それを奪われ、たくさん奪われた。奴らは、すべて出せ、といって。
あるもの全部出さなくては。出さないと殺されるからどうする。

ではパレンバンでそうだったのですか?
パレンバンから出るときそうだったし、チャンギ刑務所でもすべて捜索され
た。ええ、彼らが言った。お前たち、それ全部、捕虜からもらったものを差し出
せ。もしもここで調査して出てきたら、それは厳罰に処する、と言った。みんな
すべて。私みたいなのは何かを持っていればの話ですが。他のものとかそんな
ものを、もしや欲が出てなのかは知らないが、そんな人達はたくさん死んだで

しょう。多分、捕虜をむりやり扱った奴らも。捕虜たちは写真を撮って何度も
回りながら、そうしたんだ。

その人たちは、どこの国の人たちでしたか?
連合軍がおもで、あのオーストラリア125)。オーストラリア人がすでに連合軍に
そんなことを話したから分かるでしょう。オーストラリア人と。

あ、先生は英語もおできになるのですか?
その時、私は正確には分らないけれど私が一番。見るとすぐに、あ、あれは英
国の奴、あれは米国の奴だと分かった。たいがいそうして、またそれはおもに
連合軍がそういうことを厳しくしたから。それは徹底していた。

ではパレンバンに入ってきた連合軍は豪州軍でしたか?
あのオーストラリア、連合軍にオーストラリア人が多かった、そこは。その人た
ちがたくさん。英国人はそんなにいませんでした。オランダ人はいた、あのイ

125) オーストラリア

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朝鮮という私たちの国があったのだ

312 

ンド、インド人も少数。インド人も軍人も髪の短いひとと短くないひとがいま
す。そういう人はほんとうにおだやかです。こわそうに見えても。

待機収容所とチャンギはどのような違いがあるか少し教えてください。
待機収容所は埠頭のそばにあり、刑務所は市内にあります。

シンガポール?
シンガポール市内に、チャンギ刑務所というのは。シンガポールは要塞じゃな
い。そこに入ろうとするとあまりに小さい。どうなのか、船一隻がやっと入られ
るくらいです。そうでしょう。両側はすべてジャングルで、そしてワニがうじゃ

うじゃいる。そこを少し、うん、何時間だったか? ともかく7,8時間ほど行かな
くてはならない、おそらく。それくらい船が入っていかなければならない。そう

すると太平洋に面する。要塞に入ったんだ、この両側に大砲を埋めておくと太
平洋からくる船はダメ。すべてそれを用いて鏡に反射されて地下砲に日が沈む

と。日本人はまったく入って行けなかった、そこは。そこがどうなったかという
と、シンガポールの後方にきて米軍、米軍、連合軍がもうともかくぎっしりとそ
こに軍隊がいたのに、後方から押し寄せたという、日本が。そうして捕虜を全

員捕まえた、そっくり。戦闘もせずに。日本が宣戦布告と同時に押し寄せて来
たので。そこでこんな話をすべて聞きました。もうそこから出てきてパレンバ

ンへかなり行かなくてはならない、いったんそこでしばらく。このシンガポール
のパレンバンはこのようになっているじゃないですか。ここタイまでかなり行
かなくてはいけない。そこで日本が敗戦したから刑務所にみんな入れられた。

私たちは、日本の奴は、そこで刑務所ではないが全員集合した。もう日本の奴
が、ほんとうに日本がそこへ入れられた、刑務所に入った、全員すべて。敗戦
になって。そこにいるときは矯導官も連れていた、多数。その刑務所の中を。
私たちはいったん入れられると勝手なことは出来ない。連合軍もその中だけ歩
きまわる。そしてその中で死刑の日、死刑をするとき階段があって、両側に花

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金甲天あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

313 

壇があって、それも私たちが行って掃除もしてあげて。あいつら、その死刑で
使う支え棒をこうして、おばあさんもきっちり座って、そこに座って首をさっと
絞めると、扉をすっとおろす、下で。直接そのままそれが出るように火葬室に
行ってしまう。

死刑するのも見ましたか?
見ました。私達はそこで。数日間掃除もし、仕事もして。

あ、その死刑台?
はい。その死刑台。それで見たのです。死刑囚がいったん独房に入ると、日本
の僧がその日に念仏をあげて食べ物も美味いものをしてあげます。もう僧が念
仏をひとつあげれば、また死刑される。連続でそうする、おもに日本の奴の死
刑です。多いようだった、たぶん。そうでなければ、朝鮮人はそんなにいなか
ったし。

どのように、待機はいつ?
その待機室にいると番号順に呼びました。人たちは呼ばれると車に、船に乗り
ます。乗船したら、どんな隅っこでも場所をとらねば。

そのとき帰ってくるときに、女性たちを間近に見ませんでしたか?
私がそこから帰って来るとき、ひとがひとり落ちたといいました、船から。でも
それは夜で、人々がウーというので甲板に行ってみると、船が停止しました。
停止して大きな河を照らし、人がそこへボートを下ろして引き上げるというこ

とがありました。帰って来るとき。行く時ではなく帰って来るとき。それが慰安

女です。聞いたことは、誰かがこうして韓国に帰ってもどうにもならない。自殺

した、とそんな話も聞いたけれど、そんなことがあったということだけ知ってい
ます。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

314 

話だけを聞かれたのですか?
はい。話だけ聞きました。ここからシンガポールへ行く時はそれほどかからな
かったが、それほど遠くないのかな? 帰る時は速力を出してなのか1週間で
着きました。シンガポールから直接釜山まで。

あ、寄ったところはありませんか?
はい、夜も昼も速力出して釜山へ直行。行く時はパレンバンに寄って、ゆっく

りひと月ほどかかったのに。半分ほどの速力で、けれども帰る時はなんなく直

行し速かった。だから台湾を過ぎてから暑かった、赤道だろう? 赤道じゃな
いのかな。

パレンバンは、大型船がそのまま運航できる港湾都市だそうですね?

はい。港です。でも狭い河幅をしばらく入らなくてはなりません。そしてインドネシ
アの生活は、おもに都市にいるひとは車もありサリュンギョ126)もあるし、家もカサ

棒を四隅に固定させる、まあそんな程度。行くとそうでした。ですが市内のインド
ネシアはまた良い暮らしのところは良い暮らしをするようだった。

インドネシアにいる間、インドネシアの人たちと交流はめったにありませんか?
とりたてて接触しません。崔さんも私もインドネシア語を学ばなくてはと思っ
たけれど、とりたてて接触することがありません。インドネシア 127)と。余裕が
なくて出られません。またそのインドネシアの捕虜収容所の傍は一歩も近づけ
ません。全部あれで徹底していて。捕虜といっしょにインドネシアと接触でき
ないようにした。そしてインドネシアと捕虜が話をすれば撃ったから。監視員
らが撃てという。とても接近はできなかった。

126) 車輪が四個ついている人が乗る馬車。
127) インドネシア人をいっているようである。

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金甲天あまりの空腹で髪がどんどん抜けて

315 

そうすると捕虜監視員軍属であるのに銃をお持ちだったのですか?
そこでは銃はありました。捕虜を監視する間だけ銃を持つことになっていま
す。そこで勤務時間のときだけ。弾だけ、実弾もきっちり決められていて。そ
の時だけ5発。弾倉も。そいつを置いて、そこへ持ってきて置いて、外出の時は
すべて返納して。勤務時間だけ使用する。

それだから釜山でも、事前にその銃の使用法などをすべて習い行かれたの
ですね?
はい、そこで学びました。

1ヵ月間?
はい、1ヵ月間か習いました。簡単に習いました、ただ。その人たちは時間が無
いといってとても急いでしました。

その当時、捕虜監視員として行く時、月給はどのぐらい渡す。そういうこ
とがあったではありませんか?
ありません。そこに行って、はい、家に送ってくれたのはあったようだ。それ
でそこではいくらもくれなかった。その時、その時は軍票を使用したから。臨
時で使う軍票です。それを数枚、そんなのを持って市内を外出するとき使用し
た。家に連絡してみると日本のなに支庁でひとつ、ずっとくれたのはある。そこ
へ行った人たち。

どれぐらいくれたのか、分かりませんか?
それは分かりません。いくらをくれたのか、それは。

最初だけくれたのではありませんか、そうなら?
だから私がいた期間だけくれ、その後はくれなかったようだ。あとで帰ってか

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朝鮮という私たちの国があったのだ

316 

ら聞いてみると。そこにいる時だけ。

きっちり出ましたか?
はい。出たといいます。毎月。それは出ました、数年間出ましたが、その後は出な
かったそうです。日本が敗れて。その約束は、もう結局は戦争に敗れてダメにな
ったようだ。私たちも送ってあげると言いました。3年ほどいて送ってあげると。
なんだかんだと約5年いました。日本が敗戦し、そこで数年間、捕まって送った。

そこでどれぐらいの金をくれたかは覚えていませんか? そこへ行く前にお
前たちいくら渡す、という話…
そんな金銭の話はしませんでした。金銭の話はなく、ただそこへ行き小遣いを
家でくれて。あの部隊、釜山、そこへ行けば小遣いくれるだろう。そうすれば
家に送り、どれぐらいもらったか知らないで、あとで手紙がきたのを読むと少

しもらったみたいです。

もしや家でもらったものとか、それ
に関連する証書とかそういうのが
ひとつもありませんか? 当時に受
け取ったものは。
日本がそういうのを書いてくれたん
ですか? 証書のようなものありませ
ん。家には分かりませんが。

そこに行っても貯金をされるとか、
そんなことは1度もありませんか?
軍票でしたからそれは、日本の敗戦
で無効になりました。それを使って

留守 名簿

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317 

食べられなかった、ひとつも。

釜山まで、誰か連れて行きましたか?

日本軍人が。一種の軍人でしょ、彼らもいわば。軍人が連れてそこへ行くと全

員すべて軍人でした。

汽車で行きましたか?
はい。汽車で行きました。群山から釜山まで、釜山からトラックでその部隊ま
で行きました。

パレンバンへ到着されてから食事など、捕虜監視員として生活した時は生
活しやすかったですか?
ええ、そこではインドネシア128)が、それを配達します。野菜などを配達する。部
隊に、そうして私たちはそこで炊事班がつくり食べました。飯を炊き、特別なも
のはないがおもに野菜でキムチを浸けたり、煮て食べたりして。日本の奴が分配

して持ってきます。インドネシアから私たちは受取り。そこで上手につくるひと

がいました。炊事班で食事をつくるひと、上手だった。そいつがおもにつくった。

捕虜監視員で、炊事班に配置された人がまたいましたか?
はい、いました。捕虜監視員だから炊事する人がいなくてはね? 食事を上手に
作るのがひとりいました。それをさせました。そのひとがつくったものを日本
人もいっしょに食べました。日本の奴は何人もいないから。

何人いましたか?
3,4人しかいなかった、日本の奴は。

128) インドネシア人を指しているようだ。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

318 

その上の上級部隊はなんですか?
上級部隊は分かりません。いわば今でいうと一小隊じゃないかな一小隊。中隊
はどこかにあるでしょう。大隊があり、でもそれは分からない。本部はシンガポ
ールだし。

それは第7方面軍所属ですか、それとも南方軍?
南方軍ヤマモトイチロク129)という奴、それが司令官、南方司令官です。そいつ
が、いうならばあれあるでしょ。そこの所属です私たちは。そのヤマモトイチ
ロク、あの日本の奴。

それは一番上ではありませんか? その下の中間はご存知ないのですね?
中間はよく知りません。私が知っているのは自家用、それがチェチェジ? ヤマ
モチがいて、黄色の旗竿がはためいている。赤旗は領級で、青は少領、あ、少
尉か? その3つに分かれていたなあ。

階級の色が?
はい。階級の色。大将の色は黄色、そいつが通るときは日本の奴ら全員が敬礼
する。黄色はひとりいるようだった。そして赤色は普通で大勢、そして青は少
尉、今でいうと少尉、中尉とかになる。領級はいわば赤色。

トラックのようなところに旗をはためかせるのですか?

はい。すべてそうでした。そこに星がこうちゃんとついて、旗に赤いのをつけ
ていたから。それを見ると分かる、出て見れば。

129) ヤマモトイソロク(山本五十六;1884.4.4. 1943.4.18)を指すようである。旧日本軍海

軍で26、27隊連合艦隊指令艦長を歴任。

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319 

先生は、あれはありませんか? 星とかなにの、軍服に似たのがあるでしょう?

はい、軍服はあります。捕虜を監視するのでそれをする時は、私もそうしていた
が、日本が敗戦してそんなものもなく。軍属はただ軍属でただひとつだけあった。
あれがひとつだけあった。星のような形でこんなして、布切れに軍属と書いてある
ものもあるし。でもそれは必要じゃないでしょう。部隊は階級をみるのではなく軍

属たち。日本の奴だけそうです。朝鮮人同士はそのままでそんなものはしない。

では、その日本軍人にはこのように敬礼しますか?

しません、私たちは。

互いに敬礼はせずに?
はい、はい、しません。私たちはしません。軍人だけそうする。私たちは軍人た
ちに敬礼する、こう。敬礼は私たちがしなくてはいけない。むこうはしない、私
たちの部隊にいるひとで小隊長とか下士のような人に敬礼します。

しなければ、たいへんなことになりますか?

たいへんなことになります。しなければ、上官が分からないか、と。今のことば
で上官です、私たちにとっては。こいつらが私たちを監視した、私達を。私た
ちは捕虜を監視し、あの人たちは私たちを監視する、また。

そうすると捕虜をちゃんと監視できないといって虐待し、そうではありま
せんか?
それほど厳しくしないが、厳しくはありません。ひとは何人もいないし。丁寧
な言葉で捕虜の監視についてだけよく話しをして、捕虜の監視などをきっちり
するように、と言いました。監視はしない、とくだん。そのことだけきっちりす
れば。イスがあると座ってうとうとし、私たちは私たちで別にいるし。そこを行
ったりきたりする兵卒がひとりいるでしょう? その人たちが連絡にきて、明日

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朝鮮という私たちの国があったのだ

320 

は何人がまたどこへ出る、ということや、捕虜監視でどこかで事故はなかった
か、それを管理する。捕虜はあんなにも大勢いたけれど従順でした、おとなし
い。絶対に、彼らも階級が別途あるから、そこでも。だからその言葉を聞かな

くてはならない。命令は私たちが銃を持って中に入り1日ずつ回ります? 部屋

の中を。そこに行くと敬礼をとてもしたり、全員みんな、捕虜が。いちおう捕虜
は捕らわれて行ったから、とても従順でちゃんと聞きました。

その人たちは、食事はどのようにしていましたか?
彼らは各自、それも彼等がつくって食べます。

米などは誰が渡すのですか、日本軍ですか?

日本軍が全部渡します。日本軍が渡しますがどうしてもぱっとしません。そんな
にたいしたものは。彼らはパンのようなもの、砂糖、こういうものが好きでした。

それは配当されたようだ。そんなにはあげないけれど。飯もいわば粥のようにし
てそれも食べたし。また果物などもあげるし。その配給はそうしてあげるが、量
が足りていたか足りていなかったかは分かりません。適当だったか適当でなかっ
たかは。でもどうしたってそうだったでしょう? 彼らの生活は? どんなにたいへ
んか? 寝床もそのままで特別には。寝台を板切れでつくった奴もいるし。

パレンバン収容所も大きな建物の中にありましたか?
建物ではありません。そこはヤシの木の葉のようなものですべて屋根をおおい
ました。屋根をおおって。正方形にきっちり建てた、その一角に。そして寝台
を1台ずつこう両側に。真ん中をきっちりあけ、そこで私たちがひと回りする。
寝台の彼らの行動を見て回る。

その収容所にいる人たちは、副食などを植えて食べましたか?
その、ありません。できません。

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321 

労働をさせたではありませんか?
労働は外に出かけてします。その中では特別にしません。埠頭に行ってなにか
をするそういうのです。はい、それを運んで行きます、私たちが。埠頭で荷物
を載せて運ぶそんなのをした。その中ではできません。捕虜には空き缶ひとつ
持って行ってもダメだ。針金のようなもの。そいつらはそんなもので無線機も
つくるし、あらゆることをしでかすからと、日本はさせなかった。彼らが持っ
てきたのであれば知らないが。ひとつひとつ寝台の中までどうすればいい。寝
台に棒を置いている奴がいてもそのまま。大将といえばそいつは、一番、頭脳
が、ここで少しなにかあれば、ここに大将を連れてきて、兵隊たちをずっとここ
で内部事情があります。でも、純粋に食べるもの、とれたものは互いにしてあ
げた。コリア、市内に行ったら少し買ってきて欲しい、と言って。ものは金が無
いから。砂糖とかは私も幾度か買ってきてあげた、市内に行って。砂糖が好き
だから。コーヒー、コーヒーは安い。なんといってもそこは熱帯地方だよ。バナ
ナなども安い。日本人にみつかるといけないから気付かれないようこっそりす
る。うん、ポケットに入れて、勤務の時に、こうあげると、とてもありがとう、と
首を横にふった。日本人に言ってはいけないと言うとオッケー、オッケーと言

う。それで私はほんとうに悪いことはなかったです。

思い出すといちばんの苦労はどんなことでしたか?
刑務所のなかで空腹で。どれほど空腹だったか頭髪がどんどん抜けてひとつも
なくなった。便秘もした。ビスケット2枚をビタミンの横に置いておいた。そい
つを食べ回虫薬をひとつちょっと横に置いておいた。そして3時か4時になると
粥を炊いてくれる。オカユ130)といって日本の奴の粥のようなのを。それを数匙
食べて、そいつをビスケットを数枚置いておく。だから腹がへるでしょ、腹へ

らない? 腹がへってたいへんな目にあった。腹もへったが死ぬか生きるか、そ

130) オカユ(お粥);日本式粥

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朝鮮という私たちの国があったのだ

322 

れが問題だったそこでは。通訳官が赤い紙で名前を呼ぶ、青い紙で名前を呼ぶ

と問題にもならない。白い紙で名前を呼ばれるとそれを待ち焦がれ目がくらく
らします。通訳官をみてそれを聞いてみます。頭をちゃんと少し分かった、分

かったと、通訳官がきっちりしてくれます。教えてくれる。

その通訳官は、日本人にこうして連行された朝鮮人でしたか? どんな朝鮮
人でしたか?
朝鮮人です。どんな朝鮮人かは朝鮮語の上手な朝鮮人だよ。朝鮮人というのは
間違いない。朝鮮語が上手だから。

パレンバンにいた時ですが、市内に行くときはトラックや車で出かけまし
たか、それとも歩いて行きましたか?

トラックで行きました。部隊にトラックがあるから。市内に出るときはトラック

の後ろに乗ったりします。はい、それに乗って市内に出て降ります。どこかの場
所で。そこで各自が慰安婦のところに遊びに行って。たくさん遊べません。時
間が制限されているから。きっちりしていて午前、午後。午前10時頃、11、9時
頃に出かけると午後3時、4時にもどってくる、部隊に。市内に行くと日本の奴
も会うことが多い。日本の兵卒たち。部隊がそこへ遊びにきている、慰安所。

その慰安所は何箇所にありましたか?
そこ2ヵ所しかありません。日本人と韓国人と。市内に軍人は別にいません。

パレンバンに出かけると、おもに何をしましたか?
おもに市内に出ても特別なことはありません。おもにバナナを買い、買って部
隊で食べ。果物なども食べ。果物もいろいろあってドリアンもあるしマンゴー

といったもの。ヤシの木を見あげてそんな見物をして散歩します。

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323 

では慰安所にはどれくらい行きましたか? 何回か一度行ってみましたか?
ふたりだけ会いました、おそらく。おもに慶尚南道、慶尚北道のひとがたくさん
来ていました、女性は。話声を聞いてみるともう。

その名前を覚えていますか?
名前をどうして覚えていますか? 芸名も知らない。そこへ行ってもよく教え
てくれないし、朝鮮人、初めて会ったのは泣きじゃくりたいへんだった、数回
行ってみると日本の奴らも大勢通っていた、そこは。そこで少し遊んでくる。あ

ゝあれなんだ。日本の奴らがそれをたくさんする、注意を。それを使用しろと、

なにに使用しろと。そんなことも教えてくれる。日本の奴らがたくさん来て。私
はそこにいるとき多分数回行きました。

サック131) のようなものは?
そこでくれる。

誰がくれるのですか?
女性が。

女性が持っているのですか?
それ使用しろと部隊でもあげるし。出かけるとき、外出する時。それおもに女性
の家には花柳病があるからとしきりに頼まれる。頼んで駄目なら仕方ないし、そ
れは分かってすることで、そこまでは。そんなことは分かってすることで。

そこで病気になるとどこへ行きますか?

131) コンドーム

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朝鮮という私たちの国があったのだ

324 

臨時病院があります。

病院の名前を正確に覚えていませんか?
覚えていません。臨時病院があります。臨時病院で治療しますが、大病にかか

るとすぐ病院へ搬送するがどこへ連れて行くかは分からない。すぐにすぐに日
本が電話して、エムビュランスその車がきて連れて行くがどこかの病院に。お
もに陸軍病院が別にあるでしょう多分。

陸軍病院。第9陸軍病院というのを聞きませんでしたか?
聞いたことありません。そこで病気になったことがないのでよく分からない。

ところでその慰安所名を覚えていますか?
あ、名前知りません。

明月館って聞いたことありますか、明月館?
明月館は軍事明月館で。そのようにつけていない、彼女たちは。私が知ってい
るのは軍人慰安婦とだけ書いてあった看板に。

それではその家の構造はどうでしたか?
構造はまあ簡素です。部屋はそんなに猥雑ではありません。入るとひと部屋ず
つになっている。入って行くとふたりだけが顔を合わせるように部屋がなって
いる構造が。入って行くと門がひとつこうあり。

業者とか管理人もいなかったですか?
管理人はいません。管理する女性管理人はいます。でも探しはしない。

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325 

女性で管理するひとがいたのですか?
ええ、いました。はい、いました。

男性ですか、女性ですか?
女性。

女性ですか? 年齢は何歳ほど…
年配です、その人は。

その人は年配でしたか? 韓国人ですか? 朝鮮人?
はい、朝鮮人。けれども業主のようだった業者、一種の。日本の奴が慰安婦を
連れてくるが、そこについてきた奴を置いて行く。そのときなのか。管理して。
男性はいるのか私は会わなかった。慰安婦として入ればいくらか渡すことにな
っている。そのまた今の金で1万円なら1万円、千円なら千円。それが女子の
すべての収入になるのか、その彼女たちにも別にあげるかは分かりません。

そのお金を誰に渡すのですか?
その(慰安婦)女子たちに渡すでしょう。ですが女子がどうするか知りませ
ん。その軍票をどうするのか知らない。

ひとは大勢でしたか?
軍人だけです、軍人、軍属だけです。

面談者_カン・ジョンスク調査官
録取者_キム・ミンヘ
検督/ 編集/注釈_イ・セイル調査3班長、カン・フィヨン/ イム・ドア

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解題

327 

解題

戦争を経験していない新世代に戦争は歴史の教訓として教育される。教科

書は戦争を教えることによっておもに平和の貴さを感じ取らせようとし、平和
教育の場として戦争記念館などが建てられることもある。一方、個人が個人に
戦争を語るときそれは次元のことなる話となる。個人的な体験としての戦争話
は“苦労”という単語に集約される。口述者の話の中で、倭奴は悪者であったし
彼らはその悪者のために苦労した。戦争経験を話すことで人々はどれほど苦し
い時代を生き抜いてきたかを次の世代に知って欲しいと願うと同時に、自己の
微弱な現在の姿を正当化させようと思うかもしれない。

過去に経験した事実について口述は、歴史が過去と現在の際限ない対話であ

ることを確認させてくれる行為である。個人の経験が言葉で語られ文字に記録
されながら、現されていなかった事実を明らかにする口述は、歴史がつくられて
ゆく過程をみせてくれる。「日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会」は、国権
を失った時期に植民地人として経験した戦争被害の内容を、政府次元で明らか
にする作業をおこなっている。このような委員会の調査活動で生存者に対する口

述調査は、強制動員被害の真相を糾明する過程において極めて重要な意味をも
つ。収集された口述調査結果は、一次的に被害事実の確認と真相調査の推進の
ために使用される。生存者の口述は時として、文献資料がもつ権威に対して疑
問を提起し、文献資料に現れない貴重な事実を確認させてもくれる。しかしまた
逆に彼らの記憶を呼び起こす媒介として文献資料が使われることもある。日本の

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朝鮮という私たちの国があったのだ

328 

軍隊史、戦争史、わが国の植民地史に関する資料に口述を追加することにより、

口述が既存の歴史を一層豊かなものにする可能性を示してくれる。更に被害事

実を立証する文献資料等の明確な記録がない場合、当時の状況の直接体験者、

目撃者等の証言は貴重な証拠資料としての価値をももつ。

生存被害者の口述は生々しく具体的である。彼らの生々しい体験談は、既存

の文献資料に明らかにされている事実の再確認だけにとどまるものではない。

うずもれている生存者の経験を明らかにすることにより私たちは生存者の記憶
に社会的な意味を付与し、文字に記録されていない個人の過去を私たち全員

で共有できる公的な記録に転換する方式でもってもうひとつの歴史を創造する
ことになる。同時に口述は、普遍的な社会価値と人間性を守るため、人類に痛
みを与える歴史の輪を絶って共生のための新しい歴史を築かねばならないと
力説する。

1.日帝下朝鮮人軍属の性格

日帝は1931年の満洲事変につづいて1937年、中日戦争をひき起こし大陸へ

の侵略を本格化させ、1941年には太平洋戦争をおこして南太平洋地域に及ぶ
侵略戦線をいっそう拡大させていった。このような過程で戦争遂行のために厖
大な物的・人的支援を当時の日本の植民地と占領地から動員していった。

朝鮮に対する植民支配の維持を日本自らの防衛と生存の必須条件と見なした

日本は、基本的な植民支配政策として同化主義を選んだ。それにも拘らず植民

支配の初期、現地人で編成された部隊を秩序維持に投入しなかった。代わって

日本人のみで構成される徴兵軍隊を植民地常駐軍隊として駐屯させた。このよ
うな事実から推量すると当初から日帝の同化政策は、朝鮮人を積極的に日本人

化するよりは帝国主義的植民支配を隠蔽するための手段であったと見られる。

しかし1937年にはじまったいわゆる支那事変により日本の軍兵力動員が限界に

達するや、兵力補充の方便として1938年に陸軍特別志願兵制度の導入を図っ
た。翌1939年には朝鮮人を軍属として動員を開始した。日帝は戦争を遂行する

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解題

329 

過程で兵力ではない準兵力にも朝鮮人を動員し、多様な形態の朝鮮人出身軍属
が存在した。したがって朝鮮人軍属が、日本軍部隊内でどのような役割を遂行

し、その性格がいかなるものであったかについて綿密な検討が必要とされる。

一般的に軍属は“軍務員”という旧用語で、陸・海軍に従属する文官、文官待

遇者、雇員・傭人等「軍属誓書」または「軍属独法」による服務する者の総称
である。要するに軍隊構成員として陸・海軍に服務する軍人以外の者を軍属と
いう132)。

軍属は文官、雇員、傭人に分類される。文官はふつう文官、教官、技術官、法

務官、監獄官、通訳官等の種類に分れ一般官庁と同様に高等官、判任官に区別

される。陸軍の場合、技術官の一部、法務官はのちに法務部将校に命じられた。

「軍属誓書」または「軍属独法」により陸海軍に服務する者は属、嘱託員(専

任、臨時)、雇員及び傭人133)に区分され、これらは同じく軍属に含まれる。

戦争中に陸海軍の要求により作戦地で船舶運航に従事した船員は身分上、

陸軍または海軍軍属扱いとなる。飛行場設営隊員、女性タイピスト、司令部と
契約関係にある調理師、理髪師、野戦郵便局勤務軍属もある。

軍属を軍との契約関係ではなく仕事の性格により別途に分類する場合もあ

る。金英達は通常、軍属に分類されていた捕虜監視員と海軍設営隊を併せて
兵力動員次元の準兵士とみなしており、その他の軍要員を労務動員次元の軍

属とみなしている。単純に仕事の性格だけをみるとき、軍属は労務者との差異
が見受けられない場合が多い。したがって被害者達の証言では労務動員と軍
属動員とが明確に区別されない事例がみられる。また労働力動員の初期段階
から軍属が動員された点も、被害者の意識に軍属と労務動員の境界をあいま

132) 鄭惠瓊、朝鮮人強制連行、強制労働1:日本編、ソニン、2006、p.221
133) 雇員の辞典的意味は官庁等における正規でない雇用により事務等に携わる者であり、

アジア歴史資料センターの資料を中心に検討してみると、第二次大戦当時、日本が雇
員や傭人を別途に分類した法令等は作成されていない。傭人は軍の各組織が個別的に
採用した非軍人をさし、工廠(旧陸海軍に直属して武器、弾薬等の軍需品を製造した工
場)の工員や調理師,理髪師、洗濯夫、守衛、小使い、給仕、馬丁、消防夫等をいう。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

330 

いにさせる部分であるとみられる。結局、軍属の辞典的意味、法的解釈の是非
ではなく、彼らが遂行した業務は、人間の営みに必要なあらゆる種類の仕事と
みなして支障ないであろう。

2.朝鮮人軍属の強制動員

朝鮮人軍属は、民間企業や炭鉱に動員された者たちと同じ様相の直接募集

方式、或は官斡旋及び徴用による事実上の強制動員が多かった。募集、地域割

り当て及び国民動員令による強権的な形態の動員、現地調達等の方式があっ

たが、おもに募集、官斡旋、徴用の3分類とするのが一般的である。海軍軍属
名簿をみると採用・徴用を区分し表わしているが、入職日と動員地域が同一で
あっても採用と徴用に区分されている。すなわち動員方式としての募集と徴用
が時期別に明確に区分されずに混在していたのである。また大多数の場合に徴
用・採用の可否を表記していない。一般的な分類では次のように時期別でおも
な動員方法に分けられる。

◎「募集」   1939(昭和14)年9月~1942(昭和17)年1月
◎「官斡旋」  1942(昭和17)年2月~1944(昭和19)年8月
◎「徴用」   1944(昭和19)年9月~1945(昭和20)年8月

朝鮮人軍属動員は1939年満洲への動員がその始まりである。毎日新報1939

年2月4日号には「全羅南道で関東軍司令部の委嘱により朝鮮青年軍属50名を
募集し光州、木浦、順天3箇所で簡単な試験と身体検査をおこない応募者は所
管官庁警察署に志願。小学校卒業程度で国語に習熟した身体健康な者」と報
道されている。しかし大蔵省管理局資料を引用した金英達の著書には、1939
年満洲に動員された朝鮮人軍属は145名とあり、それからすると同種類の動員
は他の地域にもあったとみられる。すでに太平洋戦争の勃発前から陸軍省は朝
鮮人を軍属として動員し、1941年を境に大幅に増加した。

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解題

331 

1942年7月8日号の毎日新報には「多数半島青年を海軍軍属として採用し現

地に派遣することとし、7月中に朝鮮各道で銓衡を開始・国民徴用令の発動に
併せて、国家においては半島民衆に軍事に直接貢献できる栄誉ある機会を与
えることとなった。海軍当局の要求によって多数工員を朝鮮各道において銓衡

したのち海軍軍属として時局下緊用なる土木作業に従事せしめることとなっ

た」という記事が登場する。同日、銓衡についての記事には「海軍当局の要求
によって多数工員を全鮮の半島青年の中から銓衡し海軍軍属として現地に派
遣することとなり、17日総督府情報課においてその内容を発表したが今月中に
朝鮮各道において厳重に銓衡することとなった。」と報道し、7月19日総督府
発表銓衡日程には、資格条件が「(韓)国語会話が可能な19歳~40歳までの男
子」となっている。以降、1943年3月に実施された南方軍属募集には1週間で4
千名が応募したと伝えられている。

             

〈表1〉朝鮮から送り出された軍属の数

年度

日本国内

朝鮮 内

満洲

中国

南方

合計

1939

-

-

145

-

-

145

1940

65

-

656

15

-

736

1941

5,396

1,085

284

13

9,249

16,027

1942

4,171

1,723

293

50

16,159

22,396

1943

4,691

1,976

390

16

5,242

12,315

1944

24,071

13,575

1,617

294

5,885

45,442

1945

31,603

15,532

467

347

(9,897) 

47,949

総数

69,997

33,891

3,852

735

36,535

(46,432)

145,010

(154,907)

*朝鮮人強制連行研究(2003、金英達、明石書店)再引用、原資料: 大蔵省管理局

大蔵省管理局資料を引用した資料には1945年南方に連行された数字が不明

確だが、1953年日本政府発表資料には軍属数が154,907名である点に照らして
表を再構成した。第86回帝国議会説明資料によれば1944年9月末まで8万8241

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朝鮮という私たちの国があったのだ

332 

名の朝鮮人軍属が動員されうち国民徴用令による者は3万1783 名である。これ
を根拠にすると、朝鮮で国民徴用令が一般の労働者に本格的に適用されたのは

1944年からであるが、その前段階の1942年1月(会計年度 1941年)から軍属動

員に徴用が適用されたとみる見解がある。1942年10月には、日本国内居住の朝
鮮人にも国民徴用令が発動され、軍属として海軍直轄作業場の土木建築労務に
動員された。国民徴用令は1939年7月15日に施行され(勅令第451号)、日本で
はすでに全面適用されていた。一方朝鮮では1939年10月1日に施行されたが全
面適用ではなくおもに軍属等の一部に限定的に適用されていた。

〈表2〉1940-43年の軍属送出状況中 徴用の比率134)

 

 

日本

朝鮮 内

満洲

中国

南方

合計

1940

65

 

656

15

 

736

1941

5,396

1,085

284

13

9,249

16,027

徴用数

4,895

 

 

 

 

4895

比率

90.7%

 

 

 

 

30.3%

1942

4,171

1,723

293

50

16,159

22,396

徴用数

3,872

90

 

 

135

4,097

比率

92.8%

5%

 

 

 0.8%

18.2%

1943

 

4,691

1,976

390

16

5,242

12,315

徴用数

2,341

648

 

 

 

2,989

比率

49.9%

32.8%

 

 

 

24.2%

朝鮮人軍属中の陸海軍の個別命令によって1941年9月以降、南方の土木作業

に斡旋・送出された海軍愛国作業団員3万2228名と陸軍の要求による北部軍・

経理部傭人7,061名、及び捕虜監視員4223名、運輸部傭人1,320名等が注目さ
れる部分である。その派遣地域は日本国内、満洲、中国、南洋等に広く分布して

134)「昭和19年 第86回帝国議会説明資料」、民族問題研究所編、2001,「日帝下戦時体制

期政策史料叢書」第23 巻、303頁

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解題

333 

いる。朝鮮人軍属の動員は1944年以降拡大された。「大蔵省日本人の海外活動
に関する調査―朝鮮・篇第9分冊」及び「第85回帝国議会説明資料」によれば

1939年から1945年に至るまで軍属(軍傭人)の連行数は145,110名に達し、戦後

厚生省の第2復員局の集計によれば1941年以降の動員数は陸軍7万424名、海
軍8万4483名であり合計15万4907名に達する(「在日朝鮮人の概況」1953)。し
かしこの数は推定値にすぎず実際の数字は更に多かったとみられる。

〈表3〉1953年3月当時 朝鮮人陸海軍軍属の復員現況

陸軍 軍属(70,424)

海軍 軍属(84,483)

死亡

不明

復員

死亡

未帰還

復員

復員展望

2,992

20,674

46,758

6,971

117

60,539

16,836

戦争が長期化して総力戦の様相をおびると国家総動員法により働ける者全

員が動員されるようになる。戦線の拡大と戦況の悪化にしたがい兵士の数が不
足してくると兵役義務年齢を17~45歳にひろげ戦場へ動員していった。元来、
徴兵通報用の「召集令状」は赤い用紙を使用したので「アカガミ(赤紙)」と
いわれた。「アカガミ(赤紙)」による召集は兵籍原簿から画一的に選出され
たため、熟練技術者や研究者達も無差別的に戦場に送られて工業、農業の生
産力を甚だしく低下させた。

〈表4〉召集令状区分135)

アカガミ(赤紙)

 充員召集 臨時召集

シラガミ(白紙)

 演習召集 教育召集 国民兵召集 簡閲点呼135)

アオガミ(青紙)

 防衛召集

135) 簡閲点呼は在郷軍人下士兵卒の1日入隊をいう。連隊軍司令部から各市郡に定められ

た場所で毎年行われる。参加者には通知され軍人勅諭奉読訓示・学科・実技訓練があ
る、分会ではこの演習をする。

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朝鮮という私たちの国があったのだ

334 

徴兵によって欠員になった熟練労働者の場所を「学徒動員令」136)によって国民

学校高等科以上の学生達を動員し埋めていった。この召集令状を「シラガミ(白
紙)」という。また22~35歳の独身女性も「シラガミ(白紙)」召集を受けて工場
等で働くようになり女子勤労挺身隊、女子勤労報国隊がこれに相当する。したがっ
て軍属または準軍属はアカガミ(赤紙)徴集以外のシラガミ(白紙)徴集の形態を
おび戦争遂行において国家と一定の身分関係をもった人たちが多い。

戦場や占領地内の施設建設等は敵軍の攻撃や現地人の抵抗にあう危険が日

常的にあり、民間人の労働力では遂行できない部門であった。しかし日本軍は
施設を建設するために別途の兵力を編成しなかった。したがって戦闘員として
の訓練を受けずに武器も所持しない軍属によってこの部門が遂行された。朝鮮
人、台湾人またはアジア各地の現地人が強制連行・強制労働等の形式でこの
部門を担当し、軍属が兵士とともに戦闘に参加することになった例も多い。そ
のため軍属の死亡率は軍人の死亡率よりも高くなっている。

〈表5〉韓国(朝鮮)出身軍人軍属死亡率

徴兵 徴用

復員

死亡者数

死亡率(%)

韓国(朝鮮)人軍人

11万6294

11万0116

6178

5.3

軍属

12万6047

11万0043

1万6004

12.7

24万2341

22万0159

2万2182

(1990年厚生省発表に基づき日本の戦争責任を確実にする会 作成)

136) 中日戦争の拡大により不足しだした農村、工業等の労働力不足を補充するため学生を

強制動員。1938年(昭和13年)6月文部省の「集団的勤労作業運動実施ニ関スル件」
の通達により中学校以上で夏休みを前後に3~5日の勤労作業がはじめられた。1941年

(昭和16年)8月文部省は各学校に「学校報国隊(団)」を組織し軍事上の要請にした

がって学生を勤労に動員しうる体制を整えた。1943年(昭和18年)6月閣議は戦力増強
のために本格的に軍需工場動員と軍事訓練の徹底を図った。1944年(昭和19年)には
中学校以上の学生は男女を問わず授業が停止となり軍需生産、食糧増産、防空防衛に
動員された。1945年(昭和20年)7月に動員数は430万名を超え軍需生産の中心となっ
たが、労働力の低下は免れず一般工員との摩擦等の問題が発生した。

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解題

335 

3.日本の戦後軍属補償

植民地朝鮮出身強制動員被害者達が日本の戦後補償から排除されたのに反

し、日本人軍属達は戦争後、「国のために公務により殉国した軍人軍属に対す
る国家補償」がなされる。そして補償を前提とする法的な定義がくだされた

が、援護法と恩金法がすなわちこれである。

日本の恩金法、援護法で軍人、軍属は国家と使用関係または国家と特別な関

係にあることに基づき極めて厳格な条件を前提に定義される。戦争犠牲者に
対する援護政策が軍人、軍属を中心に制定された根拠は、戦争遂行主体者の
責任側面から被害補償を行うという論理である。 

〈表6〉日本戦傷病者 戦没者 遺族等 援護法上 軍属 及 準軍属137)


陸海軍部 内

有給軍属 

陸海軍部内の有給の嘱託員、雇員、傭人、工員、鉱員など
で、戦地等で勤務した者等 

日本赤十字社

救護員

日本赤十字社により陸海軍に属して戦時衛生勤務に従事
した救護看護婦、救護医員等 

配属 雇傭人 

従軍文官以外の雇・傭人で陸海軍に配属され戦地等で勤
務した者 

船舶運営会

船員

国家総動員法により設立された船舶運営会社に所属し、
軍の代行機関として軍務に従事した乗組船員等 

満鉄軍属

陸海軍の指揮監督により軍務に従事した南満州鉄道

(株)等の国策会社の職員等 

137) www.pref.gunma.jp

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朝鮮という私たちの国があったのだ

336 


軍  
属138)

被徴用者 等

 国家総動員法に基づき総動員業務に従事した者

・国民徴用令、船員徴用令等により徴用され、国の行う総

動員業務や政府が管理する工場等の総動員業務に従事し
た者等 

・軍需会社法により指定された軍需会社の従業員及び現

員徴用者等 

・学校報国隊員、女子挺身隊員、国民勤労報国隊員等 

戦闘参加者

陸海軍の要請に基づいて戦闘に参加した一般邦人等。

(沖縄などにおいて、軍の要請により物資の運搬などの

軍事行動に参加した者等)

国民義勇隊員

閣議決定により組織された国民義勇隊の隊員として陣地
構築作業及び疎開作業などに従事した者等 

満州国

開拓要員

閣議決定により組織された満州青年移民、満州開拓青年
義勇隊員、義勇開拓団員として関東軍の指揮のもとに陣
地構築等の軍事に関する作業に従事した者等 

特別未帰還者 

終戦後、ソ連軍により連行され強制労働に従事させられ
た一般邦人等 

日本 国内      

勤務軍属

戦地及び事変地以外の地域において陸海軍部内の有給軍
属として勤務に従事したが、陸海軍の共済組合員として
処遇されなかった者等 

防空従事者

防空法に基づき組織され、または地方長官の命を受け、
防空業務に従事した防空医療従事者、警防団員139)、学校
報国隊防空補助員、防空(船舶)監視隊員等

138)139)

もともと戦争前に恩金法の対象である戦死者、戦傷病者(軍人、軍属)を中

心とする法である援護法がもつ特徴は、恩金法と異なり改定によって準軍属の

138) 法令または命令等により軍属がおこなう業務の補完的業務に従事する者
139) 警防団:戦時体制下民間の消防や防災、防空のために組織された団体。1939年(昭和

14)年結成・47年廃止。

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解題

337 

範囲を拡大してきたという点にある。そうして対象を限定的ではあるが民間人
戦争犠牲者に対する補償機能をするようになる。重ねていえば戦争遂行時には
軍属として扱われていない人たちがそれ以降、新たに軍属として待遇を受ける

ことになったのである。しかし援護法の準軍属に対する補償は、戦争による被

害を根拠とするのではなく軍属に準ずるという点を根拠とし、国家との特別な
関係をもった人たちのみを対象とした。

日本の戦後戦争犠牲者に対する援護政策は軍人、軍属を中心に制定され

た。そしてその根拠は国家が彼等に戦争という違法行為を遂行させて積極的
に彼らの生命、身体を危険に陥れ被害を発生させたことに対して戦争主体の
責任側面から被害を補償するというものである。そのため戦後、旧日本軍軍属
は新たに定義され、そのような補償の対象から植民地韓国(朝鮮)人出身は排
除された。結局、日帝によって強制動員され戦地で凄惨にも生命をおとした韓
国人であれ、労役させられ九死に一生をえて帰還した韓国人であれ日本政府
からいかなる補償を受けられぬまま恨みだけを胸に抱いたままひとりふたりと
他界した。

4.口述集の構成及び内容 

口述集は期間中に生存者調査を通じて収集された15名の口述記録で構成さ

れた。口述者15名の地域別動員現況をみると日本へ動員されたひとが8名、中
国地域へ動員されたひとが3名、南方へ動員されたひとが4名である。軍属動員
を類型別にみると日本地域へ動員された場合、全員が陸海軍工員である。南方
へ動員された場合、海軍軍属は工員、陸軍軍属は捕虜監視員に該当する。中国
地域へ動員された3名は全員陸軍軍属である。この中で日本へ動員された金永
元ハラボジは、軍属に動員され1ヵ月未満で軍人として動員された多重動員被
害者である。また金濟斗ハラボジは、1941年に軍属として動員され1945年8月

10日に軍人に動員された多重動員被害者であると同時にソ連軍の捕虜になっ
たひとである。戦争終結後も収容所に抑留され労役に従事して1948年2月にな

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朝鮮という私たちの国があったのだ

338 

って帰還することができた。

<口述者別動員現況>

姓名

出生
年度

本籍

動員
年度

動員類型

動員場所

備考

孫永權 1924

京畿 長湍

1942

陸軍 工員

日本 名古屋

金永元 1923

忠南 舒川

1945

陸軍 工員

陸軍 警備兵

日本 大阪

ソウル 汝矣島

多重被害

金元逸 1921

京畿 漣川

1944

陸軍 工員

日本 埼玉

柳鍾雲 1922

全北 高廠

1942

海軍 工員

日本 佐世保

薛仁奎 1921 ソウル 鍾路 1943

海軍 工員

日本 呉

朴魯英 1927

忠南 燕岐

1945

海軍 軍属

日本 沼津

李長民 1923

全北 完州

1943

陸軍 工員

日本 大阪

張昌權 1930

慶南 統営

1944

海軍 工員

日本 群馬

朴成春 1915

全南 務安

1943

海軍 工員

トラック

金濟斗 1925 済州北済州 1941

陸軍 傭人

満洲

ソ連軍 捕虜

裵英虎 1927

釜山

1945

陸軍 傭人

中国

金壬用 1922

慶南 昌原

1942

陸軍 傭人

インドネシア

ジャワ

捕虜監視員

黄鍾大 1919

全北 錦山

1942

海軍 工員

ラバウル

金顯沂 1922

慶南 統営

1942 陸軍警防手

満洲

金甲天 1922

全北 群山

1942

陸軍工員  インドネシア

パレンバン

捕虜監視員

孫永權ハラボジは、1924年生まれで徴兵1期生にあたる。京畿中学校で勤

務中に徴兵検査を受け、第1補充役判定を受けた。このことにより軍隊に行か
なくなったが当時の京畿中学校校長の仲立ちで名古屋陸軍造兵廠へ動員され
た。熱田製造所で航空機部品をつくる仕事に従事し、岐阜県で解放を迎えた。
帰還途次、台風にあい対馬島で停泊して釜山に帰還した。

金永元ハラボジは、1932年に忠南舒川郡舒川面で出生した。1944年舒川面

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解題

339 

事務所の嘱託職員として勤務中に徴兵検査を受け軍人として動員され待機中
であった。本来の年齢であれば徴兵検査対象者に該当しないが、父母が誤って
出生申告したため徴兵検査を受けたとのことである。徴兵検査後、軍人として
動員されるものと予想したが軍属令状を受けて大阪軍需工場に動員された。し
かし大阪に到着して1ヵ月足らずでふたたび軍人令状を受け、汝矣島飛行場空
軍部隊哨所警備兵として服務中に解放を迎えた。

金元逸ハラボジは、1921年に京畿道漣川郡金谷面で出生し動員された当

時、ソウルに居住していた。1944年12月頃、現在の桂洞現代本社の場所にあ
った朝鮮共栄株式会社に勤務中、召集令状を受け軍属として動員された。陸軍
被服廠埼玉支廠で服務中、解放を迎え釜山に帰還した。

柳鍾雲ハラボジは、1922年11月に全北高廠郡新林面で出生した。国民学校

卒業後、家で農業に従事し、1942年11次徴用工員として動員された。2年契
約だったが1年延長となり日本敗戦時までいて、中間に休暇で帰郷したことが
ある。長崎県佐世保市の相浦海軍基地建設作業に服務中、解放を迎え帰還し
た。

薛仁奎ハラボジは、1921年9月にソウル鍾路区で出生した。日雇い労務者と

して建築の仕事中の1943年に通知書を受け動員された。当時、婦人は妊娠中

だった。当初、2年契約の通知を受け呉海軍鎭守府等で海軍宿舎建築、地下壕
建設の仕事に服務した。地下壕建設作業中に腰を負傷し治療を受けている。
いっしょに働いたひとの大多数は南洋群島に動員されたが日本語が分からな
いという口実で南洋群島動員から除外された。解放当時は大阪にいて1942年6
月頃、下関を経由し釜山に帰還した朴魯英ハラボジは、1927年3月に忠南燕岐
郡全東面に出生し、1945年1月頃に日本の沼津にあった123施設隊に動員され
た。動員当時はソウルで母、結婚した兄夫婦と暮らしていた。令状を受け麻浦
区庁に集結し釜山から博多を経て日本に行った。以後、おもに軍需工場で使わ
れる地下壕建設作業に服務し、戦争末期には軍事訓練も受けた。解放はその2
日後に知り、部隊長から渡航証明書をもらって下関から乗船しようとしたが乗

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朝鮮という私たちの国があったのだ

340 

れず仙崎に行ってそこから釜山に帰還した。

李長民ハラボジは、1923年11月に全北完州郡参禮邑で出生した。1943年9

月頃に大阪陸軍造兵廠に動員されおもに鉄工の仕事に従事した。動員当時に
貯蓄した金を帰還後、全州市長を通じて取り戻したという特異な証言をして
いる。解放前の1945年8月13日、14日頃に解放になることを知ったと語ってい
る。1945年10月頃に帰還してから鉄工、建築等の仕事に従事した。

張昌權ハラボジは、1930年に慶南通営郡蛇梁面良地里で出生した。蛇梁初

等学校6年在学中、級長から行かなくてはならない、という担任教師の勧めに
より動員された。1943年5月頃に鎭海51航工廠に少年工員として入所、訓練を
受け同年12月に群馬県中島航空機に配席された。51航工廠に少年工員として
志願した記録は現在も学籍簿に残っている。中島飛行機ではおもに飛行機の
エンジンの組み立てに従事した。解放後、長崎から乗船し鎭海を経て帰還し
た。

朴成春ハラボジは、1915年6月に全南務安郡清溪面で出生した。1943年6月

頃に南洋群島トラック(現在名チュオク)島へ動員された。日本の地名で夏島

(Tonoas Island)、水曜島(Tol island)等で飛行場設営作業に従事した。解放

後も帰還できずそのまま留まり1946年1月に日本芝浦で解員後、帰国した。

金濟斗ハラボジは、1925年9月に済州北済州郡は涯月邑で5人兄弟の末っ子

として出生した。涯月国民学校卒業後、日本に行き東京無線高等通信学校を

修了した。その後、新京飛行場に配属され、朝鮮第2航空軍第4航路部満洲第

12914部隊所属傭人として服務した。それ以降、図們飛行場等に転属し労役さ

せられ1945年8月10日、軍人として徴集され待機中にソ連軍と日本軍の戦闘の
情報に接した。そしてソ連軍との戦闘に参加し、日本の降伏宣言以後、ソ連軍
の捕虜となった。ソ連軍捕虜所で抑留され1948年になって帰還した。

裵英虎ハラボジは、1927年3月に釜山凡一洞で出生した。釜山で父親が運営

する会社職員として勤務中に動員された。憲兵に引率され釜山駅から汽車で浦
口を経て南昌に配置された。中国派遣軍第6方面軍直轄部隊の傭人だったが軍

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解題

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人とともに戦闘に参加した。戦争が終わって上海を経て帰還しようとするが、
南京兵站司令部の指示により天津から乗船し1946年5月、仁川に帰還した。

金壬用ハラボジは、1922年11月に慶南昌原郡内西面で3男1女の長男として

出生した。城湖普通学校卒業後、里長、面長の督励で動員された。1942年6月
から釜山西面野口部隊で訓練を受け同年8月、インドネシア・ジャワの捕虜監
視員として配属された。日本の敗戦後、戦犯裁判でかけられ帰還が遅れた。
1947年2月に日本宇品で解庸後、故郷に帰還した。

黄鍾大ハラボジは、1919年8月に全北錦山群錦山邑で出生した。1939年に志

願兵動員から逃れようと満洲へ行くが1942年、父危篤の知らせで帰郷し軍属

として動員された。ソロモン群島、ラバウル等で飛行場設営作業に従事し脱肛

症等を発病した。その後、呉で治療を受け1943年秋に本籍地に帰還した。ふ
たたび動員をすすめる警察を逃れて満洲へ行き、新京の宝山百貨店、満洲生
命株式会社、興農産業株式会社等で勤務した。戦争末期に満洲から撤収する

日本軍と行動をともにして奉天で解放を迎えた。

金顯沂ハラボジは、1921年1月に慶南統営郡長木面で出生した。早くに家族

と離れソウルで苦学し学業をおえた。その後、仁川の会社で勤務中に軍属令

状を受け動員された。1942年6月頃に動員され、関東軍経理部チチハル出張所
785部隊の警防手として配属された。戦争末期にソ連軍捕虜となり一時抑留さ
れるが釈放され奉天、新義州を経由し本籍地に帰還した。

金甲天ハラボジは、1922年4月に全北群山で出生した。家庭事情で中学校を

中退し日本人の商店で店員として勤務中、義兄の勧めで捕虜監視員募集に応
募した。軍隊へ行くよりはましだとの考えで群山から200余名とともに動員さ
れた。1942年6月に釜山西面野口部隊で訓練を受け、同年8月頃にインドネシ
ア・パレンバン捕虜収容所に配属された。日本の敗戦後、戦犯裁判にかけられ
たが1945年秋、故郷に帰還した。

委員会発足後、2005年1月から被害申告の受付を開始し2006年末までの2次

にわたる被害申告受付期間中、国内外の各地から総22万余件の被害申告を接

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朝鮮という私たちの国があったのだ

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受した。このうち日帝強占期旧日本軍軍属として動員された被害申告は26,638
件に及ぶ。被害申告接受件数中、生存者は52,600名、軍属動員被害の生存者
は6,894名に達する。

これらの生存者に対する口述収集作業は、戦時体制が日常生活を支配した

日帝末期の状況を記録として残す歴史的・社会的意味をもつものである。同時
に日帝時期という大きなタイトルでは現わされなかった個別の事例は、当時の

状況を生々しく再現し歴史が遠い事象ではなく今日、私たち隣人のことである

ことを思い起こさせてもくれる。遺憾なことは、強制動員被害生存者達が80歳

以上の高齢者であるため健康状態や記憶力が徐々に衰えており、申告を接受

してから生存者数は減少し続けていることである。

本書の刊行目的はこのように消え去りゆく歴史を復元するために口述を記録

し、その内容を多数の皆様と分かち合い強制動員の歴史に対する理解を高め
ることにある。よって録音を起こし、説明を付ける過程で口述資料を補い付記
した点を明記したい。口述者達の御協力と尽力により委員会が、軍属として動

員された強制動員被害生存者の歴史に新たな位置を占めるこの成果を刊行す
るはこびになり心より感謝の意を表します。

日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会 調査2課 

イ・セイル カン・フィヨン

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日帝強占下強制動員被害真相糾明委員会日帝強制動員被害者支援財団

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翻訳 • 最終監修者

日本語翻訳

日本語翻訳協力委員会

曺貞烈

最終監修
崔永鎬 choiygho@ysu.ac.kr

霊山大学 教授. 東京大学国際関係学博士(Ph.D)

日帝強制動員真相糾明委員会委員, 在外韓人学会/韓日民族問題学会会長

主要著書 : 《韓日関係の流れ 2017-2018》, 《日本人世話会》,
                    《現代韓日関係社》, 《在日韓国人と祖国解放》

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写真出処 : 国立日帝強制動員歴史館所蔵, 日帝強制動員被害者(シンガポール)の朴綺萬寄贈,
                 '第101設営隊軍属動員団体写真: 地下足袋をはいた土工員たち'(所蔵番号: 000058)